Successful team leader and her team on a seminar in the office. Shot of confident businesswoman sitting on the conference table with her coworkers working in background.
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税務・財務リーダーは、いかにして前進し続ける俊敏な部門を構築できるでしょうか?

税務・財務部門に継続的な変革を根付かせることで、AIを活用し、ビジネスに豊かで深いインサイトと価値をもたらすことが可能となります。


要点

  • 81%の企業が、今後2年間でサプライチェーンの更新などのビジネス変革を計画している。これは過去12カ月間と比較して20ポイントの増加となる。
  • 86%の税務・財務リーダーが、データ、AI、テクノロジーの活用を最優先事項として位置付けている。
  • 各部門は、付加価値の高い活動に費やす時間を倍増させることを目指し、AIの可能性を最大限に引き出すスキルを持つ人材を優先するため、チームの再編成と再構築を進めている。


EY Japanの視点

企業を取り巻く地政学リスクや規制強化が加速する中、税務・財務機能には従来の対応型から、データと生成AIを核とした“常時対応型”への進化が求められています。Pillar2を含む複雑な制度対応を確実に行うためにも、クリーンなデータ基盤とAI活用による高度な分析力の構築が不可欠です。これらを実現する企業こそが、規制対応を負担ではなく競争力へと転換し、持続的な価値創出につなげられると考えます。


EY Japanの窓口

2025年 EYタックス・アンド・ファイナンス・オペレート(TFO)調査
2025年 EYタックス・アンド・ファイナンス・オペレート(TFO)調査

日本とグローバルの回答結果対比レポート



企業は、絶え間ない、相互に関連する変化の世界で事業を展開しています。地政学的緊張が世界の力学を再構築し、サプライチェーンの複雑性を増大させています。税務・貿易政策は大規模な変化を遂げており、特に多くの国・地域での第2の柱によるグローバルミニマム課税の導入、その他の地域での適用範囲の変更が進んでいます。また、技術革新は指数関数的に進み、データと人工知能(AI)によって前例のない知性のルネサンスが世界にもたらされています。

今日の変化は非線形で加速し、不安定かつ相互に関連しています。それは課題であると同時に、再創造をもたらす好機でもあり、最も成功している企業は変化に抵抗せず、それを活用しています。調査によれば、先見性のあるCEOはディスラプションを、投資、レジリエンスの構築、組織成長の機会と捉えています。このような企業は、取引を行い、顧客に近い場所で事業をローカライズし、2桁の収益成長を達成する可能性を高めています。また、継続的な変革を大胆に受け入れ、混乱を成長エンジンへと転換することでこれを実現しています。現在の優先事項を達成しつつ、主体的な未来を加速させる体制を整えているのです。

税務・財務部門も、同様の考え方を取り入れる必要があります。2025年EYタックス・アンド・ファイナンス・オペレート(pdf)(TFO)調査によれば、回答者の81%が今後2年間でビジネスオペレーション(サプライチェーンを含む)に中程度から大幅な変更を加える予定です。これは貿易、関税、国家安全保障などを中心とする地政学的圧力への対応策です。また、約26%が大幅な変更を実施する予定で、これは前年度の2倍以上となります。不確実性を管理し、将来の成功を形作るための重要な要素は、税務オペレーティングモデルにどのようにアジリティを組み込むかです。

EY Global Vice Chair(税務担当)のMarna Rickerは次のように述べています。「成功する企業は、混乱の時代に『様子見』をしている余裕はありません。税務・財務部門が成功を促進する上で重要な役割を果たします。企業が行う全ての変更には税務上の影響があり、データ、リスク、戦略が交差する領域で活動する税務・財務部門によって慎重に評価される必要があります。勝者はこのAIの波を積極的に受け入れ、既存の枠組みを解体し再構築するでしょう」


今日、トップ企業のCEOと同様に、税務・財務リーダーも変革に対する考え方をますます再構築しています。変革は、明確な終点を定めたプロジェクトベースの取り組みではなく、継続的かつ絶え間ないものであり、チームが変化に対応できるよう明確さと自信を生み出す必要があります。最終的に、税務・財務部門には、増え続ける優先事項に企業が賢明かつ戦略的に対応できるようにする組織構造が必要であり、全体に一貫した助言と付加価値を提供できなければなりません。

激動の時代における優先事項

適切な戦略があれば、優先事項を達成する最良の位置に立つことができます。今年の調査では、税務・財務部門が以下の3事項(優先順)の遂行に注力していることが明らかになりました:

  1. データ、生成AI、テクノロジーを活用した、イノベーション、インサイト、予測分析、自動的なレポート作成の推進。86%の企業がこれを最優先事項と位置付けており、経営幹部は今後2年間でAIが業務効率を最大30%向上させ、戦略的かつ付加価値の高い活動へ充てる予算が23%増加すると期待しています。しかしながら、大半の企業は依然としてAI成功の基礎と見なされるデータ基盤の構築に課題を抱えています。

  2. 中核的な税務コンプライアンス義務を順守する。特に拡大する第2の柱ルールへの準拠においてこれが顕著です。調査では81%が、経済協力開発機構(OECD)の推奨するグローバルミニマム課税の各国・地域での導入が、自社事業に影響を与える最大の法規制変更であると回答しており、85%がこれにより全体の税負担が増加すると述べています。

  3. 税務戦略と財務・組織戦略全体の緊密な連携の推進。企業は今、税務・財務部門に対して、シナリオ立案、取引、サプライチェーン変更など広範な事業戦略にインサイトをもたらして価値を創出することを期待しています。回答者の79%が、今後2年間の最優先事項としてこれを挙げています。その実現のために、税務・財務リーダーはより戦略的な活動に充てる時間を確保し、強力なAIソリューションを可能にする形式のリアルタイムなデータにアクセスする必要があります。

グローバル医療機器メーカーのCFOは「税務・財務部門の役割は、戦略的ビジネスパートナーかつ経営幹部へのアドバイザーとして、今後ますます重要性を増していくと認識しています」と述べています。

High angle view of large group of business people examining reports while sitting at the table in the office.
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第1章

税務・財務部門が直面する喫緊の課題

データ、第2の柱、貿易、関税、税の透明性の向上などが最も差し迫った懸念事項です。

税務・財務部門は、企業に重大な影響を及ぼす数多くの外部事象に絶えず対応しています。これには、頻繁に発動・撤回される関税や貿易の紛争、軍事衝突、新政権による新しい法規制の導入、サステナビリティ関連の要件、技術革新のほか、もちろん前例のない規模のグローバルな税制改革が含まれます。

「関税やその他の形で現れる地政学的不安定性は、現在、市場、サプライチェーン、企業の財務状況にとって多大な不安定要素となっています」と、医療機器メーカーのCFOは述べています。「これは、間違いなく今後どのようにリスクを軽減・低減するかについてのさまざまな議論を促しています」

こうした変動の中で、税務・財務部門は既存および新たなコンプライアンスに強く注力しており、これが両部門に対する最も差し迫った課題となっています。

最優先課題である第2の柱とこれに伴う不確実性

第2の柱関連の要件がもたらす影響は現在、関税、各国の税制改革、デジタル/リアルタイム申告(電子インボイスを含む)、税務係争管理などを超える、コンプライアンス上の最優先の懸念事項となっています。回答者の81%が、第2の柱関連のルールが自社事業に影響を与える可能性のある最も重要な規制・立法上の変更であると回答する一方、BEPS 2.0グローバルミニマム課税の報告要件のコンプライアンスに対し、準備が十分整っていると答えたのはわずか21%にとどまっています。過半数にあたる59%が、準拠のために外部プロバイダーと連携しています。

第2の柱による税負担の増加は、合併・買収・事業売却の財務的要因を含むさまざまなビジネス上の判断に影響を及ぼす可能性があります。特に二重課税が存在する場合には、将来的に税務係争が生じる可能性もあります。その結果、税務・財務部門は継続的に第2の柱の影響について助言することになるとみられます。

税負担の増加
85%
の回答者が、第2の柱のグローバルミニマム課税により税負担が増加すると答えています。

関税も昨年、税務リーダーの注目を集めました。

「関税対応は本来私の役割ではありませんが、巻き込まれる形となりました」と、あるグローバル自動車メーカーの税務リーダーは述べています。「税務が私の仕事なので、第一に税務に多くの時間を割いていますが、関税問題にも相当な時間、おそらく少なくとも半分の時間を費やしています」

高まる税の透明性

さらに、OECD、欧州連合(EU)、特にオーストラリアを含む各国・地域による10年にわたる取り組みにより、企業が一般に開示する税務情報の在り方が根本的に変化し、税務・財務リーダーは税の透明性をさらに高めることが求められています。これを受け、企業はこれまで以上に透明性を高める準備を進めており、自主的に納税総額を公表すると回答した企業の割合は、わずか2年前には37%であったものが80%へと倍以上の増加となりました。


透明性が高まるにつれ、税務当局はより多くのリアルタイムデータにアクセスし、分析を進化させ、企業活動への理解を深めています。世界的に利用可能な情報とAIの適用により、この変化は企業と規制当局の関係性を再定義しつつあります。

先を見据え、税務・財務チームは、自社のオペレーティングモデルを急速に変化する規制環境に対応できるものへと進化させる必要があります。税務・財務部門は、企業全体が正確な文脈に基づいた開示を維持する上で重要な役割を担っています。これにより、税務専門家以外による誤解や誤った解釈を防ぎ、風評リスクを回避できます。また、一般に開示された内容が非公開の申告内容と正確に整合していることを確認する必要があり、この分野ではAIエージェントが支援を開始しています。しかしながら、税務当局も同様のアクセスと機会を有しているのです。経営幹部は、本来は活用すべきなじみ深い課題、すなわちデータという困難に直面しています。

データとの闘い

クリーンで体系化され、一元管理されたデータを保有することは、税務・財務部門が高度なコンプライアンスと付加価値のある業務をするための目標全ての基盤です。これにより、第2の柱のコンプライアンス、サステナビリティの目標、税の透明性、サプライチェーンの変化や取引の税務上の影響を、明確に把握することができます。また、AIが推進する変革を実現するための重要な要素であり、今までにない効率性、鋭いインサイト、そして競争優位性をもたらします。

EY Global Chief Innovation OfficerのJoe Depaは次のように述べています。「データが推進する協働のカルチャーをリーダーが率先すると、チームは変化を予測してイノベーションを推進し、持続的な価値を提供できるようになります」

しかし、税務・財務部門は依然としてデータの準備が大きな課題であると述べています。税務・財務リーダーの45%が、データ、AI、テクノロジーに関する持続可能な計画を実行できないことが、税務部門の目的とビジョンの達成を妨げる最大の障壁であると答えています。この課題は、要求の増大によってさらに悪化しています。第2の柱や税の透明性要件への対応に必要な膨大なデータに加え、企業はサステナビリティや環境・社会・ガバナンス(ESG)プログラムなど、その他の目的のために、より多くの財務以外のデータを報告する必要があり、こうしたデータの取得・管理・構造化はさらに困難です。こうした要求に応えるため、税務・財務部門は複数の異なるシステムからソースデータを統合し、強固なガバナンスの枠組みに支えられた堅固なデータ戦略を確立しなければなりません。

「私たちのデータの品質はとても低いものです」と、米国のグローバル製造業者の税務担当バイスプレジデントは述べています。「データの整理をどう進めればよいのでしょうか。私が統括する業務において、データ処理の作業は大変非効率なのです」

データ戦略の実行能力に「非常に自信がある」と回答したのはわずか16%で、税務部門におけるデータ管理の成熟度が高いと答えた企業は4分の1にも満たない状況です。また、データ戦略が組織全体のデータ戦略と「大きく整合している」と回答したのは38%にとどまり、自社のテクノロジー戦略と「大きく整合している」と認めているのは、さらに低い21%にすぎません。

データとAIの分野を世界的にけん引するDatabricksでGo-to-Market and Industryのシニア・バイス・プレジデントを務めるBavesh Patel氏は、「高品質かつAIが発見可能でその使用が許可されたデータは、単に有用なだけではありません。今日のテクノロジーの力を最大限に引き出すために、企業はこのようなAI対応データに注力することが必須です」と強調しています。

また、「AIの可能性は、それを支えるデータの品質に比例します」とした上で、「AIの恩恵を享受したい企業は、今すぐ行動を起こさなければなりません。データをAI対応に整えることが、極めて重要な第一歩です。これは大変な作業ですが、同時にAIが提供しうる全ての可能性への道を開くものでもあります」と述べています。

80%の回答者が、自社のAI導入を推進する上で最大の障壁は「AI対応データの不足」であると回答しています。さらに、データのアクセス、整理、活用、再利用において「非常に効果的」と答えたのは、税務部門ではわずか17%、財務部門では13%でした。これは主に、回答の91%に見られるように、データをローカルハードドライブなど、あまりにも多くの収用場所に分散保存していることに起因しています。

AIの可能性は、それを支えるデータの品質に比例します。

データを効果的に活用している企業では、データをAI対応状態に保つためのベストプラクティスが明確です。データは税務部門によって一元管理され、アクセスが可能で、税務に関連付けられ、ソースシステムから容易に入手可能です。テクノロジーソリューションはポイントソリューションに特化するのではなく、統合されています。


Multi-ethnic coworkers discussing something and sharing ideas in the office.
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第2章

インサイトに富み、よりアジャイルな税務・財務人材の育成

税務リーダーは、アジャイルでインサイトに基づき、テクノロジーに精通したチームへの変革を進めています。戦略的かつ重要な意思決定スキルとともに、処理能力も不可欠です。

最新の人材戦略は、アジリティを促進する、整えられたオペレーションの一部である必要があります。貴重なインサイトを提供するという使命のもと、税務・財務のリーダーは、近年、ほとんどのグローバル企業においてその存在感を高めています。

しかしながら、税務リーダーは、こうした期待に応えるための時間、人材、リソースの確保に課題を抱えていると述べています。特に、税務のシニアプロフェッショナルの退職が自部門に重大な影響を与えると予想するリーダーが61%、新たに会計士の職に就く人数の減少が悪影響を及ぼすと予測するリーダーが66%に上っています。特に現在のオペレーションにおける時間配分がデータ処理やコンプライアンス業務に偏っていることに加え、こうした傾向が既に存在するリソースの制約を悪化させており、人材戦略を最新のものとする緊急性を浮き彫りにしています。

EY Global Tax Managed Services and Global Compliance and Reporting LeaderのJill Schwietermanは次のように述べています。「税務・財務部門はコンプライアンスへの取り組み方においてパラダイムシフトを迎えています。税務・財務部門はコンプライアンスという多大なプレッシャーに直面する一方で、組織に対してより多くのインサイトを提供しなければなりません。成果を上げるためには、適応性が高く、高い回復力を備えた新たなオペレーティングモデルが必要です」

現在、税務担当者の業務時間の53%は定型的な業務に費やされ、専門性の高い業務に費やされているのは16%でしかありません。回答者は、定型業務に費やす時間を半分以下(21%)に削減し、専門性の高い業務に費やす時間を倍増(34%)させたいと考えています。


「私は税務部門をコンプライアンスのみを担う部門から、より付加価値の高い部門へと変革し続けています」と、自動車メーカーの税務リーダーは述べています。しかし「現在余力がなく、着手できないプロジェクトがあります」とも述べています。

現在余力がなく、着手できないプロジェクトがあります。

税務・財務部門の人材は、リーダーがAIテクノロジーと高度なデータ機能を活用し、定型業務を超えてインサイトに基づく意思決定へと移行する中で、根本的な変革を遂げつつあります。この変革は単なる効率化ではなく、予測分析とインテリジェントな自動化を可能にし、組織のデータの価値を最大限に引き出すことが目的です。このような環境で成功するためには、戦略的判断力とクリティカルシンキングを備え、最新技術、データ分析、AIに精通するとともに、深い税務の専門知識を持つ新しいタイプの税務・財務の専門家が必要です。

こうした新たな税務専門家の必要性から、税務・財務リーダーの89%が既存の人材のスキルアップ、81%が税務専門以外のスキルを有する人材の採用、62%が役割と責任の再定義(付加価値の高い活動に特化した専門チームの創設を含む)を進めていることがわかります。

調査によれば、デジタル申告、移転価格文書化、間接税コンプライアンスといった税務業務におけるコソーシングの利用拡大も、将来の人材に対する期待を再構築するもう1つの要因となっています。例えば、日常的なデータ収集、照合とクレンジング、ワークペーパーの作成、税務申告書作成といった定型業務の69%が外部プロバイダーによって行われています。コソーシングは、従業員が定型業務に過度に時間を費やすことを防ぎ、アドバイザリー業務に集中できるようにします。85%が、コソーシングにより付加価値の高い税務・財務活動に注力する能力が「中程度」または「大幅に」向上したと回答しています。

「ここでの目標は、リソースを解放し、よりアジャイルな、そしてより迅速な意思決定を可能にすることです」と、医療機器メーカーのCFOは述べています。

高まるクリティカルシンキングへの需要

優れた税務の専門的スキルが最優先基準である可能性が高い一方で、税務リーダーは、データを効果的に分析・伝達するために必要な、数値化できないスキルをさらに高く評価しています。

ほぼ全ての回答者が、絶え間ない混乱を管理する将来の税務専門家には、戦略的思考力と問題解決能力に加え、クリティカルシンキング(批判的思考)が不可欠であるとしています。また、78%が、コミュニケーション能力とコラボレーション(協調性)の重要性を挙げています。

意思決定能力
85%
の回答者が、戦略的思考力と問題解決能力が将来の税務専門家にとって最も重要な育成要素であると答えています。

米国の製造企業の税務担当バイスプレジデントは次のように述べています。「新入社員が私のチームに加わる頃には、税務の専門的な面での審査は既に終わっています。その後、私が懸念するのは、彼らが成長し、さらに能力を高め、組織全体を向上させるために必要なスキルを備えているかどうかです」。企業がAIを導入する際には、単に人間を介在させるだけでは不十分です。AIが生成した結果を検証したり、疑問を呈したりできる適切な人材を介在させる必要があります。これは、アジャイルで継続的に変革する部門において成果をもたらすことのできる、新たなタイプの税務専門家の特徴を表す重要な要素です。

スキルのアジリティは、AIのようなテクノロジーの可能性をその人が実現する上で極めて重要です。EY Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査)では、従業員のAI導入と、スキルアップやリスキリングの取り組みを前向きに捉える姿勢との間に相関関係があることが示されました。最も急速に進化するテクノロジーの利用者が、学び、適応し、成長する意欲と能力を有する人々なのは当然のことでしょう。

屋外のコワーキングスペースでビジネスクライアントとノートパソコンで作業する、自信に満ちたアジアの若手女性ビジネスパーソン
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第3章

AIの可能性を解き放つ

生成AIとエージェント型AIは、税務業務の遂行方法を根本から変える可能性を秘めており、その恩恵を得るためにはオペレーティングモデルの変更が求められます。

税務・財務業務の本質的な在り方が変わりつつあります。その変化が最終的にどのようなものになるかは、データとAIの可能性を引き出すことに大きく依存します。実際、税務・財務リーダーの多くは、日々のコンプライアンス義務を果たすための最優先事項としてAIツール、特に生成AIとエージェント型AIを挙げています。また78%が、データ、AI、テクノロジーを活用した内部業務の自動化を推進することが、オペレーティングモデルの変革における最優先事項と回答しています。

データ整備や人材のスキルアップを進めているにもかかわらず、75%の部門では生成AIの導入がまだ初期段階にあります。その結果、多くの企業がAIに多額の投資を行う外部プロバイダーに目を向けています。AIエージェントなど、協働し半自律的に動作してプロセスを自動化する先進ツールへのグローバルな投資を通じて、その恩恵を享受できるからです。

AI導入の成功要因

総じて企業は、AIツールの構築には本質的な困難が伴うことに気付いています。最近のMITの調査1によれば、ベンダーと連携してAIツールを購入する場合の成功率は67%ですが、内部でAI関連業務を進める場合の成功率はその3分の1にすぎません。同じ調査では、さらに95%がAI投資の効果を示すのが困難で、これが企業にとって大きな課題となっていると結論付けています。税務・財務部門も例外ではなく、税務部門向けのテクノロジーアプリケーション構築が「非常に容易」と回答したのはわずか21%であり、AIエージェントの導入準備が「ある程度」または「完全に」整っているとの回答は39%にとどまります。

こうした課題が背景となり、回答者の78%が、今後2年間で高度なAI能力を有する外部プロバイダーと連携することが、税務部門に中程度から大幅な恩恵をもたらすと述べています。

グローバルなeコマースおよびクラウドコンピューティング企業の財務リーダーは、パートナーと協力することで、最新のテクノロジーを大規模に利用できると説明しています。

「私の見解では、価値を迅速に提供するためには専門家との連携が必要です。過去に勤務した3つの企業では、社内で何かを開発しようとした場合よりも、外部パートナーと連携した方が良い結果が得られました」


AI活用の現在

インタビューにおいて、税務・財務リーダーの多くは、現在のAIの使用が非常に限定的な範囲にとどまっていることを認めています。しかし、AIと生成AIの活用は税務業務を変革し続け、企業が税務当局と関わる方法にも影響を与えるだろうと述べています。

「現時点では、政府機関がまだ受け付けないため、税務申告書の作成、ましてや提出にAIを活用する段階には至っていません。しかし、そうした段階は早く実現すると思います。今後5年以内に、ほとんどの税務申告はAIエージェントによって支援されるようになるでしょう」と、大手の多国籍高級小売企業のCFOは述べています。

データ関連の課題はあるものの、AIは既に多くの税務リーダーの業務方法や時間の使い方を変えつつあります。あるグローバルな銀行の最高税務責任者(CTO)によれば、毎日届く大量の税務と規制の更新情報を処理するために既にAIが活用されています。

「税務や規制の更新情報の95%は全く適用されません。『これが実際にあなたに影響を与える重要な情報で、他の100件は削除しました』と判断する機能がAIにあれば、税務部門にとって大きなメリットになります」と、そのCTOは述べています。

一方、ドイツのオンライン・サブスクリプション・サービス企業の税務リーダーは、自社に専任のAIチームがあり、税務部門を支援していると述べ、その知見を生かしてコンプライアンスの自動化にAIを活用する方法を模索しています。規制上の報告サイクルを超えて、移転価格のマスターファイルやローカルファイルの維持、付加価値税を含む間接税記録の管理効率化のためのAI活用にも関心があります。

「AIチームは主にコンプライアンスと報告業務に関するリソース面を支援してくれています…メモを作成するために社内チームが20時間も文書検索に費やすことのないよう、リソースの開発と有効活用を支援してくれています」

エージェント型AI

エージェント型AIの登場によって、内部プロセスをより根本的に変革し、自動化を加速させ、最終的に各部門が自社データをよりコントロールできるようになる可能性が高まっています。

エージェント型AIとは、個々のタスクでは独立して作動しながら、複雑なワークフローの調整、データ異常への対応、そして経験とフィードバックに基づいて状況に適応した意思決定を協調して行うAIエージェントのグループを指します。しかし、人間の監督は依然として必要です。なぜなら、税務・財務部門が想定する将来のオペレーティングモデルでは、自律的なエージェント型AIのチームが最終的に人間と協働し、従来の手動による人間のみの方法よりもはるかに迅速に成果を上げることを想定しているからです。

EY Global Tax Data, Knowledge and AI LeaderのAlexandra Loranは次のように述べています。「エージェント型AIは税務・財務部門のオペレーションを再定義し、アドバイスの再構築やコンプライアンスと報告の変革を可能にします。EYでは、Databricks、IBM、Microsoft、NVIDIA、SAP、ServiceNow、Snowflakeといったパートナー企業と連携し、差別化されたマルチアライアンスのエコシステムを通じてこの変革を主導し、スケーラブルでインテリジェントなソリューションを構築しています。これは単なる自動化ではありません。クライアントがその成長の可能性を引き出し、複雑性を確信を持って乗り切ることを支援します。私たちは共に、エージェント型AIの力を通じて、EYとクライアントを大胆に変革しています」

Business people working in high-end modern office
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第4章

アジリティと絶え間ない変革が、急速かつ相互に関連する変化へのレジリエンスを構築します

アジリティと絶え間ない変革が、税務・財務チームに対し、変化を先取りしたAIが推進するサービスの実現と、レジリエントでインサイトを備えたオペレーションを構築する力を与えます。

不確実な時代において確信を持って事業を運営するには、アジリティ、レジリエンス、そして目的を持って進化する能力が必要です。EYメガトレンドの記事が指摘するように、ディスラプションは単なる課題ではなく、企業がどのように運営され、適応し、成長するかを再考する好機であり、税務・財務リーダーは、より強固な統制を発揮し、AIを活用した高度なサービスを組織に提供することが可能です。

この変革が、急速に進化するビジネス環境や規制環境に対応し、変化を予測しながら統制を可能にする、柔軟でアジャイルなオペレーティングモデルを支えます。ビジネスの変革はもはや、その時だけの取り組みではありません。明確な目的と測定可能な影響力を持つ戦略的なオペレーティングモデルを設計・導入し、継続的に進化させることなのです。今日の混乱した環境で成功するために、税務・財務リーダーは行動を起こさなければなりません。以下の5つの要素は、最新のオペレーティングモデルの特徴であるだけでなく、真に目的に適合したモデルを構築するためにリーダーが取るべき必須のステップです。


1. 信頼性の高い詳細なデータの基盤を構築する

組織はデータのクレンジング、整理、一元管理に多大な投資をしています。この取り組みは、単に従来の問題を解決するだけではなく、将来のコンプライアンスと戦略的インサイトを提供する基盤を築くため、戦略的に進める必要があります。このようなデータを企業全体でアクセス可能かつ抽出可能な状態にすることが、重要な第一歩となります。信頼性の高い、詳細かつアクセス可能なデータを単一のソースとして提供し、組織全体で再利用できるようにするために、最新のデータ管理テクノロジーを活用した戦略的なデータビジョンとアーキテクチャを持つことは、成功のもう1つの重要な柱です。

 


2. 税務・財務の専門家がAIとデータを活用できる環境を整える

多くの企業は、イノベーションを阻害して進捗(しんちょく)を遅らせる煩雑なテクノロジー開発プロセスという内部の複雑さに依然として制約されています。迅速なイノベーションを実現するには、テクノロジーの構築と導入のプロセスを簡素化する必要があります。将来の税務・財務専門家は、最小限のコーディングで構築でき、シンプルなプロンプト機能を備えたアプリケーションを開発できる能力が求められます。こうしたテクノロジーは既に存在し、エージェント型AIの進歩により急速に進化しています。先進テクノロジーと密接に連携する能力を備えた、このようにアジャイルで効率的な新世代の税務・財務専門家は、イノベーションを促進し、発見を可能にし、生産性を向上させます。

 


3. 迅速に対応するオペレーティングモデルを可能にする明確な基準とガバンスの確立

 

効果的なガバナンスの枠組みは、統制と柔軟性のバランスを取り、企業が市場の混乱を乗り越え、適応力を維持することに役立ちます。また、規模拡大と迅速な対応を可能にするため、一元化と分散の適切なバランスを見いだすことも極めて重要です。

 


4. 部門横断的な連携の継続的な強化

税務・財務部門はIT部門と緊密に連携し、自らのニーズを明確に伝える必要があります。連携の強化は、税務・財務部門の目的を支援するテクノロジーとデータ戦略を実現します。この分野の改善を始める1つの方法は、データとテクノロジーがアクセス可能で統合され、企業全体の協働を支援するように設計されるプラットフォーム思考を採用することです。

 


5. 信頼できるプロバイダーとの連携による変革の加速

調査によれば、このような協働は企業が基準を構築することに役立ち、ツールやトレーニングを提供し、企業の長期的な成功を体系的かつ効果的に支援します。主要業務のコソーシングを含む戦略的パートナーシップは、税務・財務部門が変化を見据えた具体的なビジネス成果を生み出すことに役立ちます。


サマリー

激動の時代で成功するために、税務・財務部門は、今日の状況に対応し、明日の変化に備える自信を持って進化できる、アジャイルなオペレーティングモデルを設計する必要があります。これには、継続的なコンプライアンス、特に第2の柱のグローバルミニマム課税に関するコンプライアンス義務を果たすこと、データをAI対応にすること、そしてAIがもたらすインサイトと可能性から効果を生み出すために人材を再構築することが含まれ、最終的には、企業にさらに大きな価値をもたらすものです。

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