VC&ファンド業 第11回:キャリード・インタレストの概要と実務上の論点


EY新日本有限責任監査法人 VC&ファンドセクター
公認会計士 坂本 健一

1. はじめに

独立系GP(個人のファンドマネージャー)の増加に伴い、投資事業有限責任組合においてもキャリード・インタレストを導入する事例が増加しており、投資事業有限責任組合契約書例(令和7年6月 経済産業省産業組織課)(以下、令和7年版モデルLPA)の公表により、さらにその傾向が高まっております。また、ファンド存続期間後半にかけて多くのファンドマネージャーが実際にキャリード・インタレストを獲得している実例がみられるようになってきました。ファンド運営においてGPのインセンティブはキャリード・インタレストの獲得にあると言っても過言ではありません。

今回は、このようにVC&ファンド業を理解するうえで欠かすことのできなくなったキャリード・インタレストの概要と実務上の論点について解説します。

2. キャリード・インタレストとは

キャリード・インタレストとはファンドマネージャーが組合員として運用する組合事業から出資割合を超えて受け取る組合利益の分配と定義することができます。ILPA(Institutional Limited Partners Association(非上場株式投資を行うLPのために設立された国際的な非営利団体))がプライベート・エクイティ・ファンドにおけるベスト・プラクティスを提示することを目的として策定したILPA Principles 3.0においても、キャリード・インタレストは、ファンドの法的文書に明記され、投資家の投資元本を回収し、適用される場合は定義されたハードル・レートを超えた後に支払われる、投資の実現利益の内、GPに帰属する割合である、と記載されております。

キャリード・インタレストは、「Carry(キャリー)」とも言われ、日本語では「成功分配」とも訳されることがあります。

経済産業省が公表する「投資事業有限責任組合契約書例」においては、令和7年版モデルLPAで初めて「キャリード・インタレスト」という言葉が明記されることになりましたが、平成30年版モデルLPAでは実質的にキャリード・インタレストと同じ概念の分配が規定されていたこと、グローバルでは既に普及した概念であったことから、令和7年より前に設立されたファンドにおいても導入されている場合があります。

キャリード・インタレストと似た概念として、成功報酬がありますが、両者の相違点については「VC&ファンド業 第6回:有責組合に関連する会計処理の概要(後編)」にて、詳細に解説しておりますのでそちらをご参照ください。

3. キャリード・インタレストの計算

キャリード・インタレストの計算については、ウォーターフォール(Waterfall)と呼ばれるファンド財産の分配の順序・方法に従って行われます。このウォーターフォールはヨーロピアン・ウォーターフォールとアメリカン・ウォーターフォールの2つの類型に大別されます。ヨーロピアン・ウォーターフォールは出資約束金額全額又は分配の時点における出資履行金額全額等を基礎として算定されるハードルレートを超える分配が発生した場合にキャリード・インタレストが分配されるウォーターフォールの設計を指し、アメリカンウォーターフォールは分配の時点までに処分された投資証券等に係るポートフォリオ投資に対する出資履行金額又は分配が行われるポートフォリオ投資に対する出資履行金額等を基礎として算定されるハードルレートを超える分配が発生した場合にキャリード・インタレストが分配されるウォーターフォールの設計を指します。両者の間には、ヨーロピアン・ウォーターフォールが投資の回収によりファンドに利益が生じた場合であっても分配累計額が少なくとも分配時の出資履行金額全額あるいは出資約束金額全額以上の一定金額に達するまでキャリード・インタレストが分配されないのに対し、アメリカン・ウォーターフォールはファンドにおける累計損益が利益になった場合又は投資の回収によりファンドに利益が生じた都度にキャリード・インタレストが分配される、という違いがありますが、その設計はファンドによって変えることができます。これから、令和7年版モデルLPAにおけるウォーターフォールについて解説していきますが、前述しました通りファンドによってウォーターフォールの設計を変えることができるため、全てのファンドに当てはまる内容ではないことに留意が必要になります。

(1) 令和7年版モデルLPAのウォーターフォール

令和7年版モデルLPAでは、ヨーロピアン・ウォーターフォールが採用されており、以下の順序で分配を実施することとなっております(第29条第2項並びに第4項)。

① 出資履行金額相当の分配
② 優先分配
③ キャッチ・アップ(キャリード・インタレスト)
④ キャリード・インタレスト

なお、令和7年版モデルLPAでは、キャリード・インタレスト(上記③④)の分配を受けるのは無限責任組合員又は特別有限責任組合員(以下、GP等)とされております。特別有限責任組合員とは、法人を無限責任組合員とし、かつ、当該法人の役職員を特別有限責任組合員として、当該役職員がキャリード・インタレストを受領するといったストラクチャー(「特別LPストラクチャー」)のために設計されており、法人を無限責任組合員としつつ、当該法人の役職員がキャリード・インタレストの税務上の取扱い(VC&ファンド業 第6回:有責組合に関連する会計処理の概要(後編)参照)を受けることができるというメリットがあります。

これから、分配の各順序について詳細に解説していきます。

① 出資履行金額相当の分配

令和7年版モデルLPAでは、まず、当該対象組合員等の出資履行金額の合計額と同額に達するまで分配を実施することとなります(第29条第4項第①号)。この当該対象組合員等には、令和7年版モデルLPAによりますと、GPである無限責任組合員が含まれることに留意が必要です。

 

令和7年版モデルLPA第29条第4項第①号
第一に、当該分配において前二項に基づき当該対象組合員等に対し行う分配額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。)(以下「分配可能額」という。)と分配累計額の合計額が当該対象組合員等の出資履行金額の合計額と同額となるまで、当該対象組合員等に分配可能額の100%を分配する。

② 優先分配

分配累計額が出資履行金額相当額に達した後は、当該対象組合員等の出資履行金額の一定割合(α%)に相当する金額に達するまで分配を実施します(第29条第4項第②号)。当該一定割合は一般的にハードル・レート(Hurdle Rate)と呼ばれており、ハードル・レートについては、複利とする例や累積内部収益率(Internal Rate of Return(IRR))を参照する例もみられます。また、優先分配の対象は当該対象組合員等であり、無限責任組合員も出資割合に応じて優先分配を受け取ることができます。

 

令和7年版モデルLPA第29条第4項第②号
第二に、分配累計額及び分配可能額の合計額から当該対象組合員等の出資履行金額の合計額を控除した額が、当該対象組合員等の出資履行金額の合計額に[α]%を乗じた金額と同額になるまで、当該対象組合員等に分配可能額の100%を分配する。

③ キャッチアップ(キャリード・インタレスト)

令和7年版モデルLPAでは第29条第4項第②号に基づく優先分配額が確保されたのちに、キャリード・インタレストの分配が行われることとなりますが、キャリード・インタレストの分配については、2段階に分けた分配の順序が規定されております。キャリード・インタレストの分配の1段階目として、令和7年版モデルLPA第29条第4項第③号では、優先分配額の一定割合(β%)に達するまでGP等に優先的にキャリード・インタレストが分配されることとなります。このような性質から本条項はキャッチアップ条項ともよばれます。本条項に基づきますと、当該対象組合員等に対して行われた分配金の累計額から組合員等の出資履行金額の合計額を控除した金額とキャリード・インタレスト累計額の合計額のβ%に相当する金額に達するまで、GP等に対するキャリード・インタレストとして分配可能額のγ%を分配し、当該対象組合員等には分配可能額の100%-γ%を分配することとなります。

 

令和7年版モデルLPA第29条第4項第③号
第三に、当該分配までに本項に基づき当該対象組合員等に関し[無限責任組合員/特別有限責任組合員]に分配されたキャリード・インタレストの総額及び当該分配において当該対象組合員等に関し同項に基づき[無限責任組合員/特別有限責任組合員]に対して分配されるキャリード・インタレストの額の合計額(以下「キャリード・インタレスト累計額」という。)が、次に規定する金額の合計額の[β]%相当額と同額となるまで、[無限責任組合員/特別有限責任組合員]にキャリード・インタレストとして分配可能額の[γ]%を分配し、当該対象組合員等に分配可能額の[(100-[γ])]%を分配する。

(i) 分配累計額及び当該分配において本項第①号から本号までに基づき当該対象組合員等に対して行われる分配額の合計額から当該対象組合員等の出資履行金額の合計額を控除した額
(ii) キャリード・インタレスト累計額

④ キャリード・インタレスト

令和7年版モデルLPA第29条第4項第③号に基づく分配(キャッチアップ)が完了した後は、キャリード・インタレストの2段階目の分配が実施されます。キャリード・インタレストの2段階目の分配では、分配可能額の一定割合(β%)をGP等に分配し、分配可能額の100-β%が当該対象組合員等へ分配されます(第29条第4項第④号)。
 

令和7年版モデルLPA第29条第4項第④号
第四に、[無限責任組合員/特別有限責任組合員]にキャリード・インタレストとして分配可能額の[β]%を分配し、当該対象組合員等に分配可能額の[(100-[β])]%を分配する。

(2) クローバック

ここで、キャリード・インタレストを理解するうえで、重要な取り決めであるクローバック(GPクローバックとも言います)について解説します。

クローバックとは、組合の清算時において、GP等に分配されたキャリード・インタレストの累計額が、LPAで想定するキャリード・インタレストの分配割合(全ての投資を通じて算定)を超えることとなる場合、GP等にその超過額を組合財産へ返還させることによって調整を行うことを意味し、令和7年版モデルLPAにおいても第47条第3項に規定されております。前述したウォーターフォールの類型では、ヨーロピアン・ウォーターフォールに比べて、アメリカン・ウォーターフォールを採用する場合において、GP等への分配が相対的に早い時期に生じることとなるため、クローバックが発生する蓋然性が高くなることとなります。また、ヨーロピアン・ウォーターフォールであっても、出資約束金額全額を基準とする場合に比べて、分配時の出資履行金額全額を基準とする場合には、GP等への分配が相対的に早い時期に生じることとなるため、クローバックが発生する蓋然性が高くなることとなります。

(3) 概念図

ここまで、令和7年版モデルLPAにおけるウォーターフォールを解説してきましたが特にキャッチアップ条項(第29条第4項第③号)が難解であるため、優先分配の分配完了後に生じた分配可能額が令和7年版モデルLPAに基づくとどのように分配されるのかを図解していきます。

① n-1期

前提

図1
図2

図Aのような分配可能額が生じた場合、令和7年版モデルLPA第29条第4項第③号より、以下のいずれか小さいほうをキャリード・インタレストとしてGPに分配し、残額をGP及びLPに出資割合に応じて分配することとなります。

i (分配可能額+分配累計額-出資履行金額)×20% - キャリード・インタレスト累計額
((100+1,000-500)×20%-0=120)
ii 分配可能額×80%
(100×80%=80)

図Aのケースではiより、iiの方が小さいことから、ii分配可能額×80%がGPに分配され、残額(分配可能額×(1-80%))はGP及びLPに出資割合に応じて分配されることとなります(図B)。

② n期

前提

図3
図4

図Cのような分配可能額が生じた場合、令和7年版モデルLPA第29条第4項第③号より、以下のいずれか小さいほうをキャリード・インタレストとしてGPに分配し、残額をGP及びLPに出資割合に応じて分配することとなります。

i (分配可能額+分配累計額-出資履行金額)×20%-キャリード・インタレスト累計額
((100+1,100-500)×20%-80=60)
ii 分配可能額×80%
(100×80%=80)

図Cのケースではiより、iiの方が大きいことから、i(分配可能額+分配累計額-出資履行金額)×20%-キャリード・インタレスト累計額がGPに分配され、残額(分配可能額×(1-80%))はGP及びLPに出資割合に応じて分配されることとなります(図D)。

③ n期(並び替え)

図5

②n期の分配後の図Eを並び変えると、結果的に、出資履行金額に相当する分配はGP及びLPに出資割合に応じて分配し、出資履行金額に相当する分配を超える分配累計額×20%をキャリード・インタレストとしてGPに分配し、その残額である出資履行金額に相当する分配を超える分配累計額×(100%-20%)をGP/LPに出資割合に応じて分配する結果となることが分かります(図F)。

以後、分配が発生した場合においても、令和7年版モデルLPA第29条第4項第④号より、分配可能額×20%がGPに分配され、残額をGP及びLPに出資割合に応じて分配することから、結果的に出資履行金額に相当する分配を超える分配累計額×20%をキャリード・インタレストとしてGPに分配し、出資履行金額に相当する分配を超える分配累計額×(100%-20%)をGP及びLPに出資割合に応じて分配する結果となります。

このように、キャッチアップ条項は非常に複雑な計算が必要になりますが、結果的にはハードルレートを超えて、かつキャッチアップを上回るほどの十分な分配が生じる状況においては、出資履行金額に相当する分配を超える分配累計額の20%がキャリード・インタレストである、という単純な結果が導かれることとなります。

4. キャリード・インタレストの会計処理

ここからは、キャリード・インタレストに関する会計処理について、ファンド及びその契約当事者毎の会計処理について解説します。

(1) 投資事業有限責任組合における会計処理

キャリード・インタレストは分配金であるため、通常の分配金と同様の会計処理が行われます。

(2) GP会社における会計処理

GP会社における会計処理を決定するうえで、キャリード・インタレストを、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の対象とすべきか企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の対象とすべきかを検討する必要があります。IFRS会計基準を適用する場合、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の対象とする事例がございますが、日本の会計基準の場合、いずれの会計基準を適用するかは実態を考慮し、GP会社と監査人との間で協議の上、判断する必要がございますので、ご留意ください。なお、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」に基づき会計処理を行う場合、キャリード・インタレストは「変動対価」に該当すると考えられますので、同第55項より、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めることとなると考えられます。

(3) LPにおける会計処理

LPにおいては、移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」第308項より、契約内容の実態及び経営者の意図を考慮して、経済実態を適切に反映する会計処理を選択することとなると考えられます。なお、キャリード・インタレストの発生に伴って生ずる組合契約に基づく組合員間の持分変動(令和7年版モデルLPAの場合、第28条第3項)については、持分相当額を当期の純損益として計上することが考えられます。

5. 投資事業有限責任組合におけるキャリード・インタレストの開示

業種別実務指針第38号における表示・開示に関する取り扱いをまとめると以下の通りとなります。

貸借対照表/損益計算書分配金として会計処理が行われるため、損益計算書には計上されず、分配金累計額として貸借対照表に計上されます。
注記業種別実務指針第38号で例示されているキャリード・インタレストに関する注記はありません。
業務報告書業種別実務指針第38号で例示されているキャリード・インタレストに関する記述はありません。
附属明細書

分配金として会計処理が行われることから「組合員の持分に関する明細」においては、「当期分配金」に含めて記載されます。
また、「組合員の持分に関する明細」において、期末持分の計算に影響するものと判断される場合に、表中又は注記に以下の記載が求められます。

  • キャリード・インタレストの発生に伴って生ずる組合契約に基づく組合員間の持分変動
  • 当期末時点で組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定したとき計算される分配すべきキャリード・インタレスト

業種別実務指針第38号では「キャリード・インタレストの発生に伴って生ずる組合契約に基づく組合員間の持分変動」及び「当期末時点で組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定したとき計算される分配すべきキャリード・インタレスト」について、「表中」に記載した「組合員の持分に関する明細」の記載例はないので、実務的には各組合によって記載が様々になる可能性がございますが、以下に表中に記載した場合の参考例を以下に記載します。どのような記載をする場合においても、脚注にて、組合員間の持分変動の根拠となる組合契約の規定や当該規程に基づき持分の調整を行っている旨の説明を行うことが望ましいと考えられます。

(参考例)

図6

(注1)実現キャリード・インタレスト調整額には、組合契約第28条第3項に基づく組合員間の当期の持分調整額を記載しております。
(注2)潜在キャリード・インタレストとは、当期末時点で当組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定したとき計算される組合契約第29条第4項第③号及び第④号に準じた無限責任組合員に対する分配額の内、未分配の額であり、発生が確定しているものではございません。潜在キャリード・インタレスト調整額には、組合契約第28条第3項に準じた組合員間の持分調整額を記載しております。

6. 設例

最後に設例を用いて、キャリード・インタレストの分配に伴う組合員間の持分調整がどのように行われるかを解説します。

設例の前提

GPの出資割合

1%

キャリード・インタレスト発生要件

出資履行金額を超える分配が生じる場合にキャリード・インタレストが発生する。

(優先分配割合(α%)やキャッチアップ割合(γ%)は規定されていないLPAを前提とする)

キャリード・インタレスト割合

20%

投資の評価方法

時価

(1) 第1期

① 前提

第1期の状況

  • 期首に9百万円の出資を受け入れ
  • 期中に3件、合計8百万円の投資(未上場株式)実行
  • 投資(未上場株式)の期末時価は8百万円(投資(未上場株式)の取得原価は8百万円) 
  • 当期発生したその他損益は△0.2百万円

② 投資事業有限責任組合における財務諸表及び附属明細書(一部)

第1期の貸借対照表

図7

第1期の損益計算書

図8

第1期の組合員の持分に関する明細

図9

③ 解説

第1期では、分配が生じていないことから、当然キャリード・インタレストの分配も生じません。

また、当期末時点で組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定したときに計算される分配すべきキャリード・インタレスト(以下、潜在キャリード・インタレスト)の該当もないことから、組合員の持分に関する明細ではその調整額(以下、潜在キャリード・インタレスト調整額)はLP・GPともにゼロとなり、組合員の持分に関する明細では、各項目に関するGPとLPの帰属金額は出資割合に応じた金額となります。

(2) 第2期

① 前提

第2期の状況

  • 期中に投資(未上場株式)1件を8百万円で売却(本売却対象投資(未上場株式)の前期末時価は4百万円)
  • 期中に8百万円の分配を実施
  • 投資(未上場株式)残高(2件)の期末時価は7百万円(投資(未上場株式)の取得原価は4百万円)
  • 当期発生したその他損益は△0.2百万円

② 投資事業有限責任組合における財務諸表及び附属明細書(一部)

第2期の貸借対照表

図10

第2期の損益計算書

図11

第2期の組合員の持分に関する明細

図12

③ 解説

第2期では、分配が生じたものの、分配累計額が出資履行金額を上回らなかったため、キャリード・インタレストの分配は生じません。

キャリードインタレストの分配は生じませんが、当期末時点で組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定したときにキャリード・インタレストの分配が生じる得ることとなるため、第2期においては組合員の持分に関する明細において潜在キャリード・インタレスト調整額が生じることとなります。潜在キャリード・インタレスト調整額については、当期末時点で組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定し、その場合にGPに帰属するキャリード・インタレストの金額を算定することで計算されます。

  • GPに帰属する潜在キャリード・インタレスト調整後期末持分の計算式
    (期末持分+分配累計額-出資履行金額)×20%+[期末持分-(期末持分+分配累計額-出資履行金額)×20%]×GPの出資割合
    [第2期へのあてはめ]
    (7,600,000円+8,000,000円-9,000,000円)×20%+[7,600,000円-(7,600,000円+8,000,000円-9,000,000円)×20%]×1%=1,382,800円
    [計算式の解説]
    第2期においては、期末持分が7,600,000円であり、分配累計額が8,000,000円であることから、当期末時点で組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定する場合、組合における分配可能額と分配累計額の合計額は15,600,000円となります。この内、出資履行金額である9,000,000円を超える金額の20%がキャリード・インタレストとなりますので、潜在キャリード・インタレストの金額は6,600,000円に20%を乗じた金額となり、1,320,000円という結果になります。ただし、1,320,000円をキャリード・インタレストとしてGPに分配すると仮定した場合、期末持分の7,600,000円の内、出資割合に応じて分配される金額は潜在キャリード・インタレストの金額を控除した6,280,000円となりますので、その内、GPに帰属する金額はGPの出資割合1%を乗じた金額である62,800円となります。このように潜在キャリード・インタレスト調整後期末持分の内、GP帰属額は、潜在キャリード・インタレストの金額である1,320,000円と、出資割合に応じて分配され潜在キャリード・インタレストを控除した期末持分のGP帰属額である62,800円の合計額1,382,800円となりますので、潜在キャリード・インタレスト調整額は潜在キャリード・インタレスト調整後期末持分のGP帰属額である1,382,800円と期末持分のGP帰属額である76,000円の差額、1,306,800円となります。潜在キャリード・インタレスト調整により期末持分合計額に増減は生じないことから、LPの潜在キャリード・インタレスト調整額合計はGPの潜在キャリード・インタレスト調整額の反対の符号の数字と一致します。

(3) 第3期

① 前提

第3期の状況

  • 期中に投資(未上場株式)1件を6百万円で売却(本売却対象投資(未上場株式)の前期末時価は4百万円)
  • 期中に6百万円の分配を実施
  • 投資(未上場株式)残高(1件)の期末時価は6百万円(投資(未上場株式)の取得原価は2百万円)
  • 当期発生したその他損益は△0.2百万円

② 投資事業有限責任組合における財務諸表及び附属明細書(一部)

第3期の貸借対照表

図13

第3期の損益計算書

図14

第3期の組合員の持分に関する明細

図15

③ 解説

第3期においては、分配累計額が出資履行金額を超えるため、キャリード・インタレストの分配が行われます。第3期の分配が生じた時点で分配可能額と分配累計額の合計額が14,000,000円となるのに対し出資履行金額は9,000,000円であることから、その差額の5,000,000円に20%を乗じた金額である1,000,000円がキャリード・インタレストとして分配されることとなります(以下、分配済みのキャリード・インタレストを実現キャリードインタレストといいます)。

このようにキャリード・インタレストの分配が生じてはおりますが、前述の通り、実現キャリード・インタレストは通常の分配金と同様の会計処理が行われるため、貸借対照表と損益計算書からはキャリード・インタレストが分配されているかどうか判別できないこととなります。

一方で、組合員の持分に関する明細では実現キャリード・インタレストの発生により、キャリード・インタレストの発生に伴って生ずる組合契約に基づく組合員間の持分変動の金額(以下、実現キャリード。インタレスト調整額)の記載が行われることとなります。

  • GPに帰属する当期損益(実現キャリード・インタレスト調整額の調整後)の計算式
    実現キャリード・インタレスト+(当期損益-実現キャリード・インタレスト)×GPの出資割合
    [第3期へのあてはめ]
    1,000,000円+(4,800,000円-1,000,000円)×1%=1,038,000円
    [計算式の解説]
    実現キャリード・インタレスト調整額は、第2期の潜在キャリード・インタレスト調整額と同じ考え方に基づき計算されております。具体的には実現キャリード・インタレストの金額である1,000,000円がGPに帰属することで、当期損益4,800,000円の内、持分割合に応じて帰属する金額は3,800,000円となることから、GPの当期損益の帰属額は実現キャリード・インタレストの金額である1,000,000円と実現キャリード・インタレストを控除した当期損益である3,800,000円にGPの出資割合の1%を乗じた金額との合計額1,038,000円となります。

GPに帰属する実現キャリード・インタレスト調整額は、GPに帰属する当期損益(実現キャリード・インタレスト調整額の調整後)1,038,000円とGPに帰属する当期損益(実現キャリード・インタレスト調整額の調整前)48,000円との差額、990,000円となります。また、潜在キャリード・インタレスト調整額同様に、実現キャリード・インタレストの調整によって当期損益合計が増減することはないので、LPに帰属する実現キャリード・インタレストの調整額は、GPに帰属する実現キャリード・インタレスト調整額の反対の符号の数値と一致します。

組合員の持分に関する明細における当期分配金についても、GPは持分割合に応じた分配金である50,000円に実現キャリード・インタレストの金額である1,000,000が加算された金額となります。

このようにキャリード・インタレストの分配が行われることで、一部の項目については持分割合に応じた金額とならないこととなりますが、実現キャリード・インタレストの調整とキャリード・インタレストの分配が行われることで、期末持分は出資割合に応じた帰属額となります。

また、当期末時点で組合を清算し保有する投資の全てを時価で処分すると仮定したとき、キャリード・インタレストの分配が生じることとなるため、第3期においても組合員の持分に関する明細において潜在キャリード・インタレスト調整額が生じることとなりますが、計算方法については第2期でご説明した内容と同様となります。


(4) 第4期

① 前提

第4期の状況

  • 期中に投資(未上場株式)1件を7百万円で売却(本売却対象投資(未上場株式)の前期末時価は6百万円)
  • 期中に7.2百万円の分配を実施
  • 当期発生したその他損益は△0.2百万円

② 投資事業有限責任組合における財務諸表及び附属明細書(一部)

第4期の貸借対照表

図16

第4期の損益計算書

図17

第4期の組合員の持分に関する明細

図18

③ 解説

第4期においても、出資履行金額が増加していない一方で、分配累計金額が増加したため、キャリード・インタレスト分配が行われます。第4期で発生した分配金は全額が出資履行金額を超える分配金であることから、分配可能額7,200,000円に20%を乗じた金額である1,440,000円がキャリード・インタレストとしてGPに分配されることとなります。

貸借対照表、損益計算書及び組合員の持分に関する明細における金額は第3期までと同様の考え方に基づいて算定されますので、詳細な説明は省略いたします。

参考文献

  • 『キャリード・インタレストの税務上の取扱いに係る公表文』 金融庁(令和3年4月1日)
  • 『ILPA Principles 3.0』 Institutional Limited Partners Association(令和元年6月1日)
  • 『投資事業有限責任組合契約書例(和文版)』 経済産業省(令和7年6月23日)
  • 『逐条解説 投資事業有限責任組合契約書例(和文版)』 経済産業省(令和7年6月23日)
  • 『投資事業有限責任組合契約(例)及びその解説』 経済産業省(平成30年6月23日)


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