EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2025年9月5日、米国のドナルド・J・トランプ大統領は「相互関税の適用範囲の変更および貿易・安全保障協定の実施手順の確立」と題する大統領令に署名しました。この大統領令は、国家安全保障上の懸念に対応し、米国の貿易赤字の一因となっている貿易慣行を是正することを目的としています。また、協力関係にある国々からの一定の輸入品については0%の関税を適用することを定めており、これは相手国が一定の貿易慣行是正措置を講じることを条件としています。さらに、本大統領令はAnnex IIを改訂し、新たな「同盟パートナーに対する関税調整の可能性(PTAAP)」付属書を制定しました。
新たな大統領令は、大統領令14257号に基づき制定されたAnnex II(参考:2025年4月3日付EY Global Tax Alert「US imposes President's Reciprocal Tariff Policy against trading partners and ends duty-free treatment for low-value shipments from China」、2025年4月16日付 EY Japan税務ニュース「トランプ大統領、世界各国からの輸入品を対象とする相互関税の導入を発表―大部分につき90日間停止」)に大幅な変更を加え、相互関税の適用免除となる品目のリストを示しています。地金関連製品、特定重要鉱物、通商拡大法232条に基づく調査対象医薬品など複数の品目がAnnex IIに追加され、これらに対して大統領令14257号に基づき2025年4月2日に課された関税は今後免除となります。一方で、水酸化アルミニウム、特定の樹脂・半導体製品などはAnnex IIから除外され、相互関税の対象となります。これらの変更は2025年9月8日に発効しました。
新たな大統領令はAnnex III(PTAAP付属書)も制定し、貿易・安全保障協定が締結された場合に関税引き下げの対象となり得る物品のカテゴリーを概説しています。対象となる4つのカテゴリーは以下のとおりです。
トランプ政権は日本、英国、ベトナム、フィリピン、韓国、EU、インドネシアなどの国・地域と枠組み合意に達しており、各国パートナーによる米国の貿易上の懸念事項に対するコミットメントに基づき、関税調整の可能性が示されています。
大統領令はさらに、これらの関税引き下げを許可する権限は、米国商務長官や米国通商代表部(USTR)などの高官にあることを明記しており、彼らは「最終合意」の条件が満たされた時期を判断し、税関・国境警備局などの機関と連携して実施について調整します(参照:貨物システム・メッセージング・サービス(CSMS)# 66151866 - UPDATE — 相互関税免除対象製品)。
米国商務長官およびUSTRは、国家安全保障と経済目標の整合性を確保する責任を負っており、これには貿易赤字の監視や調整のための勧告が含まれる場合があります。
米国への輸入を行う企業は、以下の対応策が事業目標に合致する場合は、これらを検討することが推奨されます。
影響を受ける企業は、所得税と関税のアプローチを調整しながら関税の影響を判断するとともに、移転価格調整を米国税関に報告する仕組みも見直す必要があります。関税が1年の特定の期間にのみ適用される場合、このプロセスは特に複雑になる可能性があります。米国税関には、移転価格の調整など、輸入後に行われた価格の調整を報告するための具体的なルールがあります。これらのルールは、輸入製品に価格調整が見込まれる場合において、移転価格ポリシーへ関税に関連することを明記することを輸入者に求める等、輸入に先立つ手続きを定めています。移転価格が引き下げられた場合、支払った関税の還付を受けられる可能性があります。
EY税理士法人
大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
EYの関連サービス
米中の地政学的対立によって世界で保護主義が進む中、関税の上昇や輸出規制の強化が続いており、企業には新たな通商関税管理が求められています。EYでは、パラダイムシフトを迎えて急速に変化する国際貿易環境に合わせた関税・国際貿易アドバイザリーサービス、そして、国際ルールの厳格化に対し、国際的な輸出規制に対処するアドバイザリーサービスを提供します。
続きを読む移転価格(Transfer Pricing〈TP〉)とは、グループ企業との取引を通じた所得の海外移転を防止し、適正な国際課税を行うことで国際的な所得の適正配分を図ることを目的とした税制です。 EYのTPチームは、移転価格文書化、移転価格ポリシーの策定、事前確認(APA)及び税務調査対応等のコンプライアンス対応に加え、近年複雑化する税制や事業を考慮した企業のガバナンス体制の構築を全面的に支援します。
続きを読むメールで受け取る
メールマガジンで最新情報をご覧ください。