EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
2026年7月14日からの2日間、熊本でグローバルネイチャーポジティブサミット(以下NPサミット)が開催され、EYもスポンサーとして協賛し、参加させていただきました。
NPサミットでのイベントに参加して得られた情報も踏まえて、ネイチャー、自然資本、生物多様性関連の開示にかかわる最近の動向をまとめてお伝えしたいと思います。特に、昨年ブラジル、ベレンで開催されたCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)前後での動きから、今回のNPサミット、そして今年10月にアルメニア、エレバンで開催されるCOP17(生物多様性条約第17回締約国会議)に至るまでの連関もあるため、これらのマイルストーンとひもづけて解説したいと思います。
各組織における自然関連開示の動きと相関を図としてまとめたものを以下に記します。
参考)Nature 関連の動向
COP30(2025年11月10日から延長含めて11月22日まで開催)は気候変動について協議されるものではありましたが、開催国ブラジルの思いもあり、自然・生物多様性に関するトピックがアジェンダにも含まれた会議でした。
このCOP30開幕の直前にISSBが総会を開き、その合議事項として投資家からの情報ニーズにこたえるべく、IFRS S1の要求事項に対応するための自然関連の作業を進めることを11月6日に発表しました。また、その発表の中で、LEAPアプローチを含めてTNFDのフレームワークを踏襲することも発表されたのでした。※1
この発表の翌日、呼応するようにTNFDは声明を出し、ISSBの発表を歓迎するとともに、2026年第3四半期までにセクターガイダンス作成などの技術的作業を完了させ、ISSBの作業に対する技術的支援を表明したのでした。※2
この一連の発表に先駆ける10月、ISOにおいても動きがあり、ISOとして初の生物多様性関連規格となったISO17298を発行し、組織の中で、どのように生物多様性を戦略とオペレーション上で検討するかを規格として示しました。この規格はTNFD、特にLEAPアプローチに沿って規格化されたもので、TNFDの協力も入って作られたものでした。※3
NPサミットは2026年7月に開催されましたが、さかのぼること数カ月、4月22日にISSBが発表を行い、自然関連の開示に関するドラフトをIFRS Practice Statementとして発行予定であることを示しました。※4
ISSBの説明の中ではIFRS Practice StatementがIFRS S1とIFRS S2の要求事項を補足するものであり、企業が自然関連のリスクと機会を開示する必要がある際に、その考え方を示すものとなると位置づけられました。また、ドラフトの発行時期として、COP17が開催されるタイミングである2026年10月が示されました。
上記のISSBの発表と時を同じくして、2026年4月、ISOがISO14001の改訂版を発行し、環境管理の中で、気候変動、生物多様性に関連するリスクと機会を考慮するよう変更が加えられ、また自社だけでなくサプライチェーン全体の管理をも考慮するように示しました。※5
この改訂を受け、ISO14001の認証を受けている企業においては、すでに機能している環境マネジメントシステムの一環として組織全体で自然、生物多様性に関するリスクと機会を考慮することが可能となり、これまでTNFD開示が本社など組織内の一部でのみ検討されていたのであれば、組織全体に広げていくよいきっかけともなりました。
なお、NPサミット開催中に発表されたものとして、サミット主催者であるNPI(Nature Positive Initiative)がState of Nature Metrics(SoNメトリックス)について発表を行い、その中で最終化目前のものとして現在の構想の形(下図)を示しました。
State of Nature Metricsの先行プレビュー(@Nature Positive Summit)
SoNメトリックスはもともとTNFDの開示提言の中でもグローバル中核開示指標の一つ、「C5.0 自然の状態」として「生態系の状態」と「種の絶滅リスク」が埋め込まれてはいたのですが、いずれも暫定案である「プレースホルダー指標」としての位置づけであったため、NPIが中心となり、関連する組織とともに開発してきていたものでした。(COP30期間中もNPIはSoNメトリックスのPilotテストについて発表を実施していました)
これまでこのSoNメトリックスの開発の動向を見守ってきている中では、指標として収れんされてきており、最終化の形に近いものと考えられます。
なお、このSoNメトリックスが最終化されると、組織の自然関連の取組み(例:取水量を減少させるや、汚染物質排出量を削減する)が、結果として周辺の自然資本に対して良好な形で影響をするのか、悪影響を与えるのかを確認することができるようになり、効果の検証が可能になると考えられています。
このSoNメトリックスについてはCOP17の直前のタイミングである9月にも最終化されることがNPサミット内で発表されていました。なお、これが実現すると、TNFDも開示指標の最終化を検討し、その後LEAP改訂の考えがあることを2026年6月に発効したディスカッションペーパーで言及しています。※6
前述したように、COP17が開催される2026年10月にはISSBがIFRS Practice Statementのドラフトを発表予定であるため、その発表に向けてTNFDとの協力体制のもと策定が進むと考えられます。
なお、10月にISSBがドラフトを発表した後はパブリックコメント期間となっており、自然関連の開示のStandard Settings の形がIFRS Practice Statementでよいのかの是非を含めてフィードバックを受け付けるとしています。
COP17の直前となる9月にはNPIによるSoNメトリックスが最終化される予定であるため、それを受けたTNFDが開示指標についての最終化の発表やLEAP改訂について発表をする可能性もあります。
また、TNFDではSoNメトリックス以外にも数多くの指標が示されており、TNFD開示を実施する企業はその開示が推奨されていますが、これらの指標の測定方法について共通的にガイダンスが出されていなかったため、この測定方法についても示すNature Measurement Protocolが現在NPIとWBCSDを中心として開発が進められています。※7
なお、TNFDの今後についてですが、TCFDのタスクフォースが活動を終えたように、いずれ活動を終えるものとなるため、TNFDタスクフォースとしてはLEAPアプローチのコンセプトやガイダンスを参照先として残すべく、ISOなどの規格化を検討しているとの話がNPサミット期間中にTNFDタスクフォースメンバーから上がっていました。
参考文献
※1 「International Sustainability Standards Board (ISSB)」
www.linkedin.com/posts/international-sustainability-standards-board_issb-ifrssustainability-issb-activity-7392252140498501632-Ntd4?utm_source=share&utm_medium=member_desktop&rcm=ACoAACgaq1QBox2pjlQeD-nNbRQbpr2yKbncEn0
※2 「TNFD welcomes ISSB decision on nature-related standard setting drawing on TNFD framework as adoption crosses 730 organisations and USD 22 trillion in AUM」
tnfd.global/issb-decision-on-nature-related-standard-setting-drawing-on-tnfd-framework/
※3 「ISO 17298 – Biodiversity in strategy and operations – TNFD」
tnfd.global/publication/iso-17298-biodiversity-in-strategy-and-operations/
※4 「IFRS - ISSB agrees on the proposed way forward for nature-related disclosures」
www.ifrs.org/news-and-events/news/2026/05/issb-agrees-proposed-way-forward-nature-related-disclosures/
※5 「ISO 14001:2026 - Environmental management systems」
www.iso.org/standard/14001
※6 「Discussion paper on state of nature measurement – TNFD」
tnfd.global/publication/discussion-paper-on-state-of-nature-measurement/
※7 「Global nature and sustainable business organizations agree to develop a Nature Measurement Protocol - Nature Positive」
www.naturepositive.org/news/latest-news/global-nature-and-sustainable-business-organizations-agree-to-develop-a-nature-measurement-protocol/
2025年のCOP30から2026年の熊本NPサミット、COP17へと続く自然関連開示の最新動向を解説。ISSB・TNFD・ISOの連携強化やSoNメトリックスの最終化を通じ、企業には開示高度化だけでなく、自然を組み込んだ組織変革が求められています。
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