米国第232条に基づく布告、特定の半導体に対し25%の関税を賦課

  • 2026年1月15日午前12時1分(米国東部標準時)より、米国の技術サプライチェーン構築に寄与しない輸入品に限定して、特定の高性能コンピューターチップおよび指定派生製品に25%の従価税率の関税が適用される。これには一定の最終用途によって例外の適用がある。
  • これらの関税について、払戻しは認められない。対象製品を外国貿易地域へ搬入する場合は、特権外国ステータスでなければならない。
  • この布告は、他の第232条の措置に優先し、対象製品は特定の相互関税および国境関連関税を免除される。
  • 影響を受ける輸入者は、自社のサプライチェーンと関税分類を評価し、今後発表されるコンプライアンスおよび業務上の変更に関する当局のガイダンスについて、常に最新情報を入手する必要がある。


エクゼクティブサマリー

2026年1月14日、ドナルド・トランプ米大統領は、「半導体、半導体製造装置、およびその派生製品の米国への輸入調整」と題する布告(以下、「本布告」)を発表しました。その結果、2026年1月15日午前12時1分(米国東部標準時)より、米国の技術サプライチェーン構築に寄与しない輸入品に限定して、特定の高性能コンピューターチップおよび指定派生製品に25%の従価税率の関税が適用されることとなりました。これには、一定の最終用途によって例外が適用されます。


背景

2025年12月22日、米国商務長官は貿易拡大法第232条に基づき、半導体、半導体製造装置およびその派生製品の輸入が、米国の国家安全保障を損なう恐れがある程度の物量で流入していると結論づけました。調査では、需要に対する国内生産能力の不足、外国サプライチェーンへの依存、防衛システムおよび重要インフラ分野における半導体の重要性、ならびに米国の技術サプライチェーン構築に寄与しない半導体輸入が継続した場合に、人工知能領域に深刻な影響を与えることに結びつくリスクが浮き彫りとなりました。これらに対し商務省は、

(1)特定の人工知能関連チップに対して即時かつ限定的な関税を課し、その交渉後に、

(2)より幅広く大幅な関税と国内投資促進のための関税相殺プログラムを組み合わせる、

という2段階のアプローチを提言しました。


新たな布告

大統領は商務省の調査結果に同意し、今後の交渉と対象を絞った関税を組み合わせた計画を採用する布告を発令しました。布告の付属書に対象製品として記載された特定の先進コンピューターチップおよび派生製品には、2026年1月15日午前12時1分(米国東部標準時)以降の輸入に対し、即時に25%の従価税率の関税が適用されます。

特段の記載がない限り、その他の関税、手数料、徴収金および課徴金に加えて、25%の関税が課されます。対象となる米国関税率表(HTSUS)コードは8471.50、8471.80、8473.30ですが、対象輸入品はロジック集積回路、またはロジック集積回路を含む製品に限定され、以下の技術的パラメータのいずれかを満たすものに限られます。

  • 総処理性能(TPP)が14,000超17,500未満であること、かつダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)の総帯域幅が4,500ギガバイト超5,000ギガバイト未満であること
  • TPPが20,800超21,100未満であること、かつDRAMの総帯域幅が5,800ギガバイト超6,200ギガバイト未満であること

なお、以下の用途で輸入される対象製品には本関税は適用されません。

  • 米国データセンターでの使用
  • 米国内での修理または交換
  • 米国内での研究開発
  • 米国スタートアップ企業による使用
  • 米国におけるデータセンター以外の消費者向け用途
  • 米国におけるデータセンター以外の民間産業向け用途
  • 米国公共部門向け用途
  • その他、商務長官が米国の技術サプライチェーン強化または半導体派生製品の国内製造能力向上に寄与すると判断する用途


施行、優先順位および貿易の円滑化

HTSUSおよび施行

商務省は、米国国際貿易委員会および米国税関国境警備局(CBP)と協議の上、官報に通知を掲載して、HTSUSの修正、最終用途証明書その他の行政措置を導入し、本布告を施行することができます。


他の関税に対する優先順位

製品が本布告および他の第232条に関する布告の対象となる場合、本布告が優先されます。本布告第(3)項で対象とされ関税を課される製品は、大統領令14257号(相互関税)、14193号(北部国境における違法薬物)、14194号(南部国境情勢)に基づく関税の対象とはなりません。


関税払戻しおよび外国貿易地域(FTZ)について

本布告に基づき課される関税について、関税の払戻しは適用されません。発効日以降に米国のFTZに搬入される対象製品(「国内品扱い」の品目を除く)は、特権外国ステータスで搬入されなければならず、消費目的で搬入される場合は、HTSUS分類に基づき課税されます。


モニタリングおよび調整の可能性

商務省は、半導体、半導体製造装置およびその派生製品の輸入を継続的にモニターし、必要に応じて大統領に追加措置を提言します。2026年7月1日までに、商務省は米国データセンター向け半導体の市場動向に関する最新情報を提供しますが、これは関税の修正が適切かどうかを判断するための情報となります。本布告では、交渉の結果によっては、大統領が国内製造を促進するため、より広範で大幅な関税および付随する関税相殺プログラムの導入を検討する可能性にも言及しています。


企業への影響

半導体輸入者は、付属書で特定された製品への影響を評価し、最終用途の例外規定に照らしてサプライチェーンを確認する必要があります。関税の課税は貨物の用途に依存するため、企業は例外用途(データセンター、研究開発、スタートアップ、消費者、民間産業、公共部門向け用途など)に使用されることを立証するための文書化と認証プロセスを準備することが推奨されます。FTZの運営者は、本布告の対象製品を確実に特権外国ステータスで搬入するように手続きを調整し、消費目的での輸入時の関税支払いに備える必要があります。払戻しが認められないため、輸入者は25%の関税を考慮した調達、在庫、および契約価格の見直しを検討しなければなりません。半導体エコシステムに関わる企業は、義務付けられた90日間の交渉進捗状況、HTSUSの修正や最終用途証明要件を定める官報の公示、ならびに2026年7月1日に行われる、データセンター向け半導体に焦点を当てた市場動向に関する最新情報を注視すべきです。


検討すべき対策

影響を受ける企業は、以下の対策を検討する必要があります。

  • 付属書における対象製品の定義に該当する可能性のあるSKUを特定し、2026年1月15日以降の輸入における関税への影響を定量化する。
  • 特定の免除対象となる資格を証明するため、最終用途証明書および記録管理プロセスを構築する。また、調達および物流を調整して例外用途と非例外用途を区分する。
  • 対象製品を確実に特権外国ステータスで通関するように、FTZの運用を見直し、在庫管理を適宜更新する。
  • 免除が適用されない場合に発生する25%関税に対応するために、契約および価格設定を見直し、代替調達先や生産戦略の検討を進める。
  • 関税範囲を拡大する可能性のある、HTSUSの変更、最終用途証明書の仕組み、および進行中の交渉に関して、今後の官報の公示を注視する。


お問い合わせ先

EY税理士法人

大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです