EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2026年1月5日、OECDは、「Side-by-Sideシステム」に関する包括的パッケージについて、包摂的枠組みが政治的・技術的な合意に達したことを公表しました。本パッケージは運用指針の形式で、新たな簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、CbCRセーフハーバーの1年間延長、新たな実体ベース優遇税制セーフハーバー、および2つのSide-by-Sideシステムに関連するセーフハーバーを含み、グローバル税源浸食防止(GloBE)モデルルールのコメンタリーに組み込まれます。
簡易ETRセーフハーバーは、2027年(特定の条件下で適用を選択した国・地域では2026年)から適用開始となり、企業および税務当局のコンプライアンスの簡素化を目的としています。移行期間CbCRセーフハーバーは1年間延長され、2027年まで適用されます。
実体ベース優遇税制セーフハーバーにより、MNEグループは、適格な優遇税制によって減少した税額を当該国・地域に所在する構成事業体の対象租税に加算して扱うことが可能となります。これにより、当該国・地域と経済的実体の関連性を有するという要件を満たすMNEグループは、一定の優遇税制について、その恩典を受けることができます。このセーフハーバーの適用は、2026年から各国・地域ごとに選択が可能となります。
Side-by-Sideセーフハーバーは、適格Side-by-Side制度を有する国・地域に最終親会社(UPE)を置くMNEグループがSide-by-Sideセーフハーバーを選択した場合、IIRまたはUTPRの対象とはならないと定めています。ただし、これらのMNEグループは、適格国内ミニマム課税(QDMTT)の対象にはなります。これまでのところ、米国が適格Side-by-Side制度を有する唯一の国・地域として「適格ステータスを有する法令に関するセントラルレコード」に記載されており、Side-by-Sideセーフハーバーは米国にUPEを置くMNEグループに対して2026年から適用されることが見込まれます。2024年および2025年については、米国にUPEを有するMNEグループに対する第2の柱ルールの適用が、この新たなセーフハーバーの影響を受けることはありません。
UPEセーフハーバーは、適格な国内税制を有する国・地域にUPEを置くMNEグループの国内利益に適用されます。UPEセーフハーバーを選択したMNEグループは、そのUPEが所在する国・地域における利益について、UTPRの対象とはなりません。
第2の柱ルールを国内法に組み込んでいる包摂的枠組みの加盟国・地域は、本パッケージに反映されているセーフハーバーの実施を確約しています。実施のプロセスおよび時期は、各国・地域の国内制度によって異なります。
本パッケージでは、GloBEモデルルールの適用を含むさらなる簡素化、ならびにインテグリティルールおよび技術的問題に関する指針について、包摂的枠組みが引き続き作業を継続するとしています。また、グローバル・ミニマム課税ルールの影響に関する実績評価を2029年までに行う計画を示しています。
2026年1月12日、最新の第2の柱の動向に関するEYグローバルウェブキャストが実施されました。詳細については、こちらをご参照ください。
2021年10月、OECDは、税源浸食と利益移転(BEPS)2.0プロジェクトの第1の柱および第2の柱の中核的な設計要素について包摂的枠組みの加盟国・地域が達したハイレベルの合意を反映した声明を公表しました(2021年10月11日付EY Global Tax Alert「OECD releases statement updating July conceptual agreement on BEPS 2.0 project」および2021年10月14日付EYJapan 税務ニュース「OECD、BEPS 2.0プロジェクトの大枠合意の更新に関する声明を発表」をご参照ください)。
この2021年10月の合意以降、OECDは、第2の柱に基づくグローバル・ミニマム課税について包摂的枠組みにより合意された一連の重要な文書を公表してきました。これには以下が含まれます。
OECDは、合意された運用指針を組み込むために定期的にコメンタリーを更新し、GloBEモデルルールの統合コメンタリーを公表してきました。2024年4月に公表された統合コメンタリーは2023年末までに発行された3つの運用指針トランシェを組み込んだもの、2025年5月に公表された統合コメンタリーは2025年3月末までに発行された全ての運用指針トランシェを組み込んだものとなりました。
加えて2024年6月、OECDは、各国・地域が実施するグローバル・ミニマム課税の要素の適格性を判断するためのピアレビュー・プロセスに関する情報を提供するQ&A文書を公表しました(2024年6月20日付EY Global Tax Alert「OECD/G20 Inclusive Framework releases documents on Pillar One Amount B and Pillar Two」および2024年7月17日付EY Japan税務ニュース「OECD/G20包摂的枠組み、第1の柱の利益Bと第2の柱に関する文書を公表」をご参照ください)。さらに2025年1月、OECDは、IIR、国内ミニマム課税(DMTT)、またはQDMTTセーフハーバーについての暫定適格性確認メカニズムのプロセスを完了した国・地域の一覧を示した「暫定適格ステータスを有する法令に関するセントラルレコード」を、説明情報(適格性の判断のプロセスに関するQ&A文書の更新を含む)と併せて公表しました。(2025年1月17日付EY Global Tax Alert「OECD releases new documents on GloBE rules and on qualified jurisdiction status」および2025年2月5日付EY Japan税務ニュース「OECD、GloBEルールと適格性を有する国・地域に関する新しい文書を公表」をご参照ください。)この「暫定適格ステータスを有する法令に関するセントラルレコード」は、OECDによって定期的に更新されています。
2026年1月5日、OECDは、第2の柱グローバル・ミニマム課税に関する「Side-by-Sideシステム」のための包括的パッケージについて、包摂的枠組みが政治的・技術的な合意に達したことを公表しました。本パッケージは運用指針の形式をとり、GloBEモデルルールのコメンタリーに組み込まれる予定です。
2026年1月13日、OECD事務局は「Global minimum tax: Understanding the Side-by-Side package」と題したウェビナーにおいて、本パッケージについて説明しました。
本パッケージでは、恒久的な簡易ETRセーフハーバーの導入により、グローバル・ミニマム課税に関連するコンプライアンスの負担を大幅に軽減し、経済界の主要な懸念に対応することが目的であるとされています。このセーフハーバーの下では、MNEグループの財務報告パッケージに基づく所得と税額に対し、一定の調整を加える簡易計算によってそのグループのETRを算定します。テスト対象国・地域の簡易ETRが15%以上である場合、トップアップ税額はゼロとみなされ、詳細なGloBE計算は不要となります。この簡易ETRセーフハーバーは、既存の移行期間CbCRセーフハーバー(TCSH)の後継となる仕組みです。
またOECDは、GloBEの観点から見たその他の低リスク状況に関する恒久的なセーフハーバーにも取り組んでいます。このセーフハーバーに含まれる恒久的な「デミニマス」テストおよび「ルーティン利益テスト」は、TCSHに含まれる類似のテストと整合するものになると思われます。このセーフハーバーに関する作業は、2026年上半期中に完了が予定されています。投資事業体および少数被所有構成事業体についても、さらなる簡素化が計画されています。
包摂的枠組みは、インテグリティをめぐるあらゆる懸念に対処するための精緻化の要否を注視していくと思われます。特に包摂的枠組みは、主要ルールおよびあらゆるセーフハーバーの下で適用される裁定防止ルールを策定する予定です。このルールは、MNEグループがトップアップ税を回避するために、GloBE所得および対象租税を国・地域間で移転させる取決めを結ぶことを防ごうとするものです。
申告を行う構成事業体は、以下のいずれかに該当することを条件として、テスト対象国・地域のIIR、UTPR、およびQDMTTに基づく当該事業年度のトップアップ税額をゼロとみなす、年度ごとの選択を行うことができます。
この計算は国・地域ごとに行われ、GloBEモデルルール第10.3条に従い、同じ国・地域に所在する全ての事業体を含める必要があります。GloBEモデルルールに基づき別個のETR計算が要求される構成事業体グループ(JVグループにおけるメンバーなど)は、別個のテスト対象国・地域として取り扱われます。この新たなセーフハーバーがGloBEルールから逸脱している分野の1つは投資事業体関連です。特定の条件を満たし、かつ当該MNEグループが該当する選択を行った場合、投資事業体は簡易ETRセーフハーバーにおいて、当該グループの正規の構成事業体と同じ国・地域の居住者とみなすことができます。
一般に、簡易ETRの計算には、完全なGloBE計算に使用されるのと同じ情報源を使用する必要があります。すなわち、GloBEモデルルール第3.1.2条および第3.1.3条に定義された、当該MNEグループの連結財務諸表(CFS)の作成に使用される財務会計データを使用する必要があります。
ただし、QDMTTを適用する国・地域がローカル財務会計基準(LFAS)ルールを採用しており、かつQDMTTの計算にあたってMNEグループが係るローカル財務会計基準を適用する必要がある場合、MNEグループはLFASルールに基づいて作成された財務諸表を使用して、当該テスト対象国・地域における簡易所得または欠損金および簡易税額を計算しなければなりません(QDMTTを適用するLFAS国・地域が、簡易ETRセーフハーバーの目的において、グループの連結財務諸表の会計基準を使用することを認めている場合を除く)。
GloBEルールからの重要な逸脱の1つは、簡易所得または欠損金および簡易税額を事業体ごとではなく、集計された国・地域ごとに決定できることです。MNEの会計データ収集システムの構築状況によっては、このことが簡素化につながる可能性があります。
テスト対象国・地域の簡易所得または欠損金は、GloBE所得または欠損金と同様に、国・地域別税引前利益(または損失)を決定したうえでいくつかの調整を加えることにより算定されます。これらの調整の大部分はGloBEルールに基づく調整と類似しており、うち多くは対応するGloBEモデルルールの調整を明示的に参照しています。簡易ETRセーフハーバーではTCSHと比べてより多くの調整が要求されるため、その計算はGloBE計算に近いものになります。これらの調整は下記のとおり、基本調整、業界調整、条件付き調整、および任意調整に区分されます。
テスト対象国・地域の国・地域別税引前利益(または損失)(JPBT)の金額は、当該テスト対象国・地域の構成事業体の集計された財務会計純損益(FANIL:GloBEルールにおける定義と同様に定義される)に、当該テスト対象国・地域に所在する構成事業体のFANILにおいて発生した当期および繰延法人所得税費用またはベネフィットの合計を加算した金額に相当します。
グループ内取引の消去に関連する連結調整は、戻し入れなければなりません(ただし、GloBEモデルルール第3.2.8条に基づく選択〈連結データを使用する選択〉を行った場合における、同じテスト対象国・地域に所在する構成事業体間の取引の消去に関連する連結調整を除く)。同様に、パーチェス会計に係る調整は、M&Aの簡素化が適用される場合を除き、戻し入れなければなりません(下記を参照)。
基本調整として、以下のとおり、GloBEモデルルールに定義された所定の項目の除外が要求されます。
持分損益の除外により、TCSHと比較して、より適正なETRが算定されることになります。
基本調整に加えて、金融サービス業界および国際海運業界に関連する特定の調整により、セーフハーバーにおける所得の計算と、GloBEモデルルールにおける特定の業界ルールとの整合が図られます。
金融サービス業界調整は以下のとおりです。
海運業界調整は、第3.3条に基づく国際海運所得および適格付随国際海運所得のJPBTからの除外を反映した調整です。5年間の選択を行うことにより、国際海運所得および適格付随国際海運所得の集計金額の計算がプラスであった事業年度について、当該除外を適用しないことが可能です。
簡易所得または欠損金の計算には、損益(P&L)計算書ではなく資本またはその他の包括利益(OCI)に直接計上された金額に関する条件付き調整が含まれます。これらの調整の対象となる項目は、包含される再評価法損益(GloBEモデルルール第3.2.1(d)条)、ならびに過去期間の誤謬および会計原則の変更(GloBEモデルルール第3.2.1(h)条)です。
簡易ETRセーフハーバーにおける一般的なルールとして、マイナスの資本計上項目(すなわち、損失または費用)については調整が要求されません。
プラスの資本計上項目(すなわち、利益)については、以下の2つの条件を満たす場合を除き、調整が要求されます。
これらの条件を満たす場合は、当該利益および対応する税額の包含によって最低税率超の簡易ETRが変動する状況は生じないことから、調整が免除されます。このルールでは、全くまたは十分に課税されていない資本計上利益が常に簡易所得の計算に反映されるよう図ることにより、簡易ETRの過大表示のリスクを回避しています。
また、このルールには企業再編に対応したルールが盛り込まれています。条件を満たすMNEは、のれんが減損しているかまたは償却されている一方で対応する繰延税金負債が計上されていない場合を除き、パーチェス会計に係るプッシュダウンについて調整する必要がありません。これはGloBEモデルルールと相違する点です。さらに、簡易ETRセーフハーバーにはGloBEモデルルール第6.3.4条を反映した選択が含まれ、これにより適格利益を5年間にわたり分散して認識することが認められます。
最後に、簡易ETRセーフハーバーには、選択制GloBE調整および任意除外の形式による、いくつかの任意調整が定められています。
GloBEモデルルール第3章に基づいて利用可能な全ての選択は、簡易ETRの計算においても利用可能です。
GloBEモデルルールまたは簡易ETRセーフハーバーのいずれかに基づいて5年間の選択を行ったMNEグループは、当該選択が撤回されるまで、GloBEモデルルールとセーフハーバーの両方において、その後の年度に当該選択を適用する必要があります。これは継続性の提供を目的としています。
簡易ETRセーフハーバーにおける任意除外は、MNEグループがセーフハーバーの目的においてオプトアウトした場合を除き、簡易ETRセーフハーバーにおいて要求されるGloBE調整です。これらの調整は、非対称為替差損益(GloBEモデルルール第3.2.1(f)条)および発生年金費用(GloBEモデルルール第3.2.1(i)条)に関連する調整です。オプトアウトする選択は5年間の選択となります。
テスト対象国・地域の簡易税額を決定するための出発点となるのは、国・地域別法人所得税費用(JITE)です。この金額は、当該テスト対象国・地域に所在する構成事業体のFANILにおいて発生した当期および繰延法人所得税費用またはベネフィット、ならびに連結レベルで計上された当該テスト対象国・地域の構成事業体に帰属する繰延税金の合計金額に相当します。
加えて、パーチェス会計に帰属する利益および費用がJPBTの計算に使用される財務諸表に反映されており、かつM&Aの簡素化が適用される場合、当該M&A取引のPPA会計に帰属する繰延税金がJITEに含められます。
この金額が決定されると、5つの種類の調整が要求されます。
簡易ETRセーフハーバーに含まれる「マイナス税額に関する簡易調整」と呼ばれるルールは、GloBEルールにおける超過マイナス税額繰越ルールと類似したルールです。MNEグループのJITEの計算でマイナス税額が生じた場合、このマイナス税額は翌年度以降に繰り越され、簡易ETRの計算における当該年度の税額を減少させます。
移行年度(すなわち、GloBEモデルルールまたは簡易ETRセーフハーバーが適用される最初の年度)から5年間の移行期間中のマイナス税額については、上記のルールをオプトアウトする選択(欠損金DTA調整)を利用可能です。欠損金DTA調整は、永久差異に関連する税金および耐用年数を確定できない無形資産に関連する繰延税金の金額に相当します。この金額は繰り越され、簡易税額における、計算された欠損金に関連する税金費用の金額を減少させます。簡易ETRセーフハーバーが適用されなくなった年度については、継続性ルールが適用されます。
また、税額の包含または調整の時期と方法を指定する、いくつかの任意の選択もルールに盛り込まれています。これらは、所得の側における選択肢を補完することによる、対称性の維持および歪みの回避を目的としています。
費用として発生したが法人所得税費用として計上されていない対象租税は、年度ごとの選択により、簡易税額に含めることができます。賦課された特定の対象租税が損益計算書の他の項目に計上されているか、または資本/OCIに直接計上されている場合、この選択は有用です。これにより、セーフハーバーの対象範囲に含まれる所得に関連する税金が、割り算の分子において適切に捕捉されます。
プラス(利益)の資本計上項目(例えば、初めから資本またはOCIに計上される金額)が簡易所得に反映されている場合、MNEグループは年度ごとの選択により、対応する対象租税を簡易税額に含めることを認められます。これにより、ETRの計算の分母に当該利益が反映される際の対称性が維持されます。
MNEグループは年度ごとの選択により、適格な適格還付税額控除(QRTC)または市場性のある譲渡可能税額控除(MTTC)を簡易税額に足し戻すと同時に、対応する金額を簡易所得に含めることが認められます。いずれも、選択年度に生じた税額控除および過去年度の未使用残高(ゼロになるまで)が対象となります。
実体ベース優遇税制(SBTI)セーフハーバーを選択した場合、実体限度額を上限として、適格な優遇税制の額が調整後対象租税に加算されます。SBTIセーフハーバーは、後述のとおり、GloBEモデルルールにおいても利用可能です。
GloBE欠損金選択(GloBEモデルルール第4.5条)は、簡易ETRセーフハーバーにおいても利用可能です。これにより、納税者はみなしDTAの枠組みを通じてGloBE欠損金を繰り越すことができます。
GloBEモデルルールには、ある国・地域が当該ルール全体の対象範囲に該当するようになった(例えば、TCSHが適用されなくなった)最初の年度に適用される、多数の移行ルールが盛り込まれています。
移行年度は簡易ETRセーフハーバーによって先送りされません。よって、GloBEモデルルール第9.1.1条、第9.1.2条、および第9.1.3条のルールは、GloBEモデルルールおよびコメンタリーのその他の定めに基づいて決定される移行年度と、MNEグループが当該国・地域において簡易ETRセーフハーバーの適用を選択した最初の事業年度のうち、いずれか早い方に対して適用されます。
GloBEルールにおいては、年度終了後の調整への対処方法をめぐり、さまざまな疑問が提起されてきました。極めて一般的なシナリオへの対処方法について、GloBEルールには限られた指針(トゥルーアップなど)しか含まれていません。一方、簡易ETRセーフハーバーには、簡素化を目的として、対象租税の変更または事業年度終了後に生じた利益に対処する特定のルール(トゥルーアップ、査定の修正、事後的調整、移転価格の訂正など)が盛り込まれています。全般的な原則として、大部分の調整は、当該調整が関連している過去年度の実効税率を修正再表示する代わりに、発生年度(当該調整が財務諸表に反映される年度)の処理に含める形で行われます。
ただし、納税者は5年間の選択を行うことにより、取引年度末から12カ月以内に当該調整が発生することを条件として、対象租税(および関連する所得)の増減を取引年度の簡易税額に含めることを認められます。なお、移転価格の調整はこの選択の適用を受けず、特定のルールの対象となります。この選択を行うことにより、税額または所得の査定を定例的に報告期間の直後に完了している納税者は柔軟性を得ることができ、元々の取引年度と関連する税額結果の間の整合を図ることが可能となります。
取引年度末から12カ月を超えて生じる税額調整については、これを発生年度に含めるという既定のルールがセーフハーバーにおいて維持されています。ただし、対象租税の大幅な減少により、還付を発生年度に含めることで簡易ETRが最低税率を下回る可能性がある場合に、MNEグループは、当該還付が関連している年度が適格還付年度に該当する場合において、当該還付を発生年度の簡易税額に足し戻すことを認める例外規定を適用することができます。
ある過去年度の簡易税額(セーフハーバーに基づかない年度についてはGloBE調整後対象租税)の調整後に、当該過去年度のETRが依然として最低税率以上である場合、この年度は適格還付年度とみなされます。
簡易ETRセーフハーバーには、GloBEモデルルール第3.4条、第3.5条、および第4.3.2(b)条に基づく、恒久的施設(PE)およびフロースルー事業体の所得および税額のクロスボーダー配分ルールが反映されています。
主事業体からPEに対して、または所有者である構成事業体から子会社である構成事業体に対して配分される、第4.3.2(a)条、第4.3.2(c)条、第4.3.2(d)条、または第4.3.2(e)条に基づく税額は、当該MNEグループが5年間の選択を行った場合を除き、全てのテスト対象国・地域から除外されます。構成事業体からの分配に対して、この子会社である構成事業体が所在する国・地域によって課される源泉徴収税は、除外されません。
主事業体が所在する国・地域がBEPS行動2と一貫するアンチハイブリッドルールを有し、かつ全世界所得課税制度を運用している場合は、PEの簡素化選択を利用可能です。この簡素化によって、主事業体の国・地域におけるETRの計算にあたり、PEに関連する所得および税額を、主事業体の簡易所得および簡易税額の一部とすることができます。簡易所得については、PEの所得が主事業体の国・地域の国内課税所得に含められることを条件として、かつ含められる範囲で、この簡素化が適用されます。PEの所得に関連する主事業体の当期および繰延税金は、主事業体の国・地域の簡易税額に含められます。PEの簡素化選択を行った場合、当該グループは、PEの所得に関連して主事業体が使用した外国税額控除を(特定の条件および調整の下で)、簡易税額として取り扱わなければなりません。この選択は年度ごとに行いますが、ひとたびPEの欠損金が主事業体の国・地域に含められると、係る欠損金が同額のプラスの所得を通じて全額「リキャプチャー」されるまで、当該グループはこの選択を継続しなければなりません。
PEのテスト対象国・地域における簡易ETRセーフハーバーの計算は、PEの簡素化選択による影響を受けません。5年間の選択を行った場合を除き、係る対象国・地域における簡易ETRセーフハーバーの計算はQDMTTのアプローチを反映した計算となり、MNEグループはPEに帰属する所得に対して主事業体が支払った税額を、PEのテスト対象国・地域における簡易ETRの計算から除外しなければなりません。5年間の選択を行った場合における、PE、外国子会社、およびハイブリッド事業体の税額の配分、ならびに分配に関連する税額の配分は、GloBEモデルルール第4.3.2条および第4.3.3条に従って行われます。QDMTTを有しない国・地域に所在する構成事業体にこれらの税額が配分される場合、当該税額は、係る構成事業体が含まれるテスト対象国・地域の簡易税額に含められます。
異なる国・地域(場合によっては同じ国・地域)に所在する構成事業体間の取引に使用される移転価格が法人所得税の目的における移転価格と異なる場合、簡易所得または欠損金および簡易税額は、一般に法人所得税の目的における移転価格に基づく必要があります。簡易ETRセーフハーバーでは、事業年度末から12カ月以内に行われるTP課税所得調整にも、法人所得税の目的における移転価格が適用されます。この場合、当該調整は該当する双方の構成事業体において行わなければなりません。別の方法として、MNEグループは5年間の選択を行うことにより、TP課税所得調整を係る調整が行われる年度に含めることも可能です。
異なる国・地域に所在する構成事業体間の取引が原価で会計処理される場合には、売り手の国・地域のJPBTを調整し、法人所得税の目的において使用される取引価格(当該取引が課税対象でない場合は独立企業原則と一貫する価格)を反映させる必要があります。当該取引が無形資産に関連している場合には、買い手の国・地域の簡易所得および簡易税額も、係る価格を使用して計算しなければなりません。無形資産を伴わない取引において、買い手の簡易所得は財務諸表における帳簿価額に基づいて計算しなければならず、簡易税額は税務上の帳簿価額と会計上の帳簿価額の差額に関連するDTA(最低税率で再計算される)の考慮後で計算しなければなりません。
簡易ETRセーフハーバーには、税務上中立なUPE(フロースルーUPE、損金算入配当制度に基づいて運営されるUPEなど)に関する別個の規定が設けられています。これらのUPEにおいては、GloBEモデルルール第7.1条および第7.2条の特別な配分ルールに従い、簡易所得、簡易欠損金、および簡易税額を減額することがルール上要求されます。係るUPEの全ての所有持分が適格人によって保有されており、かつ(損金算入配当制度の場合において)全ての所得が損金算入配当として分配される場合は、セーフハーバーに基づいて取扱いが簡素化され、簡易所得および簡易税額の計算は要求されずに、簡易所得と簡易税額の両方がゼロとみなされます。これらのルールによって当該国・地域における全ての事業体の所得および税額がゼロに減額される場合、このグループは当該国・地域において簡易ETRセーフハーバーを適用することができます。
この簡素化の条件を満たさない(例えば、全ての所有者が適格人というわけではないため、全ての所得が分配されるわけではないため、第7.1条および第7.2条が当該国・地域の全ての構成事業体に適用されるわけではないためなどの理由による)場合、テスト対象国・地域の簡易ETRは、残りの所得および税額に基づいて決定されます。
UPEを除く税務上透明な事業体は、GloBEモデルルールにおいて無国籍とみなされます。係る事業体の全ての所得および税額が(a)PEもしくは所有者である構成事業体に対して配分されるか、または(b)非グループ事業体に配分されたものとして除外される場合、この税務上透明な事業体は、簡易所得または欠損金および簡易税額を有しないものとされます。係る状況において、この税務上透明な事業体は簡易ETRセーフハーバーの恩典を受けることができます。無国籍の税務上透明な事業体において、全ての所得および税額が配分または除外可能というわけではない場合、簡易ETRセーフハーバーは利用できません。
簡易ETRセーフハーバーの指針では、全ての所有者である構成事業体が、(a)GloBEモデルルール第7.5条に基づく選択、または(b)GloBEモデルルール第10.2条における税務上透明な事業体に関する一般ルールのいずれかに基づいて、ある投資事業体または保険投資事業体を税務上透明として取り扱う場合、当該事業体は簡易ETRセーフハーバーにおいても税務上透明な事業体として取り扱われると定めています。これにより当該事業体は、税務上透明な事業体に関する上記の説明に従い、簡易ETRセーフハーバーの恩典を受けることができます。これは、所有者である構成事業体のレベルですでに所得が課税されている場合において、投資ストラクチャーに関するコンプライアンスの負担を簡素化することを目的としています。
上記の説明を除き、簡易ETRセーフハーバーは、無国籍の構成事業体、投資事業体、および(特定の例外を除いて)MNEグループが適格分配時課税制度の選択を行った構成事業体を有するテスト対象国・地域には適用されません。
簡易ETRセーフハーバーの適用にあたり、MNEグループは簡易所得および簡易税額を調整することを要求されます。その目的は、4つのインテグリティ原則である(1)対応の原則(グループ内所得について、対応する利益と費用が認識されなければならない〈ローカル財務会計基準が使用される場合の例外あり〉)、(2)全額配分の原則(あるテスト対象国・地域に全ての所得が配分されなければならない)、(3)単一費用および損失の原則(全ての費用および損失が1回だけ、かつ1つのテスト対象国・地域のみにおいて損金算入されなければならない)、ならびに(4)単一税金の原則(税金が1回だけ、かつ1つのテスト対象国・地域のみにおいて計上されなければならない)が満たされるよう図ることです。
同様に、構成事業体間の金融商品は、発行体と保有者の双方において、一貫して負債性または資本性に分類されなければなりません。
簡易ETRセーフハーバーは、これが選択された事業年度の初日の24カ月前以降に開始した各事業年度に関するトップアップ税負債がなかった国・地域にのみ適用することができます。移行期間CbCRセーフハーバーに適用される「Once out, always out(一度対象外となると、再び受けることができない)」というルールは、簡易ETRセーフハーバーには適用されません。結果として、MNEグループは特定の条件下で簡易ETRセーフハーバーに再参入することができます。
簡易ETRセーフハーバーを適用する選択は、2026年12月31日以降に開始する事業年度(例えば、暦年事業年度の場合は2027年)について利用可能です。ただし、国・地域が早期適用を選択し、かつ(a)1つの国・地域のみが課税権を有するか、または(b)課税権を有する全ての国・地域が早期適用を認めた場合には、1年前倒しでこのセーフハーバーを利用可能になる可能性があります。
したがって、このセーフハーバーはTCSHにおける簡易ETRテストに代わる仕組みとして設計されているものの、2027年(および潜在的に2026年)には両方のセーフハーバーを利用できる可能性があります。
本パッケージにはTCSHの延長が含まれています。この延長は、TCSHから新たな簡易ETRセーフハーバーへの移行を促すことを目的としています。延長後のTCSHは、2027年12月31日以前に開始する事業年度(ただし、2029年6月30日より後に終了する事業年度を含まない)に適用されます。暦年事業年度を採用するMNEグループにとって、これはTCSHが2027年まで延長されることを意味します。
2026年中に開始する事業年度に適用される17%の移行税率は、2027年中に開始する事業年度にも適用されます。
延長後の移行期間中、対象範囲に含まれる納税者は、新たな簡易ETRセーフハーバーまたはTCSHのいずれかの適用を(TCSHについては「Once out, always out」ルールの下で)選択することができます。この柔軟性により、MNEグループは、それぞれの国・地域における自社の立場に最も適したアプローチを選定することが可能となります。
この点において、TCSHを適用することは、「移行年度(ある国・地域においてMNEグループがGloBEルールの対象範囲に含まれるようになった最初の事業年度)」の決定に影響を及ぼします。これは、GloBEモデルルール第9章に基づく移行ルールの適用に対して特に関連性を持ちます。
税額控除は、QRTCまたはMTTCに該当する場合を除いて対象租税を減少させ、それにより事業体のETRを引き下げるため、結果的にトップアップ税を生じさせる可能性があります。包摂的枠組みが合意したSide-by-Sideパッケージでは、MNEグループが特定の適格な優遇税制(QTI)を対象租税に加算して扱うことによりETRを引き上げることを可能にする、SBTIセーフハーバーを導入しています。
SBTIセーフハーバーは、ある国・地域における全てのQTIに適用される年度ごとの選択です。このセーフハーバーは2026年1月1日以降に開始する事業年度について利用可能です。
この選択を行った場合、当該事業年度に使用されたQTIの金額と、当該テスト対象国・地域の実体限度額のうちいずれか小さい方が、該当する国・地域の対象租税に加算されます。このセーフハーバーにおける関連する概念の説明は下記のとおりです。
QRTCまたはMTTCと異なり、QTIはGloBE所得に含められません。よって、ある優遇税制をQTIとして取り扱うことにより、MNEグループはQRTCまたはMTTCの取扱いと比べてより大きな恩典を受けられる可能性があります。この目的においてMNEグループは、QTIの定義を満たすことを条件として、QRTCまたはMTTCのうちいくつかまたはこれらの一部をQTIとして取り扱う、年度ごとの選択を行うことができます。この選択を行った場合、当該QRTCまたはMTTCはGloBE所得から除外される一方で、対象租税からの減算として(すなわち、非適格な税額控除と同様に)取り扱われます。そのうえで、対象租税への加算であるQTI調整が、他のQTIに適用される場合と同様に適用されます。
QTIとは、一般的に納税者が利用可能な優遇措置であり、発生した支出額に基づいて計算される(支出基準優遇措置)か、または当該国・地域内で生産(電力の生産、および採取や精製などの処理を含む)された有形資産の金額に基づいて計算されます(生産基準優遇措置)。非対象租税の負債を減少させる優遇措置、およびGloBE所得から除外される所得に関連して発生した支出にのみ適用される優遇措置、ならびに補助金や給付金は、納税者の支出に関連している場合であっても、この定義から除外されます。また、一般的に利用可能でない(例えば、対象範囲に含まれるMNEグループに適格規準が限定されているため、または中央政府による裁量的な決定が要求されるためなどの理由による)優遇措置も、この定義から除外されます。
包摂的枠組みは、国・地域別の恩典が対象租税を減少させる時期を明確化するため、およびグローバル・ミニマム課税の実施との関連において「関連する恩典」を識別するための指針の策定を進めています。関連する恩典はQTIの取扱いから除外される一方、QTIが実体のある経済活動を促進するよう、モニタリングが行われます。
適格な支出基準優遇措置は、発生した適格費用に対して一定の割合で税制上の救済を提供することにより、固定された確定可能な金額を納税者の経済的コストから減算する優遇措置と定義されます。政策は国・地域によってさまざまに異なるため、QTIの定義は広範であるとともに、費用の種類によって適格性を限定しておらず、これにより中立性を確保し、複雑化を回避しています。
支出基準優遇措置の付与方法の違い(例えば、税金負債に対する税額控除として、または追加的な損金算入を通じてなど)は、優遇措置がQTIとして適格であるかどうかの判断に関連しません。重要な要件は、優遇措置の金額が、発生した費用を参照して直接計算されることです。
一時差異のみを生じさせる資本的支出に関する税控除は、GloBEの繰延税金ルールによってすでに対処され、係る優遇措置から生じるトップアップ税が回避されていることから、QTIの定義から除外されています。ただし、当初の投資を超えて利益を除外するSuper deductionや割増控除が当該優遇措置に含まれる場合には、係る超過額が税額控除または控除と類似する永久差異を生じさせ、支出基準優遇措置に適格となる可能性があります。
税務上の恩典の金額が元々の発生した支出(優遇措置の金額計算の基礎となった)を上回った場合、支出基準優遇措置はQTIの取扱いから除外されます。この評価では、同じ支出に関連する全ての優遇措置が考慮されます。税務上の恩典の金額は、税金負債の最大の減少額(税額控除の場合は控除金額、損金算入・割増控除・免除の場合は追加的な損金算入または除外された利益に法定税率を掛けた金額)に相当します。
生産基準優遇措置がQTIとして適格とみなされるためには、ある国・地域内で生産された有形物品の、単位で測定された量に基づいていなければなりません。支出基準優遇措置では発生したコストに対して一定の割合で税制上の救済が付与されるのと異なり、生産基準優遇措置では生産された物品の量に基づいて税制上の救済が付与され、これにより生産への報酬が与えられます。
この選択を行った場合、(a)当該事業年度に使用されたQTIの金額と、(b)テスト対象国・地域の実体限度額のうちいずれか小さい方が、該当する国・地域の対象租税に加算されます。
QTIが税額控除である場合、当該事業年度に使用されたQTIの金額は、当該期間中に対象租税負債を減額した税額控除の金額です。このQTI調整は、GloBEモデルルールに基づく、税額控除の発生および使用に関連する繰延税金の除外の後に適用されます。結果として、税額控除の使用に関連する繰延税金費用は除外されたままとなりますが、別個のQTI調整で、対象租税が増額される可能性があります。
Super deduction、割増控除、または免除の場合における使用されたQTIの金額は、追加的な損金算入または免除利益に法定税率を掛けた金額として算定されます。これらの優遇措置によって税務上の欠損金が生じた場合、完全な経済的恩典が生じるのは、その後の期間において当該欠損金が使用された時点です。ただし、QTI調整は優遇措置が申告された年度に適用され、追加トップアップ税または超過マイナス税額繰越を減少させ、欠損金の利用時点における結果を改善します。
控除の上限となる実体限度額は、実体ベース所得控除(SBIE)に基づいて策定された実体の尺度です。
ある国・地域における当該事業年度の実体限度額は、以下2つの選択肢のいずれかに基づいて決定されます。
選択肢2については5年間の選択が必要です。選択を撤回した場合は、多額の減価償却後の切替による恩典の享受を防止するため、それまでこの手法に含まれていた資産を、選択肢1における減価および減耗償却の計算から除外しなければなりません。
本パッケージに述べられているところによると、Side-by-Sideシステムは、自国・地域に本社を置くMNEグループの国内所得と外国所得の両方に対するミニマム課税の税制が一部の国・地域ですでに実施されているという包摂的枠組みの認識を反映するとともに、QDMTTの導入を考慮し、かつ既存のGloBE制度と新たなSide-by-Sideシステムの間の相互作用により生じるあらゆる潜在的なBEPSまたは公平な競争条件リスクに対処することに対する、包摂的枠組みの加盟国・地域の注力を考慮しています。Side-by-Sideシステムは、Side-by-SideセーフハーバーおよびUPEセーフハーバーで構成されます。
MNEグループのUPEが「適格Side-by-Side制度」を有する国・地域に所在する場合、当該グループはSide-by-Sideセーフハーバーを選択することができます。この選択により、当該グループの全ての構成事業体(少数被所有構成事業体および無国籍の構成事業体を含む)のIIRおよびUTPRに基づくトップアップ税額はゼロとみなされます。トップアップ税額のゼロへの減額は、中間親会社(被部分保有親会社を含む)のレベルにおいて本来課されるはずのIIRにも適用されます。
Side-by-Sideセーフハーバーの選択が適用されると、選択を行ったMNEグループが持つジョイントベンチャーまたはJV子会社の持分に関連するトップアップ税額はゼロとみなされます。その他のあらゆるMNEグループが持つこの同じジョイントベンチャーまたはJV子会社の持分に対するIIRまたはUTPRの適用は、この選択による影響を受けません。また、GloBEルールの対象となる別個のMNEグループのUPEは、Side-by-Sideセーフハーバーに適格なMNEグループのジョイントベンチャーに該当する場合でも、この選択による影響を受けません。
QDMTTはSide-by-Sideセーフハーバーによる影響を受けません。Side-by-Sideセーフハーバーを選択したMNEグループの外国事業には、QDMTTが引き続き全面的に適用されます。QDMTTは引き続き、PEに対して課される主事業体の国・地域の税額、または外国子会社の直接もしくは間接持分に関連する税額を考慮せずに計算されます。QDMTTは、グローバル・ミニマム課税ルールにおいてそうであるように、あらゆる適格Side-by-Side制度において税額控除可能でなければなりません。MNEグループがQDMTTの目的においてSide-by-Sideセーフハーバーを申請することが、各国・地域によって認められることはありません。
適格Side-by-Side制度を有しない国・地域にUPEを置くMNEグループに対するIIRまたはUTPRの適用は、Side-by-Sideセーフハーバーによる影響を受けません。
UPEの国・地域が適格Side-by-Side制度を有すると認められるためには、適格規準を満たさなければなりません。適格規準において要求されるのは、(1)適格な国内税制、(2)適格な全世界税制、および(3)その他の税額控除可能な対象租税と同じ条件によるQDMTTの外国税額控除の提供です。外国税額控除の要件に関しては、一般に適用される外国税額控除限度額が、QDMTTの税額控除にも適用される可能性があります。
適格な国内税制を有するとみなされるのは、次の3つの要件を満たす場合です。第1に、当該国・地域の法定名目法人所得税率が、対象範囲に含まれるMNEグループの全ての所得に一般に適用されるあらゆる優遇的調整(例えば、損金算入、控除、または税額控除)を反映させる調整を加えた後で、20%以上でなければなりません。この税率は、適用される何らかの地方法人所得税も考慮することができます。この目的において、ある国・地域内に異なる複数の地方法人所得税率が存在する場合の複合税率は、最も税率の低い地方自治体を参照して決定しなければなりません。
第2に、当該国・地域が、QDMTT、または財務諸表利益に基づく名目税率15%以上の法人代替ミニマム税のいずれかを有していなければなりません。法人代替ミニマム税は、ミニマム課税の政策目標と一貫する範囲で、適切な調整、および外国または国内税額控除との相殺の対象とすることができます。さらに法人代替ミニマム税は、対象範囲に含まれる全てのMNEグループの当該国・地域における事業の集計所得の大部分に適用可能でなければなりません。この規準では、対象範囲に含まれる個別のMNEグループそれぞれにおける純利益の大部分が法人代替ミニマム税の対象となることは要求されません。
第3に、当該国・地域にUPEを置く対象範囲に含まれる全てのMNEグループの国内事業に関する集計利益(MNEグループそれぞれの国内事業の利益ではなく)に対する実効税率が15%を下回る重要なリスクがあってはなりません。リスクが「重大(material)」と評価されるのは、その大きさや発生可能性が高いため、政策立案者が税制の見直しを検討する十分な理由になると判断し得る場合を指します。この規準の適用にあたっては、GloBEルールの設計および運用が考慮されるとともに、適用される税制の全体的な運用の実際的な評価が行われます。この規準は時間をかけて総合的に、かつそれぞれのMNEグループ個別ではなく、集計レベルで検討されます。また、BEPSリスクへの対処のために実施されているあらゆる法制化された制度が考慮される可能性があります。
適格な全世界税制とみなされるのは、次の3つの要件を満たす制度です。第1に、当該制度は全ての法人の外国所得に適用されるとともに幅広い課税ベースに対して課され、重要な除外を設けず、かつ外国子会社の能動的所得と受動的所得の両方(当該所得の分配の有無に関わりなく)を含む、包括的な税制でなければなりません。この点において、ミニマム課税の政策目標と一貫する限定的な所得の除外(例えば、高課税所得の除外)は許容されます。ただし、高度な移動性のある所得(ロイヤルティ所得など)を除外する制度は、包括的な税制として適格とみなされないと考えられます。
第2に、当該制度には、重大なBEPSリスクへの対処のため、適切な対象の設定と同時に実体のある仕組みが組み込まれていなければなりません。この要件が満たされる可能性があるのは、例えば、能動的所得に関連する外国税額控除を、受動的所得から生じた控除前税金負債との相殺に使用する行為が当該制度によって防止されている場合です。同様に、低課税の対象である外国子会社からの合算と高課税の対象である外国子会社からの合算が別々に行われることが要求されている場合、当該制度はこの条件を満たす可能性があります。高課税の能動的所得に対する外国税額控除と低課税の受動的所得に対する税額の相殺を防止する仕組みが当該制度に設けられない限り、この第2の要件は満たされません。
第3に、当該制度は、GloBEルールの設計および運用、ならびに適用される税制の全体的な運用を考慮したうえで、当該国・地域に本社を置く対象範囲に含まれる全てのMNEグループの総体的な外国事業の利益に対する実効税率が15%を下回る重要なリスクを伴っていてはなりません。
包摂的枠組みは加盟国・地域の要請に応じて、2026年上半期末までに、適格Side-by-Side制度の適格規準に基づいて当該国・地域の既存の税制を評価する予定です。
本パッケージの公表と同日に「適格ステータスを有する法令に関するセントラルレコード」が更新され、適格Side-by-Side制度を有する国・地域として米国が記載されました。現時点(2026年1月時点)で、その他の国・地域は適格Side-by-Side制度を有する国・地域として同セントラルレコードに含められていません。
包摂的枠組みは既存の制度の評価に加えて、加盟国・地域が2027年または2028年中に要請を行った場合、係る時点で存在する当該国・地域の制度が持つ適格Side-by-Side制度としての適格性を評価する予定です。
Side-by-Sideセーフハーバーは、2026年1月1日以降に開始するMNEグループの事業年度、またはセントラルレコードに記載されたその後の年度に適用されます。ある国・地域が当該日より後にSide-by-Sideセーフハーバーを自国・地域の国内法に組み込む場合には、遡及的効果を持たせることとされています。憲法上の制約またはその他の優先的な法的要件によりSide-by-Sideセーフハーバーを2026年1月1日から適用できない国・地域は、実行可能な最も早い日の時点でこのセーフハーバーを実施しなければなりません。係る場合、UTPRのトップアップ税額を配分する数式(第2.6.1条に定められたとおり)の適用にあたっては、UTPRを適用するそれぞれの国・地域(Side-by-Sideセーフハーバーを採用している国・地域を含む)が考慮され、Side-by-Sideセーフハーバーをまだ実施していない国・地域は、UTPRのトップアップ税額に対して自国・地域のUTPRパーセンテージを超えた配分を受けません。
Side-by-Sideセーフハーバーの選択は、GloBE情報申告書(GIR)を通じて行われます。GIRのさらなる改訂により、当該選択が行われる旨を表示し、かつ当該選択を行うMNEグループには要求されない特定のデータポイントを識別する欄が追加される予定です。
IIRまたはUTPRを有する国・地域においてSide-by-Sideセーフハーバーの選択を行うMNEグループは、当該国・地域に対するGIRのセクション1(MNEグループの情報)(セクション1.4〈GloBE情報の概要〉を除く)において、グループの情報のみを提供します。当該選択を行うMNEグループは引き続きQDMTTの目的におけるGIR提出義務の対象となり、係る義務の下で一般にセクション1(セクション1.4を除く)においてグループの情報を、およびセクション3において当該国・地域に関する国・地域別の情報を、QDMTTを適用する国・地域に対して提供することを要求されます。
適格Side-by-Side制度を有する国・地域としてセントラルレコードに記載された国・地域は、自国・地域の制度の重要な修正について、該当する変更から3カ月以内に包摂的枠組みに通知することを要求されます。この目的において、適格Side-by-Side制度または適格UPE制度としての適格性に関する包摂的枠組みの評価に影響を及ぼした可能性があると予測できる修正は「重要」とみなされます。通知を受けた包摂的枠組みは、対応を検討します。
UPEセーフハーバーは、UPEの国・地域に関して特定の税制上の救済を提供し、移行期間UTPRセーフハーバー(暦年事業年度を採用するMNEグループの場合は2025年末に終了済み)の実質的な後継となる仕組みです。適格UPE制度を有する国・地域にUPEを置くMNEグループはUPEセーフハーバーを選択することができ、このセーフハーバーにおいて、UPEの国・地域に所在する全ての構成事業体について、UTPRに基づくトップアップ税額がゼロに減額されます。UPEの国・地域外に所在する構成事業体に関するIIRまたはUTPRの適用は、UPEセーフハーバーによる影響を受けません。また、QDMTTの運用も、UPEセーフハーバーによる影響を受けません。
2026年1月1日時点で適格な国内税制を実質的に有していた国・地域は、適格UPE制度を有するとみなされます。この目的における適格な国内税制の要件は、前述の適格Side-by-Side制度における適格な国内税制の規準と同じです。
包摂的枠組みは加盟国・地域の要請に応じて、2026年上半期末までに、適格UPE制度の適格規準に基づいて当該国・地域の既存の税制を評価する予定です。
現時点(2026年1月時点)で、「適格ステータスを有する法令に関するセントラルレコード」に、適格UPE制度を有するとみなされる国・地域は含められていません。
UPEセーフハーバーは、Side-by-Sideセーフハーバーと一貫する形で、2026年1月1日以降に開始する事業年度に適用されます。Side-by-Sideセーフハーバーの発効日に関する指針は、UPEセーフハーバーにも適用されます。
GIRの改訂により、MNEグループがUPEセーフハーバーの選択を行う欄が含められる予定です。適格UPE制度を有する国・地域としてセントラルレコードに記載された国・地域は、当該制度の重要な修正を行った場合、包摂的枠組みに通知することを要求されます。適格Side-by-Side制度の重要な変更に関する指針は、この要件にも適用されます。
包摂的枠組みは、2029年までに合意を結ぶとしている証拠に基づいた客観的なプロセスに従って、実績評価を実施する予定です。この実績評価では、QDMTTの実施状況を含む、グローバル・ミニマム課税およびSide-by-Sideシステムの影響に関するデータが考慮されます。この評価では、MNEグループ間で識別された新たな競争上の不均衡や、低課税の結果を達成しようとする納税者行動の負の傾向など、意図されない影響を評価します。この実績評価では、グローバル・ミニマム課税の運用、および共通の政策目標を踏まえたグローバル・ミニマム課税と適格Side-by-Side制度または適格UPE制度との相互作用に関して、情報に基づく判断に関連する全てのデータが考慮されます。
包摂的枠組みは、実績評価の情報に基づいて、Side-by-Sideについての合意およびその継続的な運用を支えるべく、公平な競争条件やBEPSについて特定された重大なリスクに対処する行動を取ることに注力しています。行動がどのような形をとるかは、特定されたリスクの共通性と重要性、およびSide-by-Sideシステムとグローバル・ミニマム課税の政策目標を維持しつつこれらのリスクに対処する方法についての評価によって決まると思われます。
Side-by-Sideシステムの一部として合意されたセーフハーバーはいずれも、全てのMNEグループの事業に対して、QDMTTが適用されることを妨げません。QDMTTは引き続き、外国子会社のプッシュダウンやその他の所有者レベルの税額を含めずに計算されます。加えて、包摂的枠組みの全ての加盟国・地域は、税額控除可能なその他のあらゆる外国法人所得税と同じ条件によるQDMTTの税額控除を引き続き確約しています。
包摂的枠組みは、国・地域の運用上の負担を軽減するとともに、グローバル・ミニマム課税の対象となるMNEグループのコンプライアンスを簡素化するための作業を継続する予定です。この作業には、QDMTTを適用する国・地域で事業を営むMNEグループのコンプライアンスの負担を軽減するために、さらなる協調の可能性を検討することが含まれます。
本パッケージでは、包摂的枠組みが条件付き課税または差別的課税を対象租税として認識しないことで一致しており、このことを一貫して適用する方法についてさらなる作業を検討する予定であるとしています。国内ミニマム課税の適格ステータスは、MNEグループ(Side-by-Sideセーフハーバーの適用を選択しているかどうかに関わりなく)に対する一貫した非差別的な適用に引き続き依存します。この点において本パッケージでは、関連する恩典に関する作業を含む、グローバル・ミニマム課税に関連するピアレビューおよび継続的な監視の役割を参照しています。
また本パッケージでは、インテグリティの手段に関する作業の完了にあたり、最低水準の課税の確保および競争の歪みのリスクへの対処というQDMTTの不可欠な役割が維持される予定であるとしています。
2026年1月12日(月)、欧州連合(EU)官報において、欧州委員会が本パッケージを承認し、「理事会指令(EU)2022/2523(ミニマム課税指令)の文脈における適用を確認」したとする通知が公表されました。
同通知では、「セーフハーバーに関する適格な国際的合意」の適用を加盟国が確保することを要求するミニマム課税指令第32条の規定も引用されています。係る合意が適格とみなされるためには、全ての加盟国がこれに同意することが必要とされます。EU加盟国のうち26カ国は、同意により本パッケージを採択した包摂的枠組みの加盟国・地域です。キプロスは包摂的枠組みの加盟国・地域ではありません。
2026年1月8日、キプロス財務省はプレスリリースを公表し、そのなかで「BEPSに関するOECD/G20包摂的枠組みにより2026年1月5日に承認されたSide-by-Sideパッケージ、特にSide-by-Sideセーフハーバー、UPEセーフハーバー、簡易ETRセーフハーバー、移行期間CbCRセーフハーバーの延長、および実体ベース優遇税制セーフハーバー…に対する全面的な保証と同意を提供」しました。
欧州委員会の通知には、包摂的枠組みにおいて合意された本パッケージのセーフハーバーの一覧が示され、全てのEU加盟国がこれらに同意した旨が記されています。
同通知において欧州委員会は、明示的に述べてはいないものの、これらのセーフハーバーが第32条の要件を満たし、したがってミニマム課税指令に基づいて適用可能であるとの見解を示唆していると思われます。本パッケージにおいて提供された指針を加盟国それぞれの国内の枠組みにおいて国内法化および実施するためには、ほぼ全ての加盟国が手段を講じる必要があると予想されます。
本パッケージは、第2の柱グローバル・ミニマム課税の対象となるMNEグループにとって、重要な新たなセーフハーバーを提供しており、今後のグローバル・ミニマム課税に基づく潜在的な租税負担に重大な影響を及ぼす可能性があります。企業はこれらの新たなセーフハーバーを精査し、潜在的な影響を評価する必要があります。
本パッケージは運用指針の形式をとり、GloBEモデルルールのコメンタリーに含められる予定です。これらの新たなセーフハーバーを導入するために、多くの国・地域において国内法や規制の改正が必要になると予想されます。したがって企業は関連する国・地域が運用指針を国内法に組み込むか否か、また組み込むのであればその方法について注視する必要があります。
MNEグループは、延長されたTCSHと簡易ETRセーフハーバーの両方について、それぞれの国・地域、および移行期間中のそれぞれの事業年度における自社の適格性を評価する必要があります。延長された移行期間中のコンプライアンスの救済を最大化し、リスクを最小化するためには、適時の選択が極めて重要です。この移行期間は、新しい「簡素化ETRセーフハーバー」の要件に対応するため、各社が自社のシステムや業務プロセスを整備・適応させるための追加的な猶予期間として設けられています。
さらに包摂的枠組みはセントラルレコードを更新し、Side-by-SideセーフハーバーまたはUPEセーフハーバーの対象と認める国内税制を有する国・地域を特定します。企業はセントラルレコードにおいて関連国・地域の取扱いを確認し、自社のグローバル・ミニマム課税計算への影響を評価する必要があります。現時点で、米国はSide-by-Sideセーフハーバーに適格な唯一の国・地域としてセントラルレコードに記載されています。また、UPEセーフハーバーに適格な国・地域として記載されている国・地域はありません。
本パッケージでは、Side-by-SideセーフハーバーまたはUPEセーフハーバーを選択したMNEグループに対してQDMTTが引き続き適用されること、およびGloBE情報申告書が(簡素化された形式になるものの)依然として要求されることが強調されています。これは、Side-by-Sideセーフハーバーを選択した米国に本社を置くMNEグループが、第2の柱の要件を全面的に免除されるわけではないことを意味します。加えて、2024年中および2025年中に開始した事業年度は新たなルールによる影響を受けず、したがってこれらの年度に関して米国企業が負う税金負債や報告義務も影響を受けません。2026年度以降の財務諸表における税務引当金について、Side-by-Sideセーフハーバーに適格な米国に本社を置くMNEグループは、グループの構成事業体に対してIIRまたはUTPRに基づく潜在的な課税権を有する国・地域におけるSide-by-Sideセーフハーバーの実施状況を注視する必要があります。
EY税理士法人
戸崎 隆太 パートナー
関谷 浩一 アソシエートパートナー
大堀 秀樹 アソシエートパートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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