英国歳入関税庁、国際関連者間取引スケジュールに関するコンサルテーションを公表

  • 2026年6月16日、英国歳入関税庁(HRMC)は、すでに制定済みとなっている国際関連者間取引スケジュール(ICTS)の提出義務の詳細に関するコンサルテーションを発表した。
  • 2026年3月に国王裁可を得た2026年財政法において、英国政府は、英国企業における関連者間取引について定量的および定性的な詳細情報の報告を求めるICTSの提出要件を法制化した。
  • 当該要件は、2027年1月1日以降に開始する会計期間に適用される。
  • 今回、必要な情報を提出する際に使用する更新されたテンプレートについて意見を求めるコンサルテーションが開始された。

エクゼクティブサマリー

2026年6月16日、英国歳入関税庁(HMRC)は、すでに制定されているICTSの提出に関して、要件の詳細に関するコンサルテーションを公表しました。

ICTSの提出が必要となる対象企業

ICTSの提出は、英国の移転価格ルールの適用対象となる企業に対して義務付けられています。未提出や不正確な提出があった場合には、罰則の対象となる可能性があるほか、HMRCによる移転価格調査の対象となる可能性が高まります。

ICTSの適用対象となる最初の会計期間

ICTSの適用対象となる最初の会計期間は、2027年1月1日以降に開始する会計期間です。ただし、求められる情報の詳細水準が非常に高いため、早期の準備が推奨されます。

開示が求められるデータの種類

ICTSでは、対象となる納税者に対し、英国企業の関連者間取引について、定量面、定性面の双方にわたる詳細な情報をHMRCへ報告することが求められます。主な開示項目には、取引類型ごとの会計上の収益および費用、適用された移転価格算定方法および稼得した利益水準、移転価格調整の内容説明、ならびにコストベースの内訳が含まれます。

企業に求められる準備対応

企業は、提出期限に先立ち、ICTS草案に対する準備状況の評価やリスクに見合ったレビューを実施することが有効と考えられます。問題点を早期に特定することにより、HMRCによる移転価格調査への対応準備の向上が期待されます。


詳細解説

ICTSは、2026年財政法により英国納税者に新たに導入されるコンプライアンス要件です。

以前に公表されたICTSテンプレートに対する納税者からの当初の意見を受け、HMRCは今回、ICTSテンプレートを更新し、その内容およびICTSの提出に関する規則案について納税者の意見を求めるコンサルテーションを公表しました。コンサルテーションは2026年7月31日に締め切られ、その結果は、2027年1月1日以降に開始する期間から適用される詳細規則を確定する法定文書に反映されます。

HMRCは、詳細な開示義務と、特定の状況における簡素化アプローチの可能性の両方について意見を求めています。以前のICTS草案と比較して簡素化されたアプローチの新たな例としては、類似取引の合算(集約)や、非金融取引は上位10件、金融取引は上位5件に限定する取扱いが挙げられます。ただし、ICTSテンプレートのデータ関連の領域の大部分は変更されておらず、これには全ての取引について会計上の収益および費用を示すという要件や、移転価格算定方法および適用される利益水準との整合性の確保が求められる点が含まれます。

全体として、この度ICTS草案が納税者に求める開示情報の詳細度は依然として高く、他の主要経済国における類似の移転価格開示フォームで求められる水準を上回っています。新たなテンプレートにより求められる追加的な開示の例としては、サービス取引に関する価格設定およびコストベースについての詳細な内訳が挙げられます。

このコンサルテーションでは、取引類型ごとの重要性基準額が明確化されており、その水準は開示対象となる取引を大幅に限定するものとはなっていません。これらの基準額は、大半の取引について、国別報告制度(CbCR)の対象となる企業グループに属する報告主体については100万ポンド、それ以外の報告主体については10万ポンドとされています。これらの基準額は、類似する取引を合算した後の取引類型ごとに適用され、利益要素を含む金額ベースで判定され、いかなる控除や取引の相殺も認められません。

本コンサルテーションにおいて更新されたICTSテンプレートでは、納税者に求められる定性的な説明事項のリストも拡充されており、これにはサービス取引における評価およびコストベースに関する詳細情報や、事業再編の有無に係る確認が含まれます。

このコンサルテーションでは、ICTSに関連するその他の開示情報として、移転価格文書、法人税申告書およびCbCRが明記されています。したがって、本件の対象となる多国籍企業は、ICTSの開示項目とこれらの開示情報との整合性を検討すべきです。また、HMRCは、ICTSに係る膨大な申告データを効率的に検証するためのテクノロジーに600万ポンドを投資し、移転価格上の問題の迅速な特定および精査を図る意向を示しています。

コンサルテーションにおいては、不正確な記載に対して最大3,000ポンドの定額罰金が課されるほか、提出期限が遵守されない場合には300ポンドの定額罰金が課されると記載されています。さらに、適切な提出が行われるまでの間、1日当たり60ポンドの罰金が加算されるものとされています。しかしながら、これらの罰金水準は、ICTS申告の遅延や不備に起因して生じ得るHMRCによる移転価格調査の影響と比較すると、相対的に軽微であると考えられます。


企業への影響

特定の開示を合算する選択肢や基準額の導入など一定の簡素化措置は講じられているものの、ICTSは依然として、実際に計上された収益および費用、稼得した利益水準、適用した移転価格算定方法など、企業の移転価格の詳細に焦点を当てています。これは、各納税者が単に移転価格方針を開示するだけでなく、これらの方針が実際の取引に適切に反映されていることを証明する必要があることを意味します。

ICTSの対象となる報告主体が、本制度への対応準備状況(開示項目を期限内に作成可能かどうか)を確認する観点から、2027年1月1日の適用開始に先立ち、過年度のデータを用いてICTSを試行的に作成することも有効な選択肢となります。その際には、企業は既存のデータ収集プロセスを活用・最適化することにより、コンプライアンス対応の効率化を図ることが可能になると考えられます。

さらに、ICTS提出に先立ち、リスクに見合ったレビューを実施することも有益であり、HMRCから指摘を受ける可能性が高いリスク領域について事前に対応することが可能となります。



お問い合わせ先

EY税理士法人

Richard Johnston EY UK パートナー、EY Japan UK Tax Desk リーダー

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Jo Stobbs パートナー
平井 恵理子 パートナー
相澤 州平 シニアマネージャー
伊藤 伸彦 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです