EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証等に関連したグローバル動向の最新情報を公表しています。
今月号では、EFRAGによるEU域外企業向けサステナビリティ報告基準案に関する意見募集、欧州委員会による改訂版ESRS及び中小企業向け任意報告基準の採択、カリフォルニア州による当初のスコープ3排出の報告対象を限定する提案、「スポットライト」にてCOP31に向けた世界の気候ガバナンスを取り上げ、日本企業の経営戦略にも影響するグローバル動向を解説しています。
当記事はEY Globalより2026年8月13日(日本時間)に配信されたPublic Policy Sustainability Bulletinの日本語翻訳になります。原文の配信を希望される方はこちらよりご登録ください。
7月27日、シンガポール会計企業規制庁は、暫定サステナビリティ基準委員会が策定したシンガポールサステナビリティ開示基準草案に関する意見募集を開始しました(※1)。当該草案は国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準に基づいており、シンガポール会計基準(SFRS)S1号及びS2号で構成され、このうち、シンガポールが採用する気候優先アプローチの下、義務化が提案されているのは気候関連に焦点を当てたSFRS S2号のみです。SFRS S1号の気候関連の要求事項はSFRS S2号の付録として組み込まれ、SFRS S2号が単独で適用可能な基準として機能できるようになります。また、ISSBが設けている一部の経過的な救済措置についても、修正が提案されています。特に、スコープ3報告が義務付けられていない企業については、スコープ3の救済措置が継続的に利用可能となります。意見募集は2026年10月25日まで実施されています。
7月23日、ニュージーランド外部報告審議会は、IFRS S2号に基づく新たな気候関連開示基準の策定計画を示した気候報告ロードマップ案の意見募集を開始しました(※2)(※3)。当該ロードマップは、ニュージーランド固有の修正を加えつつ、オーストラリアの気候報告制度との整合性も検討しています。今回の意見募集では、主要な利用者、作成企業及びその他のステークホルダーから、導入時期及び適用方法に関する意見を求めています。意見募集は2026年9月30日まで実施されています。
7月23日、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、EU域外企業向けの欧州サステナビリティ報告基準40a(ESRS-40a)公開草案に関する意見募集を開始しました(※4)。EU会計指令第40a条に基づき、直近2会計年度の各年度においてEU域内で4億5,000万ユーロを超える純売上高を計上し、かつ、前会計年度の純売上高が2億ユーロを超える子会社または支店をEU域内に少なくとも1つ有するEU域外企業は、2028年1月1日以後に開始する会計年度に係る情報について、当該基準に従った報告が求められます。意見募集は2026年10月31日まで実施され、EFRAGは2027年1月までに欧州委員会へESRS-40aに関するテクニカルアドバイスを提出する予定です。
7月21日、カリフォルニア大気資源局(CARB)は、上院法案253号に基づく当初のスコープ3排出の開示を、「購入した財及びサービス」「燃料及びエネルギー関連活動」「事業活動において発生した廃棄物」「出張」「従業員の通勤」の5カテゴリーに限定する案を提案しました(※5)。この提案は、企業から提起されたコスト及びデータ入手可能性への懸念を踏まえたものです。また、CARBは2027年からスコープ1及びスコープ2排出の報告に対して限定的保証を導入することも提案しており、8月及び9月に意見聴取会を開催する予定です。
7月14日、フィリピン証券取引委員会(SEC)は、フィリピンサステナビリティ報告委員会によって承認されたIFRS S1号及びS2号の採用を承認しました(※6)。この採用は、同国の財務報告制度を更新する2026年シリーズ第22号SEC通達の一部を構成しています(※7)。この措置は、フィリピンがISSBに基づくサステナビリティ開示要件を国内報告制度へ組み込む他の法域と足並みを揃え、サステナビリティ関連財務情報の一貫性及び比較可能性の向上を支援します。
7月8日、韓国政府は、韓国総合株価指数(KOSPI)上場の大型企業に対する義務的なサステナビリティ開示のロードマップを最終化しました(※8)。開示規則はISSB基準に基づいています。連結総資産10兆ウォン以上の企業は2027年度を対象として2028年から報告を開始し、2029年には閾値が5兆ウォンへ引き下げられ、その後、検討を経て2030年からは2兆ウォン以上の企業への拡大される可能性があります。第三者保証は2030年から開始され、スコープ3排出量開示については各適用グループに対して3年間延期されます。韓国政府は企業の対応を支援するためセーフハーバールールの導入も計画しています。
7月3日、欧州委員会は改訂版ESRS及びCSRDの適用対象外である中小企業向けの任意の報告基準を採択しました(※9)(※10)。この任意基準はバリューチェーンキャップとして機能し、大企業がCSRD適用対象外の中小企業に要求できる情報を制限することを目的としています。改訂版ESRSは、サステナビリティ関連のインパクト、リスク及び機会に関する意思決定に有用な開示を維持しながら、報告負担の軽減を目的としています。これらの措置は今後、欧州議会及び欧州連合理事会による精査に付され、適用開始は、原則として2か月間の審査期間終了後となりますが、当該審査期間はさらに2か月延長される可能性があります。
7月1日、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、意見募集のためのディスカッション・ペーパーを公表し(※11)、リスク評価及びシナリオ分析ガイダンスの改善案に関する意見を募集しました。この協議は、発見(Locate)・診断(Evaluate)・評価(Assess)・準備(Prepare)(LEAP)アプローチにおける評価(Assess)段階、シナリオ分析及び能力構築に関する資料に焦点を当てたものであり、依存及びインパクトを財務的に重要な自然関連リスクへ変換する際の実務上の課題を反映しています。この件に関する意見募集は2026年7月31日に終了しました。
7月1日、欧州証券市場監督局(ESMA)は、タクソノミー開示委任法に基づくタクソノミー開示委任法における一部のKPIに関する欧州委員会向けテクニカルアドバイスについて、意見募集を開始しました(※12)(※13)。この意見募集は、より広範なオムニバス簡素化アジェンダの一環として実施されるものであり、投資家にとっての有用性を維持しながら報告負担の軽減を図ることに焦点を当てています。意見募集は2026年8月12日まで実施され、ESMAは2026年10月末までに最終的なテクニカルアドバイスを提出する見込みです。
ISSBは6月の会議において、自然関連開示に関するIFRS実務記述書公開草案の主要な構成要素について暫定的な決定を行いました(※14)。この決定には、用語、リスクの定義に加え、IFRS S1号の目的を満たし、かつISSB基準と矛盾しない場合には、企業がTNFDの指標を参照し、その適用可能性を検討することを認めることが含まれています。また、実務記述書は公表と同時に利用可能となり、初年度の比較情報は不要とされ、企業は実務記述書及びISSB基準のすべての要求事項に準拠した場合のみ実務記述書への準拠を表明できます。
7月24日、オーストラリア政府は、カーボンニュートラルであるとの主張を行う組織を対象に、これまで基準の策定及び認証を行ってきたクライメートアクティブ認証制度(※16)を終了する計画を発表しました(※15)。既存の参加者に対する認証は移行期間中も継続されますが、同制度は2027年6月30日までに終了することが提案されています。この決定は、自主的に行う気候関連の主張に関する期待の変化に加え、オフセットの利用やカーボンニュートラルに関する表示に対して、規制当局の監視が強まっていることを反映したものです。今後、科学に基づく排出削減目標、透明性の高い気候関連開示、移行計画、およびGHG排出データに対する保証を一層重視することが求められると見込まれます。
7月24日、欧州中央銀行(ECB)は、ユーロシステムの担保制度における気候要因の適用範囲を、債務者が非金融法人である適格な貸付債権に拡大する計画を発表しました(※17)(※18)。この措置は、2025年に社債を対象として導入された枠組みを拡大するものであり、気候関連の移行リスクが担保価値に及ぼす潜在的な影響を考慮することで、リスク管理の強化を図るものです。気候要因による調整は、セクター単位の気候ストレステスト、借り手の移行関連の不確実性に対するエクスポージャー及び資産の残存期間に基づいて行われます。担保価値の追加的な引下げ幅は最大5%に据え置かれ、適用開始は早くても2027年末となる見込みです。また、気候要因の値は毎年更新されます。
7月22日、欧州委員会は、ネットゼロ産業法第25条および第26条の実施を支援するガイダンス文書を公表しました(※19)(※20)(※21)(※22)。このガイダンスは、公共調達および再生可能エネルギーの入札において、発注機関および市場参加者が非価格基準をどのように適用すべきかを明確にするものです。第25条は、ネットゼロ技術の調達に際して、環境面の持続可能性およびレジリエンスへの貢献を考慮することを求めています。一方、第26条は、責任ある企業行動、サイバーセキュリティ、データセキュリティ、プロジェクトの履行能力、サプライチェーンのレジリエンスなどを対象とする非価格基準を導入しています。このガイダンスは、EU加盟国間で一貫した適用を確保するとともに、ネットゼロ技術のEU域内の製造能力を強化するというEUの目標を支援することを目的としています。
7月15日、アフリカ連合委員会、国連アフリカ経済委員会、アフリカ開発銀行及び国連開発計画(UNDP)は、「2026年アフリカ持続可能な開発報告書」を公表しました(※23)。同報告書では、2030年に向けた主要な優先事項として、気候レジリエンス、持続可能なインフラ、クリーンエネルギー及び実施が挙げられています。また、持続可能な開発目標(SDGs)及びアジェンダ2063(アフリカ連合が掲げる長期的な開発計画)達成に向けた主な障壁として、資金制約、気候ショック及び債務圧力の高まりを指摘しており、投資動員及びアフリカ経済全体におけるレジリエンス強化の必要性を強調しています。
7月13日、欧州委員会はEU森林破壊防止規則(EUDR)に基づき、改正された委任法令及び実施規則を採択しました(※24)(※25)(※26)。委任法では2027年12月30日から製品範囲が見直され、インスタントコーヒー及び一部のパーム油派生製品が追加される一方、一部のゴム製品、皮革製品及びその他の製品が対象から除外されます。実施規則では、EUDR情報システムの運用方法および技術的要件が定められており、零細・小規模の一次事業者向けの簡易デューデリジェンス申告も含まれています。
7月9日、オーストラリアとインドは、エネルギー安全保障に関する共同声明を公表しました。(※27)(※28)同声明では、安定したエネルギー供給、再生可能エネルギーの導入、電化及び重要鉱物に関する協力を再確認しました。両国首脳は、グジャラート州の屋上太陽光発電訓練アカデミーを含むインド・オーストラリア再生可能エネルギーパートナーシップの進展を歓迎するとともに、2015年の原子力協力協定の下で、平和利用目的のウラン輸出を可能とする行政取決めに署名しました。本声明は、エネルギー安全保障をサプライチェーンのレジリエンス及び移行金融の優先事項と結び付けています。
7月9日、カナダのタクソノミー・移行計画評議会は、同国の任意のサステナブルファイナンス・タクソノミーの一部となる「サステナブルファイナンス・タクソノミーの手法および枠組みに関する報告書」案について、意見募集を開始しました(※29)(※30)。このタクソノミーの第1段階では、気候変動の緩和ならびにカナダの「2050年までのネットゼロ目標」(※31)およびパリ協定(※32)との整合に重点が置かれます。また、活動分類の枠組み、技術的スクリーニング基準、重大な害を及ぼさない原則、および最低限の社会的セーフガードの枠組みに関する提案についても、意見を求めています。意見募集期間は2026年8月13日までで、最終報告書は年内に公表される見込みです。
7月7日、カナダは、戦略的な重要鉱物プロジェクトを支援するための20億カナダドル規模のカナダ重要鉱物アクセラレーターを開始しました(※33)。本プログラムでは、出資、融資保証及び供給契約などの資本調達手段を活用し、プロジェクトのリスクを低減するとともに、民間資本の呼び込みを図ります。エネルギー技術、先端製造、防衛及びデジタル産業を支えるプロジェクトが優先され、デュアルユース鉱物や同盟国のバリューチェーンに関連する案件も含まれます。
7月6日、ドイツ連邦政府は2027年度予算案及び2030年までの財政計画を承認しました(※34)。これには、財政健全化措置の一環として、プラスチック税の導入が含まれています。この予算枠組みでは、投資、構造改革及び財政健全化を重視しており、インフラ・気候中立化特別基金及び気候・変革特別基金を通じた資金供給も含まれています。プラスチック税は2027年度予算パッケージの一部として国内で適用される予定です。
7月3日、モンゴルの一院制議会は、同国初となる独立した気候変動法を承認しました(※35)。同法は、緩和、適応、温室効果ガスインベントリ、気候ファイナンス、カーボン市場及び透明性確保の仕組みに関する法的枠組みを整備するものです。同法は、モンゴルの長期的な気候政策及び持続可能な開発政策を支援することを目的としており、8月にモンゴルで開催される国連砂漠化対処条約(UNCCD)第17回締約国会議(COP17)に先立って採択されました。
国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)(※36)と国連気候変動枠組条約第31回締約国会議(COP31)(※37)の中間地点を過ぎ、野心的な目標設定から実施、説明責任及び国際的な気候ガバナンスの有効性へと関心が移りつつあります。ボン気候会議(※38)及びロンドン・クライメート・アクション・ウィーク(London Climate Action Week)(※39)では、既存の多国間枠組みが排出削減、気候ファイナンス及び経済移行において十分な成果を上げているかについて、より厳しい検証が行われていることが浮き彫りになりました。これら2つの場は、トルコのアンタルヤで開催されるCOP31(※40)に向けた交渉の方向性を左右すると考えられる課題と優先事項について、総括する重要な機会となりました。
ボン気候会議ではいくつかの重要テーマが浮上しました。気候ファイナンスは依然として中心的な論点であり、途上国は先進国が途上国における気候変動対策への資金支援を提供する責任を定めたパリ協定(※41)第9条第1項をより重視するよう求めました。また、COP30で合意された新たな公正な移行メカニズム(Just Transition Mechanism)の制度設計に関する議論も継続されました。これは、脱炭素化とあわせて経済発展及び社会的レジリエンスを支援する気候政策を確立するためのより広範な取組みを反映しています。同時に、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の予算制約に対する懸念から、制度及びプロセス改革を通じて効率性及び有効性を高める必要性も再認識されました。
貿易と気候政策も一層注目を集めました。ボン気候会議では初の「気候と貿易に関する対話(Climate and Trade Dialogue)」が開催され、世界貿易機関(WTO)、国連貿易開発会議(UNCTAD)及び国際貿易センター(ITC)などの機関が参加しました。この議論(※42)では、気候政策、産業競争力及び国際貿易の結び付きが強まっていることが強調されました(※43)。しかしながら、気候関連の貿易措置を扱う独立した議題項目を設置しようとする複数の途上国の提案については、一部の先進国が反対しており、UNFCCCの場でどのように扱うべきかをめぐる見解の隔たりが引き続き存在しています。
また、脱炭素化の中核戦略としての電化(electrification)に対する機運も引き続き高まっています。ボン気候会議での議論は、電化がCOP31における主要テーマの一つとして浮上する可能性があるとの期待が改めて示され、クリーンエネルギーの導入加速や化石燃料への依存低減に向けた幅広い取り組みを補完するものと位置付けられました。一方で、多くの関係者は、一部の締約国が緩和策に関するより実質的な議論への参加に慎重な姿勢を示していることを指摘しており、異なる発展段階にある国々の間で温室効果ガス排出削減責任をどのように分担すべきかをめぐる緊張関係が依然として続いていることを浮き彫りにしています。
これらのテーマはロンドン・クライメート・アクション・ウィークでも繰り返し取り上げられ、政策立案者、企業及び金融機関は、実施、投資及び成果創出の重要性を改めて強調しました。ボン気候会議及びロンドン・クライメート・アクション・ウィークでの議論は、COP31に向けては、新たな目標や約束の表明よりも、既存の枠組みや公約を実行し成果につなげられるかという「信頼性」に移りつつあることを示しています。すなわち、既存の枠組みが、気候資金の動員、透明性向上、経済移行支援及び気候目標を測定可能な成果へ転換できるのかが焦点となります。このような流れの中で、企業には、移行計画、開示及び発展し続ける気候ガバナンスの枠組みとの整合性確保に対する期待が高まる可能性があります。
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