6. データは集約するべきか、分散のまま流通するべきか?
今後必要なのは、個別技術の導入ではなく、意思決定・データ・AI・業務・組織・ガバナンスを統合した全体最適の設計です。そこでは、データはFederated Data(分散したまま管理・活用されるデータ)として存在します。ERP、SaaS、クラウド、DWH、データレイク、外部・非構造データが分散したまま、それらを意味・権限・品質・文脈でつなぎ、AIと人が判断に使える状態にします。意思決定スピードを根本から制約する、従来の「全データを中央集約してから活用する」という発想からの転換が重要なのです。
このような分散前提の環境では、データをつなぐだけでなく、意思決定と業務をどのように実行するかまで設計することが求められます。Agentic Workflowでは、AIエージェントが単一業務の補助だけでなく、データ取得、分析、仮説生成、選択肢提示、承認依頼、業務実行までを横断支援します。Human-in-the-loop設計で、AIの自律範囲と人の介在点を明確にします。また、Product Operating Modelも欠かせません。データ・AI基盤を作って終わりにせず、データプロダクト・AIプロダクト・エージェント機能として継続改善する運営モデルが不可欠です。最も避けるべきは部分最適であり、これらを「経営の実行構造」として統合する必要があります。
7. データ整備の前に、何を問うべきか?
Phase 1:問いの設計と意思決定の可視化
最初に行うべきは、データ項目の整理でもツール選定でもなく、「どの経営課題を、どの意思決定で解くのか」の定義です。売上成長、原価低減、在庫最適化、顧客体験向上――強化すべき経営能力を定義し、それを支える意思決定を分解します。どの会議体で、誰が、どの情報を見て、何を判断しているのか。そしてその意思決定を、AIによってどう速く、正確に、先回りできるかを整理します。そのうえで、必要なデータ、AI機能、業務プロセス、組織体制、ガバナンスを定義します。「問い」と「意思決定」を設計する順序が、成否を分けます。
Phase 2:PoCで終わらせず、業務に組み込む
PoCで終わらせないためには、業務プロセス、会議体、KPI、権限、運用体制まで含めて業務に組み込む必要があります。
需要予測AIであれば、予測結果を誰が確認し、どの条件で生産計画を変更し、どの例外は人が判断するかまで設計します。精度検証はPoCで行いますが、「意思決定との接続」は業務設計として別途行います。この二段階を整理して進めない限り、PoCと本番の間に壁が生まれます。
さらに、こうした取り組みを一過性のもので終わらせないためには、初期テーマで得たデータ定義、Semantic Layer、AIエージェント設計、ガバナンスルールを、他領域へ展開可能な形で整備し、全社の意思決定モデルとしてスケールさせることが重要です。
8. データの”量”より”使わせ方”が勝負を分けるか?
EYは、データアーキテクチャを単なるデータ基盤整備やAIツール導入としては捉えていません。経営、事業、業務、データ、AI、テクノロジー、ガバナンスを統合し、企業の意思決定構造を変革する取り組みとして支援します。
構想フェーズでは、経営、事業、IT、データ、AIを統合し、高度化すべき意思決定を明確化します。そのうえで、AI時代におけるデジタル・エンタープライズ・アーキテクチャの将来像を描き、ロードマップを定義します。実行フェーズでは、業務への組み込みと実行支援まで伴走し、KPI、権限、運用体制、データガバナンス、AIガバナンスを整備します。