EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2025年9月22日から26日にかけて、米国の貿易に関するいくつかの重要な動向が明らかになりました。9月26日に発出された通知において、米国商務省産業安全保障局(BIS)は、通商拡大法232条に基づき、ロボットおよび産業機械の輸入に対する調査を開始すると発表しました。また、BISは個人用防護具(PPE)および医療機器の輸入に対する通商拡大法232条に基づく調査(以下、「232条調査」)に関する通知も別途発出しました。こうした調査は、これらの輸入が米国の国家安全保障に与える影響を評価し、関税を含む潜在的な貿易措置を検討することを目的としています。2025年9月25日のTRUTH Socialの投稿において、トランプ大統領は、医薬品、キッチンキャビネット、洗面化粧台、大型トラック、布張り家具に対する新たな関税政策を発表しました。
また、同日、米国連邦巡回控訴裁判所は、HMTX Industries LLCその他対米国政府の訴訟において、通商法301条に基づくリスト3およびリスト4Aの関税の合法性を支持し、米国通商代表部(USTR)が301条に基づき関税を修正する権限を有することを確認しました。原告側は、45日以内に再審理を請求するか、90日以内に米国連邦最高裁判所に上訴することが可能です。
9月23日、米国税関国境警備局は、EU、日本および英国からの輸入品に対して適用される代替的な関税措置に関する輸入申告ガイダンスを更新しました。
また、9月25日の連邦官報に掲載された通知において、米国商務省国際貿易局およびUSTRは、米国・EU間の枠組み合意の一部の関税関連項目の実施について概要を示しました。
ロボットおよび産業機械の輸入に対するBISの232条調査対象には、部品およびコンポーネントが含まれます。この広範な分類には、ロボットおよびプログラム可能なコンピューター制御の機械システムなど、さまざまな機械が含まれます。具体的には、コンピューター数値制御(CNC)加工センター、旋盤およびフライス盤、研削・バリ取り装置、工業用スタンピングおよびプレス機械などが該当します。また、自動工具交換装置、治具、固定具、切断・溶接・加工物の取り扱い用工作機械に加え、オートクレーブ、工業用オーブン、金属仕上げ・処理装置、放電加工(EDM)機械、レーザー切断機やウォータージェット切断機など、用途特化型の金属加工機器も対象となります。
BISは、国内需要、外国サプライチェーンの役割、外国の貿易慣行の影響など、さまざまな側面についてコメントを募集しています。これにより、影響を受ける企業には、潜在的な関税とその影響について意見を提出する機会が与えられます。コメント提出期間は9月26日に開始し、2025年10月17日までの21日間となります。
並行して実施される232条調査では、個人用防護具、医療用消耗品および医療機器の輸入が対象となっており、幅広い機器が含まれます。これらの機器には、ペースメーカー、インスリンポンプ、冠動脈ステント、心臓弁、補聴器、義肢、血糖測定器、整形外科用器具、コンピューター断層撮影(CT)スキャナー、磁気共鳴画像(MRI)装置、電気手術器具およびX線装置、人工呼吸器、酸素供給装置など、重要な医療機器が含まれます。BISは、国内の生産能力、外国サプライチェーンへの依存度、国家安全保障の保護に向けた追加の貿易措置の必要性について、コメントを募集しています。
これらの製品の製造または輸入に関与する企業は、潜在的な影響に対応するため、コンサルテーションプロセスへの参加を検討する必要があります。コメント提出期間は9月26日に開始し、2025年10月17日までの21日間となります。
米国連邦巡回控訴裁判所は、1974年通商法301条に関する重要な判例であるHMTX Industries LLC対米国政府の訴訟において、政府側の主張を支持する判決を下しました。これにより、トランプ政権第1期に導入され、現在も有効なリスト3およびリスト4Aの関税の合法性が認められました。裁判所は、USTRが301条に基づき初期の関税措置を修正する広範な権限を有することを確認し、原告側の主張に反して、リスト3およびリスト4Aが許容される修正の範囲内であると判断しました。原告側は、45日以内に全裁判官による再審理を請求するか、90日以内に米国連邦最高裁判所による審査を求めることが可能です。そのため、今後も審理が継続する見込みであり、最終的な解決には数カ月を要する可能性があります。
米国税関国境警備局は、EU、日本および英国からの輸入品に対して適用される代替的な関税措置に関する輸入申告ガイダンスの更新版を公表しました。このガイダンスは、米国関税率表(HTSUS)第99類に基づき、企業が特定の輸入品を分類する方法に影響を及ぼします。企業は、コンプライアンスを確保し、必要に応じて輸入計画の見直しを行うため、これらの更新内容を確認する必要があります。
トランプ大統領は、最近のTRUTH Socialでの発表において、2025年10月1日より複数の新たな関税措置を開始すると宣言しました。さらなる実質的なガイダンスはまだ示されていませんが、大統領令または布告が発表される見込みです。最近の発表には以下が含まれます。
2025年9月25日、国際貿易局およびUSTRは、米国・EU間の枠組み合意の一部の関税関連項目を実施する連邦官報通知を発表しました。この枠組み合意は、2025年8月21日に発表され、米国とEU間の相互的、公正かつ均衡のとれた貿易の確立を目的としています。この通知では、特定のEU原産品に対する関税を調整するため、HTSUSを修正しています。主な調整内容は以下のとおりです。
これらの修正は、米国とEU間の貿易不均衡の是正および経済協力の強化に向けた取り組みを反映していることが、通知において示されています。
これらの動向は、米国の貿易政策が変化し続けていることを明らかにしており、さまざまなセクターの企業にとって重大な影響を及ぼします。影響を受ける企業は、232条調査に関するパブリックコメント・プロセスへの参加の検討、輸入申告ガイダンスの更新版の確認、ならびに新たな関税政策および米国・EU間の枠組み合意の影響の評価を行うことが望まれます。
米国に物品を輸入する企業は、事業目標に沿うものであれば、以下の対応策のいずれかを検討することが推奨されます。
EY税理士法人
大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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