地域との関係性を深めるにはどうしたらよいのか? ~移住、二拠点居住促進に向けた考え方

地域との関係性を深めるにはどうしたらよいのか? ~移住、二拠点居住促進に向けた考え方



本レポートは、全国47都道府県の18~69歳、約1万人を対象に実施したウェブアンケート結果をもとに、観光をきっかけとした人の流れが、地域との継続的な関わりや定住につながる可能性を分析し、地域政策の再構築に向けた視点を提示するものです。

観光などを通じて地域を訪れる「交流人口」、地域活動や仕事などを通じて継続的に関わる「関係人口」、そして最終的に「二拠点居住」や「移住」といった定住に至るプロセスを分析しました。



要点

  • 二拠点居住への関心は3割、最も高い傾向にあるのは若年層。
  • 観光体験が定住意向につながる、住民票移転の可能性は5割弱。
  • 移住、二拠点居住政策の実現に向けてはツーリズム政策としての一貫性が重要。


このページは2025年11月19日に公開したレポートを記事として掲載したものです。
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民間の有識者で構成されていた人口戦略会議の分析によると、消滅可能性自治体(若年女性人口が2020年から2050年までの30年間で50%以上減少する自治体)は744だといわれています。2014年の前回分析結果の896から若干の改善は見られるものの、全1729自治体の実に43%が該当するという衝撃的な数字となっています1。

 

東京一極集中の是正に向けて、国は、第三次国土形成計画(令和5年7月28日閣議決定)において、「地方への人の流れの創出・拡大、新たな地方・田園回帰の定着」をうたい、2024年には「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律(広活法)」(平成十九年法律第52号)を改正し、移住のみならず、二拠点居住促進に対する政策支援を実施しています。

 

定住という観点では、移住、そして二拠点居住が大きな意味を持ちますが、そこに至るまでの過程として、観光等を通じて人が一時的にその土地を訪れる「交流人口」、移住や観光等とは異なり、継続的・多様な形で当該地域と関わる「関係人口」の創出も議論されてきたところです。

 

本レポートでは、地域との関わりをいかにして持ち、二拠点居住、最終的に移住といった形に結びつけていくためには何が必要なのか、それぞれの行動に違いがあるのかをウェブアンケート調査をもとに分析を試み、最終的に地域が潤い、継続していくための道を模索していきます。


オンラインサーベイ概要

実施期間:2025年9月19~下旬

方法:調査会社によるウェブアンケート

対象:全国47都道府県在住の18~69歳の1万人。内訳として、各都道府県別、かつ、年代別(年代別で5つに区分:18~29歳/30~39歳/40~49歳/50~59歳/60~69歳)各40名を対象。ただし、鳥取県の18~29歳は35名となっています。


交流人口を増やすためには何が必要か

旅の目的としては、「その土地のおいしいものを食べたい・飲みたい」といった「食」を筆頭に、「日常から離れてリラックスしたい」、「自然や景観を楽しみたい」といったことが旅の目的として、75%以上を占めています。

Q1. 旅行する際の主な目的・求めていることは何ですか?(1位回答)

旅の目的の順位は変わらないものの、子どもを持つ家庭である方が、やや「日常から離れてリラックスしたい」という目的が高くなっています。日常の子育てからの解放や子どもを日常とは異なる環境で楽しませたいといった思いが背景にあるのかもしれません。

Q1 . 旅行する際の主な目的・求めていることは何ですか?(1位回答)※「婚姻あり」回答者のみ

また、年代が上がるほど、「日常から離れてリラックスしたい」「自然や景観を楽しみたい」の割合が高まり、一方年代が下がるほど、「新しい発見をしたい」「買い物を楽しみたい」「記念日等思い出を作りたい」「自分自身を見つめ直したい」といった目的の割合が高くなっている点が特徴的です。若年層を地域に誘致する1つのきっかけとして考えていく必要がありそうです。

Q1. 旅行する際の主な目的・求めていることは何ですか?(1位回答)

関係人口を増やすためには何が必要か

地域と訪問者の関係性を高めるという観点からは、まず、どれくらいの頻度で同じ地域を訪問するかという視点があります。同一地域を複数回訪問したことがある人は実に6割弱存在しており、特に大都市(ここでは政令指定都市)に居住している人ほど、同一地域に複数回訪問している傾向にあります。

Q2. 旅行する際、同じ場所を複数回訪問したことがありますか?

また、子どもを持つ世帯や年収が高くなる世帯ほど、同一地域への訪問頻度が高まっている点も特徴的といえます。

Q2. 旅行する際、同じ場所を複数回訪問したことがありますか?※「婚姻あり」回答者のみ
Q2. 旅行する際、同じ場所を複数回訪問したことがありますか?(世帯収入別)

では、どのような理由で同一地域を再訪しているのでしょうか。主な理由としては、「自分自身がリラックスできる環境がある」「行きたいと思えるコミュニティ・場がある」が75%以上を占め、次いで「地域への愛着」となっています。

特に、年代が上がるほど、この「地域への愛着」が再訪理由となっている点は面白い結果となっています。若年時に何度も訪問した結果、それが年を重ねるごとに「愛着」に変化した結果なのか、もしくは、何度も訪問する選択理由が「愛着」なのかは不明ですが、地域が旅行者にこうした印象を残すことが、頻度の高い訪問者獲得の1つのきっかけとなりそうです。

Q3. 同じ場所を複数回訪問することに必要なことは何ですか?(1位回答)
Q3. 同じ場所を複数回訪問することに必要なことは何ですか?(1位回答)

二拠点(または多拠点)生活者を増やすためには何が必要か?

冒頭で触れたように、近年、二拠点居住を推進する方針が展開され、各地でさまざまな施策が展開されています。

実際にどれくらいのニーズがあるのでしょうか。主たる居住場所以外に生活拠点を構え、複数拠点で「既に生活」、もしくは「過去に生活していた経験がある」人は8.7%、「興味・関心があり、今後実施予定」が3.0%、「興味・関心はあり、条件が許せば今後実施したい」が22.8%となっており、今後、複数拠点での生活の可能性がある割合は、30.8%となった。調査対象が異なり、単純比較はできないものの、国土交通省が過去に行ったアンケート調査結果2は、27.9%が関心層ということであり、本調査の28.3%3は若干の増加が見られます。いずれにせよ、現時点では3割程度が、既に二拠点生活を実施しているものも含めての市場規模と考えられます。小さくはない市場規模といえます。

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Q4. 主たる居住場所以外に生活拠点を構え、複数拠点で生活することに関心がありますか?

二拠点生活への関心は、年収が高くなるほど、「既に実施している」「実施していた」の割合が高く、関心も高くなる傾向にあります。

Q4. 主たる居住場所以外に生活拠点を構え、複数拠点で生活することに関心がありますか? (世帯収入別)

18~29歳代の若年層ほど、過去に実施していた割合が高く、また今後の意向を含めても最も関心が高くなっている点は、興味深い結果となりました。

Q4. 主たる居住場所以外に生活拠点を構え、複数拠点で生活することに関心がありますか?

二拠点生活もしくは多拠点で生活するにあたり、どのような場所を想定しているかというと、多くは「旅行先でとてもよかった場所」「これまで何度も訪問している場所」「旅行先とは関係なく、行ったことがない場所も対象」の順で、75%以上を占めていました。二拠点生活先の選定においても過去の旅行先の経験が4割強を占めており、いきなり二拠点生活の政策・施策を進めていくことも必要ではあるが、観光政策・施策の延長線上として、この二拠点・多拠点生活者を増加させていくという視点も重要といえるでしょう。

Q5. 二拠点・多拠点生活を検討する際、どのような場所を想定しますか?(1位回答)

子どもがいない世帯は、「行ったことがない場所も対象」「自分の故郷」を二拠点生活の場所として想定する傾向にあります。

また、若年世代であるほど、「旅行先でとてもよかった場所」である割合が高く、年代が上がるほど、「これまで何度も訪問している場所」の割合が高まっているのが特徴的です。先に見たように、年代が高くなるほど何度も訪問する理由として、「地域への愛着」と回答する割合が高かったが、こうした訪問頻度が高まることが、「地域への愛着」を高め、そして、二拠点生活への可能性を高める1つの要素となるかもしれません。

Q5. 二拠点・多拠点生活を検討する際、どのような場所を想定しますか?(1位回答)※「婚姻あり」回答者のみ
Q5. 二拠点・多拠点生活を検討する際、どのような場所を想定しますか?(1位回答)

二拠点生活を実施する場所を選定するにあたり、どのような点を重視しているのでしょうか。「自分がリラックスできる環境」が大半を占めますが、「現在居住地との距離(90分圏内)」という距離の制約も二拠点生活先の選定には大きな要素を占めていることが確認できます。次いで、「日常生活のしやすさ」「その地域への愛着」と続いています。この後に、再度、「現在居住地との距離」が二拠点生活の選定先の決定要素として挙げられている点は興味深いといえます。現在の居住地からの距離が120分圏内にこだわらないという回答も一定あるものの、90分圏内、120分圏内といったところが、二拠点生活を推進するターゲット市場として捉えるポイントの1つになるといえるのではないでしょうか。

Q6. 二拠点・多拠点生活を実施するにあたって、どのような点を重視しますか?(1位回答)

特に年代が若くなるほど、「現在居住地との距離(90分圏内)」を重視する割合が高まっており、ターゲットとする年代に応じて、施策を講じていく必要があるといえるでしょう。

Q6. 二拠点・多拠点生活を実施するにあたって、どのような点を重視しますか?(1位回答)

二拠点生活を推進する理由はさまざまですが、最終的には経済効果、地域での消費を期待したいところです。実際に、二拠点生活となった場合、どれくらいの時間を、主たる拠点以外で過ごすことになるのでしょうか。「25~50%未満」の時間を過ごす割合が最も高く、次いで「50~75%」を想定している割合が高くなっています。比較的多くの時間を二拠点生活先で過ごすことが予想されており、一定程度の消費が期待できるといえます。

また、若い世代の方が、二拠点居住という観点では、長い時間を過ごす可能性が示唆されており、地域への経済波及効果も含めて考えると、1つのターゲットといえるでしょう。

Q7. 複数拠点で生活するとなった場合、自宅(住民票があり、納税する場)以外の場での 時間の過ごし方の割合はどれくらいですか?
Q7. 複数拠点で生活するとなった場合、自宅(住民票があり、納税する場)以外の場での時間の過ごし方の割合はどれくらいですか?

主となる居住地以外での時間の使い方については、上記の通りですが、実際に住民票まで移すことはどこまで想定されているのでしょうか。住民票が移されれば、納税の観点からは、その地域への収入が高まることになり、二拠点生活ではあるものの、移住と同じ効果が期待できると考えられます。

アンケートによれば、二拠点居住関心層のうち、「住民票を移すかどうか検討中」も含めた実に5割弱が、住民票を二拠点生活先に移す可能性があるという結果となりました。これは非常に興味深い結果といえます。二拠点居住先が現在居住している場所よりも居心地がよく、比較優位性を見いだすことができれば、居住地の主従逆転が望める結果が期待できることから、二拠点居住層のニーズをしっかりと酌み取り、最終的に住民票を移してもらうことをゴールとして設定することも1つの方向性といえます。

特に若年世代ほど住民票を移す可能性が高いことも、二拠点居住の推進にあたっては、総合的に考えていく必要があるといえます。

Q8SQ. 複数拠点で生活するとなった場合、住民票を自宅以外の拠点へ移しますか?
Q8SQ. 複数拠点で生活するとなった場合、住民票を自宅以外の拠点へ移しますか?

移住生活者を増やすためには何が必要か?

二拠点・複数拠点居住ではなく、移住を希望するニーズはどれくらいあるのでしょうか。既に「実施している」人はわずか1.8%ではあるものの、「興味・関心はあるが、まだ具体的には考えていない」までを含めると、3割が移住に関心がある結果となりました。二拠点居住に関心がある層とほぼ同じ規模での関心が確認できます。実際に、移住と二拠点居住はかなりクロスオーバーする人が関心を寄せており、その時の状況に応じて、移住なのか二拠点・複数拠点居住なのかを検討しているのかもしれません。

Q10. 複数拠点の生活ではなく、移住について興味・関心はありますか?
Q4「複数拠点生活に興味・関心あり」と回答した2,896件の内、2,124回答(73.3%)がQ10「移住を実施している、もしくは興味・関心あり」と回答

二拠点居住でも見た年収との関係性は、二拠点居住ほどきれいな傾向とはならないものの、年収が上がるにつれて、移住への興味・関心が高くなっており、その傾向は1,200万未満まできれいな相関となっています。特に、「子どもの成長や定年後等の生活に向けて興味・関心はある」層が多くなっており、状況を踏まえて移住への意思決定を促していくことが求められます。

また、二拠点居住同様、年代が若いほど移住への関心が高くなっている点も注目すべき特徴といえます。

Q10. 複数拠点の生活ではなく、移住について興味・関心はありますか? (世帯収入別)
Q10. 複数拠点の生活ではなく、移住について興味・関心はありますか?

移住先を検討するにあたり、想定する場所としては、「旅行先でとてもよかった場所」が全体の4割を占め、次いで「旅行先とは関係なく、行ったことがない場所も対象」「これまで何度も訪問している場所」「自分の故郷」となり、全体の9割弱となっています。

Q11. 移住先を検討する際、どのような場所を想定しますか?(1位回答)

二拠点居住先の選定のように、子どもを持つ世帯か否かによる違いは見られなかった一方、年齢別では、年代が若いほど「旅行先でよかった場所」の割合が高くなり、年代が高くなるほど、「旅行先とは関係なく、行ったことがない場所も対象」「これまで何度も訪問している場所」を移住先として想定する割合が高くなっています。二拠点居住と異なり、年代が高い層は、二拠点居住では地域への愛着のある「これまで何度も訪問している場所」を選択する人が場所選定の2番目の理由であった一方、移住となると、「旅行先とは関係なく、行ったことがない場所も対象」が選択肢として高まるという点は、ついのすみかとしては、これまでの旅行先のよい場所以外にも、「よりよい場所」を残りの人生を過ごす場所として求めていることがうかがえる結果となりました。

Q11. 移住先を検討する際、どのような場所を想定しますか?(1位回答)

では、移住を検討するにあたり重視している点は何かというと、「自分自身がリラックスできる環境がある」「日常生活(買い物、外食等)のしやすさ」、「その地域への愛着」「自分の仕事や価値観にプラスになる要素がある」となっています。

Q12. 移住をするにあたり重視することは何ですか?(1位回答)

年代別等の軸で見てもこの傾向に大きな傾向の違いはなく、強いて挙げるのであれば、年収が高くなるほど「自分自身がリラックスできる環境」を重視する傾向が弱まり、重視する点が分散する傾向にあるといえます。

Q12. 移住をするにあたり重視することは何ですか?(世帯収入別/1位回答)

移住や二拠点居住で重視する項目は、二拠点居住における距離の制約を除けば、重視する項目はほとんど同じであり、年代別でその差が出ない点は、移住の特徴といえます。一方で、年収が異なると、移住で重視する項目が若干異なってくる点は、移住政策を進めるにあたっては、検討する1つのポイントとなるかもしれません。


交流人口と関係人口を増やすために必要な考え方

コロナ禍で必要に迫られて実施が進んだのがリモートワークです。当時は自宅からのリモートワークに始まり、それが徐々に家以外の場所からでもリモートで仕事ができる形へと広がり始め、「ワーク・フロム・エニウェア」として、自宅以外の場所、旅先からも仕事ができるような形態が進みつつありました。各自治体は、「ワーケーション」という名のもと、各地にワーケーション施設の設置、コワーキングスペースの設置を進めてきました。2022年12月時点で、2,129施設あるといわれており4、現在ではおそらく2,500から3,000程度の施設が存在していると考えられます。

一方で、近年、オフィス回帰の影響もあり、オフィス以外から業務を実施するケースも縮小傾向にあるといわれています。

オフィス以外から仕事をすることが、さまざまな名称でこれまで推奨されてきましたが、実際に、自宅からのリモートワークではなく、旅先からリモートワークができる環境はどれくらいあるのでしょうか。

休暇期間に縛られず、自由に旅行することができれば、例えば観光地で課題となっている繁閑差の是正につながるわけですが、アンケート調査によると実際には1割程度しか、休暇期間や暦に縛られない旅ができていない結果となりました。

Q8. (あなたもしくはパートナーが)旅先でも仕事をすることができるので、 一般的な休暇期間や暦に縛られず旅行ができていますか?

18~29歳といった社会人として若手や60歳以上の定年に近い年代では、旅先でも仕事ができる環境にあるため、休暇期間や暦に縛られず旅ができていると回答している一方、年齢的に管理職が多くなると考えられる40~59歳にいくほど、旅先での仕事ができない環境にある可能性が高くなっています。

Q8. (あなたもしくはパートナーが)旅先でも仕事をすることができるので、 一般的な休暇期間や暦に縛られず旅行ができていますか?

旅先でリモートワークをする際に必要な条件としては、「会社の理解」が最も高くなっている点は重要であるといえます。業種業態によりリモートワークが困難な場合も想定されるものの、会社の理解が進むことで、リモートワークが推進される可能性は高まるといえそうです。オフィスで同僚との議論やチームワークによる作業の生産性向上はもちろん期待できるものの、環境を変えて仕事をすると、今までとは異なるアイデアや進め方がひらめくというケースもあり得ることから、働き方のフレキシビリティを今一度考えていく必要はありそうです。

Q9. 旅先でリモートワークをする際に必要な条件は何ですか?(1位回答)

同じ質問で、上位3つまでの回答を集計すると、「Wi-Fi環境」が最も高くなり、次いで「会社の理解」、「コワーキングスペースのような場所の充実」となっています。

「Wi-Fi環境」が総合的に一番求められている点は、どう捉えればよいのでしょうか。旅先ではおそらく多くのホテルでWi-Fi環境は整っていると考えられます。一方で、その環境を重視しているということは、ホテルの部屋ではない場所で、かつ、仕事が快適にできる空間を求めているということではないでしょうか。コワーキングスペースはそれに該当しますが、ちょっとした仕事をする際には、もしかしたらどこか敷居が高く見えるのかもしれません。

近年、ライフスタイル型のホテルとして、ホテルでありながらチェックインするフロントの設置がなく、カフェやバーと一体となったチェックインカウンターを構えるホテルも出てきています5。

完全に仕事がしやすいスペース、リラックスしながら仕事がしやすいスペース等、使い手の多様なニーズに合わせた環境を地域で整備していくことも、「会社の理解」が進むことが必要ではあるものの、交流人口、関係人口を増やしていく1つの方策かもしれません。

Q9. 旅先でリモートワークをする際に必要な条件は何ですか?(上位3位回答)

デジタルノマドをどう捉えるか

近年、デジタル技術を活用して場所に縛られずどこでも働くことができる 国際的なリモートワーカーを「デジタルノマド」といい、世界各国でこうした「場所にとらわれない自由な働き方」を求める旅人を誘致することが推進されています。

デジタルノマドは世界で約3,500万人いるといわれ、年間支出額は7,870億米ドル(約118兆円)にも上るといわれています6。単純計算で1人あたり337万円の支出ということになります。前回のレポートで高付加価値旅行者を見ました7が、仮に日本に誘致することができれば、かなりの高額消費の高付加価値旅行者ということになります。

デジタルノマドを誘致するにあたり、各国では「デジタルノマドビザ」を発給し、デジタルノマドの長期滞在を促しており、2025年6月6日現在、73カ国がデジタルノマドビザを発給しているといわれています8。日本でもデジタルノマドビザは発給されているものの、公式統計はなく、その実態は不明ですが、そこまで多くの利用はないと推察されます。その理由としては、デジタルノマドビザとしてのメリットが薄い点が指摘されています。

二拠点居住、移住といった観点は、主に国内居住者を対象に議論されてきました。一方で、これまで見てきたように、人々が二拠点居住、移住に至るまでには、交流人口、関係人口をいかに獲得していくかが、最終的な二拠点居住場所や移住場所の決定に影響を与えており、その文脈での対策が必要でした。

交流人口や関係人口を増加させていくにあたり、今はまだ旅先でのリモートワークが限定的である結果となっていますが、すべての業種といわないまでも、一定程度リモートワークを織り込んだ働き方を増加させていくためにも、コワーキングスペースやライフスタイル型のホテルの整備は、引き続き、重要といえます。

その1つの需要の受け皿として、デジタルノマドを含む、インバウンド旅行者のリモートワーク需要を取り込むことも方向性としては考えられます。

その際に、単に施設を整備するのではなく、その地域のさまざまな資源やヒトにアクセスすることができるメンバーが施設にいることで、その人を通じてデジタルノマドを含む外からのリモートワーカーが新たなインサイトが得られる環境が整備できます。そのことが、新たなコミュニティ形成につながり、当該地域がリモートワーカーの集う地域となる可能性が高まるのではないでしょうか9。

特にデジタルノマドは、その土地のコミュニティ、ヒトとのつながりを重視する傾向にあるようです。その地域に訪問してもらうには、その土地の価値をいかにして届けるかということに他なりません。こうした役割を担える人材が地域に存在し、コワーキングスペースはじめとした「場」の設計、提供することが重要となってくると考えられます。


地域との関係性を深めるための考え方

当初の仮説としては、移住はこれまでの交流人口、関係人口とは関係のない要素が強いのではないかと考えていましたが、アンケート結果を踏まえると仮説はやや異なっていました。二拠点居住についても同様です。最も重要視されているのは、「旅行先でとてもよかった場所」が移住先、二拠点居住先として想定される場所でした。このことは、単に移住政策、二拠点居住政策としてメリットを与える政策を実施するだけでは、政策効果は限定的ということを意味しています。交流人口、関係人口をいかに構築していくか、その延長線上に二拠点居住や移住が見えてくるということです。つまり、自分たちの地域にいかにして興味・関心を持ってもらい、実際に訪問してもらうか、観光政策と連動した戦略、施策が実行されなければ、思うような効果を上げづらいということに他なりません。

もちろん、ターゲットの選定により、その戦略や施策は異なります。アンケート結果からは、「これまで何度も訪問している場所」「旅行先とは関係なく、これまで行ったことのない場所も対象」といった回答も2割程度見られます。

いかにして、高頻度でその地域に足を運んでもらうか。「自分自身がリラックスできる環境がある」「行きたいと思えるコミュニティ・場がある」をその地域としてどのように構築できるか。もちろん、地域の独自性、唯一無二性が高まるほど、その地域が選択され、訪問される確率は高まると考えられます10。

移住や二拠点生活促進は「観光」とは別の文脈で語られることもしばしばありました。実際に多くの自治体ではこの2つは担当部署が別ということがよくあります。しかし、アンケート結果を踏まえて考察すると、かなりシンクロする部分が大きいことが分かりました。これまでEYが主張してきた「ツーリズム」は、交流人口拡大に重点が置かれている従来型の「観光」ではなく、最終的に地域経済が潤うために、いかにして外の需要を取り込むか、そしてそのために何を考えていかなければならないかを提言しています。本議論も同じです。ゴールに向かって、きちんとプロセスを見極め、「ツーリズム政策」として一貫性をもって戦略・施策を検討していく必要があります11。

こうした地域での議論が、旅行者を交流人口から関係人口へと昇華させ、二拠点居住や移住の可能性を高めるといえるのではないでしょうか。

地域との関係性を深める考え方

  1. 人口戦略会議編著「地方消滅2 加速する少子化と新たな人口ビジョン」(中公新書、2024年)
  2. 国土交通省「移住・二地域居住等促進専門委員会 中間とりまとめ 参考資料集」www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001719485.pdf (2025年10月11日アクセス) 
  3. アンケート結果の「既に実施しており、今後も継続する予定である」「既に実施しているが、今後は解消予定である」「過去に実施していたが、現在は解消しており、今後も実施予定はない」を除いた集計結果
  4. 一般社団法人大都市政策研究院機構「日本のコワーキングスペースの拡大(2022 年 12 月版)」 https://imp.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/report-coworking-202303.pdf  (2025年10月11日アクセス)
  5. 例えばMarriottグループのMoxyブランドが該当する
  6. A Brother Abroad “63 Surprising Digital Nomad Statistics”, https://abrotherabroad.com/digital-nomad-statistics/ (2025年10月11日アクセス)
  7. EYストラテジー・アンド・コンサルティング「ツーリズムにおける高付加価値化は何をもたらすのか?~新産業創出の新しい発想へ」www.ey.com/ja_jp/insights/consulting/how-does-high-value-creation-benefit-tourism-exploring-innovation-in-tourism (2025年10月11日アクセス)
  8. Citizen Remote “73 Digital Nomad Visa Countries in 2025”, https://citizenremote.com/blog/digital-nomad-visa-countries/ (2025年10月11日アクセス)
  9. デジタルノマドのペルソナ等は以下を参照。トラベルボイス株式会社「デジタルノマド2024~その変遷から市場性、世界の事例まで」(2024年2月)
  10. EYストラテジー・アンド・コンサルティング「ツーリズムにおける高付加価値化は何をもたらすのか?~新産業創出の新しい発想へ」www.ey.com/ja_jp/insights/consulting/how-does-high-value-creation-benefit-tourism-exploring-innovation-in-tourism(2025年10月11日アクセス)
  11. 本レポートでは取り上げていないが、関係人口の創出を企図する「ふるさと住民登録制度」や「ふるさと納税」「企業版ふるさと納税」の施策推進についても同様の議論です。




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サマリー 

地方では、人口減少の速度を緩め経済を維持していくために、移住や二拠点居住の促進も進められています。今回の1万人へのアンケート調査によれば、移住や二拠点居住も交流人口関係人口の文脈、つまりツーリズムの文脈で一気通貫に考えていかない限り政策の効果は限定的ということが読み取れます。入口からその出口まで、いかにツーリズムの文脈で考えるかが、成功のカギといえます。


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