ROIC経営時代のITマネジメントとは~IT投資を「事業成果に変える」運営モデルの実像~ #3

ROIC経営時代のITマネジメントとは~IT投資を「事業成果に変える」運営モデルの実像~ #3


ROIC経営の浸透により、IT投資は重視される一方、「成果につながらない」と感じる企業も少なくありません。本稿では、IT投資を事業成果につなげる運営モデルの違いに焦点を当てます。


要点

  • IT投資を事業成果へ転換できる企業は、IT部門の位置付けと役割が異なっている。 
  • ビジネス部門との成果の共同評価は、ROIやITコスト管理の高度化と強く結び付いている。
  • ITマネジメントの差は投資判断ではなく、「運営モデルの設計」に表れる。

IT投資が「成果につながらない」と感じられる理由

 

ROIC経営の浸透により、IT投資は単なるコストではなく、企業価値を左右する経営アジェンダとして位置付けられるようになりました。多くの企業で、IT投資を管理する仕組みやルールは次第に整いつつあります。

 

一方で現場からは、「IT投資は増えているが、事業成果への貢献が見えにくい」「管理はしているが、経営判断に生かされていない」といった声も聞かれます。

 

この違いを生んでいるのは、投資テーマそのものよりも、IT投資をどのような運営モデルで扱っているかにあります。


IT部門をどう位置付けるかが投資の性格を変える

調査結果からは、情報システム部門を「コストセンター」として捉えている企業と、価値創出の担い手である「プロフィットセンター」に相当する役割として位置付けている企業とで、IT投資の内訳が大きく異なることが分かります。

IT部門を価値創出の主体として捉える企業では、既存事業の維持・運用を目的とした投資の比率が低く、成長投資や変革投資の割合が高い傾向にあります。


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情報システム部門の捉え方毎のIT・デジタル投資の内訳

これは、IT投資が「必要経費」ではなく、「事業成果を生み出すための手段」として認識されていることを意味します。

ROIC経営においては、IT部門の位置付けそのものが、投資配分の質に影響を与えていると言えるでしょう。

 

IT投資の成果のビジネス部門との共同評価がITマネジメントの高度化を後押し

次に注目すべきは、IT投資の成果を誰が評価しているかです。

IT部門のみで成果を評価している企業と、ビジネス部門と共同で評価している企業とでは、ROI評価やCAPEX/OPEXを含むITコスト管理の成熟度に明確な差が見られます。

IT・デジタル投資の成果とビジネス部門のKPIとの連動度合い別企業割合

ここで重要なのは、ROIやコスト管理を厳しく求めること自体が目的ではない、という点です。IT投資を事業成果に連動させて運営している企業では、投資の目的や成果をビジネス部門と共有しながら意思決定を行うため、結果としてROIやコストが自然に把握され、議論される状態が生まれていると考えられます。

IT投資が「どの事業の、どのKPIを変えるためのものか」という視点で精査され、成果がビジネス部門とともに評価される仕組みが確立されていると、投資効果を確認せずに次の意思決定を行うことが難しくなります。

その結果、ROIを測定し、コスト構造を把握し、投資を継続するのか見直すのかを判断するプロセスが、意識せずとも運営の中に組み込まれていきます。

このように、ROIやコスト管理は「やらなければならない管理タスク」ではなく、事業とITが同じ成果を見て議論する運営の副産物として、結果的に高度化されていくのです。

 

運営モデルの違いはテクノロジー活用にも表れる

こうした運営モデルの違いは、テクノロジーの選択や使い方にも表れます。

今回の調査では、ビジネス部門と共同でIT投資の成果を評価している企業ほど、クラウドサービスを全社的なIT基盤として活用している割合が高い傾向が見られました。

これは単なる技術トレンドの問題ではありません。

ITを事業成果へ結び付けようとする企業ほど、コスト構造の柔軟性や改善スピードを重視し、OPEX型の運営に適したIT基盤の選択を優先する傾向があると考えられます。

すなわち、運営の考え方が変わることで、結果としてテクノロジーの活用形態も変わっていると捉えることができます。


IT投資が事業成果に結び付くかどうかの差は、「管理の有無」ではなく「運営の質」

以上の結果が示しているのは、IT投資の成否を分ける要因が、ROI評価の制度設計やコスト管理ルールの有無だけではなく、それらを事業成果と一体で機能させる運営モデルにあるという点です。

ROIC経営時代のITマネジメントにおいて重要なのは、ROIやコスト管理を「強化する」ことではありません。それらが見えざるを得ない運営構造をつくることです。

IT投資を「管理すべき対象」として扱うのではなく、事業成果を生み出す手段として運営する。その結果としてROIやコスト管理が自然に高度化していくことこそが、ROIC経営時代に求められるITマネジメントの姿といえるでしょう。





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サマリー 

IT投資が事業成果に結び付くかどうかは、管理手法の有無ではなく、事業と一体で回す運営モデルに左右されます。IT部門の役割再定義とIT投資の成果の共同評価が、ROI評価やコスト管理を高度化します。


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