トップアスリートから上場企業の社外監査役へのキャリアチェンジ

【EY Japan Women Athletes Business Network (WABN)アカデミー生×メンター×EY Entrepreneurial Winning Women(EWW)特別講師対談】

トップアスリートから上場企業の社外監査役へのキャリアチェンジ


EY Japan Women Athletes Business Network(WABN)アカデミー第3期生の小林聖子さんは、競泳の元世界ランキング保持者で、現在、弁護士として活躍中です。

EY Japan WABNアカデミーの小林さんが大きな影響を受けたのが、EY Entrepreneurial Winning Women ™ Japan(EWW)5 Hundred倶楽部のメンバーで、WABNで特別講師を務めた笹川祐子さん(株式会社イマジンネクスト 代表取締役)、メンターとして小林さんの助言役を務めたEY 新日本有限責任監査法人 パートナーの廣瀬美智代です。3名がWABNの活動を象徴する「メンタリング」と「起業家エコシステム」について語りました。


要点

  • EY Japan WABNアカデミーは、EYのプロフェッショナルによるメンタリングとビジネスプランの開発が大きな柱の1つである。
  • WABNアカデミー3期生の小林聖子さんは、メンタリングによって、温めていたプランをボランティア活動としてではなく、ビジネスとして継続化する道筋を知った。
  • WABNアカデミーは、EYがグローバルレベルで取り組む起業家支援のプログラムと連携することで、アスリートと起業家のネットワーク強化を図っている。


プロフィール(敬称略)


小林 聖子(こばやし せいこ)
EY Japan WABNアカデミー第3期生

競泳の元世界ランキング保持者として活躍したのち、2018年に弁護士資格を取得。2025年より東証プライム上場企業の社外監査役を務める。


笹川 祐子(ささがわ ゆうこ)
株式会社イマジンネクスト 代表取締役

人材派遣の株式会社イマジンプラスを創業。2021年上場企業へ売却。EY Japan WABNアカデミーでは「女性起業家から起業家精神を学ぶ」をテーマに講師を務めた。


廣瀬 美智代(ひろせ みちよ)
EY新日本有限責任監査法人 第1事業部 パートナー

EY Japan WABNアカデミーで小林さんのメンターを務める。


「メンタリングでビジネス化の可能性を示してもらいました」(小林さん)

競泳の元世界ランキング保持者の小林さんは、現在、弁護士として活動中で、2023年11月にスタートした第3期EY Japan WABNアカデミーに参加しました。WABNアカデミーの第3回セッションで「女性起業家から起業家精神を学ぶ」というテーマで講演した笹川さんにとっては受講生、メンターの廣瀬にとってはメンティーにあたります。

WABNアカデミーにおけるメンターとは、ビジネス面での課題を見つけ、助言や指導を行う人のことで、メンティーの成長を促し、精神的なサポートを行います。

小林さんにWABNアカデミーに応募した動機と、WABNの特徴である「メンタリング」にどんな手応えがあったか、振り返っていただきました。

EY Japan WABNアカデミー第3期生 小林 聖子(こばやし せいこ)

小林 聖子(敬称略:以下、小林) 応募当時、弁護士として7年目で、今後のキャリアを考えるにあたり、自分に欠けているのはビジネスの感覚ではという思いが強くありました。アスリートとして長く過ごし、弁護士になったのが遅かった私は、2つの枠から飛び出した世界も知りたかったのです。

 

廣瀬 美智代(以下、廣瀬) 大変な時期でもいらっしゃいました。WABNアカデミー受講中の1月、お二人目を出産し、転居も予定。そんな中、WABNアカデミーに参加されるチャレンジ精神がすごいと思っていました。


小林 WABNアカデミーに参加した頃は、もがいている最中でした。だからこそ、メンタリングを受けることに意味があったと思います。廣瀬さんは初めて会った時、私の背景をじっくり聞いてくださったので安心感がありました。私が弁護士になった理由の1つは、スポーツにおける暴力やハラスメントがなくならない現実が悲しかったからです。そこで、ひとまず女子アスリートに限定した形で、スポーツにおける暴力やハラスメントについて誰でも相談ができる窓口を作りたいことをお伝えしました。しかし廣瀬さんから、私の考えはボランティア精神が抜けていないというご指摘がありました。

 

廣瀬 メンターとしては、小林さんが将来に描くプランをビジネス化するため、何が課題になるか、どんなエリアならいいのかなど、私なりの考えを話した記憶があります。やりたいことを継続させるには、ビジネス化が1つのポイントです。他の人を巻き込んでいくことでサステナブルになり、小林さんの後に続く人材も生まれるだろうとお話ししたのですよね。

 

小林 はい。ビジネスとして思いを実現させる具体的な可能性を示していただき、マインドが一気に変わりました。また廣瀬さんの個人的な話もあり、感動したこともありました。

 

廣瀬さんが子育てしていた当時、時短制度もなく、ニーズに合ったベビーシッター会社が地域になかったため、廣瀬さんは別のビジネスをしていた方に、こうしたらベビーシッター事業が可能になるという提案書を提示し、事業を起こしてもらったという話をしてくださいました。

 

普通なら、仕事を諦めてしまいそうになるのに、諦めることより継続する方法を模索することができるんだなと感じました。私も子育て、そして自分のことも諦めずにやっていこうと、決めるきっかけになったのです。

 

笹川 祐子(敬称略:以下、笹川) 小林さんがメンタリングによって、ビジネスのマインドがセットされたことが伝わるエピソードですね。
これからビジネスを学びたいWABNアカデミー生は、EYのプロフェッショナルメンターからマンツーマンでビジネスの考え方や進め方についてアドバイスをもらい、新たな世界へ踏み出す不安を軽減できますよね。


「アスリートには、起業家の素質がある。社会のリーダーになってほしい」(笹川さん)

ビジネスの専門家を招いたセッションもWABNアカデミーの特徴です。笹川さんはそんな専門家のお1人。人材派遣会社を長く経営するに当たり、どんな思いで人間関係を築き、資金調達に奮闘されたかなどを語りました。

さまざまな話の中でも小林さんは、「人と出会った時、どんな話をしたか、必ずメモを残し、時々見返す」という笹川さんの話が印象的だったそうです。

「人とのつながりを大切にしたいと思った時、以前、どんな話をしたかはとても重要。縁を大切にしているからこそ、ビジネスの世界で長く続けていらっしゃるのだと感じました」と話しています。

一方、アカデミー生との交流を通し、笹川さんには、不思議に感じたことがあるそうです。それはアスリートに共通する「自信のなさ」です。そこで笹川さんは、小林さんをはじめとするアカデミー生たちに、なぜ女性アスリートはビジネス面で成功する素質があるのかを説明し、大きな刺激を与えました。

笹川 祐子(ささがわ ゆうこ) 株式会社イマジンネクスト 代表取締役

笹川 私がWABNアカデミーで登壇者としてお話をするのは、第4期で2回目ですが、実はアスリートの皆さんがそろって自信がなさそうにしていることがとても不思議でした。

 

スポーツを通し、人並外れた「ひたむきさ」「目標に向かって突き進む力」「リーダーシップ」「逆境を乗り越えるレジリエンス」をすでにお持ちにもかかわらずなぜだろうと感じたのです。

 

廣瀬 私も同じように感じています。実際、日本では、「アスリートのセカンドキャリア=難しいもの」という認識が強く、EYの過去の調査でも日本の女性アスリートのうち 「競技引退後のキャリア転向が簡単」と回答したのはわずか4%という結果が出ています。


わずか
スポーツ界から第2のキャリアへの転向が「簡単」と回答した日本の女性アスリートの割合

小林 私は自信がないという他のアスリートの方々の気持ちが分かります。たとえば、私はずっと水泳の世界に身を置いてきて、社会人としての経験が多くありません。常に自信がない状態が続いています。

笹川 やはりもったいないですね。「成功するビジネスパーソンはビジネスアスリートだ」という言葉があるように、経営者たちには、アスリートのマインドセットを学ぼうとする動きがあるほどです。

ですから、WABNではもどかしくアカデミーの皆さんには、起業家としての素質を次のキャリアにどうつなげればいいか、丁寧にお話ししました。特に優秀な女性アスリートには、ビジネスリーダーとして社会で活躍できるようになってほしいと思っています。

廣瀬 意思決定の場にいる女性が社会に増えることは、EYが目指すステージでもあります。

笹川 女性リーダーが増えれば、女性が活躍しやすい環境が整備されますし、ワークライフバランスの向上が望めます。ひいては、新しいビジネスや市場の創出など、多くのポジティブな変化が生まれるはずです。

またアスリートが持つリーダーシップや決断力は、企業経営の場でも役立ちますから、WABNを通して、アスリート出身の女性リーダーがもっと増えることを期待しています。

小林 私がどこまできるか分かりませんが、少なくとも、笹川さんのお話によって、少しは自信を持っても大丈夫かなと感じるようになりました。努力してきたことには、何らかの価値があると思えるようになったことは、私にとって大きな一歩です。


「EYの起業家エコシステムと連携することでWABNはさらに充実しました」(廣瀬)

WABNアカデミーの受講によって、小林さんは人生の転機もつかんでいます。2025年1月、笹川さんの紹介で東証プライム上場企業の社外監査役に就任しました。弁護士として、いっそう充実した日々を過ごしているそうです。

また、小林さんと笹川さんの関係は、EYがグローバルレベルで起業家を支援するプログラムとの連携によって育まれたものです。

笹川さんは、EYが行う女性起業家の表彰・支援を目的とするプログラム「EY Entrepreneurial Winning Women ™ Japan(EWW)」の中の、売上規模5億円以上の女性起業家の勉強会や情報交換を行う「5 Hundred倶楽部」のメンバーです。EYはEWWを通して、女性起業家、経営者にビジネスに関する情報を提供し、起業家同士、金融機関、VC、有力な大企業、メディア等とのネットワーキングの場を提供しています。このような起業家のネットワークと連携することで、WABNアカデミーはアスリートと起業家の交流の機会を促進しています。

今後、WABNは、EYの「起業家エコシステム」を積極的に利用し、女性アスリートが羽ばたく機会をいっそう創出したいと考えています。

廣瀬 美智代(ひろせ みちよ) EY新日本有限責任監査法人 第1事業部 パートナー

笹川 熱心に私の講義を聴いてくださった方々の中でも、小林さんは特に印象的でした。「元トップアスリートには、上場企業の社外取締役としてキャリアを積んでいらっしゃる方が多くいる」という私の話に対して、「私にはそのようなお話をいただいたことがありません。どうしたらなれますか」という質問をいただきました。

 

廣瀬 上場企業では、1、2社でもご経験のある方を社外取締役等に求める傾向があるため、1社目のご縁をいただくのは簡単ではないことはよく分かります。

 

笹川 その通りです。しかし、ある上場企業から「社外監査役に誰か良い人はいませんか」というお話があった際、小林さんのお顔が真っ先に浮かびました。その企業は老舗でありながら、常に新しいことに挑戦し続ける進取の気性に富む企業なので、初めて社外監査役に挑戦する弁護士を受け入れていただける雰囲気があり、小林さんを歓迎してくださいました。

 

いま、小林さんは1社目をご経験されているので、今後、数多くのお仕事の依頼が舞い込むはずですよ。期待していてください。

 

廣瀬 こうして笹川さんと小林さんとのご縁やご活躍をたどるとEYの起業家のネットワークがお役に立っている気がしてうれしいです。

 

実際、別プログラムで活動する笹川さんが第3期WABNアカデミーに関わってくださったことで、小林さんをはじめ、多くのアカデミー生が良い刺激や機会を与えていただきました。

 

小林 WABNアカデミーからは、笹川さんや廣瀬さんとのご縁のほか、同じ悩みを抱えていた他競技のアスリートの方々など、私一人では得られなかったつながりをいただきました。

 

さらにEYの起業家のネットワークについては、EYがダイナミックなつながりを増やし、インクルーシブな社会を作っていきたいという企業の在り方を感じます。

 

笹川 起業家は孤独になりがちですが、このようなネットワークがあると、お互いに刺激し合えるので、それぞれの成長の加速度が増すという面もありますね。

 

廣瀬 第4期WABNアカデミーでは、EWWとの連携がプログラムへ本格的に組み込まれました。WABNアカデミーは、今後も社内外のステークホルダーとの連携を深め、EYの蓄積した知見を生かせるプログラムを提供していきたいと考えています。

サマリー 

WABNアカデミー3期生で現在、弁護士の小林聖子さん、WABNで特別講師を務めた笹川祐子さん、小林さんのメンターを務めたEY Japanの廣瀬美智代の3名が、WABNの柱であるメンタリングと起業家ネットワークをテーマに語り、WABNで女性アスリートが得られる成果について言及しました。



WABN

EY Japan WABN Academy
タレントプール

EY Japanは女性アスリートが競技引退後に、起業を含むビジネス分野への挑戦やキャリア転換のサポートを行うプログラム「EY Japan Women Athletes Business Network Academy(WABN Academy)」を実施しています。次回のプログラムへの参加に関心のある方は、ぜひご登録ください。

*こちらのフォームはプログラムへ応募するためのものではございません。次回開催は未定ですが、次回の公募を開始しましたら、ご案内させていただきます。




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