EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2025年11月21日、米国財務省およびIRSは、自社株買いに対するExcise Taxの最終規則(TD 10037)を発表しました。最終規則は、草案に対し多くの変更を加えています。最も重要な変更点として、買収型組織再編、テイク・プライベート取引、および他の特定の合併・買収(M&A)取引において実施される(または実施されたとみなされる)特定の自己株式取得を課税対象から除外した点が挙げられます。また、最終規則では、外国企業による自己株式取得が、その企業の米国子会社から「資金調達された」場合はExcise Taxを課すとしていた「資金調達ルール」が撤回されるとともに、特定の優先株の償還に関する課税免除の範囲が拡大されました。
最終規則には、これらの規則がどのように適用されるかを示す多数の例が含まれています。
インフレ削減法(IRA)に基づき制定された内国歳入法(IRC)セクション4501は、課税年度中に「対象企業」または対象企業が過半数を所有もしくは支配する子会社によって自己株式取得が行われた場合、その対象企業に対してExcise Taxを課すものです。「対象企業」とは原則として、株式を公開している米国法人と定義されます。対象企業による自己株式取得には、当該企業の特定関連者が、対象企業またはその特定関連者以外の者から自社株買いを行う場合も含まれます。原則として、特定関連者とは、対象企業が50%超を所有する子会社で、パートナーシップまたは法人として取り扱われるものを指します。
IRCセクション4501では、株式を公開している外国企業に関して、その米国特定関連者が外国親会社の株式を取得(特定の取得)した場合、当該米国特定関連者を「対象企業」として扱います。
IRCセクション7874に規定されるコーポレート・インバージョン(米国企業が外国親会社グループに再編する取引)については、「(インバージョン取引の結果誕生する)外国法人親会社(surrogate foreign corporation)」に特別な規定が適用されます。この場合、対象外国法人親会社が自己株式取得を行った場合、または対象外国法人親会社の特定関連者が当該外国法人の株式を取得した場合、「インバージョンした米国企業」(すなわち、IRCセクション7874(a)(2)(A)で規定されている米国企業)が自己株式取得を行った対象企業とみなされます。
一定の例外や調整を条件として、Excise Taxは、課税年度中に対象企業が取得した自己株式の公正市場価値(FMV)の1%に相当する額となります。このExcise Taxの納付は、法人税の計算上、費用として損金算入することはできません。Excise Taxの対象となる自己株式取得価格は、課税年度中に対象企業が発行した株式の価値分だけ減額されます(ネッティング・ルール)。この発行株式には、対象企業およびその子会社の従業員に付与された株式も含まれます。
IRCセクション4501は、「自己株式取得」を次のように定義しています。
(1)IRCセクション317(b)で定義される株式償還(すなわち、企業が株主から自社株式を取得し、その対価として財産を交付する取引であり、IRCセクション(a)によれば、その財産には企業の株式以外のほぼ全てが含まれる)
または
(2)米国財務省が経済的に同等と認めるその他の取引
IRCセクション4501は、次の場合にはExcise Taxは適用されないと規定しています。
2024年4月9日に公表された規則草案(REG-115710-22)(2024年4月15日付EY Global Tax Alert「Much-anticipated proposed regulations on stock repurchase excise tax follow earlier guidance with some modifications, including to funding rule, redemptions」〈英語のみ〉を参照)では、その前に公表されていたNotice 2023-2で示された暫定ガイダンス(2023年1月9日付EY Global Tax Alert「Interim guidance on stock buyback excise tax offers mixed bag for corporate taxpayers」〈英語のみ〉を参照)の多くが、いくつかの修正を加えたうえで採用されていました。同時に、別の草案であるREG-118499-23が、Excise Taxの申告および納付の手続きを規定しました(2024年4月15日付EY Global Tax Alert「IRS releases proposed regulations with the procedure for reporting and paying stock repurchase excise tax」〈英語のみ〉を参照)。また、草案では、新しい証明書が導入されましたが、これはすでに源泉税に関する証明書を受け取っている株主にとって混乱を招く可能性があるものでした(2024年5月10日付EY Global Tax Alert「Proposed regulations on stock repurchase excise tax have implications for brokers and IRC Section 302 certifications」〈英語のみ〉を参照)。その後公表された最終規則(TD 10002)は、一部の軽微な修正を加えながらも草案にほぼ沿った内容でExcise Taxの申告および納付に関する規則を最終化しています(2024年7月11日付EY Global Tax Alert「Final regulations on reporting and paying stock repurchase excise tax apply to filings due beginning October 31, 2024」〈英語のみ〉を参照)。
最終規則の前文によると、米国議会は原則として、買収型組織再編のように、複数の企業が関与しターゲット企業の所有権または支配権を根本的に再編する取引に、Excise Taxを適用することを意図していませんでした。したがって、最終規則では、買収型組織再編に基づくターゲット企業の株主による株式交換を、Excise Taxの観点から自己株式の取得とはみなしていません。
最終規則の前文によると、米国議会は原則として、レバレッジド・バイアウトやその他のテイク・プライベート取引も買収型組織再編同様に、複数の企業関与を通じて企業の所有権または支配権を根本的に再編する取引について、Excise Taxを適用することを意図していませんでした。その結果、最終規則では、対象企業が非公開化するプロセスの一環として株式を償還する場合、自己株式取得税の適用対象とはみなされません。
前文では買収型組織再編の取扱いとの整合性について言及し、IRCセクション4501は完全な会社清算には適用されないと述べています。したがって、最終規則では、IRCセクション331、332(a)、またはその双方が適用される完全な会社清算に対して、自己株式取得税を適用しません。
草案からのもう1つの重要な変更点は、資金調達ルールの撤回です。草案に対するコメントの多くは本ルールに関するものでした。提案されていた資金調達ルールは原則として、株式を公開している外国親会社グループの米国子会社に関するものでした。
外国企業の「該当する特定関連者」が、IRCセクション4501(d)に基づくExcise Taxの回避を主目的の1つとして、分配、債務、または資本拠出を含むいかなる方法により、外国企業の自社株買いまたは株式取得のための資金提供を行った場合、草案の資金調達ルールでは、その特定関連者が当該外国企業の株式を取得したものとみなしていました。草案では、米国の特定関連者による外国親会社の自社株買いへの直接または間接的資金提供を、IRCセクション4501(d)に基づくExcise Taxを回避する目的があるものとして扱っていました。最終規則の前文では、本ルールに関する幅広いコメントに言及しています。中には、米国の特定関連者が外国親会社の株式を取得する取引自体(IRCセクション4501(d)に基づくExcise Taxの対象となる典型的な取引)は、一般的に稀であるというコメントも含まれていました。
最終規則では、特定の優先株式の償還について、Excise Taxの免除対象を拡大・追加しています。
最終規則は、(1)その他Tier1資本として認められ、かつ(2)普通株式等Tier1資本としては認められない優先株式を除外するという草案の方針を踏襲しています。したがって、その他Tier1優先株式はExcise Taxの対象外であり、その他Tier1優先株式の発行はネッティング・ルールの適用対象とはなりません。また、最終規則では、連邦農業信用制度(Farm Credit System)の農業協同組合や貯蓄貸付持株会社などの「制度に基づく企業」の優先株式も除外対象に加えています。
また一般的な適用として、IRCセクション1504(a)(4)で規定されている「プレーンバニラ」優先株式の買戻しを免除対象としています。
IRA制定前に発行された特定の種類の株式については、対象企業がその株式を買戻すかどうかを決定する裁量をもはや持たない場合、移行措置が認められます。したがって、最終規則は、2022年8月16日以前に発行された強制償還株式や一方的な保有者プットオプション付き株式に対して、移行緩和措置を提供しています。
最終規則は全般的に、草案に沿ったものとなっていますが、企業に役立つ変更点が1つあります。最終規則では、ネッティング・ルールにおいて、対象企業およびその特定関連者の従業員ならびに従業員以外のサービス提供者に対して発行された株式が考慮されます。一方、草案では、特定関連者の従業員以外のサービス提供者に譲渡された株式は、ネッティング・ルールの適用対象外とされていました。
最終規則は、原則として2023年1月1日以降に終了する課税年度における自己株式取得および株式発行に適用されます。ただし、Notice 2023-2号に記載されていない特定の規則については、特別な発効日(2024年4月13日以降の自己株式取得および株式発行)が適用されます。また、外国パートナーシップに適用されるデミニミスルールにも特別な移行措置の発効日が適用されます。なお、納税者は、最終規則を一貫して適用することを条件として、原則として全ての最終規則を発行日以前の期間に遡って適用することができます。
最終規則は申告要件を変更していませんが、最終規則を反映して修正が必要となる過去の申告修正法を明確化しています。
Notice 2023-1または草案に基づいてすでにForm7208を提出しており、最終規則に基づき還付請求を行う場合、該当する四半期についてForm7208-X(Excise Tax修正申告書)を提出し、訂正済のForm 7208(「訂正済み」と上部に記載)を添付するよう規定されています。最終規則によりExcise Taxの追加納付が必要な場合も同じ手続きを適用します。
元の申告者ではない納税者が還付請求を行おうとする場合は、Form 8849(Excise Taxの還付請求)を提出し、Schedule 6(他の請求)および訂正済みのForm 7208を添付することで請求が可能です。
対象企業が2024年第3四半期のForm 720の申告に当たり2年度分のForm 7208(2023年に終了する課税年度用と2024年に終了する課税年度用)を添付して提出済みの場合、当該四半期のForm 720-Xには訂正済みの2年度分のForm 7208(それぞれの上部に「訂正済」と記載)を添付する必要があります。
米国財務省規則セクション58.6011-1(a)(自己株式取得税申告義務を規定する条項)が更新され、この申告義務が免除される企業のリストに、規制投資会社(RIC)の要件を満たさない40 Actファンドが追加されました。
草案と比較して、最終規則では、Excise Taxの適用範囲が大幅に縮小されており、多くの法人納税者に歓迎される内容になっています。特に企業の合併・買収(M&A)に関わる適用緩和は顕著であり、買収型組織再編やその他のM&A取引はしばしば日和見的な自社株買い取引や制度が有している特徴を備えていないことからExcise Taxが意図している対象取引ではないという納税者のコメントに賛同した内容になっています。組織再編、テイク・プライベート取引、スピンオフ取引が対象から除外されたことで、M&A取引時の納税義務の縮小、Excise Tax抵触に関わる予見可能性が高まりました。優先株式の取扱いに関しても同様に歓迎するべき内容になっています。Excise Taxの全体的な適用範囲の縮小を踏まえると、過年度に納付したExcise Taxについて還付を求める機会が見込まれます。さらに、株式を公開している外国企業の米国子会社は、関連者との通常のクロスボーダー取引が、外国親会社の自社株買いの間接的な「資金提供」に該当するかどうかを分析する必要がなくなり、こちらも歓迎するべき修正となります。
EY税理士法人
秦 正彦 シニア・テクニカル・アドバイザー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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