EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYパルテノンは、EYにおけるブランドの一つであり、このブランドのもとで世界中の多くのEYメンバーファームが戦略コンサルティングサービスを提供しています。
要点
日本も他のAPAC諸国の状況と同じく2022年上半期の案件総額は減少が見られたものの(前年比42%減)、案件数においては2015年~2019年の平均比で22%増とパンデミック前との比較で堅調に推移しており、日本企業のM&Aに対する姿勢は依然積極的なものと考えられます。また、同様に2022年上半期においてアウトバウンドディールは減少しているものの(取引額が前年比58%減)、海外における事業ポートフォリオの見直しの一環として海外子会社・投資先の売却の動きもあり、クロスボーダー取引の内容に変化が見られています。また、インバウンドにおいては、グローバルPEファンドによる日本企業の買収意欲は依然として高く、実際にインバウンドのディールは前年比132%増と大きな伸びを見せています。
M&A活動は、2021年のアジア太平洋地域全体で高額ディールに対する投資家の需要の高まりを受けて活況を呈し、2020年から50%増加して過去最高を記録しました。2022年1⽉から6⽉までのディール活動については、EYでは2021年同期⽐では取引額の減少を⾒込んでいましたが、実際には好調を維持して2020年上半期比では85%増となり、パンデミック前の5年間(2015~19年)平均成長率と同レベルでした。
アジア太平洋地域のCEOはセクターを問わず、自社の変革を求める圧力にさらされており、急速に変化する消費者の嗜好、デジタルディスラプション、環境・社会・ガバナンス(ESG)の問題に対応することがますます求められています。特に、テクノロジー・メディア・テレコム(TMT)、消費財、およびアドバンストマニュファクチャリング・モビリティ(AMM)の各セクターで、この圧力は最も急激に高まっています。
アジア太平洋地域は、他の地域と比べ同族経営のコングロマリットが多い⼟地柄でもあります。こうした企業の考えは変化しており、株主価値の向上、資本の再配分の増加、将来の成⻑に向けての態勢づくりのために、事業の⼀部または全体を売却することに利点を⾒いだし、これを活⽤する企業が増えています。ダイベストメントはかつて事業低迷の結果とみられてきましたが、今では多くの経営幹部が、地場企業からグローバルプレーヤーに成長するには、時として自社の売却が最善の方法になると考えています。
今、アジア太平洋地域の経営幹部はこれまでの考え⽅から、トランザクションが⾃社にもたらすチャンスの可能性について、より⻑期的な視点で検討するように変化してきています。その方法には、事業統合、カーブアウト、あるいは⾰新的な買収による事業の完全なる再構築などが考えられます。
「全てのM&Aが変⾰につながるわけではありません。しかし、あらゆるトランザクションには価値を解き放ち、⾃社を変⾰するチャンスがあります」とEY Asia-Pacific Transaction Strategy & Execution LeaderのJosie Anantoは述べています。EYでは、⾼額ディールへの需要の⾼まりは、アジア太平洋地域の経営幹部がこの点を理解し始めていることの現れだと捉えています。
全てのM&Aが変⾰につながるわけではありません。しかし、あらゆるトランザクションには価値を解き放ち、⾃社を変⾰するチャンスがあります。
Josie Ananto
EY Asia-Pacific Transaction Strategy & Execution Leader
アジア太平洋地域全体において、プライベートエクイティ(PE)企業のディールに対する意欲は50%を超え、また、過去3年間で⼿元資⾦は年平均成⻑率(CAGR)34%のペースで積み上がっています。このことから、特に中国の経済回復を追い⾵に、2022年下半期にはM&Aが勢いを取り戻すとEYは⾒ています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは収束せず、地政学上の難題は継続するものの、アジア太平洋地域全体で企業価値評価額が⾼⽌まりしていることは、投資家の信頼が継続されていることの確かな証左です。
EYパルテノンができること
財務アドバイザー(FA)として、貴社の利益の観点からM&Aの組成からエグゼキューションまでを戦略的な助言によりバックアップ。FAとしての高い専門性発揮はもちろんのこと、グローバル・ネットワークと隣接領域の充実したサービスラインアップ(DDなど)を生かしてのシームレスな案件遂行をお約束します。
続きを読む2022年上半期のM&A活動は、アジア太平洋地域の取引額は4,030億⽶ドルで世界トップとなりました。2021年の10億⽶ドル超のディールの件数も、パンデミック前の5年(2015~19年)平均の⽔準に⽐べ30%近く増えています。
2021年のこうした取引額の増加傾向は現在も続いています。セクター別で⾒ると、TMTとAMMが、2021年の取引額で10億⽶ドル超のディールの半分近くを占めています。国別では、10億⽶ドル超のディール件数が最も多いのは89件の中国です(取引額は2,510億⽶ドル)。
パンデミックを経て社会は再び始動し、アジア太平洋地域の企業はM&Aを利⽤した⾃社の変⾰を⽬指していますが、その中で、クロスボーダーディールが著しく増加しています。EY 2022 CEO Outlook Surveyでは、アジアを本拠地とするCEOの5⼈に4⼈(83%)以上が、今後12カ⽉間にクロスボーダーM&Aを推進するつもりだと回答しました。ちなみにこの投資先の割合は、北⽶が37%、欧州が71%です。
その⼀⽅で、アジア太平洋地域のCEOの多くが相⼿先国としてトップ5のうち中国、インド、シンガポールの3カ国を挙げており(後の2カ国は⽶国と英国)、クロスボーダーディールは地域内で進められることが予想されます。
アジア太平洋地域のCEOは、デジタル、製品とサービスにおけるケイパビリティの拡充、およびマーケットリーチの拡⼤を図るため、クロスボーダーディールに加え、クロスセクターディールにも着⽬しています。EY 2022 CEO Outlook Surveyによると、テクノロジー企業の買収の60%がテクノロジーセクターの外で実施されました。
EYパルテノンができること
EYパルテノンのデジタル戦略コンサルティングチームは、ビジネストランスフォーメーションを加速させる上で効果的かつ成長を促進するデジタルビジネス戦略を設計し、提供しています。詳細をご確認ください。
続きを読むアジア太平洋地域の企業はセクターを問わず、高まるコンシューマーの要求と、地域全体のデジタルケイパビリティの向上に資するため、テクノロジー企業へと深化しようとしています。
ベトナムとインドネシアでは、モバイル端末ユーザーの⼈⼝全体に占める割合が急速に拡⼤しています。例えばインドネシアでは、モバイル端末を利用したインターネットユーザーは2020年では約1億7600万⼈でしたが、2026年までに2億3300万⼈を超えることが⾒込まれています1。
さらに、2021年では東南アジアの新規のインターネットユーザー数は推計で4000万⼈に上り、インターネット普及率は75%に達しました。東南アジアのデジタル経済2は、eコマースを筆頭に⾶躍的な成⻑を遂げています。アジア太平洋地域の企業はこの急成⻑する市場でのシェア獲得を目指したいところですが、そのためにはデジタルケイパビリティの獲得が不可欠です。
あらゆるセクターがテクノロジー資産を巡っての競争のさなかにあって、テクノロジー企業は、チップや電⼦製品の製造に必要な希少資源の確保にも進出するようになっています。同時にテクノロジー企業が進めているのが、AMMを含めた他のセクターの成⻑を可能にする戦略的投資です。
AMMセクター、中でもモビリティ関連企業は、⾃動運転分野のイノベーションを加速させるのに役⽴つテクノロジーケイパビリティの獲得に⼒を⼊れてきました。2021年には、モビリティサブセクターの企業の取引額は、前年同期と比べると29%増加して550億⽶ドルに上っています。
他方で、消費財セクターで企業が求めるのは、企業価値を⾼め、サプライチェーンを強化し、カスタマーエクスペリエンスを充実させることのできるテクノロジー資産です。
投資戦略の大部分がケイパビリティの拡充と市場拡大に重点を置いているとはいえ、アジア太平洋地域ではESG関連のディールの増加が2019年以降続いています。2021年にはESG関連の取引件数は対前年比で23%の伸び、取引額は87%と驚異的な伸びを記録しました。
気候変動による影響の拡⼤、そしてESGに関して善良なコーポレートシチズンシップを有することを求める消費者、社会、政府からの圧⼒の⾼まりを受けて、アジア太平洋地域のCEOはリスクとチャンスの両⽅を視野に⼊れています。EY 2022 CEO Outlook Surveyによると、ESGについて、アジア太平洋地域のCEOの4分の3近くが今後数年間でバリュードライバーとしての重要性が増すと考えています。また、約4分の1(26%)が、ESGスコアを上げる上でM&Aは重要な⼿段であり、そのためには投資家を呼び込む必要があると回答しました。
EYの2021年「企業のダイベストメントに関する意識調査」では、アジア太平洋地域の回答者の73%が、ESG対応などのため今後2年以内にポートフォリオを構成する企業の売却を⾒込んでいると答えており、84%がサステナビリティと社会問題がダイベストメントに直接影響を与えることを追認しています。
パンデミックの後、アジア太平洋地域の経済が再び始動する中、バリュエーション(企業価値評価)が過去最⾼レベルに達することが予想されます。M&Aにより企業価値を最大限に高めようと考えている企業は、今すぐ行動を起こす必要があります。そうでなければ、競合他社に敗北を喫しかねません。
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アジア太平洋地域では、変革を求める圧力の高まりに伴い、M&A取引額は過去最高を記録しました。全てのM&Aが変革につながるわけではありませんが、あらゆるトランザクションに自社を変革する可能性が秘められています。M&Aで企業価値を最⼤限に⾼めようと考えるCEOは、今すぐ⾏動を起こすことが必要です。