リース会計基準の公表等に伴う会社計算規則の改正のポイント

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 小倉 幹生


Ⅰ. 本改正の概要

1. 用語の定義(会社計算規則第2条第3項第56号、第57号)

使用権資産を「リースの対象となる資産を使用する権利」、借手を「リースの当事者のうち、その対象となる資産を使用する権利を取得する者」と定義することとされています。

2. 使用権資産の区分(会社計算規則第74条)

使用権資産は、対応する原資産が有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産である場合に同じ区分に属するものとすることとされています。なお、販売用不動産である借地権付建物については、借地権に係る使用権資産が棚卸資産に該当し流動資産に属することとなりますが、流動資産に計上することは可能となっています(「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について(別紙)第2 2①)。

3. リースに関する注記(会社計算規則第108条)

リースに関する会計基準等で、注記が求められている以下の事項に合わせて、有価証券報告書提出会社においては、関連する会社計算規則について、次の開示項目の注記を求めることとされています(重要性の乏しいものを除く。)。ただし、連結計算書類を作成する株式会社については、個別注記表では会計方針の注記以外の記載は不要とすることとされており(会社計算規則第108条第2項)、会計方針に関する情報についても個別注記表に注記すべき事項が連結注記表に注記すべき事項と同一である場合は、その旨を個別注記表に記載することで足りることとされています(同条第3項)。

(1) 借手の注記事項

① 会計方針に関する情報
② リース特有の取引に関する情報
③ 当事業年度及び翌事業年度以降のリースの金額を理解するための情報

(2) 貸手の注記事項

① リース特有の取引に関する情報
② 当事業年度及び翌事業年度以降のリースの金額を理解するための情報

なお、借手がファイナンス・リースについて資産及び負債を計上する会計処理を行っていない場合には、従来と同様に以下の内容を開示することが提案されています(会社計算規則第108条第4項)。

(3) リースにより使用する固定資産に関する注記事項

① 取得原価相当額
② 減価償却累計額
③ 未経過リース料
④ 当該資産に係る重要な事項


Ⅱ. 適用時期(附則第1条、第2条第1項)

2025年3月31日に公布・施行し、リース会計基準の適用時期に合わせて、2027年4月1日以後に開始する事業年度又は連結会計年度において適用することとされています。なお、2025年4月1日以後開始する事業年度又は連結会計年度から早期適用することができることとされています。


Ⅲ. 経過措置(附則第2条第2項)

適用初年度におけるリースに係る会計方針の変更については、計算書類(連結計算書類)の主な項目に対する影響額に代えて、次に掲げる事項を注記することができます。

  • 適用初年度の期首の貸借対照表(連結貸借対照表)に計上されているリース負債に適用している借手の追加借入利子率の加重平均
  • 加重平均後の追加借入利子率で割り引いた適用初年度の前事業年度(前連結会計年度)の末日において開示したリース(ファイナンス・リースを除く。)の未経過リース料と、適用初年度の期首の貸借対照表(連結貸借対照表)に計上されているリース負債との差額の説明

Ⅳ. 公開草案からの変更点

会社計算規則第108条第1項のリースに関する注記については、有価証券報告書提出会社以外の株式会社のリースに関しては、その実務上の負担等も考慮し、引き続き従前の注記を許容することを意図しているため、注記を要しないことを明らかにする変更がされました。

また、借手の定義につき、会社以外の個人等も含まれることを示すため、「リースの当事者のうち、その対象となる資産を使用する権利を取得する会社」から「リースの当事者のうち、その対象となる資産を使用する権利を取得する者」へ変更されました。

これらを除き、内容に関わるような公開草案からの変更はありません。


なお、本稿は本改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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