EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部
公認会計士 加藤 圭介
公認会計士 大竹 勇輝
公認会計士 久保 慎悟
公認会計士 桑澤 明
公認会計士 浦田 千賀子
品質管理本部 会計監理部において、会計処理及び開示に関して相談を受ける業務、並びに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供等の業務に従事している。
表1 2026年3月期から原則適用となる会計基準等及び適用時期の一覧
略称 | 会計基準等 | 適用時期 |
包括利益の表示に関する改正 | 包括利益の表示に関する会計基準 株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針 | 原則適用:2025年4月1日以後最初に開始する年度の期首から適用 |
特別法人事業税の取扱いに関する改正 | 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準 税効果会計に係る会計基準の適用指針 | 原則適用:2025年4月1日以後最初に開始する年度の期首から適用 |
種類株式の取扱いに関する改正 | 種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い | 原則適用:2025年4月1日以後最初に開始する年度の期首以後取得する種類株式について適用 |
<表1>の会計基準等は、企業会計基準委員会(以下、ASBJ)による2024年年次改善プロジェクトにより改正が行われたものであり、主な改正内容は<表2>のとおりです。
表2 年次改善プロジェクトによる主な改正内容
略称 | 改正内容 | 改正影響が想定される状況の例 |
包括利益の表示に関する改正 | その他の包括利益の取扱いに関して、これまでに公表された複数の会計基準等で使用されている用語の一部が、連結財務諸表上の取扱いに関する記載に使用されるべき表現となっていなかったため、表現の見直しが行われた | 連結株主資本等変動計算書の株主資本以外の各項目について、主な変動事由及び金額を表示する方法を採用している場合 |
特別法人事業税の取扱いに関する改正 | 個別の定めがなかった特別法人事業税(基準法人所得割)について、事業税(所得割)と同様の取扱いを行う(法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれる)ことが明確化された | 法人特別事業税(基準法人所得割)について、事業税(所得割)と異なる取扱いをしていた場合 |
種類株式の取扱いに関する改正 | 会社法施行後に残っていた商法の条文参照を修正し、旧商法で認められていなかった種類の株式にも適用対象が拡大された | 改正前において明示的に種類株式とされていたもの以外の株式について、明示的な種類株式と異なる取扱いをしていた場合 |
2026年3月期決算において早期適用できる会計基準等及びその適用開始時期は<表3>のとおりです。なお、2026年3月期決算において早期適用せず、原則適用を予定する場合には、重要性が乏しいものを除き、「未適用の会計基準等に関する注記」が求められます。
<表3>の2025年改正金融商品実務指針については、「Ⅳ VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いの見直し(金融商品実務指針の改正)」にて詳細を解説します。
表3 2026年3月期において早期適用できる会計基準及び適用時期の一覧
略称 | 会計基準等 | 適用時期 |
2025年改正金融商品実務指針 | 金融商品会計に関する実務指針(ベンチャーキャピタル〈VC〉ファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いの見直し)(Ⅳ VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いの見直し〈金融商品実務指針の改正〉にて後述) | 原則適用:2026年4月1日以後開始する年度の期首から適用 |
リース会計基準等 | リースに関する会計基準等 | 原則適用:2027年4月1日以後開始する年度の期首から適用 |
2025年12月19日の金融政策決定会合にて、日銀は政策金利を0.75%へ引き上げる決定をしていますが、株価は上昇、為替はさらなる円安が進む動きとなり、依然として金利、株価、為替の動きを注視すべき状況が継続しています。また近年、物価の上昇に伴い、人件費の引上げ傾向もみられるようになっています。
このような経済環境が会計処理へ与える影響について、想定される主な論点を<表4>に挙げています。
表4 相場変動、物価・労務費上昇による会計処理への影響
項目 | 指標等 | 会計処理への影響 |
外貨建有価証券 | 為替変動 | 外貨建有価証券の減損 |
賞与引当金 | 労務費上昇 | 見積りへの反映 |
退職給付 | 金利変動 | 割引率、長期期待運用収益率の見直しの要否 |
労務費上昇 | 賃上げの予想昇給率への影響 退職給付水準改訂の影響 | |
金融商品時価上昇 | 退職給付信託一部返還 | |
固定資産減損 | 物価・労務費上昇 | 将来キャッシュ・フロー見積りへの反映 |
為替変動 | 将来キャッシュ・フローの換算に使用する為替相場 | |
資産除去債務 | 物価・労務費上昇 | 見直しの要否、見積りへのインフレ率の反映 |
全般 | 政府の介入と関税 | 事業計画への影響、正味売却価額への影響、減損のグルーピング、兆候への影響 |
売買目的有価証券以外の有価証券について、時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下の事実が生じている場合には、評価額の引下げが必要とされています(移管指針第2号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」〈以下、外貨建取引実務指針〉18項)。この「時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下」の判断は外貨建で行うこととされています(外貨建取引実務指針19項)。例えば、円安の状況下で円貨建では著しい下落がない場合であっても、外貨建で著しい下落がある場合には評価の切下げを行う必要がありますので、ご留意ください。
なお、この場合には、外国通貨による時価又は実質価額を決算時の為替相場により円換算した額が評価額となります。
昨今の労務費上昇の影響を受け、給与規程や賞与規程の見直しを行う企業が増えると考えられます。賞与引当金の見積計算を行う際に過年度の情報をそのまま横引きするものではなく、直近の情報に基づき行われているかに留意が必要となります。例えば、賞与引当金の算定基礎となる基本給や月数などの情報が古いままとなっていないかという点や、稟議や組合の妥結のタイミングと賞与計算の基本データへの反映のタイミングが適切なのかという点などが重要となります。併せて、賞与見合いの社会保険料の反映が漏れていないかにもご留意ください。
また、上記のような規程の見直しがない場合でも、引当額と実績が乖離しやすい状況となっていますので、引当差異が出ないよう精緻な見積計算が必要となる点に改めてご留意ください。
①金利変動の影響
退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定するとされており(企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」〈以下、退職給付会計基準〉20項〈注6〉)、期末における安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しますので、各事業年度において割引率を見直す必要があります。ただし、重要な変動が生じていない場合には見直さないことも認められており、見直しには重要性基準を用いることも可能です。
重要性基準は、少なくとも、前期末に用いた割引率により算定した場合の退職給付債務と比較して、期末の割引率により計算した退職給付債務が10%以上変動すると推定されるときに、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすものとして期末の割引率を用いて退職給付債務を再計算するというものです(企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」〈以下、退職給付適用指針〉30項)。実務においては、この10%以上変動した場合に退職給付債務を再計算するとの重要性基準を適用している企業も多いと考えられますが、その場合は割引率の変更による退職給付債務の再計算の結果、数理計算上の差異が多額に生じる可能性があります。
また、割引率の変更に重要性基準を採用する場合は、毎期継続して同様の基準により判断する必要があります。ただし、重要性基準はあくまでも容認規定であることから、容認されている方法である重要性基準から原則的な方法である毎期割引率を見直す方法への変更は、より正確な財務報告を行う変更であるため、合理的なものとして認められると考えられます。当該変更は、会計処理の対象となる会計事象等の重要性が増したことに伴う本来の会計処理の原則及び手続への変更が、会計方針の変更にあたらないとされている考え方に準じて(企業会計基準適用指針第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」〈以下、企業会計基準適用指針第24号〉8項〈1〉)、会計方針の変更には該当しないと考えられます。
一方で、毎期割引率を見直す方法から重要性基準を用いる方法に変更することは、原則的な方法から容認される方法への変更であり、より正確な財務報告を行うことに逆行する変更となるため、認められないと考えられます(ASBJ「企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び同適用指針の解説」〈注4〉※1)。10%の重要性基準を用いている場合、金利が上昇している局面では、退職給付債務の再計算によって将来的に多額の数理計算上の差異が発生することを見越して、変動率が10%以上となっていなくとも期末前に割引率を見直すことの可否を検討することがあるかもしれませんが、前述の通り、10%以上の変動が推定されていないにもかかわらず割引率を変更して退職給付債務を再計算した場合、翌期以降は重要性基準を用いることはできず、毎期割引率を見直す必要があると考えられますので留意が必要です。
併せて、翌期首に見直す長期期待運用収益率について、市場環境に応じて変更が必要となることから、翌期の退職給付費用、予算への影響に留意すべき点にもご注意ください。
※1 企業会計基準委員会「企業会計基準第26号『退職給付に関する会計基準』及び同適用指針の解説」、www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/manual_06_manual.pdf(2026年3月5日アクセス)参照
②労務費上昇の影響
退職給付見込額は将来の給与水準を見込んで計算されますが、賃金引上げ等によるベースアップや給与制度の変更が生じた場合、予想昇給率を適切なものに見直す必要があります(退職給付会計基準〈注5〉)。特に、計算基礎率の見積りと実績に差異がある場合や、計算基礎率を変更した場合には数理計算上の差異として扱われることとなります。
また、退職給付水準の改訂があった場合には、改訂にともなう給付水準の上昇が制度上の退職給付水準の引上げにつながる場合に、過去勤務費用が発生する可能性があります。一方で、単なるベースアップなどによる給与増加については、制度改定には該当しませんのでご留意ください。なお、過去勤務費用は数理計算上の差異のように、当期の発生額を翌年度から償却する会計処理を選択することは認められていませんので(退職給付会計基準〈注7〉)、この点も併せてご留意ください。
③株価上昇の影響
近年、株価上昇や政策保有株式の保有削減の動きにより、退職給付信託の一部を返還するケースが増えています。ただし、返還には厳格な条件があり、まずは、年金資産が<表5>の基準を満たしている必要があります。
表5 年金資産が満たすべき要件
(1) 退職給付以外に使用できないこと
(2) 事業主及び事業主の債権者から法的に分離されていること
(3) 積立超過分を除き、事業主への返還、事業主からの解約・目的外の払出し等が禁止されていること
(4) 資産を事業主の資産と交換できないこと
退職給付信託の場合は、<表6>の要件(退職給付適用指針18項)を満たした場合、上記の<表5>の年金資産の要件を満たすとされています(退職給付適用指針106項)。
表6 退職給付信託目的の年金資産が満たすべき要件
(1) 当該信託が退職給付に充てられるものであることが退職金規程等により確認できること
(2) 当該信託は信託財産を退職給付に充てることに限定した他益信託であること
(3) 当該信託は事業主から法的に分離されており、信託財産の事業主への返還及び事業主による受益者に対する詐害的な行為が禁止されていること
(4) 信託財産の管理・運用・処分については、受託者が信託契約に基づいて行うこと
このため、信託財産の返還は、将来の予測できる一定期間において積立超過の状態が継続し、当該積立超過分において退職給付に使用される見込みがないことを合理的に予測でき、また、事業主の受益者に対する詐害的な行為に該当しないこと等が必要となっています(退職給付適用指針106項)。
なお、基準において、事業主の意思等により積立超過額の返還が行われた場合には、返還されなかった信託財産は、退職給付会計基準7項及び退職給付適用指針18項の要件を満たさないことになるため、返還後は、返還されなかった信託財産も事業主の資産として会計処理することになる旨が示されています。
したがって、株価上昇によって退職給付信託の状況に影響が及ぼされるものの、返還には多くの制約があり、会計処理においても慎重な判断が求められる点にご留意ください。
減損損失を認識するかどうかの判定に際して見積られる将来キャッシュ・フロー及び使用価値の算定において見積られる将来キャッシュ・フローは、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積ることとされています(「固定資産の減損に係る会計基準」二4.〈1〉、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」〈以下、減損適用指針〉36項)。
企業は、取締役会等の承認を得た中長期計画の前提となった数値を、経営環境などの企業の外部要因に関する情報や企業が用いている内部の情報(例えば、予算やその修正資料、業績評価の基礎データ、売上見込みなど。以下同じ。)と整合的に修正し、各資産又は資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して、将来キャッシュ・フローを見積ることとされています(減損適用指針36項〈1〉)。また、中長期計画以降の期間においては、最新のインフレ率や賃金上昇率などの情報が適切に織り込まれているかに留意が必要です。
また、将来キャッシュ・フローが外貨建で見積られるケースもありますが、この場合、算定された外貨建の将来キャッシュ・フローについては、将来の為替相場を予想するのではなく、あくまでも減損損失の判定時の為替相場により円換算の上、減損損失を認識するかどうかを判定するために見積られる割引前将来キャッシュ・フローに含める旨が定められている点にもご留意ください(減損適用指針20項)。
会計上の見積りの変更とは、「新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することをいう」とされています(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」4項〈7〉)。
昨今の物価高の影響を受け、資産除去債務の見積りの変更の事例が生じています。例えば、多店舗展開している小売業で、店舗を借りており、契約で原状回復義務がある場合に、もともと過去の原状回復工事の実績に基づいた工事単価を使って資産除去債務を算定していたケースにおいて、昨今の工事価格の上昇により、工事の実績を鑑み、見積りの変更を行ったというケースなどです。
ここで、資産除去債務の算定の基礎となる割引前将来キャッシュ・フローについて、企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する適用指針」(以下、資産除去債務適用指針)3項では、<表7>の情報を基礎として、自己の支出見積りとしての有形固定資産の除去に要する割引前キャッシュ・フローを見積るとされていますが、その際にインフレ率や見積値から乖離するリスクを勘案する旨が定められています。
表7 資産除去債務適用指針3項に定められている将来キャッシュ・フローの見積り基礎
(1) 対象となる有形固定資産の除去に必要な平均的な処理作業に対する価格の見積り
(2) 対象となる有形固定資産を取得した際に、取引価額から控除された当該資産に係る除去費用の算定の基礎となった数値
(3) 過去において類似の資産について発生した除去費用の実績
(4) 当該有形固定資産への投資の意思決定を行う際に見積られた除去費用
(5) 有形固定資産の除去に係る用役(除去サービス)を行う業者など第三者からの情報
直近では労務費、物価上昇の影響を受けており、資産除去債務の当初の見積り時点から除去に係る工事価格等の金額が乖離している可能性も考えられますので、資産除去債務の見積りの変更や、新規の資産除去債務を計上する際には、この点に留意が必要です。
なお、資産除去債務の場合、退職給付と異なり割引率の見直しは行わない点にも留意が必要です(企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」11項)。
近年の各国政府による関税の賦課等、政府の介入による地政学的な状況も決算に対して影響を及ぼす可能性があります。当該地政学的な状況は非常に流動的であり、最新の動向を常に把握することが重要となります。<表8>では、考えられる影響のうち、主要なものを例示しています。
表8 関税の賦課から生じる会計論点
影響 | 具体例 |
将来キャッシュ・フローの見積り | 固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性等の検討の基礎となる企業の中長期経営計画に関して、関税の賦課を考慮する必要がある場合がある |
商製品の販売価格 | 関税の賦課により商製品の販売価格の引下げが行われ、正味売却価額が取得原価より下落する場合がある |
投資計画 | 関税の賦課等により生産拠点の変更等が意思決定され、関連する固定資産の減損の兆候の識別や、耐用年数の短縮が必要となる場合がある |
従前、企業が投資する組合等への出資に関して、当該組合等の構成資産に含まれる市場価格のない株式については、取得原価で評価することとされ、時価評価することは認められていませんでしたが、財務諸表の透明性の向上等を理由として、VCファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式については、時価評価するべきとの意見がありました。
これを受けて、2025年3月11日に、2025年改正金融商品実務指針が公表され、一定の要件を満たした組合等への出資に関しては、当該組合等の構成資産に含まれる市場価格のない株式を時価評価した上で、当該組合等への出資の会計処理の基礎とすることができる定めが取り入れられました。
なお、2025年改正金融商品実務指針は、2026年4月1日以後開始する年度の期首から原則適用されるため、3月決算会社を前提とした場合、2026年3月期に改正の影響は及びません。ただし、2025年4月1日以後開始する年度の期首から早期適用することができるとされているため、早期適用した場合には、2026年3月期に改正の影響が及びます。
2025年改正金融商品実務指針における組合等への出資に関する会計処理を簡潔に整理すると以下のとおりです。
(1) | 対象となる組合等の範囲 | 以下のいずれも満たすこと ① 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること ② 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること |
(2) | 出資者である企業の会計処理 | (1)の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができる この場合、評価差額の持分相当額は「その他有価証券評価差額金」として純資産の部に計上する |
(3) | 適用する組合等の選択に関する方針 | 組合等への出資者である企業は、2025年改正金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に適用対象かどうか決定する(なお、出資後に取りやめることはできない) |
(4) | 減損処理 | 2025年改正金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産である市場価格のない株式については、市場価格のない株式等の減損処理に関する定めに代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定めに従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする |
以下では、それぞれの会計処理について詳細を説明します。
2025年改正金融商品実務指針では、対象となる組合等の範囲に関して、以下の要件を設けています(2025年改正金融商品実務指針132-2項)。
① 組合等の運営者※2は出資された財産の運用を業としている者であること
② 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること
※2 「組合等の運営者」とは、わが国におけるVCファンドの多くで用いられている投資事業有限責任組合の形態においては、無限責任組合員が該当すると考えられる。また、他の法形態に基づく組合等については、投資事業有限責任組合における無限責任組合員と類似の業務を執行する者が該当すると考えられる。
VCファンドに相当する組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられたため、VCファンドに相当する組合等を直接的に定義することは行わないこととされた一方で、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するためには、市場価格のない株式の評価者に十分な能力が備わっている必要があると考えられたことから、組合等の運営者が市場価格のない株式に対する投資を業として行っている者に限定すべきとして上記①の要件が設けられています。また、わが国の実務における市場価格のない株式の時価評価に関する体制の整備状況についての懸念に関して、組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していれば、当該時価評価に関する体制の整備がなされていることが期待でき、時価評価に関する懸念を一定程度緩和できると考えられたことから、上記②の要件が設けられています。
なお、時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に基づいた時価で評価する場合のほか、国際財務報告基準(IFRS)第13号「公正価値測定」又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会〈FASB〉による会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれると考えられます(2025年改正金融商品実務指針308-3項)。
(1)の①及び②の要件を満たす組合等への出資に関しては、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができます。そして、この場合の評価差額の持分相当額は、その他有価証券に関する会計処理など、他の現行基準との内的整合性を重視する観点から、当期の損益ではなく、純資産の部に「その他有価証券評価差額金」として計上することになります(2025年改正金融商品実務指針132-2項、308-4項、<図1>参照)。
図1 組合等への出資の取扱いのイメージ
(1)の範囲に含まれるすべての組合等を適用対象とするか、組合等の単位で選択できるようにするかについては、組合等への出資者である企業が2025年改正金融商品実務指針132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に132-2項の定めの適用対象かどうか決定します。また、132-2項の定めを適用することとした組合等への出資の会計処理については、企業の意思により自由に132-2項の定めの適用を終了することは会計処理の透明性や比較可能性の観点から適切ではないと考えられることから、出資後に取りやめることはできないこととされています(2025年改正金融商品実務指針132-3項、308-5項)。
2025年改正金融商品実務指針132-2項の定めを適用する場合における組合等の構成資産である市場価格のない株式の減損処理については、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価評価していることを踏まえ、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(2025年改正金融商品実務指針92項)に代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(2025年改正金融商品実務指針91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることになります(2025年改正金融商品実務指針132-4項、308-6項)。
企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下、時価算定適用指針)24-16項は、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については時価の注記を要しないこととし、その場合、注記していない旨及び時価算定適用指針24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとしています。
2025年改正金融商品実務指針132-2項の定めを適用する場合には、これらの注記に併せて、当該定めを適用した影響を財務諸表利用者が理解できるように、以下の事項を注記することになります(2025年改正金融商品実務指針132-5項、308-7項)。
※3 時価算定適用指針24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額の内数に該当すると考えられる。
なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しません。
2025年改正金融商品実務指針では、適用初年度の期首時点において、組合等への出資者である企業が定めた方針に基づいて132-2項の定めを適用する組合等を決定することとされています。そして、会計処理の遡及適用は求めず、適用初年度の期首から将来にわたって適用することとし、適用後の当期純利益等への影響が適切となるように、以下の経過措置を設けています(2025年改正金融商品実務指針205-2項)。
2025年3月31日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第13号。以下、令和7年度税制改正)において、外国子会社合算税制が改正されています。当該外国子会社合算税制の令和7年度税制改正が、26年3月期決算の税効果会計に影響を与える可能性があると考えられます。
外国子会社合算税制とは、内国法人が低税率の外国関係会社に、自社の所得を移転することにより日本における法人税負担を不当に軽減することを防ぐため、一定の要件に該当する外国関係会社の所得について、内国法人の所得と合算して日本で課税する制度になります。外国子会社合算税制の適用対象となった場合、外国関係会社の所得について一定の計算の結果算定された課税対象金額等を、外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から2カ月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の益金として算入されることになります。
令和7年度税制改正では、課税対象金額等の合算時期について、当該外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から4カ月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することへと見直されています。
当該令和7年度税制改正の適用時期については、<表9>のとおりとされています。
表9 外国子会社合算税制に関する令和7年度税制改正の適用時期
原則適用 | 内国法人(親会社)の2025年4月1日以後開始する事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額等(その外国関係会社の同年2月1日以後に終了する事業年度に係るものに限る)について適用する |
早期適用 | 内国法人(親会社)の2025年4月1日前に開始した事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額等(その外国関係会社の2024年12月1日から2025年1月31日までの間に終了する事業年度に係るものに限る)について、早期適用することができる |
このため、3月決算会社である親会社の外国子会社合算税制の令和7年度税制改正については、この26年3月期から原則適用となります。ここで、例えば、内国法人(親会社)が3月決算、外国関係会社(在外子会社)が12月決算の場合の合算時期は<図2>のとおりとなります。
図2 令和7年度税制改正を踏まえた合算時期
前述のとおり、親会社が3月決算であり、在外子会社が12月決算である場合には、従来とは異なり、対象となる在外子会社の所得見合いである課税対象金額等は、2027年3月期の親会社の所得に合算されることとなります。このため、2026年3月期の親会社の連結財務諸表上、対象となる在外子会社の所得見合いである課税対象金額等について、税効果会計の適用を検討することが必要になると考えられます。
2026年2月20日に公表された開示府令の改正の概要は以下のとおりです。
主な項目 | 概要 | 適用開始時期(3月決算の場合) |
サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)適用義務付け |
(時価総額5千億円以上1兆円未満:2029年3月31日以後終了年度〈金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」報告※4で公表〉) | 2027年3月期以降(詳細は左記参照) |
人的資本開示制度見直し |
| 2026年3月期 |
総会前開示への対応 |
|
※4 2026年3月5日アクセス
本稿ではこれらの項目のうち、当期の有価証券報告書の開示に影響し得る人的資本開示制度の見直し及び総会前開示への対応について、解説を行います。
人的資本に関する開示の拡充のために、以下の改正が提案されています。
有価証券報告書の「従業員の状況等」において、「人材戦略に関する基本方針」という項目を新たに設け、以下を記載することとされました。
「【従業員の状況】」は、これまで有価証券報告書の「第1【企業の概況】」の1項目でしたが、「第4【提出会社の状況】」に「5【従業員の状況等】」を新設し、その中の項目として「(2)【従業員の状況】」を記載することとされています。また、記載内容について以下の改正がされています。
(2)に記載のとおり、「【従業員の状況】」の記載箇所を移動した上で、使用人その他の従業員のみを対象としたストックオプション制度や役員・従業員株式所有制度を導入している場合に「【従業員の状況】」に記載できるようにする改正がされています。これを図にしたものが<図3>です。
図3 従業員の状況の記載項目の集約
使用人等のみに対して発行する新株予約権に関する開示について、以下の改正がされています。
有価証券報告書の開示負担を軽減し、株主総会前の有価証券報告書の開示を促進する観点から、総会前開示を行う場合であって、有価証券報告書の記載事項等が定時株主総会又はその直後に開催される取締役会の決議事項となっているときにおける当該決議事項等の概要の記載を原則不要とする改正が提案されています。省略可能となる具体的な項目は以下のとおりです。
ただし、主要な経営指標等の推移、配当政策、(連結)株主資本等変動計算書注記における配当に関する記載など、剰余金の配当に関するもの及び自己株式の取得に関するものは省略が認められず、引き続き開示が求められる点に留意が必要です。
注)図表はいずれもEY作成
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