米国国際貿易裁判所、米国税関国境警備局に対しIEEPA関税を適用しない輸入申告の清算および再清算を命令:詳細版

  • 2026年3月4日、米国国際貿易裁判所(CIT)は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税(以下、IEEPA関税)の対象として申告された未清算の全輸入申告について、IEEPA関税を適用せずに清算するよう米国税関国境警備局(CBP)に命じた。
  • CITはまた、清算が確定していない申告については同様の基準で再清算を行うことを指示した。
  • CITは、IEEPA関税の対象となった全ての輸入者は、米連邦最高裁が下したLearning Resources判決による救済を受ける権利を有すると述べた。また、CITはこの領域における排他的管轄権を有しており、その範囲は米国全土に及ぶため、統一的な救済措置が可能である旨を説明した。
  • 具体的な還付メカニズムに関する議論は継続中である。


エクゼクティブサマリー

2026年3月4日、CITは、Atmus Filtration, Inc. 対米国政府訴訟(Ct.No.26-01259、以下、Atmus Filtration訴訟)において、IEEPA関税の対象として申告された未清算の全輸入申告について、CBPに対し、IEEPA関税を適用せずに清算するよう命じました。CITはまた、清算が最終確定していない申告については同様の取扱いで再清算することを指示しました。

Atmus Filtration訴訟では、原告である輸入者が、IEEPAに基づき発令された複数の大統領令により賦課された関税に異議を申し立て、救済措置として、必要に応じて納付済関税の還付および輸入申告の再清算などを求めました。輸入申告の清算は通常、通関日から314日後に実施され、この時点でCBPが輸入品に対する関税の最終算定額を通知します。これにより、正式な異議申し立てがなされない限り(清算実施後180日)、その算定額は最終確定します。

CITは、原告が行った輸入申告は、IEEPA関税の対象となる数百万件の輸入申告の一部であり、こうしたIEEPA関税は、Learning Resources訴訟(2026年2月20日)において、連邦最高裁によって違法と判断されたと指摘しました。2026年3月4日、CITは、IEEPA関税の対象となった全ての輸入者が、Learning Resources判決による救済を受ける権利を有すると述べました。

最高裁判決に関する詳細は、2026年2月20日付EY Global Tax Alert「US Supreme Court rules IEEPA does not authorize presidents to impose tariffs」および2026年3月3日付EY Japan税務ニュース「米国最高裁判所、IEEPAに基づく関税を違憲とする判決」をご参照ください。


CITの命令

CITは、IEEPA関税の対象として申告された未清算の全輸入申告について、CBPに対し、IEEPAに基づく関税を適用せずに清算するよう明確に命じました。

さらに、CITは、すでに清算済みであっても、清算がまだ最終確定していない全ての申告について、IEEPAに基づく関税を適用せずに再清算を行うよう命じました。


適用範囲および管轄権

CITは、連邦最高裁がトランプ対CASA, Inc. 訴訟で示した、「裁判所にユニバーサル・インジャンクション(米国全土での差止命令)を出す権限はない」という判断に、トランプ政権が依拠する可能性が高い点について言及し、当該判断は本件には適用されない理由を説明しました。CITは、自らが1980年関税裁判所法(Customs Courts Act of 1980)に基づいて設立されたこと、合衆国法典第28編第1581条に定められた全米を対象とする地理的管轄権を有すること、そして本件のような請求について排他的管轄権を有することを強調しました。この点については、最近のLearning Resources訴訟において最高裁が認めています。CITは、輸入関連の係争を統一的かつ迅速に解決するという議会の意図、そして関税は米国全体で統一されたものでなければならないという憲法上の要件を強調しました。

本命令はまた、主席判事が、「IEEPA関税の還付に関する訴訟を担当する裁判官はリチャード・イートン判事のみである」と示したことにも言及しており、これによりCIT内部で相反する判断が下されるリスクは排除されています。


企業への影響

本命令は、IEEPA関税の影響を受けた輸入申告に救済措置を提供するもので、CBPに対して、清算時にIEEPA関税適用を除外するとともに、清算がまだ最終確定していない輸入申告については再清算を行うよう指示しています。輸入者は、CBPによって今後実施措置が行われることを想定し、社内の財務記録を整合させる準備をしておく必要があります。本命令は、清算がすでに最終確定している輸入申告については言及していません。


検討すべき対策

企業が自社の状況に応じて検討すべき対応策には、以下が挙げられます。

  • IEEPA関税が適用されている申告書を一覧化し、そのステータス(未清算、清算済み、また清算済みの場合は異議申し立て〈Protest〉が可能な清算後180日以内かどうか)を判断する。
  • 輸入申告データおよび関連書類を分析し、還付可能額を定量化ならびに追跡をして、社内の財務記録と整合させる。
  • CBPが本命令(CIT命令)を実施するための運用ガイダンスやスケジュールを注視し、通関業者と協力して輸入申告に関する指示の更新に備える。
  • 清算が最終確定している申告については、本命令の適用範囲を踏まえ、可能な選択肢について法律顧問に相談する。


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