企業価値を左右するグローバル税務ガバナンスとは ― 税情報開示と説明力の重要性

企業価値を左右するグローバル税務ガバナンスとは ― 税情報開示と説明力の重要性

BEPS2.0グローバル課税が始まり、今年から2025年度の税情報を開示する方向性となっています。現在、日系企業では初年度の開示準備に注力していますが、確実なデータ収集や、説明責任が果たせるか。税情報の開示要請の高まりを受け、税透明性の確保が問われています。


要点

  • BEPS2.0 グローバル課税、CbCRの開示義務化、社会への総合的な税財政貢献を可視化するTotal Tax Contribution Report、税務を超えたディスクロージャーなど税情報収集と透明性確保が問われている。
  • ESG格付け機関の評価項目やGRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)のインデックスにも税務ガバナンス関連の項目が組み込まれている。
  • CbCR情報の開示に耐えられる情報収集体制は整っているのか。公的なCbCRが与える税務透明性へのインパクトの理解を図り、Public CbCRに加えてTotal Tax Contribution等の情報開示を検討する必要がある。

国際税務の中でも100年に一度と言われる大きな変革がある中、各国で15%+を目標とした実効税率管理が行われています。実行税率15%が新たなグローバル課税の基準となるBEPS2.0の狙いは、各国が協調して大規模な新税制を導入し、各国税制の隙間を利用して合法的に節税を図ってきた多国籍企業に対応することにあります。

 

CbCR(国別報告書)についても開示義務化が進行しており、国別に売り上げや利益がどれくらいあり、税金がどれくらいかかるのか。欧州諸国を中心に開示の義務が生じています。企業にとっては、各国で15%の税金を納めるだけでなく、どれくらい各国で納税しているのか。簡単に外部資料から見えてしまうことになります。そのため、開示前に企業の税務ポジションについて検証を要し、EUの開示義務にとどまらず、CbCR開示と説明の範囲について戦略的な検討をする必要があります。

企業の社会への総合的な税財政貢献を可視化するTotal Tax Contribution Reportを開示する企業も増えています。それも法人税だけでなく、消費税や源泉徴収等も含めた国別納税情報の開示、カーボンニュートラルやサステナビリティに関連する優遇税制の活用状況の開示などを全体として示す必要があります。有価証券報告書だけでは見えない、税情報の開示が進んでいるのです。

税務を超えたディスクロージャーとして、株主や事業の観点からレピュテーションリスクについても事前に対応を図る必要があります。国別の利益水準や赤字事業、国別マーケットシェアも明らかとなり、社会的にも全世界的にも、企業は税情報を収集し開示の準備をして、なおかつ説明もできなければなりません。

まずは欧州とオーストラリアで今夏から、2025年度の情報を開示する方向となっています。現在、日系企業では初年度開示に注力していますが、確実なデータ収集であるかどうか、または説明責任が果たせるのか。税情報の開示要請の高まりを受け、税透明性の確保が問われています。

税情報開示要請の高まりと、税透明性の確保の必要性

CbCR情報の開示に耐えられる情報収集体制が整っているのか

それだけではありません。環境・社会・ガバナンスのESGのうち、ガバナンスの一環として、税務方針や税に関する取り組みなど税務ガバナンスに関する開示要請が高まっており、ESG格付け機関の評価項目やGRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)のインデックスに税務ガバナンス関連の項目が組み込まれています。

ここでは企業が本来的に情報を出したくない税務部門と情報を出したいサステナビリティ部門を調整し、会社の全体方針をどうつくっていくのか。CFOをはじめとしたマネジメント層が対応する必要があります。


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CbCRの開示義務化が進んだことで、税務当局だけでなく、公開情報となって競合他社やステークホルダーも見ることができるため、今後株主総会でも問われる可能性があります。そのため、税務ポジションの説明責任を果たさなければなりませんし、限定された情報のみを出せばミスリードされる可能性もあり、幅広い情報の開示をする必要があります。

これまでCbCR情報は年に1度税務当局のみに提出されていたものが、一般公開される情報となります。移転価格やBEPSリスクのハイレベル評価に活用されるほか、特定の税務報告チームが責任を負うことになります。企業は、公開されたデータに対する問い合わせに、社内外へ回答できる準備をしておく必要があります。

税務ポジションに影響し得るデータとして、BEPS Pillar2を含む将来の税制はCbCRデータを参照するようになり、報告データは税務ポジションに直接影響し、税務調査・税務評価プロセスとデータ報告が統合される可能性があります。

また、より広いESG報告へのインプットをするために、税務データはESG報告の重要な要素となり、多数のESG報告フレームワークが乱立することで、税務報告基準も増加・多様化する可能性があります。

そのため、CbCR情報の開示に耐えられる情報収集体制が整っているのか。公的なCbCRが与える税務透明性へのインパクトの理解を図り、Public CbCRに加えてTotal Tax Contribution等の情報開示の検討をする必要があります。このように税の透明性の確保は止められない流れであり、企業は対応できる体制をどう構築するかが問われています。


税務リスク低減、税コスト最適化、税の透明性が整ったグローバル税務ガバナンスが求められる

こうした中、グローバル税務部門として求められるグローバル税務ガバナンスとは何でしょうか。企業に求められる税務対応としては、まず「税務リスク低減」が挙げられます。環境関連税制の導入に伴い税務リスクに対応していないと、課税による追加徴税リスクやペナルティ、レピュテーションリスクがあるということです。

次に挙げられるのが「税コスト最適化」です。追加税の適正化によるROIC、ROEなどの指標の向上に向け、適正な税金費用の計上が求められます。最後に挙げるのは「税の透明性確保」です。ESG格付け、サステナビリティインデックスなどの要請に加え、開示義務化、BEPS2.0のGloBEルールによる財務開示の要請への対応をしなければなりません。

このように企業は、いわゆる攻めの税務、守りの税務のどちらも認識した上で、税務リスク低減、税コスト最適化、税の透明性の3つが整ったグローバル税務ガバナンスが求められているのです。

グローバル税務部門として求められるグローバル税務ガバナンス

企業のマネジメント層は、グローバル税務をきちんと認識し説明できるでしょうか。今後、税務情報は公開され、投資家からその内容について聞かれる立場となります。そのため、今あるマネジメント体制の中で税務ガバナンスの仕組みをしっかり取り込んでいくことが重要になります。そのとき、収集したデータをきちんと開示し、それを説明する力を持つことが何よりも欠かせません。

EYでは税務部門の在り方やガバナンス体制の構築、そこからどのようなデータを出すべきなのか、クライアントと共に伴走しサポートしていきます。




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サマリー 

攻めの税務、守りの税務のどちらも認識した上で、税務リスク低減、税コスト最適化、税の透明性の3つが整ったグローバル税務ガバナンスが求められています。マネジメント層は、グローバル税務をきちんと認識し説明できるでしょうか。今後、税務情報は一般公開され、投資家からその内容について聞かれる立場となります。そのためには、今あるマネジメント体制の中で税務ガバナンスの仕組みを取り込んでいくことが重要になります。



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