SSCの立ち上げ・拡大を加速し、標準化と効率化を同時に進めるには

SSCの立ち上げ・拡大を加速し、標準化と効率化を同時に進めるには


人材確保が難しくなる中、SSCの構想を策定しても、業務設計や移管、要員の準備が進まない企業は少なくありません。本稿では、セミナーで紹介した国内BOT(Build, Operate, Transition)を基に、SSCの立ち上げ・集約範囲の拡大と標準化・効率化を進める要点を解説します。



要点

  • 国内BOTは、業務を先行して設計・運用し、整えたプロセスをSSCへ再引き継ぎするモデルです。
  • 試行運用を通じて業務を可視化し、標準化、自動化、人工知能活用の機会を具体化します。
  • 導入時は、対象業務、改善目標、ガバナンス、再引き継ぎ後の運営体制を明確にすることが重要です。


1.SSCの構想を「実行できる形」に変える

 

企業を取り巻く環境は、人材構造の変化、規制対応、グローバル競争、人工知能(AI)をはじめとするテクノロジーの進化によって大きく変わっています。特に、専門性を持つ人材の不足やスキルの偏りは、日々の業務運営だけでなく、企業変革を進める上での課題になっています。

 

こうした状況を受け、業務を集約し、標準化と効率化を進めるシェアードサービスセンター(Shared Services Center、以下SSC)への関心が高まっています。しかし、SSCの立ち上げ・集約範囲の拡大では、関係者間の合意形成、要員の確保、業務プロセスの設計、マニュアルの作成、移管後の品質管理など、複数の課題に同時に対応する必要があります。

日本企業は自社SSCの立ち上げ・拡大で多くの課題に直面しますが、従来は対応に苦労し挫折することもありました。国内BOTモデルを活用することで、これらの問題を解決できます

2026年5月13日に開催したセミナー「経理人材不足を乗り越えるSSC×経理AIエージェント戦略」では、こうした実行段階の課題に対応する方法の1つとして、EYの国内BOTモデルを紹介しました。

BOTはBuild、Operate、Transitionの頭文字で、業務の設計・移管・試行運用を先行して進め、整えたプロセスと運営の仕組みをクライアントのSSCへ再引き継ぎする支援モデルです。短期間での立ち上げと、再引き継ぎ後にクライアントが運営を担う体制の両立を目指します。


2.国内BOTの3つの特徴

日本BOTモデルは、クライアントが自社SSCを構築する時、EYの専門チームが業務設計~移管を先行実施し、最終的に整流化したオペレーションをクライアントに再引き継ぎするソリューションです

業務設計から安定化までを一貫して進める

国内BOTは、Build、Operate、Transitionの3段階で進みます。

Buildでは、対象業務の現状を把握し、あるべき業務プロセス、プロジェクト計画、必要なスキルと要員体制を設計します。Operateでは、業務を引き継いで試行運用し、マニュアルやサービス管理の仕組みを整えます。Transitionでは、整流化した業務と運営の仕組みをSSCへ再引き継ぎし、本番稼働後の安定化を支援します。

この進め方により、SSCの立ち上げ時に生じやすい要員不足や移管経験の不足を補いながら、業務設計、移管、試行運用、安定化を連続した取り組みとして進められます。

試行運用を通じて手作業の削減機会を見いだす

国内BOTは、SSC立ち上げと集約範囲の拡大において必須となる業務移管を品質担保しながら拡大するソリューションです。試行運用を通じて、重複作業、例外処理、属人化、非効率な引き継ぎなどを具体的に把握できる点に特徴があります。

把握した課題を基に、プロセスの統一、承認経路の見直し、標準作業手順書の整備、ロボティックプロセス自動化(RPA)やエージェント型AIの適用可能性を検討します。改善の対象と範囲を事前に合意しておけば、試行運用中に施策を実装し、効果を確認した上でSSCへ引き継ぐことも可能です。

企業ごとの状況に合わせて設計する

対象業務の範囲、業務量、利用するシステム、必要な言語、SSC側の採用状況は企業ごとに異なります。そのため、国内BOTの期間や体制は一律に設定せず、対象業務の複雑性と移管先の準備状況に応じて設計します。

将来の運営体制についても、自社SSCへの再引き継ぎだけでなく、対象業務の拡大や外部サービスの活用を視野に入れて検討できます。短期的な立ち上げと、中長期的な組織能力の蓄積を一体として設計することが重要です。


3.標準化と効率化につなげるポイント

海外業務を国内SSCへ移管した事例

セミナーでは、海外子会社の英語による経理業務を、日本国内のSSCへ移管した事例を紹介しました。

米国子会社の英語経理業務を、日本国内SSCへ移管する革新的な取り組みを円滑に進めるため、日本向けに特化したBOT(Build, Operate, Transition)モデルを提供しました

この取り組みでは、必要な人材の確保に時間を要する中、EYのチームが海外側の業務を調査し、既存マニュアルを精査しました。その上で、日本のSSC要員が利用できるよう業務手順を補完し、試行運用を通じて日本での運用可能性を確認しました。言語、時差、関係者間の調整に対応しながら、業務手順とサービス管理の仕組みを整え、SSCへの再引き継ぎを進めています。

この事例の示唆は、移管期間の短縮だけではありません。採用や社内要員の配置を進める間にも業務の準備を先行できるため、品質管理とガバナンスを含む運営基盤を整えた上で、SSCへ引き継げる点にあります。

標準化を現状業務の文書化で終わらせない

標準化では、現状業務の可視化に時間をかけ過ぎると、現場の負荷が増え、将来像の検討が不十分になる場合があります。また、現状を前提に業務を設計すると、部分的な改善にとどまり、将来、自動化やAIを導入しにくいプロセスが残る可能性があります。

プロセス標準化・効率化の取り組みを進める上での「陥りがちな罠(わな)」に対し、EYのナレッジや過去実績をレバレッジし、BOTソリューションで支援することで成功に導きます​

国内BOTでは、業務を運用しながら可視化し、実行可能性を確かめた上で、現状とあるべき姿を整理します。標準作業手順書、サービスレベル、品質指標、責任分担を一体として整えることが、再引き継ぎ後も改善を続けられる運営基盤につながります。

運用開始後も改善効果を測定する

効率化は、施策の導入だけで完了するものではありません。試行運用の段階から、品質、処理時間、業務量、未処理業務などの指標を設定し、定期的にパフォーマンスを確認する必要があります。

国内BOTでは、サービス管理を運用に組み込み、改善機会の特定、施策の実装、効果測定を継続します。これにより、SSCへの再引き継ぎ後も改善を継続できる状態を目指します。


4.AI活用を見据えた業務設計

今後は、定型作業の自動化に加え、照合、分析、問い合わせ対応、文書作成、例外判断など、従来は人が担ってきた業務でもAI活用が広がると考えられます。ただし、ツールを個別に導入するだけでは、前後の工程に手作業が残り、期待した効果につながらない可能性があります。

重要なのは、エンドツーエンドプロセスとして業務を捉え、AIに任せる領域と、人が判断・監督する領域を明確にすることです。品質、権限、データ管理、モニタリングを含むガバナンスも欠かせません。国内BOTの試行運用は、こうした設計を実際の業務で検証する機会となります。

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導入時には、次の4点を早期に整理する必要があります。

  • 対象業務と期待する成果
  • 移管と改善の優先順位
  • 品質、責任分担、意思決定のルール
  • 再引き継ぎ後の運営体制と人材育成方針

国内BOTを単なる移管支援として捉えるのではなく、将来の運営体制を見据えて、業務、組織、人材、テクノロジーを一体として設計することが、持続的な改善につながります。


5.次のステップ

人材不足への対応と業務変革を同時に進めるには、SSCを設置するだけでなく、立ち上げ後に安定して運営し、改善を続けられる仕組みが必要です。

国内BOTは、業務の設計、移管、試行運用を先行して進め、標準化したプロセスとサービス管理の仕組みをSSCへ再引き継ぎするモデルです。立ち上げの加速と、将来の組織能力の蓄積を両立するための選択肢となります。

SSCの立ち上げや拡大を検討する企業にとって、最初のステップは、対象業務、人材面の制約、現行プロセスの課題、将来の運営体制を整理することです。その上で、移管と改善をどの順序で進めるか、自社で担う領域と外部の専門性を活用する領域を検討することが重要です。




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サマリー 

国内BOTは、試行運用を通じて業務移管を進めながら、標準化、効率化、将来のAI活用を見据えたSSCの運営基盤づくりを支援する選択肢です。


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