EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 消費財セクター
公認会計士 清水 裕介
第1回では、化粧品・トイレタリー業界の範囲と各種商流について解説しました。第2回では、化粧品・トイレタリー業界における収益認識に関連する特徴的な取引慣行及び会計処理について、以下の順番で解説します。
なお、文中の意見に関する部分は、私見であることをお断り申し上げます。
第1回で解説した通り、化粧品・トイレタリ―業界においてはいくつかの商流があります。制度品流通のように、比較的高価格帯の化粧品は、化粧品メーカーが百貨店や化粧品専門店などの小売業者へ直接販売されます。この商流において、百貨店などでの化粧品の販売は、実務上、委託販売、いわゆる消化仕入の形態が採用されることがあります。
収益認識に関する会計基準(以下、「収益認識会計基準」)及び収益認識に関する会計基準の適用指針(以下、「収益認識適用指針」)によると、商品又は製品を最終顧客に販売するために、販売業者等の他の当事者に引き渡す場合には、その時点で、販売業者等が当該商品又は製品の支配を獲得したかどうかを判定します。販売業者等が支配を獲得していない場合には、委託販売契約として商品又は製品を保有している可能性があり、その場合は、販売業者等への引渡し時には収益を認識しません(収益認識適用指針第75項)。委託販売契約であることを示す指標としては、例えば、次のものがあります(収益認識適用指針第76項)。
(1) 販売業者等が商品又は製品を顧客に販売するまで、あるいは所定の期間が満了するまで企業が商品又は製品を支配していること
(2) 企業が、商品又は製品の返還を要求することあるいは第三者に商品又は製品を販売することができること
(3) 販売業者等が、商品又は製品の対価を支払う無条件の義務を有していないこと
(ただし、販売業者等は預け金の支払を求められる場合がある)
通常、消化仕入においては、化粧品メーカーから百貨店などに商品を引き渡したときには収益を認識せず、商品が店頭で消費者へ販売されたときに化粧品メーカーから百貨店などの小売業者への収益を認識します。このように、収益認識のタイミングが売り先への出荷時点や検収時点等ではないため、注意が必要です。
比較的低価格帯の化粧品や大半のトイレタリー用品は、一般的にメーカーから卸売業者へ販売され、小売業者(量販店、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど)を通じて、最終的に消費者に販売されます。この商流においては、取引慣行としてリベートが広く利用されています。
リベートは売上割戻とも呼ばれ、一定期間に多額又は多量な取引をした小売業者や卸売業者に対して、メーカー側が売上代金の返戻を行うことを指します。契約に定められた一定期間の取引数量、取引金額に基づき支払われるリベート、あらかじめ契約に定められた一定以上の取引数量、取引金額を満たした場合に支払われる条件達成型など様々なリベートがあります。また、得意先に対して自社の製品の販売促進を図るために、販売促進費補助など、営業政策上の観点から、得意先の営業地域の特殊事情や現在までの得意先の貢献度合い等に応じた得意先への補塡的なものもあり、これらを含めて「広義のリベート」として存在します。
また、その決済方法としては、直接金銭を支払う方法や売掛金と相殺する方法などが一般的です。
収益認識会計基準では、リベートは、顧客から受領する別個の財又はサービスとの交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額します(収益認識会計基準第63項)。
リベートの条件には様々なケースが存在するため、期末時点で最終的なリベート金額が確定していない場合もあります。例えば、条件達成型リベートでは取引金額によりリベート額が変更となるため、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分(変動対価)が含まれることになります。この場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に、企業が権利を得ることとなる対価の額を見積る必要があります(収益認識会計基準第50項)。このため、期末においては、計上した収益に対応して発生すると見込まれる条件達成型リベート等を、適切に見積り、収益から減額する必要があります。
化粧品・トイレタリー業界では新商品と既存商品との入れ替えが頻繁にあり、ブランド価値の毀損を避けるためにメーカーが卸売業者や小売業者から旧商品の返品を受け入れる取引慣行があります。また、使用期限が設定されている商品については、使用期限が到来してなくても、使用期限までの期間が一定期間未満となると、市場に流通する商品の品質確保のために返品を受け入れることがあります。
収益認識会計基準においては、財やサービスの移転と交換に受け取る対価のうち、顧客に返金(返品)すると見込む部分については、返金負債を認識し、売上から控除します(収益認識会計基準第53項)。
また、返金負債の決済時に顧客から商品又は製品を回収する権利について、返品資産として認識します(収益認識適用指針第85項)。なお、売上計上時点で認識する資産の金額については、返品された商品又は製品を廃棄するのか、再販するのかなど、企業が返品された商品又は製品をどのように取り扱うのかに応じて、返品資産の評価額が異なるものと考えられます。このように、返品に関する検討に当たっては、企業ごとに返品取引の実態を考慮して、各社の返品在庫の評価方針に当てはめて判断することが求められます。
返品権付きの商品又は製品の収益計上時の仕訳は次のとおりです。
ポイント制度は、企業の販売促進の手段の一つとして百貨店、量販店、スーパーなどの小売業者が広く採用している制度です。化粧品・トイレタリー業界では、化粧品のカウンセリング販売、訪問販売及び通信販売などの消費者とメーカーが直接取引する商流において導入しているケースが見られます。例えば、インターネットの通信販売などでは、購入金額の一定割合を顧客にポイントとして付与し、顧客は次回購入時に蓄積したポイントを利用できるシステムを採用しています。
ポイントの付与に関して、収益認識会計基準に従って、「商品の提供」と「ポイントの利用による将来の商品の提供」が別個の履行義務かどうかを判断します。別個の履行義務である場合、「商品の提供」と「ポイントの利用による将来の商品の提供」に区分し、後者については、契約負債を計上して、収益を繰り延べます。
商品の販売時にポイントを付与する場合の仕訳は次のとおりです。
仕訳の計上にあたっては、取引価格を独立販売価格の比率で「商品の提供」及び「ポイントの利用による将来の商品の提供」に配分します。
例えば、取引価格が1,000、将来ポイントの利用が見込まれる部分が100の場合、独立販売価格の比率に基づき、以下のように配分します。
この場合の商品の販売時の仕訳は以下の通りです。
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