米国税関国境警備局、IEEPA関税に関する裁判所命令を受け、還付および清算対応について説明

  • 2026年3月6日に提出された宣誓供述書において、米国税関国境警備局(CBP)の貿易プログラム担当エグゼクティブディレクターは、米国国際貿易裁判所(CIT)が検討する際の参考として、輸入品の即時清算および再清算を「国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税(以下、IEEPA関税)を考慮せずに」実施することが運用上不可能な理由を詳細に説明するとともに、CBPが45日以内に導入を目指す新たな米国電子通関システム(ACE)による還付プロセスについて詳述した。
  • IEEPAに基づく還付規模は前例のないものであり、33万以上の輸入者がIEEPA関税を伴う5,300万件超の申告を行い、およそ2,010万件が未清算のまま残っている。
  • 多数の申告はACEで毎週自動清算され、略式申告は関税納付時に清算される。
  • CBPは、輸入者レベルでの還付金計算(利息を含む)、集計、認証、米国財務省による支払いを自動化する新機能を構築する計画であり、手動処理と比較してCBP職員の作業時間を約400万時間削減できると見込んでいる。
  • 輸入者は申告レベルのデータを準備し、確実に電子還付を受け取れるよう設定しておく必要がある。CBPは新しいプロセスに関する申告ガイダンスを発行する予定である。
  • 清算最終確定済み申告の取扱いには依然として不明な点があり、CITの判断は上級審で争われる可能性がある。


エクゼクティブサマリー

CITが2026年3月4日にAtmus Filtration, Inc. 対米国政府訴訟(Ct.No.26-01259)において下した命令を受け、CBPの貿易プログラム担当エグゼクティブディレクターは、2026年3月6日、CITに対し宣誓供述書を提出しました。本供述書では、IEEPAに基づく関税の有無にかかわらず、IEEPA関税の対象として申告された未清算の全輸入申告を清算すること、および清算済みではあるものの最終確定に至っていない輸入申告について、同じくIEEPA関税の有無にかかわらず再清算する場合の運用上の課題について説明しました。

こうした課題を踏まえ、CBPはIEEPA関税還付プロセスに関連する運用上の課題に対処可能な新たなACEの機能および関連プロセスのフローを提案しました。

CITの命令に関する詳細は、2026年3月5日付EY Global Tax Alert「US Court of International Trade orders CBP to liquidate and reliquidate entries without IEEPA duties」および2026年3月23日付EY Japan税務ニュース「米国国際貿易裁判所、米国税関国境警備局に対しIEEPA関税を適用しない輸入申告の清算および再清算を命令:詳細版」をご参照ください。


CBPが指摘した規模とタイミングの課題

CBPは提出した供述書において、IEEPA関税関連の還付を標準手続きで処理することは運用上困難であると述べています。2026年3月4日時点で、IEEPA関税が課された申告は5,300万件を超え、約2,010万件が未清算のまま残っており、総徴収税額は約1,660億米ドルに上ることに加え、数十万件の正式な輸入申告が毎週ACEで自動清算されていることから、CBPは、ダンピング防止税および相殺関税(AD/CVD)を含むその他の法的義務と矛盾する清算が行われるリスクを抱えており、IEEPA対象申告のみを他の申告から切り離すことはできないとしています。

加えて、CBPは、IEEPAの影響を受ける申告の約63%が略式申告であると指摘しています。CBPは2026年2月24日に略式申告でのIEEPA関税に係る預託金の受領を停止したものの、同日以前に提出された約400万件の申告が未清算のままであり、3月の納付期日に清算されることになっています。CBPの宣誓供述書によれば、2025年12月4日までに清算された1,500万件を超える輸入申告は、2026年3月4日時点ですでにCBPによる90日間の任意再清算期間を過ぎており、さらに6万件を超える申告については、同日に再清算可能期間が終了しています。

IEEPAの対象となる金額を特定することは、多くの輸入者が関税率表(HTS)の単一の品目番号内で複数の関税種別をまとめていたことでさらに複雑化しており、品目単位での手動調整が必要です。CBPの説明によれば、ACEの一括更新は1回の送信につき1万品目に制限されていますが、更新が必要な品目は16億件以上に上り、異常値がある場合は個別に確認する必要があります。

利息の支払いも作業を複雑にします。なぜなら、預託金や還付金の期間が複数の日付にまたがる場合、利息計算を手作業で行う必要があることが多く、また各還付について、回避できないシステム上の必要性からCBPの現場業務局と財務局の双方による認証が必要となります。

宣誓供述書ではさらに、2026年2月6日以降義務付けられている電子的な還付処理にも課題があると指摘しています。IEEPA関税を支払った輸入者33万566社のうち、必要な電子還付手続きの設定を完了しているのはわずか2万1,423社にとどまっており、2,897社に対する7,700件の還付処理を行うことができない状況です。

5,300万件を超える還付処理に、1件あたり約5分を要すると仮定すると、400万時間を超える職員の作業時間が必要になるとCBPは見積もっており、これにより、重要な歳入保護および国家安全保障業務から人員が大幅に割かれる可能性があります。


CBPが提案する新しいACE機能

本供述書では、CBPが約45日以内に導入を目指す新しいACE還付プロセスが説明されています。新プロセスの概要は以下のとおりです。

  • 輸入者は、IEEPA関税が支払われた輸入申告のリストを含む申告書をACEに提出する。
  • ACEは、申告書内の各輸入申告に対して一連の検証を行い、IEEPA関税を除いた納付すべき関税額(および適用利息)を自動的に再計算する。
  • CBPは申告書を検証し、可能な限り速やかに還付処理を行う。
  • ACEは、当該輸入申告を確定(清算または再清算)し、還付金と利息を輸入者および清算日ごとに自動的に集計する。
  • CBPは還付内容を認証する。
  • 米国財務省はIEEPA還付を電子的に実行する。

CBPは、申告プロセスおよび検証に関するガイダンスを発行し、不一致の審査と解決を可能にしつつ、輸入者による提出手続きを最小限に抑えることを目指しています。


企業への影響

提出された供述書は、CITによる検討に向けたCBPからの提案であり、CITがこの提案に対してどのような判断を下すか、今後の動向に注意が必要です。このプロセスがCITに受理された場合にも、還付は即時に行われるわけではありません。CBPが計算・検証・支払いを統合かつ自動化する新たなACEベースのプロセスを導入する必要があるためです。電子還付手続きへの登録は必須であり、輸入者が電子的設定を完了していない場合、還付はシステムに却下されます。

CBPが新たなプロセスを導入し、具体的な管理措置を発表するまで、正式な輸入申告の自動清算は週次スケジュールで継続され、略式申告は、関税の納付(例:月次一括納税)をもって清算されます。

特に、単一の品目番号の行に複数の関税種別が報告されている場合、CBPがIEEPAに基づく金額を分離し、利息を正しく計算するためには、正確な申告データが不可欠となります。


検討すべき対策

各社の状況に応じて企業が取るべき対応策としては、以下が挙げられます。

  • 最新の裁判所命令を常に把握し、CITの最終判断を注視する。
  • 還付金の支払いがシステムに却下されないよう、まだ完了していない場合は直ちにCBPの電子還付設定を完了する。銀行情報およびポータルのアカウント設定の詳細を確認し、受取プロセスをテストする。
  • IEEPA関税が含まれる申告について、エントリーサマリー番号、行詳細(米国関税表、関税種別、預託日/金額)を抽出し、影響を受ける申告のマスターリストを作成する。ステータス(未清算、清算済みで180日の異議申立期間内、清算済みかつ最終確定済み)ごとに区分する。
  • IEEPAの金額が関税表第1-97章の行において基本関税やその他の措置と合算されている場合は、IEEPAの納付額を特定するために、行単位の照合表を準備する。CBPによる検証に備え、裏付けとなる作業書類を保管する。
  • CBPがガイダンスを公表次第、輸入申告書を提出する社内担当者を指定し、ACE申告書の提出を準備する通関業者と連携の上、データの整合性を確保し確実に期限内に提出する。
  • データ照合、ACE申告、および還付金の照合を管理するため、部門横断的なチーム(貿易コンプライアンス、税務、通関、財務、IT)を編成する。監査証跡の整備および発生する可能性のある異常値について、CBPと解決に向けた計画を策定する。


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