EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
テクノロジーセクター
公認会計士 木本 勝己/鈴木 将也/渡邉 薫子
インターネットは、1995年のWindows 95の登場を契機に一般家庭へ本格的に普及し始めました。2000年代前半には高速・定額・常時接続のブロードバンド環境が急速に広がり、ブログやSNSなど利用者が情報を発信するサービスが相次いで誕生し、2000年代後半には動画共有サービスが普及しました。2010年にはモバイル端末からの利用がPCを上回り、社会のデジタル化が大きく進展しました。こうした環境の発展により、国内外でインターネットを活用した新しいビジネスが次々と生まれ、デジタル経済の基盤が形成されてきました。
2022年後半以降、生成AIを中心としたAI技術が急速に普及し始めています。生成AIは文章だけでなく、画像・音声・動画を同時に扱うマルチモーダル化が進んでおり、ビジネスだけでなく多くの分野で活用が広がっています。さらに、人の指示を深く理解して自律的に行動するAIエージェントも登場し、将来的にサービス利用の入口として普及が進むと見られています。一方で、偽情報の生成(ハルシネーション)や著作権及びプライバシーの侵害などのリスクが指摘されており、AIリテラシー向上やガバナンス整備の重要性も増しています。
インターネット普及は、社会にデジタルサービスの基盤と新しい経済をもたらしました。そして現在、AIの急速な発展が、さらに大きな変革を引き起こしつつあります。
本稿では、インターネットを利用したビジネスに特有のビジネスリスクや、それに起因した会計上の論点を説明します。
なお、本稿含む第1回~第4回の記事では、インターネットを利用して行うビジネスを「インターネット関連ビジネス」と総称します。また、文中の意見に係る部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添えます。
インターネット関連ビジネスといっても、そのサービス内容やビジネスモデルは多岐にわたります。まずは、インターネット関連ビジネスにどのようなものが含まれるのか、その商流の一例として、広告収入及び決済代行を見ていきます。
a. 広告収入
YouTubeやTikTokで配信される動画に付随して表示される広告から得られる収益を基盤としたビジネスモデルです。広告収入は、動画の再生回数・視聴時間・広告の種類などに応じて変動し、成果に強く依存する点が特徴です。
b. 決済代行
オンラインと対面の多様な決済手段を加盟店へ一括提供し、取引件数に応じた手数料や月額費用を収益源とするビジネスモデルです。
SaaS、プラットフォーム運営ビジネス、オンラインゲーム配信については、EYが発行した「情報センサー(2024年5月)業種別シリーズ:インターネット関連ビジネスにおけるビジネスリスクと会計実務」にて解説していますので、そちらもご参照ください。
本セクションでは、インターネット関連ビジネスにおける特有のリスクを、急速な技術進化・製品ライフサイクル・厳しい外部環境の 3つの視点から整理します。
インターネット関連ビジネスでは、クラウドサービス、API連携、IoT などの普及により IT 環境が急速かつ高度に複雑化しています。また、インターネット関連ビジネスを営む企業の多くは自社システムやアプリケーションを自ら開発しながらサービスを提供しており、企業は競争力を維持するために急速に進化する技術革新に対応するべく機能の追加や改善のための継続的な開発投資が求められます。その結果、当初想定していた以上の投資が必要となり、投資した固定資産に関する減損リスクを高める可能性があります。
インターネット関連ビジネスでは、ユーザー嗜好や市場トレンドの変化が極めて速いため、製品・サービスのライフサイクルが比較的短い傾向にあり、企業は高速で機能追加・改善を続ける必要があります。また、マーケティングの観点からは、製品の導入期・成長期・成熟期・衰退期によって求められる戦略が大きく異なり、各フェーズの変化を事業戦略及び投資計画に反映させることが重要です。さらに、会計面でも、開発したソフトウェアを資産計上する場合、製品ライフサイクルの短さや機能陳腐化、競合製品の登場による需要の縮小は、投資の回収可能期間を短くし、投資した固定資産に関する減損リスクを高める可能性があります。
インターネット関連ビジネスを営む企業は、急速な技術進化や市場トレンドの変化などにより厳しい外部環境に常に晒されています。新たな技術やビジネスモデルが次々と登場するなかで、すべての変化に自社のみで対応し続けることは必ずしも現実的ではないこともあります。特に、0から1を生み出すような領域について自ら対応しようとすると、開発コストやスピードなどの観点から、競合他社との競争に遅れを取る可能性があります。こうした状況を踏まえ、インターネット関連ビジネスを営む企業は、外部環境の変化に迅速かつ適切に対応する手段として、M&A を活用するケースが多く見られます。しかし、一般的に、M&A は会計処理が複雑になりやすく、取得価額の配分やのれんの償却期間の決定など多くの専門的判断が求められるため、会計処理を誤るリスクが高まりやすい点に留意が必要です。
このように、インターネット関連ビジネスには技術進化や市場変化に起因するリスクが存在します。以上のような事業特性やリスクを踏まえると、会計処理や内部統制にも特有の論点が生じます。次章以降では、収益認識に関する会計処理、新規ビジネス立ち上げ時の留意点、知的財産権に関する会計処理、M&A時の留意点などについて解説します。
(引用)
※ 出所:総務省、「情報通信白書 令和元年版」<www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r01.html>
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