米国、アルミニウム、鉄鋼、銅に関する通商拡大法第232条関税制度を追加調整する布告を発表、引下げ税率の対象を拡大し基準を改定

  • 2026年6月1日、米国大統領は、アルミニウム、鉄鋼、銅およびそれらの派生製品の輸入に適用される通商拡大法第232条に基づく関税制度をさらに修正する布告を発出した。本措置は、布告9704号、9705号、10962号および11021号に基づく従前の措置を踏まえたものである。
  • 本布告は、Annex IIIの適用対象を拡大し、一時的に引き下げられた15%の税率を、農業機器および特定の住宅用暖房・換気・空調(HVAC)システムや部品を含む派生製品に対して適用する。また、移動式産業機器に対して一時的な関税措置の変更を導入し、これらの製品について2027年12月31日まで適用される取扱いの改定を定めている。
  • さらに本布告は、2027年12月31日までの措置として、Annex I-Cに基づく新たな取扱いを導入し、原則25%の税率を適用する一方、特定の貿易相手国に対しては修正された軽減税率を定めている。
  • また、関税の対象範囲を拡大してアルミニウム製平版印刷プレートやスチールラックを追加するとともに、米国原産の金属「のみを用いて」製造されたと認定されるための基準を95%から85%に引き下げた。

エグゼクティブサマリー

2026年6月1日、米国大統領は「米国に輸入されるアルミニウム、鉄鋼および銅の関税制度の追加調整」と題する布告を発出しました。これは、1962年通商拡大法第232条に基づき適用されるアルミニウム、鉄鋼、銅およびそれらの派生製品の関税制度を修正するものです。

本措置は、布告11021号によって導入された、製品の特性に応じて50%、25%および15%の段階的関税率を適用する直近の枠組みを含む、従前の布告に基づく関税率および対象製品の範囲を修正するものです。

布告11021号に基づく枠組みの詳細については、2026年4月3日付EY Global Tax Alert「US presidential proclamation modifies Section 232 tariffs on steel, aluminum, copper and their derivative products」および2026年6月9日付EY Japan税務ニュース「米国大統領布告により、鉄鋼、アルミニウム、銅およびそれらの派生製品に係る通商拡大法第232条関税を改正」をご参照ください。

主な変更点には、15%の引下げ税率が適用される対象製品の拡大、特定の輸入製品に対する関税取扱いの見直し、対象となる派生製品の追加および優遇措置に求められる米国原産含有率の基準の引下げが含まれます。

これらの変更は、国家安全保障上の目的と、下流産業およびサプライチェーンに影響を及ぼす経済面での考慮事項とのバランスを取ることを目的としています。

背景

米国は2018年以降、第232条に基づき鉄鋼およびアルミニウムの輸入に関税を課しており、その後銅製品にも対象が拡大されました。これは、これらの輸入が国家安全保障を損なうおそれがあるとの判断を踏まえたものです。

2026年4月の布告11021号では、次のように関税体系が大幅に修正されました。

  • 一次金属製品に対する関税率50%の適用
  • ほぼ全ての派生製品に対する関税率25%の適用
  • 一部の産業機械および設備に対する一時的な関税率15%の適用

2026年6月1日の布告は、特に金属製の設備および機械に依存する国内産業への影響に対処するため、米国商務長官の勧告を踏まえて上記の枠組みをさらに調整しています。

改正の範囲

本布告は、一時的に引き下げられている15%従価税率の対象となる派生製品の範囲を拡大し、以下を追加しました。

  • 農業機器
  • 特定の住宅用HVACシステムおよび部品

また、本布告では、産業活動や製造における役割を踏まえ、移動式産業設備および機械に対する一時的な関税の改正も導入されています。

関税対象範囲の拡大

本布告は、関税回避を防止するため、アルミニウム製平版印刷プレートやスチールラックを含む新たな製品を派生製品の関税制度の対象に追加しています。

原産地基準の改定

本布告は、製品が米国原産の金属「のみを用いて」製造されたと認定されるための基準を全重量の95%から85%に引き下げています。

この変更は、アルミニウム、鉄鋼、銅の含有率に適用され、下流製品における米国製金属の使用拡大を促進することを目的としています。

Annex I-Cに基づく関税枠組みおよび国別取扱い

一般的な関税体系(2027年12月31日まで)

2026年6月8日以降に輸入される対象貨物については、より低い税率が適用されない限り、改定後の枠組みに基づきアルミニウムおよび鉄鋼製品に対して25%の関税が課せられます。


国別取扱い

アルゼンチン、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、日本、韓国、リヒテンシュタイン、スイス、台湾、英国またはEU加盟国を原産地とする製品

関税率は米国関税率表(HTSUS)コラム1の税率に基づき調整され、最低実効関税率は15%となる。

米国原産金属の含有率が85%以上(鉄鋼の場合は溶解・注湯された国、アルミニウムの場合は製錬および鋳造された国に基づく)を満たす製品

10%の引下げ税率を適用する。


米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく取扱い

  • カナダおよびメキシコからのUSMCA適格製品については、総価値から米国原産部分の価値を差し引いた額と定義される非米国原産部分にのみ、25%の関税が適用される。
  • Annex IVに定めるとおり、実効関税率は15%の従価税を下回らないものとする。
  • 商務長官は、本計算を目的として「米国原産部分」を決定するための米国税関国境警備局(CBP)ガイダンスを発行する。


2028年以降の枠組み

2028年1月1日より、追加の改正がない限り、関税率は布告11021号に基づく水準に戻る。

企業への影響

本布告により、運用面およびコンプライアンス面において以下の検討事項が生じます。

  • 適用される関税率および対象製品の変更によって、特定の輸入品については関税が増加する一方、他の輸入品については関税が減少する可能性がある。
  • 新たに対象となる製品(スチールラックなど)や拡大された派生製品区分については、慎重な分類の見直しが必要となる。
  • 改定された85%基準およびUSMCA特有の規則により、米国原産部分の算定方法の更新が求められる。
  • 企業は、より低い関税率の適用を受けるため、または全体的な関税負担を軽減するために、調達戦略の調整が必要となる可能性がある。
  • 原産地申告および含有率の算定に対する監視強化により、コンプライアンスおよび執行リスクが高まる可能性がある。

主な日程

  • 2026年6月1日:布告の発出
  • 2026年6月8日:発効日
  • 2027年12月31日:一時的措置の終了
  • 2028年1月1日:従前の関税体系への復帰

企業が検討すべき対策

これらの変更の影響を受ける企業は、以下の点を検討する必要があります。

  • 製品分類を評価し、新たに対象となる派生製品を特定する。
  • 15%区分および米国原産基準を含む関税率引下げの適用可能性を評価する。
  • 85%基準に対応するため、原産地および含有率の算定方法を更新する。
  • 改定された関税率による財務的影響を試算し、関税対策を検討する。
  • 米国原産部分を決定し、文書化するためのUSMCA認定プロセスおよび裏付け資料を見直す。
  • USMCAのレビュープロセスの最新情報を把握するなど、商務省およびCBPによる今後のガイダンスの動向を注視する。


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EY税理士法人

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※所属・役職は記事公開当時のものです