米国、1974年通商法第122条に基づき全世界からの輸入品に対し10%の従価税を導入

  • トランプ米国大統領の布告により、議会を通じ内容の変更や日時の延長がされない限り、2026年2月24日午前12時1分から2026年7月24日午前12時1分(いずれも米国東部標準時・EST)までの期間、米国に輸入される全ての物品に対し、10%の従価税が一時的に適用される。
  • ただし本関税は、特定の重要鉱物、エネルギー関連製品、医薬品、特定の電子機器および自動車・自動車部品、カナダおよびメキシコからのUSMCA原産品、ならびにCAFTA-DR原産の繊維製品など、リスト化された例外品目には適用されない。
  • 本関税は、他の関税および手数料に追加して課されるものだが、通商拡大法第232条に基づく関税に追加して適用されることはない。ただし、第232条の適用対象とならない輸入品の一部について、本関税が適用される可能性がある。
  • 2026年2月24日以前に積み込まれて輸送中の貨物は、同年2月28日午前12時1分(EST)までに消費目的で輸入申告が行われた場合、輸送中貨物の例外措置の対象(in-transit exception)の適用を受けられる可能性がある。なお、影響を受ける米国外国貿易地域(FTZ)への搬入貨物については、「特恵外国貨物(privileged foreign status)」としての取扱いが必要になる。
  • 企業は、追加の関税措置に関する最新情報を注視するとともに、本関税による影響を評価し、適用可能な免除や例外を主張するための裏付け資料を準備する必要がある。


エグゼクティブサマリー

2026年2月20日に連邦最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を巡る訴訟において、IEEPAは大統領に関税を賦課する権限を付与していないと判断したことを受け、トランプ政権は迅速に代替となる法的手段の活用に乗り出しました。具体的には、2月20日深夜に「国際収支の根本的問題に対処するための暫定輸入割増金の賦課(Imposing a Temporary Import Surcharge to Address Fundamental International Payments Problems)」と題する布告を発令し、1974年通商法第122条に基づき、全世界からの輸入品に対して10%の従価税を一時的に課す措置を導入しました。同条は、「重大かつ深刻な」国際収支赤字が生じている場合に、最大15%・最長150日間の一時的関税賦課を認めるものです。

連邦最高裁判決の詳細は、2026年2月20日付EY Global Tax Alert「US Supreme Court rules IEEPA does not authorize presidents to impose tariffs」および2026年3月3日付 EY Japan税務ニュース「米国最高裁判所、IEEPAに基づく関税を違憲とする判決」をご覧ください。

また、オンデマンド配信中のEY主催のウェブキャスト「IEEPA後の関税問題|米国最高裁判決が貴社ビジネスに与える影響」(英語のみ)にご登録の上、ぜひご視聴ください。


適用範囲と発効日

関税率および適用期間

本布告により、米国への全輸入品に対し10%の従価税が課されます。適用期間は2026年2月24日午前12時1分から2026年7月24日午前12時1分(いずれもEST)までであり、議会により明示的に停止・修正・早期終了されない限り適用されます(議会により延長される可能性あり)。


米国関税率表(HTSUS)の修正

HTSUSは、Annex Iに基づき修正されます。また、米国通商代表部(USTR)は、連邦官報(Federal Register)を通じて、追加の技術的修正を発表する可能性があります。


例外品目

本関税は、Annex IおよびAnnex IIに記載されている以下の品目には適用されません。

  • 特定の重要鉱物
  • 通貨・地金に使用される金属
  • エネルギーおよびエネルギー関連製品
  • 国内で十分な量が入手できない天然資源および肥料
  • 特定の農産物(牛肉、トマト、オレンジ等)
  • 医薬品および医薬品原料
  • 特定の電子機器
  • 乗用車、特定の軽・中・大型車両およびバスならびにそれらの一部部品
  • 特定の航空宇宙関連製品
  • 情報媒体、寄付品、携帯手荷物
  • 1962年通商拡大法第第232条に基づく追加輸入制限の対象となっている全ての物品および部品
  • 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づき無税で輸入されるカナダまたはメキシコ原産品(General Note11および関連する第98章および99章のサブチャプターに該当)
  • 米国・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定(CAFTA-DR)に基づき無税で輸入される繊維・アパレル製品


輸送中貨物に対する例外措置

2026年2月24日午前12時1分以前に米国入国前の最終輸送手段に積載され、輸送中であった貨物で、かつ2026年2月28日午前12時1分(いずれもEST)までに消費目的で輸入申告(または保税倉庫から消費目的で引き出し)された場合、本関税の例外措置が適用されます。


施行および優先順位

本関税は、他の関税、税金、手数料等に追加して適用されます。ただし、第232条に基づく関税には追加適用されません。輸入品の一部に第232条が適用される場合、本関税は第232条対象外の部分にのみ適用されます。

本関税の対象となる貨物が、本関税の発効日以降にFTZに搬入される場合、(「国内貨物ステータス」に該当する物品を除く)、「特恵外国貨物(privileged foreign status)」として搬入され、消費目的での輸入申告時に、HTSUS分類に基づき課税されます。

USTRは、国際収支問題および本関税の影響を監視し、本関税の停止、変更または終了の可能性について助言を行います。USTR、国際貿易委員会および米国税関国境警備局(CBP)は、官報の告示を通じて、HTSUSの追加的な改訂や技術的修正を公表する場合があります。また、CBPは本関税を施行するための措置を講じることができます。


企業への影響

原則として、リスト化された例外品目やUSMCAおよびCAFTA-DRの無関税措置の適用対象に該当しない限り、ほとんどの輸入品が10%の関税の対象となります。

例外規定では、供給可能性、原材料ニーズ、深刻な供給混乱の回避、既存の輸入規制、および輸送中の貨物といった要素が考慮されています。企業はAnnex IおよびAnnex IIに照らし、慎重に該当性を評価する必要があります。

企業は、HTSUSの変更に対応できるよう準備する必要があり、米国のFTZ事業者は、本関税の対象物品を「特恵外国貨物(privileged foreign status)」として扱わなくてはなりません。


検討すべき対応策

企業は自社の状況に応じて、下記を含む対応策を検討する必要があります。

  • USTRおよびホワイトハウスによる追加的関税措置の動向を注視し、セクター別措置の可能性に備えて社内の対応方針や管理体制を見直す。
  • 輸入品のHTSUS分類を整理し、通商法第122条に基づく10%関税の影響有無を把握するとともに、関税コストへの影響を把握・定量化する。大統領布告で定められた例外品目に該当する製品がないか確認し、輸入申告時に主張するための裏付け資料を整備する。
  • IEEPA関税の解除、新たな通商法第122条関税の適用、ならびに適用可能な例外措置を反映するため、通関業者への指示内容およびAutomated Commercial Environment(ACE)/輸入申告コードを更新する。また、CBPのHTSUSの変更、およびCargo Systems Messaging Service(CSMS)が配信する最新情報をモニタリングして、技術的な申告ガイダンスを把握する。
  • IEEPA関税の還付対応に向けて、過去の輸入申告記録を確認する社内プロセスを整備し、下級裁判所の救済措置・手続きに関する動向をフォローし、将来的な還付請求に備える。
  • 該当する場合には、USMCAおよびCAFTA-DRの関税優遇を適用できるよう、原産地規則および証明手続きを再確認する。これによって、通商法第122条関税の例外措置の適用が可能になる点を認識する。
  • 通商法第122条関税の150日間の適用期間および1974年通商法第301条に基づく今後の追加措置の可能性を踏まえ、関税調整条項や価格再協議条項を含める形で、仕入先および顧客との契約条件の見直し・再交渉を検討する。
  • 通商法第122条関税に対して利用可能な場合には、関税払戻(ドローバック)制度の活用を検討し、適格性、申告期限、必要書類を確認して、還付請求に向けた準備を進める。


お問い合わせ先

EY税理士法人

大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです