EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 小倉 幹生
企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2026年8月17日に、以下の実務対応報告及び企業会計基準の公開草案(以下合わせて「本公開草案等」という。)を公表しました。
【公表された本公開草案等】
| 実務対応報告公開草案第74号(実務対応報告第45号の改正案) | 「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」(以下「実務対応報告第45号案」という。) |
| 企業会計基準公開草案第99号(企業会計基準第32号の改正案) | 「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正(案)」(以下「キャッシュ・フロー作成基準一部改正案」という。) |
| 移管指針公開草案第21号(移管指針第6号の改正案) | 「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針(案)」(以下「キャッシュ・フロー実務指針案」という。) |
2022年6月に「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正されました。改正された資金決済法においては、いわゆるステーブルコイン(実務対応報告第45号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(以下「実務対応報告第45号」という。)BC1項)のうち、法定通貨の価値と連動した価格で発行され券面額と同額で払戻しを約するもの及びこれに準ずる性質を有するものが「電子決済手段」と定義され、また、これを取り扱う電子決済手段等取引業者について登録制が導入され、必要な規定の整備が行われました。
【資金決済法第2条第5項各号に規定される電子決済手段】
区分 | 概要 |
| 資金決済法第2条第5項第1号に規定される電子決済手段 (以下「第1号電子決済手段」という。) | 物品購入や役務提供等の対価弁済に使用でき、かつ不特定の者を相手に購入・売買できる財産的価値 |
| 資金決済法第2条第5項第2号に規定される電子決済手段 (以下「第2号電子決済手段」という。) | 第1号電子決済手段と相互交換できる財産的価値 |
| 資金決済法第2条第5項第3号に規定される電子決済手段 (以下「第3号電子決済手段」という。) | 特定信託受益権 |
| 資金決済法第2条第5項第4号に規定される電子決済手段 (以下「第4号電子決済手段」という。) | 上記に準ずるもの(内閣府令で定めるもの) |
実務対応報告第45号公表時点において、資金決済法第2条第5項各号に規定される電子決済手段のうち、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段及び第3号電子決済手段については、価値の安定した電子決済手段であり送金・決済手段として広く使用されることが想定されていました。このため、これらの電子決済手段に関する会計上の取扱いを優先して定めることとされていました(実務対応報告第45号BC3項)。これに対して、第4号電子決済手段は、資金決済法第2条第14項に規定される暗号資産に類似する性格を有する可能性があり、会計上の性格を見極める必要がありましたが、実務対応報告第45号の開発時には第4号電子決済手段に指定されるものが見込まれていなかったため、会計上の取扱いを定めていませんでした(実務対応報告第45号BC3項)。
こうした状況を踏まえて、ASBJにおいて、資金決済法上の電子決済手段の発行及び保有等に係る会計上の取扱いの検討が行われ、2023年11月に実務対応報告第45号等が公表されました。
このような状況の下、今般、以下の法令等の改正が行われました。
これらの法令等の改正を受け、ASBJは、第3号電子決済手段に関する会計上の性格について改めて検討を行い、また、外国信託型第4号電子決済手段の会計上の取扱いについて検討を行い、その結果を本公開草案等として公表しました。
法令等の改正を受け検討した結果、第3号電子決済手段は引き続き価値の安定した電子的な決済手段であると考えられること、外国信託型第4号電子決済手段については、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段及び第3号電子決済手段と会計上の性格に相違はなく、資産から得られる経済的便益は異ならないと考えられることから、実務対応報告第45号案においては、資金決済法第2条第5項に規定される電子決済手段のうち、第3号電子決済手段及び外国信託型第4号電子決済手段(電子決済手段の利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限る。)について、実務対応報告第45号と同様の会計処理及び開示をすることが提案されています。
実務対応報告第45号の会計処理及び開示については、「資金決済法における特定の電子決済手段(いわゆるステーブルコイン)の会計処理及び開示に関する当面の取扱い等のポイント」をご参照ください。
資金決済法における特定の電子決済手段(いわゆるステーブルコイン)の会計処理及び開示に関する当面の取扱い等のポイント
第3号電子決済手段においては、従前、電子決済手段の利用者が信託する金銭の全額について預金者又は貯金者がその払戻しをいつでも請求できる預貯金により管理することを要件とされていました。一方で、「資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第66号)により資金決済法及び他の関連する法令等が改正され、国際的な動向等を踏まえ、信用リスク、価格変動リスク及び流動性リスクを考慮し、信託財産の総額の50%を上限に元本を毀損しない形で一定の国債等及び定期預貯金による管理及び運用を認めることとされました(実務対応報告第45号案BC4-2項)。また、残りの信託財産についても、3か月以内に元本が償還される一定の国債等又は中途解約が認められる定期預貯金により分別管理され(取引業府令第3条第3項)、信託財産の倒産隔離が図られています。
このように、第3号電子決済手段は引き続き価値の安定した電子的な決済手段であると考えられることから、実務対応報告第45号から、第3号電子決済手段に関する会計上の取扱いを変更しないことが提案されています。
2026年6月に施行された「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(令和8年内閣府令第47号) において、我が国の電子決済手段に関する法制度との同等性が認められた外国の法令に基づく信託の受益権を第4号電子決済手段として規定する(取引業府令第2条第3項第1号)とともに、当該外国の法令に基づく信託の受益権を金融商品取引法(昭和23年法律第25号)上の有価証券とみなさないこととする改正が行われました(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(平成5年大蔵省令第14号)第4条の2第5項)。
外国信託型第4号電子決済手段は、外国の信託銀行等が外国の法令に基づき発行する信託受益権方式のステーブルコインのうち、我が国の電子決済手段の法制度と同等性があるもの、すなわち、外国当局による監督の同等性、裏付け資産の確保の同等性、信託財産と財産的価値が同一の通貨建てであること等の要件を満たすものに限られています(取引業府令第2条第3項第1号)。また、当該電子決済手段の利用者が払戻しの請求を行った場合、速やかに当該電子決済手段の券面額に基づく価額と同額の金銭による払戻しを受けることができます。
このため、外国信託型第4号電子決済手段の利用者が当該外国信託型第4号電子決済手段の券面額に基づく価額と同額の金銭による払戻しを受けることができる可能性が第1号電子決済手段、第2号電子決済手段及び第3号電子決済手段と同水準にあると認められると考えられます(実務対応報告第45号案BC13-2項)。すなわち、速やかに金銭による払戻しがなされ、換金リスクについては、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段及び第3号電子決済手段と同様に、要求払預金における信用リスクと同程度に低いと考えられます(実務対応報告第45号案BC17項)。
なお、外国信託型第4号電子決済手段については、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段又は第3号電子決済手段に該当する外国電子決済手段と同様の理由※1により、電子決済手段の利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに適用範囲を限定することが提案されています(実務対応報告第45号案第2項ただし書き、BC8項)。
これらを踏まえると、外国信託型第4号電子決済手段(電子決済手段の利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限る。)については、電子決済手段の基礎となる法的形式が異なることにより適用される規律は異なりますが、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段及び第3号電子決済手段と会計上の性格に相違はなく、資産から得られる経済的便益は異ならないと考えられます。したがって、実務対応報告第45号案において、外国信託型第4号電子決済手段(電子決済手段の利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限る。)を適用範囲に含め、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段及び第3号電子決済手段と同様の会計処理及び開示を行うことが提案されています (実務対応報告第45号案BC18項)。
※1電子決済手段等取引業者が電子決済手段の利用者から預託を受ける外国電子決済手段については、取引業府令において一定の利用者の保護が図られているため、当該外国電子決済手段の保有に係る会計処理について国内で発行される電子決済手段と同様に取り扱うことが可能であると考えられる(実務対応報告第45号案BC8項)。
外国信託型第4号電子決済手段(電子決済手段の利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限る。)を現金に含めることが提案されています(キャッシュ・フロー作成基準一部改正案第3項及び BC6-2項並びにキャッシュ・フロー実務指針案第2項)。
なお、第3号電子決済手段については会計上の取扱いを変更しない(現金に含める)ことが提案されています。
本公開草案等の適用時期については、公表日以後適用することとすることが提案されています。
本公開草案等に対するコメント募集に際し、以下の個別の質問が示されています。
[質問1] 第3号電子決済手段の裏付け資産の要件の改正を踏まえ、第3号電子決済手段に関する会計上の取扱いを変更しない提案に同意するか否か。
[質問2] 外国信託型第4号電子決済手段の会計上の取扱いに関する提案に同意するか否か。
[質問3] 連結キャッシュ・フロー計算書等における資金の範囲に関する提案に同意するか否か。
[質問4] 適用時期に関する提案に同意するか否か。
[質問5] その他。
なお、本稿は本公開草案等の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
ASBJウェブサイトへ
会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。