オーストラリア税務局(ATO)、国別報告の開示(PCbCR)の作成および暫定的な資格要件に関する手引き草案を公表

  • オーストラリア税務局(ATO:Australian Taxation Office)は2025年10月31日、国別報告の開示(PCbCR:public country-by-country reporting )における年次報告書の作成に関する手引き草案を公表した。最初の報告書の提出期限は(6月決算企業の場合)2026年6月30日となっている。
  • このATOの手引き草案は、作成者向けの段階を追った実務的なガイダンスを提供し、報告書フォームの各セクションおよびフィールドの記入方法(免除を受けている場合を含む)を説明するとともに、開示内容の決定におけるいくつかの一般的なシナリオを紹介している。
  • 新たな報告要件の遵守のため、事業体は詳細な情報(グループメンバー間の租税債務の配分を含む)の収集および報告に必要とされるシステムを確実に機能させなければならない。
  • 影響を受ける事業体は自社の内部プロセスおよび文書化実務を再確認することにより、来る提出期限に向けて準備を整えるとともにATOの要件の確実な遵守を図り、潜在的なペナルティを回避する必要がある。

ATOは、PCbCRにおける年次報告書フォームである国別(CbC:country-by-country)開示報告書の作成に関する手引き草案をコンサルテーションのために公表しました。

これに先立つ形で、ATOは最近、報告書提出のための承認済みXMLスキーマ、および付随する業務実施ガイド(business implementation guide)の手引きを公表しています。

PCbCRのルールは広範にわたっており、オーストラリアの大企業グループとオーストラリアで事業を営む外国の大企業グループの両方に影響を及ぼします。最初のCbC開示報告書のATO宛提出期限は(2025年6月期の決算企業の場合)2026年6月30日となっており、その後ATOはこれらの報告書をdata.gov.au上で開示する予定です。報告書の作成にあたっては、必要な情報を識別可能にするための幅広い準備作業が求められる可能性があります。グローバル親事業体(PCbCR親会社)は、オーストラリアの事業体であるか海外の事業体であるかに関わりなく、当該報告書の提出の義務を負う事業体となります。

企業グループはこの制度が自社に適用されるかどうかを検討しなければなりません。係る検討には、開示の対象になるかの判断を目的とする基準要件の評価が含まれます。開示の対象になる場合における検討事項には以下が含まれます。

  • 2025年度について、自社グループがATOに免除を申請すべきかどうかを判断する。この場合、ATOスタッフが係る申請の評価にあたって従うATOの手引き草案(法務執行実務指針案PS LA 2025/D1を参照)を考慮する必要がある。
  • CbC開示報告書の提供の義務を負うことになるPCbCR親会社について、ATO登録フォームを作成する。
  • この報告制度では、集計売上高(aggregated turnover)テストにおいてオーストラリア源泉所得が1,000万豪ドル以上の大規模多国籍企業が、特定情報をCbCベースで開示するよう要求されている。
  • 自社グループのシステムおよびプロセスが(例えば、税へのアプローチ、活動の記述、国外からの関連者収益、および未払税金と税引前利益に標準税率を乗じた金額の間における差異の説明について)必要な情報について収集、精査、評価の上、期日までにATOに提供できるよう機能しているかどうかを判断する。

今回のATOの手引き草案は以下の内容となっています。

  • 全体概要のセクションと6つのより詳細なセクションの構成において、作成者向けの段階を追った実務的なガイダンスを提供
  • 報告書フォームの各セクションおよびフィールドの記入方法(免除を受けている場合を含む)を説明
  • 開示内容の決定におけるいくつかの一般的なシナリオを紹介

ATOの業務実施ガイドと今回の手引き草案の間には情報の重複があります。これら2つの文書(技術的なXMLスキーマ遵守のための業務実施ガイドと、実務的な記入の助けとなる手引き)は併せて使用する必要があります。

今回の手引き草案に対するコメントが2025年11月28日まで募集されました。EYオーストラリアは、草案の内容や明確化および改善の提案に関して、ATOとの対話を継続しています。

今回の手引きは法律の適用に関する多数の有用なコメントを含んでいるものの、ATOのガイダンスとしての成果物ではないことから、ルールの技術的な要素に関する詳細なATOの見解は含んでいません。この報告書手引きの要約は本アラートの最後のセクションに掲載しています。

PCbCRのルール、および免除申請に関するATOの実務指針案PS LA 2025/D1(PS LA)の詳細な情報については、2025年7月8日付EY Global Tax Alert「Australian Taxation Office issues draft guidance for public country-by-country reporting exemption applications and registration form」および2025年8月12日付EY Japan税務ニュース「オーストラリア税務局(ATO)、国別報告の開示(PCbCR)に関する免除申請および登録フォームについてガイダンス草案を公表」をご参照ください。

免除申請に関するATOの草案PS LA 2025/D1(2025年7月公表)の最終版はまだ公表されていません(2025年11月時点)。


PCbCRの基準要件

企業グループにPCbCR制度が適用されるかどうかの判断にあたっては、基準要件の検討が不可欠です。

以下の事項については、基準要件に関する詳細なガイダンスがATOから一切公表されていないことに注意が必要です。

  • 「憲法上の会社(constitutional corporation)」ルールに基づく事業体
  • 本制度における「国別報告グループ」のメンバーとなる事業体
  • 1,000万豪ドルのオーストラリアを源泉とする第三者売上高の基準

1つまたは複数の基準要件が満たされないことからPCbCRのルールは自社に適用されないと企業グループが判断した場合は、ペナルティ回避のため、合理的な論拠のあるポジションとして自社のポジションが入念に文書化されるよう確実に取り計らわなければなりません。

企業グループによっては、自社の状況における当該ルールの適用に関し、拘束力のあるATOの個別ルーリングの取得を模索することも考えられます。


「憲法上の会社」とみなされる要件

オーストラリアのPCbCR制度における重要な基準要件の1つは、事業体が以下のいずれかであることです。

  • 憲法上の会社(constitutional corporation)
  • パートナーが憲法上の会社であるパートナーシップ
  • 受託者のそれぞれが憲法上の会社である信託

オーストラリア憲法は、「外国会社、および連邦領土内で結成される商事または金融会社(foreign corporations, and trading or financial corporations formed within the limits of the Commonwealth)」に関する法律を制定することのできる立法権を連邦議会が有すると定めています。これにより、連邦議会が有効な法律を制定することのできる組織の種類は限定されています。

非税務的な文脈において裁判所は、事業体が単に外国法に基づく区分によってではなく、実質的な法的属性を参照することにより「外国会社」とみなされると認定しています。実質的な法的属性には、自らの名義による財産の所有、契約の締結、訴訟の提起、および訴訟の被提起を可能とする独立した法的人格および能力が含まれますが、必ずしもこれらに限定されません。

伝統的な会社構造によって、または係る会社構造を通じて最終所有されていない多国籍グループ(外国のリミテッドパートナーシップ等)は、この基準要件を十分に検討する必要があります。これらのグループが直面する実務的な課題には、PCbCR制度が適用されるかどうかの判断や、適用される場合においてどの事業体が最終親事業体になるか、およびどのような内容を開示する必要があるかが含まれます。


グループの存在の要件

オーストラリアの国別報告(CbCR:country-by-country reporting)の開示における要件の1つは、CbCR事業体が報告期間中の任意の時点で「国別報告グループ」のメンバーであることです。このため、以下のいずれかに該当する事業体グループを識別することが求められます。

  • 会計上の目的における単一のグループとして連結されている
  • グループ内の他の事業体が上場会社であった場合には、会計上の目的における単一のグループとして連結が要求されると思われる

会計上の目的における連結グループの一部でない可能性のある事業体(投資ファンド等)は、この基準要件を十分に検討する必要があります。係る検討にあたっては、所有および所有関係の幅広い再確認が求められる可能性があります。


1,000万豪ドルのオーストラリアを源泉とする第三者売上高の要件

PCbCR制度における重要な基準要件の1つは、ある所得年度における「オーストラリア源泉から(from an Australian source)」の「集計売上高(aggregated turnover)」の合計が1,000万豪ドル以上であることです。「集計売上高」とは、大まかに言って、ある事業体およびその関連者の年間売上高の合計(関連者取引により獲得した金額を除く)です。

通常の状況において、第三者収益が1,000万豪ドル未満のオーストラリア子会社を有する多国籍グループがCbCRの開示を要求される可能性は低いと思われます。

ただし多国籍グループは、その外国メンバーのいずれかが以下に該当する場合、依然としてCbCRの開示を要求される可能性があります。

  • オーストラリア源泉所得が1,000万豪ドル以上である
  • 所得のうち1,000万豪ドル以上がオーストラリアの支店に帰属している

デミニミス(僅少性)の除外に依拠することを予定しているあらゆる企業グループ、特に多国籍グループは、以下のような場合において、この要件に十分に注意する必要があります。

  • オーストラリア子会社を有さないか、またはオーストラリア子会社において認識される所得が1,000万豪ドル未満の場合:特定のビジネスモデル(プライベートキャピタルや流動性トレード等)において、オーストラリアにおける相当な株式もしくはデリバティブ取引、またはオーストラリアへの貸出もしくは株式投資以外に、オーストラリアにおける物理的な存在がない場合、検討を要する
  • オーストラリア子会社が全面的に(またはほぼ全面的に)関連者取引を通じて報酬を受け取っている場合:「ルーティン」の活動をオーストラリアにおいて実施し、「コストプラス」方式で報酬を支払っている多国籍グループにおいて検討事項になり得る


ATOの手引き草案の要約

セクションA:事業体の情報

セクションAにおいて要求されている情報はATOの管理上の目的において必要とされています。EYオーストラリアがATOに確認したところによると、この情報は開示される報告書の一部を成すものではありません。加えて、全面的な免除を受けている場合には何も提出する必要がないことをATOは確認しています。

手引きでは、グローバルレポーティングイニシアティブ(GRI)のGRI-207:税金2019の基準が主たるガイダンスであり、経済協力開発機構(OECD)のガイダンスに優先することを確認しています。

セクションAには、報告事業体の宣誓、報告年度、およびグローバル親会社の詳細の開示に関する手引きが含まれます。

このフォームでは、報告事業体のATO参照番号(ARN:ATO reference number)またはオーストラリア事業者番号(ABN:Australian Business Number)が求められます。ABNまたはARNを持たない事業体については、ATOのPCbCR登録フォームを提出した場合に限り、PCbCRのためのARNが発行されることに注意が必要です。


セクションB:メンバー事業体および税へのアプローチ

セクションBの情報には、CbCRグループのメンバー事業体(報告事業体を含む)の記載および税へのアプローチに関するガイダンスが含まれます。

税へのアプローチに関するデータフィールドの文字数制限は5,000字です。この文字数制限を超える場合には、追加的な情報のウェブページを参照できるよう、参照URLの文字列(プレーンテキスト)を含めることができます。ATOによると、この参照は追加的な情報の提供を目的としたものでなければならず、税へのアプローチの概要を提供するための代替手段とすべきではありません。


セクションC:オーストラリアおよび特定の国・地域

セクションCでは、それぞれのデータフィールドの要件において、オーストラリアおよび特定の国・地域の情報をどのように決定し報告すべきかを概説しています。セクションCは、オーストラリアおよびそれぞれの特定の国・地域について個別に作成しなければなりません。全ての国・地域をCbCベースで報告することを選択した場合には、係るその他の国・地域についても個別のセクションCを作成しなければなりません。

セクションCには、単一の国・地域における複数メンバーの情報の連結についてのガイダンスも含まれます。


セクションD:その他全世界(集計情報)

セクションDでは、全ての国・地域をCbCベースで報告することを選択していない場合に、それぞれのデータフィールドの要件において、非特定の国・地域の情報をどのように決定し報告すべきかを概説しています。

この手引きはセクションCの対応する項目における手引きと類似しています。ただしここでは、情報を連結または集計ベースで報告することが明確化されています。集計情報の開示はCbCベースの開示と比べて簡素化されています。


セクションE:CbC開示報告書の提出

手引きでは以下のことを確認しています。

  • CbC開示報告書は、業務管理ソフトウェアによって生成された有効なXMLファイルの形式で電子的に提出しなければならない。当該XMLファイルは、ATOによって開発されたXMLスキーマにおいて定義された構造、ルール、およびデータ型に従っていなければならない。
  • 当該報告書はATO宛に電子メールで送信しなければならない。
  • ATOは提出物を検証し、開示に必要な要素が揃っているか、または何らかの誤りや脱落があるため開示できない状態であるかについて通知する。


セクションF:CbC開示報告書の訂正

重大な誤りは、報告事業体がこれを認識した日から28日以内に訂正しなければなりません。

手引きでは、CbC開示報告書の訂正にあたり、事業体は訂正した情報を用いて承認済みのフォームを再度作成し、同じ報告提出プロセスに従ってこれを提出しなければならないとしています。訂正版の報告書においては、変更のないフィールドを含め、全てのフィールドに記入しなければなりません。

訂正が要求される「重大な(material)」誤りとは何を指すのかについてや、ATOは事業体がどの時点で訂正の必要性を認識したとみなすのかについて、手引きには詳細に述べられていません。要求される期間内に誤りを訂正しなかった場合に科され得る相当なペナルティを踏まえると、企業グループが提出の対象となる事象を監視し、報告書の訂正が必要かどうかを迅速に検討することは極めて重要です。重大な誤りの訂正の提出期限は、ATOへの申請により延長が認められる可能性があります。


日本企業への影響と対応のポイント

  • 日本企業では6月決算は限定的ですので、日本企業の対応として、12月決算企業は2025年12月期を2026年12月末までに開示、3月決算企業は2026年3月期を2027年3月末までに開示する必要があります。
  • 日本企業においても、国税庁に提出しているPCbCR、EUのPCbCRとは異なり、オーストラリアにおいては「税に関する取組み」について、税務ガバナンスに関する定性的な情報開示も求められています。
  • 最終親会社である日本本社による対応が求められます。
  • 単なる開示義務にとどまらず、投資家、メディア、規制当局等のステークホルダーからのレピュテーションリスクについての対応を考慮する必要があります。経済実態に見合った納税をしていないとの指摘に対して説明責任を果たせない場合、企業のブランドや信頼に影響を及ぼします。
  • 日本企業の多くは、オーストラリアおよびEUの要件に則したPCbCRの開示が求められ、国税庁に提出するCbCR、ならびにBEPS2.0第2の柱移行期CbCRセーフハーバーにおける適格CbCRと適格財務諸表との間の整合性のある税務データの整備も重要です。

お問い合わせ先

EY税理士法人

味田 貴志 パートナー
大堀 秀樹 アソシエートパートナー
工藤 保浩 アソシエートパートナー

EY Australia, Japan Business Services
Patrick Giles-Jones EY Oceania Japan Business Services Leader

※所属・役職は記事公開当時のものです