EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
本稿では前後編の2部構成で、前編はプライバシー対策を取り巻く環境や変化について企業がどう対応していくべきか、実例をもとに解説します。
2000年代以降、インターネットやSNS、クラウドサービスの普及により、個人情報が容易にグローバルに流通する時代が到来しました。これに伴い、本人の想定を超えた利用や不利益が生じ得るリスクが顕在化し、GDPRをはじめとする法規制の強化が世界的に進んでいます。最近ではAIの活用により、収集されるデータ量はさらに増加し、新たなリスクが生まれています。
こうした変化の中で、企業は 自社としてどこまでプライバシーに配慮するか を主体的に考え続ける必要があります。プライバシー対策は一度整備して終わるものではなく、継続的に取り組むべきテーマといえます。
一般的に、個人情報保護は法規制に基づく管理枠組みの説明として使われます。法令順守は最低限の要件にすぎません。一方、プライバシーは、家庭内の私事や個人の秘密に関すること、他人から干渉・侵害を受けない権利が含まれ、また最近では「自己の情報をコントロールできる権利」という意味でも使われることがあります。法規制上問題がなくても、想定外の利用が行われれば信頼低下につながります。
そのため企業は、法令対応とプライバシー配慮の両面を組み合わせたリスク管理が求められます。
大量データの解析を前提とするAI技術がもたらすプライバシーリスクにも注目されています。
生成AIにより、従来のデータ利活用からさらに収集データ量が拡大し、意図しない個人情報の収集や利用のリスクが高まっています。また推測、結合の技術が進化することで、個人情報が含まれない複数のデータを結合、分析することで個人が推測される「新たな個人情報」の生成にも懸念が広がっています。
企業は、①どのような情報を収集、入力し、活用しているか、②情報の取り扱い管理プロセスが整備され、検証されているか、③責任の所在が明確であるか、などの観点について、透明性をもった説明責任を果たすことが求められます。
自社の現状について、各国の法規制、業界ガイドライン、国内外の規格(JISQ15001、ISO/IEC27701等)の水準とのギャップを把握し、リスクを特定することが先決です。改善活動は、リスクが高い領域から進めることが一般的ですが、組織の役割定義やルール作り、運用は安全管理策の実施やモニタリングなど、現場レベルでの実行や継続的な運用の具体化を行います。一度整備して終わりではなく、継続的な改善を前提とした仕組設計がよいでしょう。
プライバシー対策は、AI以外のリスク領域、例えばセキュリティ、サステナビリティとも親和性があります。既存のノウハウの活用、横展開も検討されるとよいかと思います。
ITの進歩、ビジネスの変遷を背景とする各国法規制の強化、個人のプライバシー意識に対する高まり等の環境変化を受け、データ保護、プライバシー対応は企業の優先課題であり、またグローバルな取り組みが必要となっています。
EYは、グローバルネットワークやLawファームとも連携し、企業における態勢強化のための取り組みを支援します。
熊谷 真知子
EY新日本有限責任監査法人 Technology Risk事業部
法令順守だけでは、十分とはいえません。企業は、個人や社会の安心につながる設計へ視野を広げ、体制・運用・モニタリングを継続的サイクルとして組み込む必要があります。生成AIを含む新たな論点についても先回りして対応することが重要です。前編ではプライバシー対策の重要性と最初の取組みを紹介します後編では具体的な運用設計へ進みます。
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企業ごとにビジネスモデルや組織文化が異なるように、最適なガバナンスのあり方も多様です。重要なのは、自社の特性を踏まえながら、ビジネス推進とリスク対応のバランスをどう設計するかという視点です。変化の激しい環境下においてこそ、自社にとって持続可能なプライバシーガバナンスを構築し続けることが、企業価値の向上につながります。
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