ニュースリリース
2026年7月22日  | 東京, Japan

EY税理士法人調査、物価上昇でも海外赴任者の処遇制度の改定は限定的

「第10回EYモビリティサーベイ」を発表:海外赴任者の一時帰国支援・赴任支度金・株式報酬プランの実態を調査

プレス窓口

  • 物価上昇や為替変動など海外赴任を取り巻く環境の変化にもかかわらず、2020年以前から赴任支度金(海外赴任時の準備一時金)の金額を見直していない企業が全体の3割以上。
  • 海外赴任者の一時帰国費用補助について、家族帯同・単身・独身いずれの赴任形態でも、半数以上の企業が年1回以上の帰国を負担しているケースが主流であることが判明。
  • 赴任支度金(海外赴任時の準備一時金)を支給している企業は93%に上り、平均支給額は本人約30万円、帯同配偶者約16万円、帯同する子約5万円。
  • 海外赴任者向け株式報酬プランは71%の企業で未導入。一方で、EY税理士法人には導入や制度設計、税務コンプライアンス対応に関する相談が寄せられており、グローバル人材の獲得・維持に向けた施策として注目が高まりつつある。

EY税理士法人(東京都千代田区、統括代表社員 蝦名 和博)は、海外赴任者の実態調査である「EYモビリティサーベイ」の10回目を実施しました。今回は、海外赴任における処遇制度である「一時帰国費用補助」「赴任支度金」「株式報酬プラン」について、国内外企業の実態調査・分析を行いました。
本調査により、物価上昇や為替変動など海外赴任を取り巻く環境の変化にもかかわらず、一時帰国制度および赴任支度金については、改定の動きが限定的であることが浮き彫りとなりました。一方で、株式報酬プランに関しては、未導入企業が大半を占めるものの、一部で導入検討の動きが始まっており、グローバル人材の確保・定着(リテンション)の観点から、今後制度導入の必要性が高まる可能性があります。

本調査は、海外赴任者関連制度の現状を明らかにすることを目的に2026年2月16日~同年4月24日に実施し、国内外の企業から計213名(有効回答数:181件)の回答を得ました。回答者の多くは人事・経理・経営企画系の管理部門に所属する担当者です。
 

第10回EYモビリティサーベイの調査結果(一部抜粋)

一時帰国費用補助

  1. 一時帰国費用の補助頻度
    海外赴任者への一時帰国費用補助の頻度については、家族帯同・単身赴任・独身赴任を問わず年1回以上の頻度で帰国費用を会社が負担する企業が半数以上に達し、最も一般的なパターンとなっています。具体的に、家族帯同では60%が年1回以上補助し、19%が2年に1回以上補助するという結果で、前回2022年秋調査から大きな変化はありません(年1回以上:60%→60%、2年に1回以上:24%→19%)。単身赴任者では51%が年1回以上、30%が半年に1回以上の一時帰国費用を会社負担で補助しており、独身赴任者では62%が年1回以上、15%が半年に1回以上の補助を受けています。いずれも、ほとんどの企業が少なくとも年1回ペースの帰国支援を提供していることが分かります。
  2. 一時帰国費用の会社負担範囲
    一時帰国時の航空運賃に関して、「赴任地国内空港から日本の空港までの往復航空運賃」は約8割の企業が会社負担としており、これが最も一般的な支援内容です。また、帰国期間については、往復日数を含め10~14日と定める企業が31%で最多ですが、期間を特に定めない企業も22%存在します。一時帰国中の宿泊費まで補助する企業は1割強にとどまり、前回調査より低下しています(19.1% → 13.3%)。こうした結果から、近年の生活インフラ充実に伴い、慰労一時帰国(R&R)の制度は、生活支援よりも業務パフォーマンス維持の観点で設計される傾向がうかがえます。
  3. 一時帰国費用の負担先
    一時帰国費用を誰が負担するかについては、「日本本社が負担」とする企業が全体の48%と、約半数が本社での負担を選択しています。一時帰国費用についても、日本本社・現地法人間の費用負担の整理が実務上の検討事項となることが示唆されます。

赴任支度金

  1. 赴任支度金の支給状況
    海外赴任に伴い、93%の企業が何らかの赴任支度金(赴任準備一時金)を支給しており、海外赴任時の標準的な支援制度となっています。支給時期は「赴任前に支給」する企業が64%で最多でした。
  2. 赴任支度金の金額
    平均支給額は赴任者本人に約30万円、帯同する配偶者に約16万円、帯同する子には約5万円で、一般的に帯同者が増えるほど支給額も増額される傾向です。また、支給額の算定方法を見ると、役職や年収にかかわらず一律に同額を支給する企業が44%と最も多く、全体の傾向として一定額を定額給付するケースが主流です。
  3. 赴任支度金に関する課税・用途
    赴任支度金を日本国内でどのように税務上取り扱うかについては、対応が分かれています。42%の企業が非課税扱いとする一方、37%が課税対象としています。支給目的としては、現地生活に必要な家具・日用品などの購入費用をカバーするための支給とする企業が最も多く、その他赴任準備に伴う雑費全般の補填とするケースも見られます。額の見直し時期については、33%の企業が2020年以前から金額を改定しておらず、海外のインフレや物価上昇を踏まえた支給水準の更新が遅れている可能性も示唆されます。また、海外赴任終了後に支給される帰任支度金については、56%の企業が赴任時と同額を支給する基準としていました。

株式報酬プラン

  1. 株式報酬プランの導入状況
    海外赴任者向け株式報酬プランは71%の企業で未導入という結果となった一方で、EY税理士法人には導入や制度設計、税務コンプライアンス対応に関する相談が寄せられており、グローバル人材の獲得・維持に向けた施策として今後検討が進む可能性があります。
  2. 株式報酬の種類と課題
    現在、海外赴任者に提供されている株式報酬としてはRS(譲渡制限付株式)が最多で、その他ストック・オプション(SO)やパフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)などの欧米型の長期インセンティブも一部導入されています。しかし税務コンプライアンス管理に課題もあり、赴任先で株式報酬の税務コンプライアンスを適切に管理できている企業は全体の4割程度にとどまる状況です。

EY税理士法人 パートナー 藤井 恵(ふじい めぐみ)のコメント:
第10回EYモビリティサーベイでは、「一時帰国制度」「赴任支度金」「株式報酬プラン」といった海外赴任者の処遇制度の現状を多角的に調査しました。2022年調査にて反響の大きかった一時帰国制度および赴任支度金については、物価上昇など海外赴任を取り巻く環境の変化にもかかわらず、制度改定の動きが限定的にとどまっていることが浮き彫りとなりました。これは2020年以前から支度金の金額を見直していない企業が全体の3割以上に上るなど、近年のインフレ局面にあっても多くの企業でこれら制度が十分に改定されていない実態を示すものです。一方で株式報酬プランに関しては、現時点で未導入企業が大半を占めますが、一部で導入検討の動きが始まっており、今後グローバル人材の確保・定着(リテンション)の観点から制度導入の必要性が高まる可能性があります。
近年、円安や海外物価の上昇に伴い、海外赴任による金銭的メリットは従来に比べ大きく減少しています。赴任関連の従来からの制度である一時帰国支援や赴任支度金についても、物価や為替変動に合わせた抜本的な見直しが各社で求められています。また、デジタル技術の進展によりリモートワークが普及する中、帯同家族を伴っての長期海外赴任に慎重になる社員も増えており、海外赴任が会社からの「命令」というよりも、本人の任意選択になりつつある昨今の状況では、従来の福利厚生的な支援策だけでは人材の動機づけが不十分な場合もあるでしょう。グローバルな人材獲得競争が激化する中、従来の「日本人社員を一定期間海外に送り出すための制度」から、より多様な人材、家族形態、働き方、報酬制度を前提としたグローバルモビリティ制度へ移行する過渡期であることがうかがえます。他社動向やグローバル標準のインセンティブを踏まえ、海外赴任者に対する報酬体系・支援制度を再設計することが、効果的なタレントマネジメントの観点からも重要と考えられます。

調査結果の概要:
EY税理士法人では今後も本サーベイを継続的に実施し、ご回答いただいた方々には結果の共有および説明セミナーを行うなど、海外人事ご担当者に向けて有益な情報提供に努めてまいります。海外派遣を推進する日本企業にとっては、海外赴任者の処遇や制度の今日的な課題を認識し、人事ポリシーの再定義と実行へ迅速に移すことが不可欠です。特に一時帰国や赴任(帰任)支度金などの制度や水準の見直し、株式報酬プランの活用といった取り組みは、社員のモチベーション維持や海外任務への意欲醸成にも直結します。海外赴任関連の支援体制や報酬制度の整備・改善は、目先の福利厚生ではなく企業のタレントマネジメント戦略の重要要素として優先的に取り組むべき課題ではないでしょうか。

第10回EYモビリティサーベイ調査 概要

  • 目的: 海外赴任者に関する処遇・人事施策・税務等の実態を明らかにする調査
  • テーマ: 海外赴任における一時帰国・赴任支度金・株式報酬の現在地
  • 実施期間: 2026年2月16日(月)~4月24日(金)
  • 回答者数: 213名(有効回答数:181件)

調査結果の概要

主な調査結果のポイントは、以下の資料から詳細をご確認ください:

第10回 EYモビリティサーベイレポート

これまでの調査結果

第1回EYモビリティサーベイ
コロナ禍の一時帰国者処遇、利用できないベネフィット・残留赴任者の取り扱い、費用負担、赴任者総コスト、任地個人所得税
第1回:2021年10月22日(金)~同年11月26日(金)
EY調査、新型コロナウイルスの海外赴任への影響や赴任者コストに関する実態が明らかに

第2回EYモビリティサーベイ
ビザ・水際対策・海外出張・外国籍社員の受け入れ
第2回:2021年12月8日(水)~22年1月17日(月)
EY調査、新型コロナウイルスの水際対策による企業活動への影響の大きさが鮮明に

第3回EYモビリティサーベイ
海外赴任者の手当・給与・福利厚生・海外赴任者規程・海外出張時の二重課税
第3回:2022年2月14日(月)~同年3月31日(木)
EY調査、海外赴任者に関する処遇制度の見直し・再検討が急務に

第4回EYモビリティサーベイ
帯同する子の教育・帯同家族の就労・赴任前支度金
第4回:2022年9月8日(木)~同年10月14日(金)
EY調査、海外赴任時の帯同家族の就労状況、帯同する子の費用負担が課題

第5回EYモビリティサーベイ
海外赴任中の医療費・出産・子育てへのサポート体制・物価・為替変動への対応
第5回:2023年9月12日(火)~同年10月13日(金)
EY調査、海外赴任者の多様化進む、サポート体制の強化が急務に

第6回EYモビリティサーベイ
海外出張、海外人事体制、国をまたいだリモートワーク・バーチャルアサインメント
第6回:2024年4月8日(月)~同年5月31日(金)
EY調査、海外人事体制の強化、人員不足の解消が課題

第7回EYモビリティサーベイ
海外赴任者の税務(コスト負担/税・社保の管理体制/みなし税/税務ブリーフィング/夫婦合算申告/個人的収入に対する課税/退職金課税
第7回:2024年9月4日(水)~同年10月18日(金)
EY調査、海外赴任者関連の税務対策の遅れが明らかに

第8回EYモビリティサーベイ
海外赴任者の給与・手当・海外赴任者規程・労災特別加入制度
第8回:2025年1月23日(木)~同年3月14日(金)
EY調査、海外赴任者を取り巻く環境変化は大きいものの、給与・手当の水準に顕著な変化は見られない

第9回EYモビリティサーベイ
海外赴任者の帯同家族に関するサポート
第9回:2025年8月8日(金)~同年9月19日(金)
EY調査、海外赴任者を取り巻く環境は変わり、帯同家族へのサポート体制の見直しに焦点

EYについて

EYは、クライアント、EYのメンバー、社会、そして地球のために新たな価値を創出するとともに、資本市場における信頼を確立していくことで、より良い社会の構築を目指しています。 データ、AI、および先進テクノロジーの活用により、EYのチームはクライアントが確信を持って未来を形づくるための支援を行い、現在、そして未来における喫緊の課題への解決策を導き出します。 EYのチームの活動領域は、アシュアランス、コンサルティング、税務、ストラテジー、トランザクションの全領域にわたります。蓄積した業界の知見やグローバルに連携したさまざまな分野にわたるネットワーク、多様なエコシステムパートナーに支えられ、150以上の国と地域でサービスを提供しています。

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