米国、関税の執行を強化し、輸入者要件・開示義務・罰則を拡大する大統領令を発令

  • 2026年6月3日、米国のトランプ大統領は、米国の関税執行制度の抜本的な改革を指示する大統領令を発令した。
  • 本大統領令は、登録輸入者に対する要件を強化するものであり、保証金の引上げまたは米国内における有形資産の最低保有水準の設定、開示義務の拡大、適格性基準の厳格化などを内容とする。加えて、輸入に係る認証要件およびサプライチェーン情報の開示要件の強化を定めている。
  • 外国法人などの非居住者輸入に対して新たな制限が課され、略式申告の制限、年間(継続)保証金の使用制限、正式申告における追加条件などが課される。
  • 本大統領令は執行措置および罰則の強化を指示しており、多くの執行事案について、査定罰金額の50%以上を最低罰金額とすること、違約金に最低額を設定すること、および再犯者に対する減免を廃止することなどを求めている。

エグゼクティブサマリー

2026年6月3日、米国のトランプ大統領は、「関税の執行強化」と題する大統領令を発令しました。本大統領令は、関税評価、品目分類の誤り、関税回避といった関税の執行政策に関するトランプ政権の懸念を背景としています。同大統領令は、国土安全保障省(DHS)および米国税関国境警備局(CBP)に対し、透明性の向上、輸入者等のコンプライアンスの強化、ならびに関税の完全徴収の確保に向けた改革の実施を指示しています。

非居住者輸入に対する要件強化

非居住者輸入には、コンプライアンス面および財務面で大幅に要件が厳格化されました。具体的には、米国内に資産を保有すること、より高額な保証金の提供、保有構造や事業運営に関する詳細な情報開示などが求められます。また、非居住者輸入の場合には、少額貨物の略式申告を利用することが禁止されます。正式申告については、年間(継続)保証金の使用制限を含む、より厳格な保証規則が適用されます。また、テロ防止のための税関産業界提携プログラム(C-TPAT)の認証を受けるか、C-TPATの認証を受けた通関業者を通じた輸入申告が求められる可能性があります。さらに、CBPと「良好な状態(good standing)」を維持しなければならず、コンプライアンス違反がある場合には、米国向け輸入そのものが認められなくなる可能性があります。

輸入に関する開示および認証要件

DHS長官(以下、「長官」)は、本大統領令の政策目的に沿って、より厳格な輸入開示・認証要件を整備するよう指示されています。これらの要件には、CBPが関係当局と協議の上で特定する、制裁や密輸その他のサプライチェーン管理に関する法的義務の順守を証明する認証が含まれる見込みです。

加えて、輸入者は、製品識別情報、主要仕様、そしてCBPのリスク評価および執行活動に必要なその他のデータなど、輸入品およびそのサプライチェーンに関するより広範な情報の提出が求められます。さらに、外国納税者番号、CBPが採用する国際事業者識別番号、ならびに輸入者およびその事業運営に関するその他の情報の開示も想定されています。

また長官は、外国の輸出者が米国向け輸出に先立ち自国の税関当局へ提出することを義務付けられている全ての書類または情報について、米国へも提出することを義務付ける要件の整備を、90日以内に行うよう指示されています。

執行および罰則

本大統領令は、CBPに対し、過少申告、品目分類の誤り、違法な積替輸送、強制労働が関与する輸入などのリスク分野全般にわたって執行活動を強化するよう指示しています。また、調査、違約金請求、罰則といった執行措置を拡大するとともに、通関業者やその他の仲介業者に対する監視も強化しています。

長官は90日以内に、罰則の執行をさらに強化するため、減免基準を改定しなければなりません。本大統領令は、「米国の国家安全保障に重大な影響を及ぼす例外的事情がない限り、査定罰金額の50%以上を最低罰金額とすること、違約金について最低額を設定すること、および再犯者に対する減免の廃止を本改定に含める」と規定しています。

差押えおよび処分手続の効率化

長官は、放棄手続の負担軽減、高リスク貨物に対する保証金の引上げ、第三者による処分の容認などを通じて、差押えおよび処分手続を強化することが求められています。

企業への影響

これらの措置により、企業のコンプライアンス負担と執行リスクはいずれも高まることとなり、コストの増加、輸入者要件の厳格化、データ報告義務の拡大に直面する可能性があります。そこで、統制を強化し、文書管理を改善するとともに、サプライチェーンの運用を見直すことが必要となります。

主なスケジュール

  • 45日以内
    DHSは、さらなる関税の執行強化に向けた立法措置に関する提言を求められており、これにより将来的に追加の法改正が行われる可能性があります。加えてDHSは、提案した各種措置の有効性を評価する年次の実施報告書を提出することが求められており、その結果は、今後の政策調整や執行措置の見直しに反映される可能性があります。
  • 90日以内
    長官は、輸入に関する開示および認証要件の強化、罰則の減免基準の見直し、ならびに不適合貨物の差押えおよび処分効率化に向けた措置の導入を求められています。
  • 180日以内
    長官は、輸入者の適格性に影響を及ぼす重要な規制変更の実施を求められています。具体的には、保証金要件の見直し、データ提出および開示義務の拡大、登録輸入者に係る手続の更新、ならびに輸入者、通関業者および関連者に対する審査手続の強化などが含まれています。

検討すべき対策

各社の状況に応じて企業が検討すべき対応策としては、以下が挙げられます。

  • 法人組織の構成や実質的支配者を含め、登録輸入者の体制について見直し、想定される適格性要件、保証金基準、および「良好な状態(good standing)」の基準との整合性を確保します。これは特に輸入者について、外国法人の関与や複雑な保有構造が存在する場合に重要です。
  • 現在の保証金の水準、財務上の保証手段、または米国内資産が、今後想定される最低要件を満たすかを評価するとともに、保証金コストの上昇や通関手続の変更に備えます。
  • データ収集体制、システムおよび報告機能を評価して、詳細なサプライチェーン情報、製品仕様、ならびに海外サプライヤーに求められる上流の輸出書類など、範囲が拡大した開示情報を確実に収集・提出できるようにします。
  • 品目分類、関税評価、原産地判定、強制労働に関するデューデリジェンスを含む関税に関するコンプライアンス手続について内部レビューを実施し、当局の調査強化に先立って、不備を洗い出し、統制を強化します。
  • 文書管理および調査対応体制を強化し、厳格化された認証要件の順守を確実にするとともに、減免機会の縮小や最低罰金基準の引上げを踏まえ、罰則リスクの低減を図ります。
  • 通関業者、フォワーダーその他の仲介業者との関係を見直し、各事業者が適切なデューデリジェンスを実施しているかを確認するとともに、コンプライアンス違反に伴う潜在的な法的責任を含め、強化される執行要件に十分対応可能な体制を事業者が整備しているかを検証します。
  • 輸入者の適格性審査、開示要件および執行実務の変更を含むCBPによる今後の規則制定、ガイダンスおよび実施スケジュールの動向を注視するとともに、必要に応じて関与することで、将来のコンプライアンス義務を予測し、これに対応する準備を進めます。


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