米国大統領布告により、鉄鋼、アルミニウム、銅およびそれらの派生製品に係る通商拡大法第232条関税を改正

  • 米国のトランプ大統領は2026年4月2日、1962年通商拡大法第232条に基づく関税が、アルミニウム、鉄鋼、銅の製品およびそれらの派生製品について、金属含有量の多寡にかかわらず、課税価格(customs value)全額に適用されることを定める布告を発出した。
  • 関税率は、アルミニウム、鉄鋼、銅の多くの製品および一定の派生製品について50%である(所定の引下げ税率の適用条件あり)。また、布告のAnnex IIIに掲げる製品については、2027年12月31日まで経過措置が適用され、米国関税率表(HTSUS)コラム1(一般税率)を基準として税率を算定する。これらの製品は2028年1月1日から標準的な第232条関税率へ移行する。
  • 一定の派生製品は、Annex IIに基づき関税対象範囲から除外される。また、米国商務省および米国通商代表部(USTR)の共同措置により、追加の派生製品が段階的に追加される。
  • 米国産金属を用いた製品には10%の引下げ税率が適用される。英国原産の製品には、該当する製品カテゴリーに応じて25%または15%の税率が適用される。ロシア原産のアルミニウム製品については、引き続き200%の関税が適用される。
  • 貿易協定パートナーの適格品については限定的に製造戻し税(manufacturing drawback)が認められる一方、より広範な戻し税は引き続き禁止される。

エグゼクティブサマリー

米国のトランプ大統領は2026年4月2日、「米国へのアルミニウム、鉄鋼および銅の輸入調整措置の強化(Strengthening Actions Taken to Adjust Imports of Aluminum, Steel, and Copper into the United States)」と題する布告を発出し、1962年通商拡大法第232条に基づく布告9704号(アルミニウム)、9705号(鉄鋼)および10962号(銅)により確立された関税制度を改正しました。本布告は、対象製品および派生製品について、従来の「対象金属含有量のみに対する従価50%課税」ではなく、「課税価格全額に対する追加従価税」の適用へと見直すとともに、関税対象となる製品範囲を明確化しています。

課税価格全額課税および税率体系

2026年4月6日午前0時1分(米国東部標準時、EST)以降に通関される貨物から、第232条に基づく追加従価税は、アルミニウム、鉄鋼、銅の製品およびそれらの派生製品について、金属含有量に限定されることなく、課税価格全額に適用されます。

Annex I-Aには、アルミニウムおよび鉄鋼のみで構成される製品、銅製品の大半、ならびに特定のアルミニウム/鉄鋼派生製品が含まれます。Annex I-A対象品目の一般税率は50%です。ただし、(i)全てのアルミニウムが英国で製錬(smelt)された、または直近で鋳造(cast)されたこと、もしくは(ii)全ての鉄鋼が英国で溶解・注湯(melted and poured)されたことを条件として、英国製品には25%の引下げ税率が適用されます。また、米国原産のアルミニウム、鉄鋼または銅のみを用いて製造された派生製品には10%が適用されます(注:本税務ニュースにおけるAnnexの参照は、いずれも当該布告に含まれるAnnexを指します)。

Annex I-Bには、その他の銅製品および特定のアルミニウム/鉄鋼派生製品が含まれます。一般税率は25%であり、英国原産の金属含有量が所定要件を満たす場合は15%、米国原産品のみを用いて製造された製品には10%の引下げ税率が適用されます。

Annex IIに掲げる製品は、2026年4月6日から、第232条に基づくアルミニウム/鉄鋼関税の対象範囲から除外されます。

Annex IIIの経過措置(2027年12月31日までの枠組み)

Annex IIIには、機械類ならびに金属・プラスチック・ゴム成形用のモールド、ダイおよび工具等を含む一定の製品が掲げられています。2026年4月6日以降、2027年12月31日午後11時59分(EST)までに通関されるAnnex III対象品目については、適用税率がHTSUSコラム1の税率(MFN税率)を基準として調整されます。

  • MFN税率が15%未満の場合:コラム1税率と第232条税率の合計が15%となるよう、第232条税率を調整します。
  • MFN税率が15%以上の場合:第232条税率は0%となります。

Annex IIIに掲げる派生製品のうち、米国原産のアルミニウムまたは鉄鋼のみを用いて製造されたものには10%が適用されます。一方、通常の貿易関係を有しない貿易相手国からの輸入には25%が適用されます。

2028年1月1日以降、Annex III対象品目はAnnex I-Bの税率へ移行します。

商務省およびUSTRは、輸入急増が当該制度の目的を損なう場合、貿易相手国に対するAnnex IIIの便益を撤回することがあります。その場合、影響を受ける製品はAnnex I-Bの取扱いへ切り替わります。

対象範囲の明確化および除外

Annex I-A、I-BまたはIIIの製品が、複数の金属の製品または派生製品として掲げられている場合、当該製品には適用税率が一度のみ課されます。また、Annex I-BまたはIIIに掲げる製品であっても、(Annex IVで定義される)アルミニウム、鉄鋼または銅の含有量がない、またはHTSUS第72類、第73類、第74類もしくは第76類に分類されず、かつAnnex IVに基づく金属含有量が不十分な場合には、本追加関税の対象から除外されます。さらに、本布告は、民間航空機およびその部品に関するWTO「民間航空機協定(Agreement on Trade in Civil Aircraft)」の下で英国、EU、日本、韓国等のパートナーと締結された合意を実施するための従前の措置を変更するものではありません。

派生製品の対象化および追加手続き

本布告により、2025年に創設された派生製品の追加手続きは終了します。商務省およびUSTRは、輸入の増加が国家安全保障を損なうおそれがある場合、特定された国家安全保障上の脅威に寄与する場合、または本制度の目的を損なう場合に、アルミニウム、鉄鋼または銅の派生製品を順次追加できる権限を付与されます。この権限により、金属関税の対象外の品目が充填されている場合であっても、金属製容器を関税対象に含めることが明確に認められます。新たに追加される派生製品には、原則としてAnnex I-Bの税率体系が適用されますが、Annex I-Aに掲げる製品と同一または実質的に同等と判断される場合には、Annex I-Aの税率が適用されます。追加は、連邦官報での告示の公表により効力を生じます。商務省およびUSTRは、追加決定の再検討または撤回を行うこともできます。

ロシア産アルミニウムおよび執行

Annex I-A、I-BまたはIIIに掲げるアルミニウム製品およびアルミニウム派生製品のうち、ロシア原産であるもの、ロシアで製錬された一次アルミニウムを使用しているもの、またはロシアで鋳造されたものについては、布告10522号で確立された200%の関税が引き続き適用されます。米国税関・国境警備局(CBP)は、本強化制度の運用・執行を行うよう指示されており、金属含有量および原産地を特定するための規則・ガイダンスの整備、不正な積替えや過少申告への対応、ならびに対象となる銅製品について輸入者に製錬・鋳造原産地情報の提出を求めること等が含まれます。

外国貿易地域(FTZ)および戻し税

発効日以降に米国のFTZへ搬入される対象製品は、特権外国貨物(privileged foreign status)として搬入されなければなりません。発効日前に特権外国貨物として搬入された製品は、国内消費向けに搬出(消費通関)される際に、適用される従価税率の対象となります。

製造戻し税(manufacturing drawback)は、Annex I-BまたはAnnex III(または条項(11)に基づき追加されたもの)の対象で、アンチダンピング/相殺関税(AD/CVD)命令の対象ではなく、かつ特定の貿易協定パートナー(英国、EU、日本、韓国、メキシコ、カナダおよび相互主義に基づく最終的な貿易協定を締結したパートナー)の産品である物品について、厳格な条件の下で利用可能です。条件として、金属含有量が全て貿易協定パートナーにおけるもの(アルミニウムの場合は製錬および鋳造、鉄鋼の場合は溶解・注湯)であることが求められます。これ以外の戻し税の申告は認められません。

運用およびモニタリング

商務省およびUSTRは、連邦官報での告示により、HTSUSの修正および技術的修正を行うことができます。また両者は、国家安全保障上の脅威との関係における輸入状況、国内生産、外国パートナーの対応、その他関連事情や提言等について、90日以内に共同で最新情報を提供しなければなりません。関係省庁には、本布告の実施および実効性確保のため、適切な措置を講じるよう指示されています。

企業が検討すべき対策

各社の状況に応じて企業が取るべき対応策としては、以下が挙げられます。

  • 関税評価額を分析し、該当する場合は完成品の移転価格も含めて、コンプライアンス状況の確認および課税対象外要素を除外するための組成・取引ストラクチャリング機会を検討します。
  • 関税分類を整備・維持し、監査を実施して、製品が第232条関税の対象範囲内/外のいずれに該当するかを適切に識別できるようにします。
  • 課税価格全額に対する従価税(Annex I-A:50%、Annex I-B:25%)を織り込んで着地原価(landed cost)を再計算(モデル化)し、各金属含有分について、製錬・溶解・注湯・鋳造の来歴を踏まえ、引下げ税率(米国原産:10%、英国原産:25%/15%)の適用可能性を評価します。
  • 製品がAnnex IIIの経過措置の対象となるかを判定し、2027年12月31日までのコラム1税率との調整関係を適用するとともに、2028年1月1日からの条項(3)税率への移行を見据えて対応を計画します。
  • Annex IVに基づき金属含有量がない/不十分であることにより除外となるかを確認し、複数金属を含む製品に対して関税率が重複して適用されないこと(税率は一度のみ)を担保します。
  • 連邦官報で公表される派生製品の随時追加の告示を継続的にモニタリングし、金属製容器等のリスクが高い派生製品について影響を評価のうえ、HTSUS分類およびコンプライアンス手続きを更新します。
  • アルミニウム、鉄鋼、銅について、製錬(smelt)、溶解(melt)、注湯(pour)、鋳造(cast)の原産地資料を強固に整備・維持し、引下げ税率の主張を裏付けるとともに、CBPからの照会に対応できるようにします(サプライヤー証明および契約条項との整合を含む)。
  • 対象貨物を特権外国貨物としてFTZに搬入する運用へ見直すとともに、貿易協定パートナー産品で金属含有量要件およびAD/CVD要件を満たす場合に限定される製造戻し税の適用可能性を評価し、FTZ/戻し税戦略を調整します。
  • サプライチェーンにおけるロシア産アルミニウムの原産、製錬・鋳造地をスクリーニングし、200%関税が意図せず適用される事態を防止します。
  • 社内システムおよび通関業者への指示を更新し、Annex I-A/I-B/IIIの税率ロジック、引下げ税率の適用条件、除外ルールを取り込むとともに、不正積替え・過少申告に関するCBPの執行強化に備えます。


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※所属・役職は記事公開当時のものです