EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2025年8月28日、欧州委員会は、炭素国境調整メカニズム(CBAM)に関する3件の意見募集を開始しました。それぞれの取り組みはCBAMの異なる規制に対応するものであり、2025年9月25日まで関係者のフィードバックを受け付けています。これらのコンサルテーションは、2026年1月1日から開始されるCBAMの本格適用期間への移行の一環として行われます。CBAMの影響を受ける企業は、実務上の課題と実態が最終的な規則に反映されるよう、コンサルテーションプロセスに参加することが推奨されます。
CBAMは、欧州連合(EU)の気候戦略の中核を成す制度であり、カーボンリーケージの防止と、輸入品に対してEU域内で製造された製品と同等の炭素コストを課すことを目的として設計されています。2023年10月1日からのCBAMの移行期間が継続する中、欧州委員会は、2026年1月1日からの本格適用に向け準備を進めています。この移行を支えるため、今般3件の個別の意見募集が開始しました。それぞれの意見募集は、特定の規制課題に焦点を当て、CBAM制度の調整や管理上の負担の軽減、輸入者の公平な取り扱いを目指しています。
欧州委員会は、EU域内外のCBAMに影響を受ける企業に対し、2026年1月1日からの本格適用に向けた主な実施規則の策定に関して、意見提出を呼びかけています。今回の意見募集は、将来的にデータ管理、業務プロセス、コンプライアンス、財務に影響を及ぼすCBAM制度の進展について、関係者が意見を提出する機会を提供するものです。
2026年1月1日に本格適用が開始されると、直接体化排出量、間接体化排出量およびデフォルト値の使用に関する計算方法が変更されます。この変更を受け、今回の意見募集では、以下の項目について関係者からの意見提供を求めています。
これらの計算方法は、EUの輸入者がCBAM証明書(およびコスト)上の義務を定量的に把握する上で重要です。
本格適用期間では、EU排出量取引制度(EU ETS)の無償割当に基づくCBAM証明書の購入および償却義務に係る計算方法が導入され、CBAM証明書上の義務とEU ETSの整合が図られます。この規則では、体化排出量に対する無償割当の計算方法が定義され、EU ETSのベンチマークと整合したCBAMのベンチマークが決定されます。
本格適用期間では、EUの輸入者がEU以外の国で支払った炭素価格につき、該当する炭素価格をCBAM証明書の数に換算することができるようになります。これにより、輸入者は購入および償却すべき証明書の数量を軽減することができるため、EU CBAM制度上のコスト削減につながります。また、欧州委員会は、公平性を確保し、EUに輸入される製品に対して炭素価格が二重に課されることを回避するため、実効炭素価格を引き下げる国における補償メカニズムの導入を検討しています。
この規則では、文書や検証の要件を含め、認定および換算の方法が定義される予定です。
今回の3件の意見募集は、今後のCBAMに関するデータ管理や業務プロセス上の義務、コンプライアンス、そして最終的にはCBAMコストを方向づけるものです。CBAM対象製品を輸入する企業は、それぞれの提案を慎重に確認し、フィードバックの提出を検討することが望ましいと考えられます。意見募集の結果としては、排出量の計算方法、CBAMコストの割当方法、国際的な炭素価格の認定方法が影響を受ける可能性があります。コンサルテーションプロセスへの参加は、業務の実情を反映した、戦略的な事業計画を支える実用的かつ効果的な制度の策定に貢献できる貴重な機会となります。
EY税理士法人
岡田 力 パートナー
上田 理恵子 パートナー
中村 健 アソシエートパートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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