EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
気候変動、生物多様性の喪失、資源制約など、企業を取り巻く環境課題は年々深刻化しています。ISO(国際標準化機構)が定めた環境マネジメントシステム規格(以下ISO14001)は、こうした課題に対応し、社会経済的ニーズとバランスをとりながら、環境を保護し、変化する環境状態に対応するための環境管理体制の枠組みとして、170カ国以上で30万以上の組織に採用されています。
本規格は2026年第2四半期の発行を目途に改訂される予定で、既存の枠組みを維持しつつ、要求事項の明確化、整合性の強化、また環境を取り巻く時代の変化を反映したものとなる見込みです。
本稿では、その改訂の概要と、改訂版への対応として必要な取組み、留意点について解説します。
改訂の状況については、現時点ではFDIS(最終国際規格案)段階であり、最終承認を経て2026年第2四半期に国際規格(IS)として発行される見込みです。
改訂の主眼は、他のマネジメントシステム規格との整合性強化と、気候変動・生物多様性・資源循環等の重要テーマの実務反映にあります。
FDIS段階で予定されている主要な変更点は概ね以下の6点になります。
| 変更点 | 変更内容 |
| 気候変動/生物多様性 |
|
| ライフサイクルアセスメント(LCA) |
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| リーダーシップの強化 |
|
| 変更管理(Change Management) |
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| デジタル化による透明性確保 |
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| サプライチェーンの運用管理 |
|
これら主要な変更点の詳細は以下の通りです。
関連箇条: 4.1組織及びその状況の理解、4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解、5.リーダーシップ(コミットメント、環境方針等含む)
規格案では、「気候変動」、「生物多様性」、「汚染」、「天然資源の利用可能性」といった環境状態が、4.1「組織及びその状況の理解」及び 4.2「利害関係者のニーズ及び期待の理解」にて明示的に考慮すべき要素として追加される予定です。これにより組織は、以下の事項が求められます。
特にトップマネジメントの5.2「環境方針」において天然資源・生態系保護へのコミットメントが追加されたことは、自然関連の取組みが「経営責任」として重視されることを意味していると言えます。
関連箇条: 4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
規格案では4.3「環境マネジメントシステムの適用範囲の決定」に、ライフサイクルの視点を考慮することが追加される予定です。これにより組織は製品・サービスについて、ライフサイクル全体での環境影響を把握し管理することが求められています。
関連箇条: 5.1 リーダーシップ及びコミットメント
規格案では、5.1「トップマネジメントの責任」が強化され、以下が明示される予定です。
トップマネジメントは単なる必要な資源を提供するだけの存在ではなく、環境目標の達成を主導し、組織行動に深くコミットする立場であると明確に示されています。
関連箇条: (新設)6.3 変更管理(Change Management)
規格案では、環境マネジメントシステムに影響を与えるすべての変更(例えば工程変更・事業内容の変更・工場新設等)に起因する不適合リスクを特定し、低減する仕組みの確立等、体系的な計画と管理を義務付ける6.3「変更管理」が新たに追加されています。
関連箇条: 7.支援(資源、力量、認識)、9.1監視、測定、分析及び評価、9.2 内部監査
規格案では、検証可能なデータとデジタルツールを活用した運用管理を明示的に強調しており、9.1「監視、測定、分析及び評価」や9.2「内部監査」においても、データの扱いがより厳格に規定されています。
関連箇条: 8.1 運用の計画及び管理
規格案では、各社の直接的な事業範囲内にとどまらず、サプライチェーン全体の運用計画と管理が求められています。
第三者認証を取得している組織は、改訂版の最終発行後、移行期間(原則3年を想定)内に改訂版対応を完了し、当該版に基づく認証へ移行する必要があります。
従来の汚染防止中心の運用から、気候・自然・資源循環・ライフサイクルを視野に入れた横断的な運用設計へとアップデートが求められます。
また、分析と監査・レビューの実効性がより厳格に確認される点にも留意が必要です。
EYは、気候変動・生物多様性・循環経済・デジタルの専門知識を統合し、ISO14001:2026 への円滑な移行と実効性向上を支援します。
ISO14001の第三者認証は、組織により、さまざまなレベル感で取得しています。工場単位の取得からグループ全体での取得まで、それぞれの組織に適したアプローチでの支援がEYでは実施可能です。これにより、組織の環境マネジメントシステムの統制強化だけでなく、全社的な目標達成と持続可能な成長・企業価値向上を促進します。
今回の ISO14001:2026 改訂対応は、単なるチェックリストや文書更新にとどまるものではありません。
環境マネジメントを、気候変動や生物多様性、ライフサイクル、データ活用といった経営アジェンダと結び付け、ガバナンス・データ・現場運用を再設計する取組みである点に、本質があります。
実務上は、まず方針・規程・手順書といった文書体系を整備し、トライアルを通じて新たな考え方や運用を検証しながら、段階的に組織全体へ展開していくアプローチが現実的です。
一方で、ISO14001 の改訂対応と並行して、気候変動や生物多様性といった個別テーマへの対応、データ整備やガバナンスの見直しを同時に進めることは、多くの企業にとって大きな負荷となりがちです。
EYは、多くのグローバル企業・日本企業の支援実績を通じて、ISO14001の規格対応にとどまらず、気候変動・生物多様性・サステナビリティ戦略・データ活用を含めた環境マネジメントの高度化を支援してきました。
規格の解釈から、経営視点での全体設計、段階的な実装、組織への定着までを一体として捉えることで、複雑化する改訂対応を円滑に進めることが可能となります。
ISO14001:2026 は、環境マネジメントを単なる順守の枠組みから、経営基盤として再定義する転換点です。
この改訂を、規格対応にとどめるのか、将来に向けた経営の仕組みづくりにつなげられるかが、今後の企業価値を左右します。
【共同執筆者】
多田 久仁雄(Kunio Tada)
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部 シニアマネージャー
四半世紀以上にわたり環境畑をまい進。EYではサステナビリティ全般に視座を広げて修練中。
加藤 敦士(Atsushi Kato)
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部 マネージャー
2023年にEY新日本有限責任監査法人に入社し、EHS分野を中心に、リスク評価支援、M&AにおけるEHS・ESGデューディリジェンス、CSDDD・CSRD等の欧州規制対応に関するアドバイザリー業務を担当。
八住 じゅり(Juri Yasumi)
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部 スタッフ
2025年、EY新日本有限責任監査法人に入所。インターンシップおよび大学での自然環境分野の学びやGIS解析の経験を活かし、企業のEHS関連業務の支援に従事している。
ISO14001:2026改訂では、気候変動・生物多様性・LCA・変更管理・データ活用・サプライチェーン管理が強化されます。単なる規格順守にとどまらず、環境マネジメントを経営基盤として再設計することが重要です。
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