EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
英国のレイチェル・リーブス財務大臣は、2025年11月26日に秋季予算案(税務関連の補足文書はこちら)を議会に提出しました。
秋季予算案の策定に先立ち、リーブス大臣は英国をより経済的に公平で安全な国にする予算とする方針を示していました。予算演説では、成長の重要性を改めて述べた一方で、財政安定化の必要性を強調され、秋季予算案には財政安定化のための数々の増税策が含まれました。
主な増税措置は、所得税の課税最低基準額および雇用主の国民保険料(NIC)基準額の凍結を2028-29年度から3年間延長すること、年金拠出のための給与積立制度にNICを課すこと、さらに200万ポンド超の不動産に対する高額カウンシル・タックス追加課税(2028年4月導入予定)を導入することです。
企業の観点では、法人税率や研究開発(R&D)支出に対する優遇税率に変更はないものの、キャピタルアローワンス(損金算入が認められる減価償却)のWDA主要償却率の引き下げが発表されました。
制度の詳細な点については、近く公表される2025-26年度財政法案で示される見込みです。
秋季予算案では、2026年4月からWDA主要償却率を18%から14%に引き下げる一方で、2026年1月から新たに40%の初年度償却を導入することを発表しました。これにより、2029-30年度に15億ポンドの歳入増が見込まれています。この措置は、全額即時償却が適用されない支出が対象であり、法人税の対象となる企業および自己申告制度の対象となる法人格を有さない事業の両方の償却率を変更します。
英国政府は2026年春より、対象を絞った上で、R&Dに関する事前保証サービスを試験的に導入します。これにより、中小企業は、英国歳入関税庁(HMRC)に申請する前に、研究開発費控除申請における重要事項について明確化することができるようになります。
企業管理持株制度(EMI)に関して、適用基準変更により、2026年4月6日以降、スタートアップ企業に加え成長企業も本制度を利用可能となります。ベンチャーキャピタル信託(VCT)制度と企業投資制度(EIS)の年間・生涯投資限度額および総資産基準は、2026年4月6日より引き上げられます。他方で、VCT制度の所得税控除は、同日より減額されます。
英国政府は、エビデンス提供の呼びかけ(Call for Evidence)を開始しました。当該呼びかけでは、(1)起業家や成長企業に対する既存の税制優遇措置および広範な税制の有効性、(2)英国がこれらの企業の起業・成長・国内定着をより効果的に支援する方法について意見を求めています。エビデンス提供の呼びかけの締切は、2026年2月28日です。
英国政府は、法人税、印紙税、付加価値税(VAT)、源泉所得税(PAYE)、建設業制度(CIS)について、税務上の取扱いを確定するための既存の法定ルートが存在しない場合を対象として、2026年7月からATCSを開始し、事前確定の提供を行うこととしました。本制度利用のための財務基準は、プロジェクトの期間を通じて関連する英国での支出が10億ポンド以上と設定されています。また、サービス開始後1年を経過した時点で、英国政府は、処理能力の増強や財務基準の引き下げを含む見直しの可能性を検討することとされています。
なお、移転価格や、他の税務当局に関連してHMRCの見解を必要とする分野については、事前税務確定の提供はありません。これらのような特定の状況における事前の税務確定は、事前確認(APA)制度を通じて得ることができます。また、コスト分担契約(CCA)に関する事前の確定性は、春季予算案で開始されたプロセスを通じて利用可能です。CCAの税務処理に関する事前確認は、ユニラテラルAPAを通じて利用可能です。(詳細な情報については、2025年3月26付EY Global Tax Alert「UK Spring Statement defers major tax announcements to Budget in Autumn 2025」および2025年4月10日付EY Japan税務ニュース「英国春季予算案、主要税制の発表を2025年秋季予算に延期」をご参照ください。)
秋季予算案を踏まえて公表される2025-26年度財政法案では、英国政府は2026年1月1日以降開始する課税期間において、関連者間取引、英国で事業を行う非居住者企業、および英国からの利益移転に対する課税の簡素化を図る予定です。これはそれぞれの分野におけるさまざまな協議の結論を示すものです。
この法案によって、資本参加条件、無形資産、HMRC長官による制裁、英国国内移転価格(特定の例外を除き免除対象)、金融取引、経済協力開発機構(OECD)原則に基づく解釈など、複数の分野における英国の移転価格ルールが簡素化されます。無形資産に関して、HMRCは国内取引には既に市場価値という単一の評価基準を適用することを確認していますが、クロスボーダー取引についても単一の独立企業間基準の適用を目指すものと見込まれます。
政府は、英国の恒久的施設(PE)に関する規則に関して、PEの定義およびPEへの利益配分に関する最新の国際的合意に沿ったものとする方針です。さらに、政府は、投資運用会社免税に関する法令および実務指針を更新するとともに、英国の恒久的施設に関連する外国関連企業への移転価格調整が行われた場合に、英国企業が救済を請求することを可能にする新たな方法を導入します。
この法制はまた、法人税において未課税の移転価格利益に対する新たな課税規定を設けます。これにより、現在独立した税である迂回利益税が全面的に廃止されますが、制度の基本的な特徴は維持されます。
移転価格文書に関して、政府は対象となる多国籍企業に対し、国際関連取引スケジュール(別表:ICTS)を提出し、クロスボーダーの関連者間取引に関する情報を毎年報告することを義務付ける法律を制定します。この措置は、2027年1月1日以降に開始する会計期間から適用される予定ですが、その設計に関する技術的なコンサルテーションは2026年春に実施される予定です。
BEPS第2の柱に関して、最新の国際的アップデートを取り込むための技術的修正が加えられます。ほとんどの規定は、2025年12月31日以降開始する会計期間から適用されますが、影響を受ける納税者は、多くの改正を選択により早期適用することができます。ただし、制度導入前の繰延税金資産の取り扱いに関する変更は、2025年7月21日以降に終了する会計期間から適用されます。
適格資産保有企業(QAHC)制度に関して、その効果的な運用を引き続き確実に行うために、英国政府は、対象を絞った法改正について引き続き関係者と協議する見込みです。法改正は将来の財政法案で導入されます。
英国の外国子会社(CFC)制度に関して、その資金調達規則が、EUによって違法な国家補助とされたことに対する異議申し立てが認められたため、政府は納税者から徴収した金額の返還とこれについて発生する利息の支払に関する立法措置を2025-26年度財政法案において講じることとなります。
2025-26年度財政法案では、利子損金算入制限(CIR)制度における報告企業の税務管理を簡素化する立法措置も講じられます。変更の大部分は、2026年3月31日以降に終了する期間から適用されます。特定の資本支出に対する損金算入に関するCIRの細則改正も実施され、これらの改正は2021年12月31日以降に終了する課税期間から適用されます。
このほか、簡素化措置としては、法令改正を通じて、2026年4月1日付で名目予納法人税(ACT)の規則を廃止します。残りのACT制度の将来については、2026年初頭にコンサルテーションを行う予定です。
租税回避対策としては、株式交換および企業再編に適用される租税回避防止規定の速やかな現代化を図ることとされました。特に、1992年キャピタルゲイン課税法第137条が改正され、取決めの主要な目的または主要な目的の1つが、通常は享受できない税制上の利益を得ることである取決めを行った者に租税回避防止規定が適用されるようになります。譲渡会社の普通株式の5%未満を保有する株主に対する除外規定は廃止されます。新しい規則は、2025年11月26日以降に発行される株式または社債に適用されますが、既に提出済みの認可申請については経過措置が適用されます。
英国政府は、新たな租税回避防止規定を導入します。これは、非免除負債が存在する特定の取決めに関連するものです(特に、非公開会社に関連する2010年法人税法第455条に基づき租税を回避する取決めを対象とします)。2025年11月26日から施行されます。
グループ企業間における、研究開発支出控除(RDEC)、視聴覚支出控除(AVEC)、またはビデオゲーム支出控除(VGEC)の譲渡と引き換えの支払いに関する税務処理を明確にする変更が行われます。また、ビデオゲーム税制優遇措置とVGEC間の移行規則の更新、およびAVECの一部である視覚効果特別税額控除の軽微な変更も行われます。
英国政府は、エネルギー利益税に基づく廃止措置救済契約による支払いは無いという長年の政策を確認する法制を2025-26年度財政法案で導入します。これは廃止措置支出に対する税制優遇を排除するものです。
英国政府は、石油・ガス価格メカニズムが収益ベースとなることを確認しました。このメカニズムは2030年3月のエネルギー利益課税の終了、またはエネルギー安全保障投資メカニズムが発動される場合のいずれか早い時点で発効し、石油はバレル当たり90米ドル、ガスはサーモ当たり90ペンスの基準価格を超える部分に、35%の追加税率を適用するものです。基準価格は2026会計年度に設定され、以降はインフレに応じて調整されます。
2026年4月より、リモートゲーミング税は21%から40%に引き上げられ、現行のビンゴ税10%は廃止されます。2027年4月より、リモート賭博(セルフサービス賭博端末、スプレッド賭博、プール賭博、競馬を除く)に対し、新たな25%の一般賭博税が適用されます。政府はまた、カジノ賭博税の税率区分を2026-27年度に凍結し、その後は通常の小売物価指数(RPI)に基づく引き上げを実施すると発表しました。
付加価値税(VAT)の課税基準額や主要なVAT税率については、変更は発表されていません。電子インボイスに関して、2029年4月から全てのVAT請求書を指定された電子フォーマットで発行することが義務付けられました。政府は関係者と連携し、2026年度予算案で公表予定の実施ロードマップを策定します。
2025年11月26日以降、HMRCは無条件の企業グループ全体としてクロスボーダーVATグループ制度を再開します。HMRCは、一部のVATグループが従来のガイダンスに基づきVATを計上している可能性があること、その場合に過払いVATの還付を受けることができる可能性があることを認めています。
政府は2025-26年度財政法案において、2027年1月1日から炭素国境調整メカニズム(CBAM)を導入する法律を制定します。CBAMの対象範囲に間接排出量を含めることは、早くとも2029年まで延期されます。
非営利サービスにおける再配布や使用を目的とする慈善団体への物品寄付に対する新たなVAT免税措置は、2025-26年度財政法案に国王の裁可を得た後、2026年4月1日に発効します。この措置は余剰物品の再利用を促進し、英国が循環型経済へ移行する取組みを支援することを目的としています。HMRCは、この免税措置の利用方法および関連要件の順守に関する詳細なガイダンスを企業と慈善団体向けに公表します。
英国政府は、低価値輸入品(135ポンド以下の物品)に対する関税免除を廃止し、これらの物品が英国に輸入される際の申告方法を改正します。遅くとも2029年3月以降、低価値輸入品には大量輸入品と同様に関税が課され、新たな輸入手続きが導入されます。英国政府は、これらの新しい手続きの技術的詳細についてコンサルテーションを行います。
英国政府は2025年11月27日より、英国上場企業を対象とした新たな「英国上場企業免税措置」を導入します。これは英国上場企業に対し、電子的な株式・証券売買に関する印紙税(印紙保留税)を3年間免除するものです。除外規定により、既存上場企業の買収・合併は基本的に対象外とされ、新規持株会社の設立(英国への本拠地移転の一環でない限り)の場合も免除が制限されます。
英国政府は、株式譲渡に関する印紙について新たなデジタルサービスを試行する法制を立法します。これは株式に関する印紙税および印紙保留税に替わるものであり、株式に関する印紙制度近代化の一環となります。
英国は、2029年または2030年から不動産に関する入手可能な情報の自動交換を規定し、脱税に取り組む新たな国際協定への参加を計画しています。
2026年4月1日以降、法人税申告書の期限後提出に対するペナルティが倍増されます。また、HMRCへの誤った申告および通知不履行に対するペナルティの近代化も計画されています。英国政府は、既存の間接税犯罪と整合させるため、直接税の不正回避について新たに「意図的過失」刑事罰を導入することに関するコンサルテーション文書を、2026年初頭に公表します。
また、英国政府は、不確実な税務処理に関する現行の通知制度を強化する提案や、非公開会社とその株主間の取引をHMRCに報告する新しい要件の導入を検討するコンサルテーション文書を2026年初頭に公表します。
EY税理士法人
Ernst & Young Tax Co. (Japan), UK Tax Desk, Tokyo
Richard Johnston EY UK パートナー、EY Japan UK Tax Desk リーダー
Ernst & Young LLP (United Kingdom), London
Jo Stobbs パートナー
野々村 昌樹 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
EYの関連サービス
私たちの国際税務専門チームがEYのグローバル・ネットワークを駆使して分析、報告、リスクマネジメントや、クロスボーダー取引に関する複雑な税務問題の解決を支援します。
続きを読む情報共有がクロスボーダーで行われ、税務当局の執行体制が厳しさを増す中、企業はリスク低減、意思決定の強化、コスト効率の向上のために行動しなければなりません。
続きを読む移転価格(Transfer Pricing〈TP〉)とは、グループ企業との取引を通じた所得の海外移転を防止し、適正な国際課税を行うことで国際的な所得の適正配分を図ることを目的とした税制です。 EYのTPチームは、移転価格文書化、移転価格ポリシーの策定、事前確認(APA)及び税務調査対応等のコンプライアンス対応に加え、近年複雑化する税制や事業を考慮した企業のガバナンス体制の構築を全面的に支援します。
続きを読むメールで受け取る
メールマガジンで最新情報をご覧ください。