Cannon Beach, Oregon, United States
ビーチの潮だまりを歩く白人の子供たち

場所に縛られない働き方の増加は未来の人材の在り方をどう塗り替えるか?


仕事の在り方は、キャリア、リワード(報酬)、働く場所などにおいて従来の価値観とは異なるものへと変化しています。こうした中、今回のEY 2024 Work Reimagined Surveyの調査結果から、企業が人材面で優位性を構築する際に重要となる要素が明らかになりました。


要点

  • 人材のフローは基本的なものであり、従業員の38%が、1年以内に転職する可能性があると回答。こうした人材のフローは、同業種の企業間だけでなく、異業種間でも見られる。
  • 人材優位性を構築するには、柔軟な働き方を奨励する文化、包括的なトータルリワード、迅速なスキル構築を実現するための戦略を企業の目標に沿って策定し、その戦略を通じて人材のフローを自社に導くことが不可欠である。
  • 生産性とビジネス成果の向上に密接に関わる人材優位性を構築する上で不可欠な「戦略的人材力」を有している企業はわずか32%にとどまる。

グローバル全体の傾向として従業員は今、自身のニーズに即したエクスペリエンスや期待事項を求めるようになっており、キャリア、トータルリワード、働く場所などにおいて、従来のような画一的な考え方はますます少なくなっています。経済、地政学、労働市場における混乱が長年にわたり絶えず発生していますが、それでもなお、多くの従業員が退職に対して前向きです。彼らは、短期間の雇用もいとわず、自分に合った、より満足のいく仕事を求めて転職に意欲的です。

人材戦略を効果的なものにするには、こうした状況を全て考慮する必要があります。そして、それは新たなタイプの不安定性に対処できるものでなければなりません。世界的な人材のフローは、企業にとって、良しあしの問題ではなく、基本的で避けられないものであり、そのフローをコントロールすることはできません。

しかし、ビジネスリーダーが目的意識を持ち、戦略的なアプローチを取る人事機能と連携して人材面の優位性を構築することができれば、人材のフローを自社に優位な形で導くことができるでしょう。

世界各国・地域の従業員と企業を対象とする「EY 2024 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2024)」で、高い戦略性と優位性を備えた人事機能を持つ企業の32%が、自社が外部圧力を成功裏に乗り越えたと回答しており、その他の企業よりも7.8倍高いことが明らかになっています。また、このような企業では、過去2年間に生産性が大幅に向上したとする回答も6.5倍高く、現在の経済情勢下で予想以上の業績を創出したとする回答も5.8倍高いです。

前回までの調査では、仕事の在り方に対する企業側と働く側それぞれの考え方として、企業は主に周期的な懸念事項に目を向けていたのに対し、従業員は働き方、働く場所、働く目的といった構造的変革の影響を大きく受けていました。しかし今、両者のこうした考え方は有効ではなくなり始めているようです。企業の考え方は、新たな状況を乗り越えていくにはあまりにも硬直的です。今後、企業が成功を収める上で重要となるのは、「人材健全性と人材のフロー」「生成AIなどの職場テクノロジー」「トータルリワードの優先事項」「学習、スキル、キャリア成長」「組織文化と働く場所」という5つの要素です。企業の中・長期的な成功は、この全ての要素で優れたパフォーマンスを発揮できるかどうかによるところが大きいでしょう。


多様な人材プールを自社へと導くには、人材優位性の向上に寄与する各要素に新たな価値観やリスク許容度を取り入れることが不可欠です。ビジネスリーダーは、まず人材健全性の重要性を認識し、それが「個々人に合わせたトータルリワード・パッケージ」「スキル習得や学習のためのプログラム」「組織文化に対する従業員の意識」などのいかんによってどう変化する可能性があるのか理解する必要があります。場所に縛られないハイブリッド勤務やリモート勤務が普及している現在、働く場所を再考する際に人的つながりを考慮に入れることも忘れてはなりません。また生成AIの導入が急速に進むにつれ、同テクノロジーを使用するためのスキルを持つ人材を確保することが不可欠となっているため、企業は変化に俊敏に適応し続ける必要があります。


Young woman having fun jumping by the sea with a big smile
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第1章

人材優位性と人材のフロー

従業員は、自分が求めるものを見つけるために転職にますます意欲的になっています。企業は、従業員のリテンション以上にモチベーションの向上に目を向ける必要があります。

人材争奪戦に勝つために策定された従来の戦略では、基本的な人材のフローに適応することはできません。従業員は労働市場のさまざまな選択肢によって勇気づけられ、以前よりも現状に甘んじることを望まなくなっています。2024年のWork Reimagined 調査でも、従業員の38%が今後12カ月以内に転職する可能性があると回答しています。

企業の人材健全性を測る指標は長い間、当然のことながら人材の引き付けとリテンションに影響を与えるものに焦点が置かれてきました。例えば、優れた健全性は勤続年数、組織文化の指標、強固な採用プロセスなどの指標によって定義されました。しかし、これらの指標は、必ずしも企業の状態をリアルタイムで反映しているとは限らず、人材の基本的なフローに企業がどの程度効果的に関わっているのかを完全に説明するものではありません。

一方、新たな人材健全性指標は、従業員の入退社、スキルセット、文化的変化などに企業がどれだけ効果的に対応できているかを示しています。この指標は、従業員が自分の勤務先を友人や家族に推薦する可能性に影響を与える要因と関連性があります。人材健全性の評価スコアの高さと、従業員が離職する可能性の低さには相関関係はありません。これは、人材健全性と人材のフローはお互いに影響しない別個のものだからです。

人材市場では今、労働者が新たな経験やスキル、柔軟な働き方を求めて転職を繰り返すことが一般的になっています。そのため、どの企業も、このような超流動的な人材市場に適応できるよう自社の人材戦略を調整する必要があるでしょう。そして人事責任者は、従業員の勤続年数よりも在籍中にどれだけ質の高い貢献をする人材であるかという点に目を向ける必要があるでしょう。

人材健全性と人材のフローは密接に関連しており、両方が相まって、従業員がどのような職場を好み、なぜその職場を選ぶのかに影響を与えます。

12カ月以内に転職を検討している従業員のうち、現職と同じ業界での転職を考えている人(26%)と新たな業界で転職を考えている人(25%)はほぼ同じ割合で存在します。求職者が最も心を引かれるのは総収入の増加(39%)であり、その後に、より良い仕事やキャリアアップの機会(35%)、そしてより良いウェルビーイングパッケージ(34%)が続きます。


人材のフローを自社に導きたいのであれば、文化、トータルリワード、スキル開発という3つの主要領域で従業員のニーズに応じた取り組みを進める必要があります。その取り組みのいかんによって、従業員が自身の勤め先を友人や家族に薦める可能性は高くも低くもなり得ます。これについてセクター別で見ると、セクターにより取り組みの成果にばらつきがあり、興味深いインサイトを得ることができます。

人材健全性に関するスコアのセクター平均は55点で、スコアが最も低いのはガバメント・パブリックセクター(43点)、最も高いのはテクノロジーセクター(68点)となっています。スコアが低いからといって、そのセクターからより多くの人材が流出しているわけではありませんが、人材の流出が起きていることは確かです。一方、スコアが高ければ高いほど、従業員が社外の人々に自身の勤め先を積極的に推薦する可能性が高くなり、優秀な人材の流入が進み、生産性の高い人材の確保につながると捉えることができます。


例えば、テクノロジーセクターは人材健全性が高いですが、それは従業員との良好な関係の構築や、新たな人材の引き付けにおいて優れているということを表しています。また人材の流動性が高まることは、従業員が退職する可能性が高まることを意味するかもしれませんが、人材健全性が高いセクターの場合、そうでない他のセクターよりも人材を引き付ける可能性が高まるということになります。セクターのこうした人材引き付け力は、企業側が従業員の期待に寄り添った対応を行っているということを物語っているといえるでしょう。

ハンモックでパートナーとコーヒーを飲む男性
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第2章

場所にとらわれない働き方を推奨する健全な文化

ハイブリッド勤務やリモート勤務が普及するにつれ、従業員の分散化が進み、つながりや価値観において新たな考え方が見られます。

柔軟な働き方の実践や革新が行われるようになって久しいですが、その議論の焦点は今「どのように」働くかということから、「なぜ」そのように働くべきなのかという根本的な問いへと変化しています。ナレッジワーカーにリモート勤務やハイブリッド勤務を可能にするだけでは十分ではありません。将来的に人材優位性を担保できるかどうかは、多様で分散した従業員を引き付けられるような、一体感と前向きな思考を促進する文化を醸成できるかどうかによります。

実際、企業の健全性スコアの40%は組織文化関連であり、人材優位性が高い企業の66%が過去12カ月間で文化が大幅に改善したと回答しています。一方、人材優位性が低い企業で同様に回答したのはわずか4%でした。組織文化は「従業員は上司から信頼され、権限を与えられていると感じているかどうか」「従業員は雇用主を信頼し、雇用主に支援されていると感じているかどうか」、そして「従業員は経営陣や上司から単なる労働力ではなく、人として大切にされていると感じているかどうか」という質問に対する回答者の割合に基づき評価されます。

全体的には、従業員も企業も組織文化が改善していると感じていますが、企業のほうが従業員よりもはるかに楽観的です。例えば回答企業の77%が、「従業員は上司から信頼され、権限を与えられていると感じている」と回答していますが、そのように感じる従業員は57%にとどまっています。組織文化に関する他の質問についても同様のギャップが見られます。


企業が極めて楽観的な見方をするのは、ハイブリッド勤務やリモート勤務で生み出される生産性に対する満足度が高まっていることが背景にあるかもしれません。希望する働き方についてナレッジワーカー(通常、専門的な知識や専門性を駆使するプロフェッショナル)に尋ねたところ、最も多かったのは、週に3~4日のリモート勤務(40%)で、同様の回答をした企業は48%でした。さらに、ナレッジワーカーの中で完全なリモート勤務を希望する人の割合は28%で、それを許容する企業の割合は14%にとどまりました。

ナレッジワーカーがハイブリッド勤務やリモート勤務で働くようになるにつれ、従来のような特定の職場との物理的つながりが失われつつあります。例えば本調査結果によると、割り当てられた座席や私物を置くスペースがある従業員はわずか28%で、彼らにとってオフィスとの物理的つながりやオフィスへの帰属感は最小限に抑えられています。

しかし、オフィスに縛られない働き方をしていても、従業員はオフィスを文化的な接点として捉えています。ナレッジワーカーにオフィスに行く理由を尋ねたところ、最も多かったのは「社会的つながり」と「仕事と私生活の空間を分ける」で、続いて同僚との連携を挙げています。

個人の包括的ニーズに応じたトータルリワード

より柔軟な働き方を求める傾向が多くのナレッジワーカーの間で標準的に見られるようになって数年たちますが、そうした傾向がさらに高まっていることが本調査で明らかになりました。リワードに関する最優先事項について従業員に尋ねたところ、31%が「柔軟な勤務スケジュールと勤務時間」を挙げ、26%が「場所にとらわれない働き方」を希望しています。その他にも、オフィスに縛られない働き方をしている従業員は日々の仕事とプライベートライフの両方を広く考慮したリワードを求めています。従業員にとって給与は依然として重要な考慮事項ですが、長引く物価高への懸念が広がる中、リワードに対する考え方はさまざまです。ナレッジワーカーの場合、自身のパフォーマンスと貢献に応じたボーナスやインセンティブの選択肢を増やしてほしいという回答が最も多く(37%)、従業員全体では、3分の1が「健康とウェルビーイングのための福利厚生」「有給休暇」、そして「物価を考慮した報酬」を重要と考えています。

 

企業が優先的に取り組んでいるリワードは広範囲にわたるため、これらは従業員側の優先事項と一致しているように見えますが、顕著な違いもあります。世界的に続く医療費の高騰や、健康に関するニーズの高まりを受け、企業の39%が今後1年以内に健康とウェルビーイングのための福利厚生に投資することを計画しています。これは身体面、精神面、感情面の健康を含む、個人の包括的ニーズを考慮した福利厚生プログラムが必要になっているということが背景にあります。また、ほぼ同数の企業(38%)がパフォーマンスに基づくボーナスとインセンティブの制度の充実を目指しています。他方、トータルリワードの改善の一環で従業員のスキルアップのための投資を検討している企業は28%にとどまり、物価高を反映したトータルリワードの整備に注力する予定でいる企業もわずか23%であったことは注目すべき点です。

 

人材のフローが基本的なものであり、ましてや労働力の多世代化が避けられない時代においては、従業員を一枚岩と捉えることは賢明ではありません。本調査結果を世代別で見てみると、優先事項に顕著な違いがあることが明らかになりました。例えば、最も若いグループであるZ世代の従業員の優先事項を見ると、「有給休暇」が第1位で、続く第2位には「パフォーマンスに基づくインセンティブ」と「健康とウェルビーイングのための福利厚生」が並んでおり、僅差で第4位に「柔軟な勤務スケジュール」が続いています。ベビーブーマー世代の場合これと相反する状況で、46%が「物価を考慮したトータルリワード」を望んでおり、続いて41%が「パフォーマンスに基づくインセンティブ」を挙げています。第3位は2位との差が大きく開き、32%が「健康とウェルビーイングのための福利厚生」を希望しています。


トータルリワードの優先順位に関して、このように世代間で考え方にばらつきがあることを踏まえると、企業は働き方の柔軟性を改善するなど、全ての世代にとって魅力的な改善策を見いだすことが重要となります。近年、モビリティ機能が、出張や転勤といった従来の枠組みを超えてこうした働き方の柔軟性に取り組んでいます。また同機能は、ハイブリッド勤務やリモート勤務で生じる税務、法務、規制関連の新たなリスクに対処するための支援も行っています。従業員が複数の税務管轄区域にわたり業務を遂行する場合、たとえ同一の国、州、省、または市内であっても、企業にとって複雑な問題が生じる可能性があり、より良い調整が必要になります。EYモビリティサーベイ2024の調査結果によると、モビリティ機能が組織の人材戦略との密接な連携を図っている場合、その企業は、人材や業績面で明らかにより高い成果を挙げています。企業は、トータルリワードを織り込みながらモビリティプログラムを包括的に進化させることで、まだ実現されていない機会を見いだすことができるかもしれません。

 

企業が研修やスキルアップの領域の改善に注力していることは、従業員が望むリワードの形態から乖離しているかもしれませんが、スキル重視が全く見当違いというわけではありません。スキルアップやスキル開発は、新たな職場テクノロジーや生成AIへの依存が高まる未来に向けて人材優位性を確立する上で重要です。

A Middle Eastern businessman and an Asian businesswoman collaborate on a project, focused intently on a laptop in a modern office setting late at night.
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第3章

真の変革のために不可欠なスキルとテクノロジーの強化

生成AIに関する話題は、導入率だけにとどまらず、今では人材健全性やスキルアップにも及んでいます。

生成AIの導入が急速に進むにつれ、テクノロジーやスキルへの投資、生成AIの活用能力、組織文化、リスクなどに関して、労働力上の重要な問題が浮き彫りになっています。生成AIの利用の有無に関して、昨年の調査時点では「すでに使用している、あるいは今後2カ月以内に使用する予定である」と回答した従業員は49%でしたが、1年後となる今回、75%の従業員が生成AIを使用しています。

生成AIのこうした利用拡大は注目に値しますが、同テクノロジーの効果に対する評価を知ることはさらに重要かもしれません。本調査によると、従業員の37%が「生産性」に正のネットインパクトをもたらすと回答しました。また、「業界の業務プロセス」と「より付加価値の高い業務への専心」において正のネットインパクトをもたらすと回答した従業員はそれぞれ34%と36%でした。また、これらの領域について同様の回答をした企業の割合は従業員のほぼ2倍という調査結果も明らかになっています。


従業員の回答を生成AIの使用度合い別に比較してみると、より詳細な傾向が見えてきます。例えば、生成AIを広範に使用している従業員は、生成AIの使用が限定的な従業員に比べ、自社の技術的エクスペリエンスを「平均以上」と評価する可能性が4倍高いです。生成AIを広範に使用している従業員はまた、12カ月以内に退職する可能性も高い傾向にあります。これは、生成AIに関する知識が深まり、業務での応用範囲が広がることで新たな機会が開かれ、それを追求したいという思いが背景にあると考えられます。

しかし、人材のフローが基本的なものとなっているという観点に立ち戻ると、従業員のこうした退職は必ずしも悪いことではありません。また、生成AIをより積極的に取り入れている企業では、人材面の健全性スコアが平均を上回っています(67、それに対し、生成AIの採用にあまり積極的でない企業では60、導入が限定的な企業では50)。これは、従業員が他者に自身の勤め先を推奨する可能性が高いということを示唆しています。

生成AIの使用は、企業の持つ従業員スキルの底上げ力とも相関しています。生成AIを使用している従業員の58%が、自社の育成・研修プログラムを平均以上または優れていると評価しています。これは、スキルの半減期が短くなっているという観点からも納得できます。最も急速に進化しているテクノロジーを業務で使用している従業員は、変化に適応していくために継続的に学習し、スキルを向上させる必要性を認識しています。

テクノロジーの急速な進歩と活発な人材のフローに応じて、継続的に従業員のスキルアップに注力し、将来に向けて人材優位性を維持・確保するためには、新たなアプローチが必要です。企業としては、学習・育成プログラムを社内で完結させることを好むでしょう。一方、従業員はアップスキリングを、社内の枠を超えたトータルリワードの一環として捉えているようです。また企業は、全く異なる地域からの人材確保も検討する必要があるかもしれませんが、それには新たな複雑さが加わります。

Silhouette of men playing cricket on a beach at sunset
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第4章

未来の人材優位性を担保する

信頼性、個別化、つながり、学習が相まって、将来の人材優位性に寄与します。

人材優位性の構築を目指す企業は、まず、人材のフローを自社に導く方法を特定する必要があります。その際に企業が考慮すべき事項は以下の通りです。

1. 人材健全性と人材のフロー

基本的な人材のフローと企業の人材健全性の相互作用が、将来の人材獲得競争力を決定づけます。企業が人材のフローを自社に向ける、つまり人材を引き付けるためには、文化、トータルリワード、学習・育成に焦点を当てる必要があります。勤続期間が短くなり、従業員が自身にとって最も意義があるものを見つけるために新たな企業へと積極的に転職する時代であっても、企業には従業員が在籍中に活躍し、自身の勤務先を他者に推奨してもらえるような環境を構築する機会があります。また企業は、市場データを反映させた採用・リテンション戦略を展開できるよう、人材計画、採用、人材管理のための効果的なツールを開発することも必要でしょう。

2. トータルリワードは広範な報酬体系

給与が従業員の関心事であることは変わりありません。しかし彼らの要望は微妙に複雑で、包括的なものへと変化しています。こうした変化に対応するために、企業は個々の従業員のニーズを踏まえながら、より広い視野でリワードプログラムを設計する必要があります。従業員のライフステージに応じた特有のニーズや個人的な事情、一般的な好みを考慮したリワードを提供することができれば、EVP(従業員価値提案、Employee Value Proposition)を高めることができるでしょう。要するに、従業員は報酬を大局的に評価しており、現金給与に加えて、自身のパフォーマンスと個人のニーズを反映したリワードプログラムを求めているのです。

3. 働く場所はさまざまでも、人的つながりが一体感を育む

オフィスやデスクエリアは第2のパーソナルスペースから社交の場へと変容しています。指定された固定席を持っていない従業員もいるでしょう。彼らにとってオフィスは今、チーム連携のための共有スペースとなっています。働く場所は多様化し、オフィスの存在意義は、企業のパーパスと従業員のニーズに合致するものでなければなりません。これを踏まえ、企業は働く場所のバランス、オフィス利用状況、オフィスデザインなどを再考し、オフィススペースの効率化、ならびに文化と立地への投資の最大化を図る必要があります。また、賢明なアプローチとして、モビリティチームのケイパビリティを活用することも重要です。これにより、税務、法務、コンプライアンスの考慮事項に留意しつつ、柔軟な働き方と優れたエクスペリエンスを実現することが可能になります。

4. 生成AIなどの職場テクノロジー

生成AI導入の加速的な広がりは、この新たなテクノロジーが生産性に与える影響について、肯定的な見方が一般的になっていることを示唆しています。また多くの場合、生成AIの導入に非常に意欲的な企業ほど、人材のフローにおいて健全性が高いことが明らかになっています。こうした中、企業が取るべき重要な行動として、まず、生成AIやその他の職場テクノロジーの利用に関して従業員が置かれている状況を把握し、ニーズに応じた適切なサポートを提供する必要があります。そして、それと並行して、組織のあらゆるレベルで生産性向上の可能性を認識しながら、職務ごとにテクノロジーの導入を個別化することが重要となります。

5. 必要とされるスキルが変化している今、人材の供給源と人材戦略の再考が不可欠

スキルの半減期が短くなっているため、企業はそれを補うための方法を見直す必要があります。企業としては社内の学習・育成プログラムを重視しがちかもしれませんが、外部の資格や認定も重視する従業員のために社外でのアップスキリングの機会を提供することも検討する必要があるでしょう。また、特有の機会とリスクがあることを理解した上で、異なる地域の人材プールへのパイプラインを追求または構築することを目指す企業もあるかもしれません。いずれにしろ、企業は、必要なスキルを持った人材を自社に引き付けられるよう、社内と外部それぞれの要素の適切な組み合わせを見いだす必要があります。


サマリー

仕事の在り方は、キャリア、リワード、働く場所などにおいて従来の価値観とは異なるものへと変化しています。EYは、EY 2024 Work Reimagined Surveyに参加した世界中の従業員と企業から得られた有益な見解をもとに、企業が人材優位性を構築する際に取るべき行動を特定しました。企業の成功は、「人材健全性と人材のフロー」「生成AIなどの職場テクノロジー」「トータルリワードの優先事項」「学習、スキル、キャリア成長」「組織文化と働く場所」という5つの主要な要素にどれだけ効果的に取り組み成果を出せるかによるところが大きいです。

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