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IFRS第16号「リース」の適用準備を進める過程で、特定の地下空間に、例えば、石油パイプラインを敷設する権利(地下権)をどのように会計処理すべきかという論点が生じた。
2019年3月、IFRS解釈指針委員会(以下、「委員会」という)は、所定の地下空間は物理的に別個のものであり、有形であるとする暫定アジェンダ決定(TAD)を公表した。したがって、そうした契約にはリースが含まれており、IFRS第16号が適用されることになる。
本TADの影響を受ける企業は、この論点の動向を注視し、所定の地下空間が特定された資産に該当するか否かの評価にどのような影響が生じるかを判断する必要がある。
石油・ガス、鉱山、電気通信及び電力やユーティリティなど一定の産業セクターでは、企業がケーブル、配管及びネットワークを地下に敷設するための契約を締結することは一般的である。
例えば、パイプライン運営者(顧客)は、対価との交換で原油を輸送するために農地の地下にパイプラインを敷設するための契約を農家と締結する場合がある。契約は、パイプラインが設置される地下空間の場所(軌道、広さ、深さなど)を特定している。パイプライン運営者以外にパイプラインへのアクセスが許可されることはないが、農家(土地所有者)は農作業やその他の目的で、パイプラインの上の地表部分を使用することができる。パイプライン運営者は、パイプラインの検査、修繕及び維持管理作業を行い、必要に応じて破損個所を入れ替える権利を有する。
ここで、こうした地下権にIFRS第16号もしくはIAS第38号「無形資産」のいずれを適用するのかが論点となる。
委員会は、契約における特定の地下空間は有形であることに留意した。したがって、契約にリースが含まれる場合、IFRS第16号が適用されることになる。そのため、企業はまず、契約にIFRS第16号に定義されるリースが含まれるかどうかを検討する。契約にリースが含まれていない場合には、企業は他のどのIFRS基準が適用されるのかを検討する。
委員会は契約がリースを含むかどうかを評価するにあたって、特定された地下空間は、軌道、広さ及び深さが契約にて特定されており、物理的に別個のものであると考えた。地表の特定された空間領域が物理的に別個のものであるのと同様に、特定された地下空間も物理的に別個のものであることから、空間が地下にあることをもって、特定された資産であるかどうかの評価に影響が生じることはない。土地所有者は指定された地下空間を他の地下空間と入れ替える権利を有していないことから、委員会は、指定された地下空間はIFRS第16号に記述されている特定された資産に該当すると結論付けた。
また委員会は、顧客が使用期間全体を通じて特定された地下空間の使用から生じる経済的便益のほとんどすべてを享受する権利を有しており、使用期間全体にわたり特定された地下空間を独占的に使用することに留意した。
顧客はまた、使用期間全体を通じて特定された地下空間の使用を指図する権利も有している。特定された地下空間がどのように、何の目的で使用されるのかは、契約において事前に決定されている。顧客は、検査、修繕及び維持管理作業を実施する権利を有することで特定の地下空間を稼働させる権利を有するとともに、使用期間を通じて特定の地下空間の使用に関するすべての決定を行うことができる。
したがって、委員会は、提出された要望書に記述されていた契約はIFRS第16号に定義されるリースを含み、IFRS第16号に従って会計処理すると結論付けた。
TADのコメント募集期限は2019年5月15日であり、その後の会議において最終化される予定である。
本TADの影響を受ける企業は、この論点の動向を注視し、所定の地下空間が特定された資産に該当するか否かの評価にどのような影響が生じるかを判断する必要がある。
上述した事例における地下空間は、土地の残りの部分とは物理的に別個のものであり、有形であるとする委員会の見解は、特定された空間に対する権利を含むその他の状況において、契約がIFRS第16号に定められるリースであるのか、またはリースを含むのかどうかの判断に影響を及ぼす可能性がある。
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