英国政府、2029年4月より電子インボイス義務化の実施を発表

  • 2025年11月26日、英国政府は、2029年4月より、企業間取引(B2B)および企業対政府間取引(B2G)を対象として、全ての付加価値税(VAT)インボイスを指定された電子形式で発行することを義務付ける、電子インボイス制度の導入を発表しました。
  • 政府は2026年度予算案で導入ロードマップを公表する予定で、企業はコンプライアンスの準備に向けて、2026年1月より開始される次期コンサルテーションに参加することが推奨されています。
  • 電子インボイスへの移行は、効率性の向上、VATギャップの縮小および財務業務の近代化を目的としていますが、企業は既存システムとの統合やユーザーフレンドリーなソフトウェアの必要性といった潜在的な課題に対処しなければなりません。
  • 影響を受ける事業体は、現在の請求プロセス、データ品質およびテクノロジーの評価を開始し、新しい要件への準備を整える必要があります。対応を怠ると、英国および同様の措置を導入している他の国・地域において、インボイスの発行・受領に支障をきたす可能性があります。


エグゼクティブサマリー

2025年11月26日、2025年度英国予算案(UK Budget 2025)の一環として、政府は英国において電子インボイスの義務化を実施する意向を確認しました。これにより、2029年4月以降、全ての付加価値税(VAT)インボイスを指定された電子形式で発行することが義務付けられます(企業間取引〈B2B〉および企業対政府間取引〈B2G〉を対象)。(新しい予算案の詳細については、2025年12月2日付EY Global Tax Alert「UK introduces Budget 2025」〈英語のみ〉をご参照ください。)

政府は、英国のVAT電子インボイス制度の詳細を策定するために、企業、業界団体、税務専門家およびソフトウェア・プロバイダーと引き続き緊密に連携していきます。

導入ロードマップは、2026年度英国予算案の発表時に公表される見込みです。

それまでの間、英国で事業を展開する企業は、2026年1月に開始される次期政府コンサルテーションへの意見提出を含め、準備計画を検討すべきです。英国の要件が完全に発表された時点で、データの準備状況を含む長期的な戦略も検討する必要があります。ステークホルダー管理、予算承認およびテクノロジーの選定は、導入戦略を成功させるための重要な要素となります。

多国籍企業にとっては、間もなく運用が開始される各国の電子インボイス要件への対応を継続することも重要となります。


英国のコンサルテーション回答文書における主要テーマ

コンサルテーション回答文書も、英国予算案の一環として11月末に公表されました。

企業、業界団体および個人から、合計342件の回答が寄せられました。政府は、英国では数十年前から電子インボイス技術が利用可能であったものの、普及率が比較的低いままであることを認識しています。世界各国が電子インボイスを導入する中、英国もこれに追随し、VATギャップの縮小や政府のデジタル化目標への接近といった利益を享受することに意欲的です。

回答者は、おおむね効率性の向上、承認ワークフローの迅速化、コスト削減および透明性の向上など、電子インボイスの潜在的な利点を認識していました。また、電子インボイスは、コンプライアンスの強化、不正の削減、およびデジタルトランスフォーメーションを通じた財務業務の近代化を実現するツールとしても見なされています。

全体として、回答者は、全体的な導入を制限する可能性が高いと見られる任意の制度よりも、義務化を支持しました。しかし、中小企業は、低コストで使いやすいソリューションの必要性を強調しました。

電子インボイス導入の潜在的な課題としては、システム間の標準規格の相違、既存システムまたはレガシーシステムとの統合の課題、および不明確な政策要件などが挙げられました。これを受け、回答者のかなりの割合が、英国および欧州連合(EU)ですでに使用されている共通フォーマットの採用を求め、Pan-European Public Procurement On-Line(PEPPOL)フレームワークのような国際的な枠組みとの整合性を推奨しました。PEPPOLはその国際的な普及度から見ても、相互運用性の面で強力な選択肢となり、国境やプラットフォームを越えたシステムの互換性を可能にします。

回答者の大多数は、集中型モデル(電子インボイスを購入者に転送する前に、検証のために政府の集中プラットフォームに提出するモデル)ではなく、分散型電子インボイスモデル(すなわち、企業が選択したソフトウェア・プロバイダーを通じて電子インボイスを直接交換するモデル)の導入を支持しました。

分散型モデルは、その柔軟性、拡張性および既存の英国の商慣習との整合性から支持されました。さらに、分散型4コーナーモデルは、PEPPOLやEUの「デジタル時代のVAT(ViDA)」イニシアチブのような国際的な枠組みとの相互運用性および互換性の面で評価されました。回答者は、中央インフラに依存することなく、現在のシステムと統合し、イノベーションを促進できる分散型モデルの能力を重視しました。

国際的な整合性に加え、回答者は導入における簡素性と一貫性を求め、エラーの削減と監査可能性の向上のために、ユーザーフレンドリーなソフトウェア、共通のデータ項目および既存の会計システムとの統合の重要性を提起しました。

回答者が表明した重要なテーマの1つは、標準規格の十分な周知期間を含め、義務化が発効する前に十分なリードタイムを伴う明確なガイダンスを提供する必要性でした。政府は、義務化の実施を2029年に設定することで、ステークホルダーとの政策の共同設計および最終的な制度の周知に十分な時間を確保できると考えています。さらに、2026年度予算案の一部としてロードマップを公表することで、企業に長期的な計画を支援する明確な道筋を示すことができます。

コンサルテーション回答文書によると、政府はリアルタイム報告(RTR)の潜在的な利点については引き続き検討を行いますが、2029年の電子インボイス義務化と同時にこれを導入することはありません。

政府は、電子インボイスデータのみでは事前入力されたVAT申告書を作成するには不十分であることを認識していますが、将来的にそのようなプロダクトが開発される場合には、電子インボイスデータが役立つ可能性があるとしています。


今後のステップ

企業は、特にセクター固有の複雑さや懸念が予想される場合、次のフェーズのコンサルテーションへの参加を検討すべきです。長期的には、英国の技術仕様が公表された後、企業はデータの課題およびギャップを理解するとともに、英国の電子インボイス要件およびビジネスニーズに最適なテクノロジーを選定する必要があります。他の新しい要件と同様に、成功の鍵となるのは、プロセスの早い段階で適切なステークホルダー(税務、財務およびIT)を関与させる一貫した戦略です。

より広く見ると、ベルギー、ポーランド、フランスおよびギリシャなど、欧州だけでも2026年に電子インボイスの運用を開始する他の重要な市場が存在するため、これらの国・地域で事業を展開する企業は、各国固有のルールに従ってインボイスを提出および受領するための適切なテクノロジーが導入されていることを確認する必要があります。これを怠った場合、これらの国・地域でインボイスの発行および受領ができなくなるおそれがあります。


お問い合わせ先

EY税理士法人

岡田 力 パートナー
古市 泰之 ディレクター

Ernst & Young Tax Co. (Japan), UK Tax Desk, Tokyo
Richard Johnston EY UK パートナー、EY Japan UK Tax Desk リーダー

Ernst & Young LLP (United Kingdom), London
Jo Stobbs パートナー
野々村 昌樹 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです



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