EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
事業承継対策の1つとして、相続税負担への対応策があります。その手法として、①相続税評価額を引き下げる、②少数株主に株式を分散させる、③事業承継税制を活用するなど、さまざまな手法が挙げられます。
このうち、相続税評価額を引き下げる手法は、財産評価基本通達に規定されている取引相場のない株式の評価を引き下げる手法のことをいいます。そして、同通達に規定されている類似業種比準価額が時価純資産価額に比べて安く評価されるだけでなく、利益金額や簿価純資産価額に着目した調整により、大幅に相続税評価額を引き下げやすいという問題がありました。
そのような背景もあり、国税庁において、2026年4月20日から取引相場のない株式の評価に関する有識者会議が開催され、2028年1月1日の施行に向けた改正が検討されるようになりました。
本稿執筆時点では、第3回まで開催されていますが、配布資料および議事要旨を見ると、類似業種比準方式の廃止とその代替的な手法の導入も選択肢に入っているように思われます。そして、相続税評価額の引上げにより非上場会社の事業承継が困難になる事態を回避するために、事業承継税制の見直しを含めた検討がなされているように思われます。事業承継税制の見直しについては、中小企業庁において別途有識者会議が開かれています。
もし、類似業種比準方式が廃止されたとすると、現在行われている相続税評価額を引き下げる対策のほとんどが無意味なものとなってしまうため、非上場会社としては、新たな事業承継対策を検討する必要が生じます。
2028年1月1日以降の贈与に対しては特例事業承継税制が適用されないため、一般事業承継税制が適用されることになります。そのため、中小企業の親族内承継に関する検討会において、事業承継税制の見直しが検討されています。
2025年12月12日に公表された中小企業の親族内承継に関する検討会中間とりまとめでは、さまざまな提言がなされていますが、特筆すべきは、「こういった企業行動の歪みをもたらす誘因を是正し、前向きな支出へのインセンティブを高める観点から、過去議論が行われたように、評価減制度の可能性を追求することや、例えば、10年間事業を継続すれば免除となる等の工夫ができないか検討してはどうか。ただし、これらの方向性を検討する場合においては、実効性のある課税逃れ防止措置や上限の設定等の制度運営に係る適切な措置も併せて検討することが必要と考えられることに加え、本税制が地域経済の活力維持や雇用確保を目的に、贈与・相続後の事業継続等を要件として納税猶予方式を採用している趣旨にも留意が必要である」と記載されている点です。すなわち、現行の事業承継税制は、次の後継者に事業を承継するまで事業を継続する必要があり、そうでない場合には、猶予税額が確定してしまうリスクがあるという問題がありました。もし、10年間事業を継続すれば、次の後継者に事業を承継しなくても猶予税額が免除となるのであれば、事業承継税制が使いやすくなるため、非上場会社の事業承継は円滑に進むことが予想されます。
このように、2028年1月1日以降は相続税評価額が引き上げられる方向で見直しされる可能性がある一方で、事業承継税制についても、非上場会社の事業承継を阻害しないような見直しの議論が進んでいくと思われます。本稿執筆時点では、有識者会議の議論が終わっていないことから、どのような改正になるのか明らかでない部分も多いですが、少なくとも事業承継対策の手法は大きく変わる可能性が高いということは言えるかと思います。
※本稿の記述は、2026年6月12日現在の法令等に依ります。
EY税理士法人
佐藤 信祐 アソシエートパートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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