OECD、第2の柱の適用にあたり税務当局を支援するツールキットを公表、FAQを更新

  • 2026年4月30日、経済協力開発機構(OECD)は、第2の柱グローバル・ミニマム課税ルールの適用にあたり税務当局を支援するためのツールキットを公表した。
  • 本ツールキットは、初期の影響評価、法令上の論点、トップアップ税の徴収および管理といった、第2の柱の運用プロセスに沿った内容となっている。
  • 本ツールキットは税務当局を対象としているが、第2の柱の実務的な運用および執行に関して一定の知見を提供している。
  • OECDのプレスリリースでは、グローバル税源浸食防止(GloBE)情報申告書を適時に提出するコンプライアンス上の課題軽減のため、税務当局が連携している旨が言及されている。
  • 同日、OECDは、GloBEモデルルールおよびグローバル・ミニマム課税に関するよくある質問(FAQ)を更新した。

エクゼクティブサマリー

2026年4月30日、経済協力開発機構(OECD)は、強固かつ効率的な国内のコンプライアンス体制整備に向けて税務当局を支援するため、グローバル・ミニマム課税導入ツールキット(以下、ツールキット)を公表しました。

ツールキットは、税務当局がグローバル・ミニマム課税を導入する際に通常実施する主な手順および対応を示したロードマップとして構成されており、一連の導入ステップを示すとともに、それぞれについて補足的なモデルを用いて具体的に説明しています。本ツールキットは、OECD税務長官会議(Forum on Tax Administration:FTA)によって、OECD/G20包摂的枠組みの代表者の知見を取り入れて作成され、GloBEモデルルールおよび包摂的枠組みで合意されたその他の基準に基づいていますが、これらの基準の適用または解釈について、新たな解釈を示したり内容を変更したりするものではありません。

あわせて公表されたプレスリリースでは、本ツールキットを導入する国・地域の税務当局が連携し、多国籍企業(MNE)グループに対するGloBE情報申告書(GIR)申告ポータルへのアクセス提供や、他の国・地域との情報交換関係の実施遅延によって生じる可能性のあるコンプライアンスまたは調整上の課題軽減に取り組んでいると言及されています。

同日、OECDはGloBEモデルルールおよびグローバル・ミニマム課税に関するよくある質問(FAQ)の更新版を公表しました。FAQは、セーフハーバー、他の税制との相互関係および執行上の取扱いを含む、グローバル・ミニマム課税の運用に関する実務的な側面について説明しています。

詳細

背景

2021年10月、OECDは、税源浸食と利益移転(BEPS)2.0プロジェクトの第1の柱および第2の柱に関する、包摂的枠組み参加国の大枠合意を反映した声明を発表しました(2021年10月11日付EY Global Tax Alert「OECD releases statement updating July conceptual agreement on BEPS 2.0 project」および2021年10月14日付EY Japan税務ニュース「OECD、BEPS 2.0プロジェクトの大枠合意の更新に関する声明を発表」をご参照ください)。

2021年10月の合意以降、OECDは第2の柱におけるグローバル・ミニマム課税について包摂的枠組みで合意された一連の重要な文書を公表してきました。これには、以下が含まれます。

OECDは、合意された運用指針を反映するためにコメンタリーを定期的に更新しており、2024年4月(2023年末までに3回に分けて発行した運用指針をまとめたもの)および2025年5月(2025年3月末までに発行された全ての運用指針をまとめたもの)に、GloBEモデルルールの統合コメンタリーを公表しました。

さらに、2024年6月、OECDは、各国・地域で導入されるグローバル・ミニマム課税の要素の適格性を判断するためのピアレビュー・プロセスに関して情報を提供するQ&A文書を公表しました(2024年6月20日付EY Global Tax Alert「OECD/G20 Inclusive Framework releases documents on Pillar One Amount B and Pillar Two」および2024年7月17日付EY Japan税務ニュース「OECD/G20包摂的枠組み、第1の柱の利益Bと第2の柱に関する文書を公表」をご参照ください)。

その後、2025年1月、OECDは、暫定適格ステータスを有する法令のセントラルレコードを公表しました。これには、所得合算ルール、国内ミニマム課税または適格国内ミニマム課税(QDMTT)およびQDMTTセーフハーバーについて、適格性確認メカニズムのプロセスを完了した国・地域の一覧と、その説明情報(適格性を判断するためのプロセスに関するQ&Aの更新情報を含む)が記載されています(2025年1月17日付EY Global Tax Alert「OECD releases new documents on GloBE rules and on qualified jurisdiction status」および2025年2月5日付EY Japan税務ニュース「OECD、GloBEルールと適格性を有する国・地域に関する新しい文書を公表」をご参照ください)。OECDは、暫定適格ステータスを有する法令のセントラルレコードを定期的に更新しています。

ツールキットの主な特徴

本ツールキットは、税務当局を対象として作成されており、第2の柱の導入に関する一連のプロセス全体を網羅する実務的なロードマップとして構成されています。主な特徴には以下が含まれます。

  • 導入プロセス全体を網羅するモジュール型の構成:対象となるMNEグループや想定される税収への影響の評価から始まり、法律設計、執行面での準備、コンプライアンス手続および情報交換に至るまで、導入プロセスを段階的に示す構成となっています。
  • 税務執行およびコンプライアンスの枠組みを重視:登録、申告、納付、検証および執行プロセスなど、第2の柱に関する国内コンプライアンス手続の設計および運用のベストプラクティスを税務当局に示しています。
  • 先行導入によるベストプラクティス:各国・地域が直面する共通の課題を特定し、先行導入した国・地域が採用している実務的なアプローチを示しています。
  • 情報交換およびITに関する検討事項:GIRの情報交換の運用、大量データの管理および第2の柱の運用を支えるITシステムの開発または改修に関する指針が含まれています。
  • 拘束力を有さないガイダンス:本ツールキットは、GloBEモデルルールまたは合意された運用指針を解釈または修正するものではありません。共通のアプローチとしてのグローバル・ミニマム課税の一貫した適用を支援することを目的としています。

このツールキットは、税務当局や税制担当者向けに作成されたものですが、その他の関係者にとっても役立つものであると記載されています。また、導入国・地域のグローバル・ミニマム課税に関する経験が蓄積されるにつれ、本ツールキットが随時更新される可能性があることも示されています。

GIRの提出期限

暦年決算のMNEグループについては、最初のGIRは2026年6月30日までに提出する必要があります。本ツールキットとあわせて公表されたプレスリリースでは、税務当局はGIR提出に対応するためのインフラが整っていない可能性があることが示唆されています。また、GloBEモデルルールでは、各対象国・地域との間で適格な権限ある当局間合意が締結されている国・地域において、GIRの一元的な提出が認められています。各国・地域でGIRの情報交換を行うためには、有効な情報交換関係が構築されている必要があります。

プレスリリースによると、MNEグループへのGIR申告ポータルへのアクセス提供や、他の導入国・地域との情報交換関係の実施遅延によって生じる可能性のあるコンプライアンスおよび調整上の課題を軽減するため、導入国・地域の税務当局は連携していることが示されています。ただし、これがMNEグループにもたらす影響についての追加情報は提供されていません。

GloBEモデルルールおよびグローバル・ミニマム課税に関するFAQの更新

更新されたFAQは、グローバル・ミニマム課税およびGloBEモデルルールに関する従来の説明を拡充したものであり、直近のFAQ(2025年5月版)以降に包摂的枠組みで合意された内容を反映しています。特に、更新されたFAQは、グローバル・ミニマム課税の設計、簡素化および執行上の取扱いに関して最近合意された内容が含まれています。主な要素は以下のとおりです。

  • グローバル・ミニマム課税の概要および範囲:FAQは、現時点での第2の柱ルールの合意状況を踏まえて、グローバル・ミニマム課税の設計、実効税率(ETR)テストの適用、ならびに所得合算ルール、軽課税所得ルールおよび国内ミニマム課税の運用についてさらに明確化しています。
  • 他の税制との相互関係:FAQは、第2の柱と外国子会社合算(CFC)税制、税制優遇措置およびその他の国内税制との関係についての説明を拡充しています。これには、二重課税の軽減を目的とした調整メカニズムや、一部のCFCおよび外国税額控除の彼此流用に基づく税額配分に関する最新の説明が含まれます。
  • セーフハーバーおよび簡素化:移行期間中および恒久的なセーフハーバーの適用について、更新されたガイダンスが提供されています。また、従来のFAQでは取り上げられていなかった簡易ETRセーフハーバーやSide-by-SideシステムのFAQも追加されています。
  • 実体およびグローバル・ミニマム課税:更新されたFAQでは、第2の柱に基づく実体の取扱いについても説明されており、実体ベース所得控除(SBIE)の適用や、実体ベース優遇税制(SBTI)およびSBTIのセーフハーバーに関する新たな説明も含まれています。
  • トップアップ税の計算およびコンプライアンス:トップアップ税の計算メカニズム、一時差異および情報申告義務に関する追加的な解説ガイダンスが提供されています。これは、制度導入の進展や、より整備された執行枠組みの状況を反映したものです。

今後の影響

本ツールキットは税務当局を対象としていますが、各国・地域が第2の柱ルールの実務的な運用と執行にどのように対応していくかについて、一定の知見を提供するものです。更新されたFAQは、第2の柱ルールの運用に関する追加情報を提供しています。また、あわせて公表されたプレスリリースによると、税務当局は、GIRの適時提出に関するコンプライアンス上の課題軽減に取り組む可能性があるとされています。企業は、自社の事業に関連する各国の動向を引き続き注視する必要があります。



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