インターネット関連ビジネス 第2回:収益認識に関する会計処理と内部統制の特徴

EY新日本有限責任監査法人 
テクノロジーセクター
公認会計士 木本 勝己/鈴木 将也/渡邉 薫子

1. はじめに

企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「収益認識適用指針」という。)が、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されました。本稿では、インターネット関連ビジネスでよく取り上げられる論点のうち、(1)本人・代理人の判断、(2)ライセンス取引の判断、(3)新規ビジネス立ち上げ時の留意点の3点について解説します。

2. 収益認識に関する会計処理及び内部統制の特徴

(1) 本人・代理人の判断

インターネット関連ビジネスでは、複数の事業者が関与する複雑な商流となることが多く、企業が「本人」として総額で収益を認識すべきか、あるいは「代理人」として純額で認識すべきかの判断が、収益認識に大きな影響を与えるため重要な論点となっています。

企業が本人か代理人かの判断は、顧客に提供される財またはサービスを企業自身が提供する前に支配しているかどうかに基づき行います(収益認識適用指針第43項)。また、この支配の有無を補完的に判断するために、主たる責任の有無、在庫リスク(提供前後を含む)の有無、価格設定に関する裁量権の有無、という指標を考慮することとされています(収益認識適用指針第47項)。

企業が財またはサービスを自ら提供し、その履行義務に対して主たる責任を負う場合は「本人」と判定され、顧客から受け取る対価の総額を収益として認識します(収益認識適用指針第39項)。一方、企業が他の当事者によって提供される財またはサービスの提供を手配するにとどまる場合には「代理人」となり、その場合の収益は手数料等の純額で認識します(収益認識適用指針第40項)。

さらに、契約に複数の特定の財またはサービスが含まれる場合、企業は個々の要素ごとに本人・代理人の判定を行う必要があると定められています(収益認識適用指針第41項)。インターネット関連ビジネスでは複合的なサービス提供も多く、契約内容・商流・権利義務関係を正確に分析することが、適切な収益認識のためには不可欠です。

(2) ライセンス取引の判断

インターネット関連ビジネスでは、知的財産のライセンス(ソフトウェア及び技術、動画、音楽及び他の形態のメディア・エンターテインメント、フランチャイズ等)の供与を通じて収益を計上する会社が多くあります。ライセンスの性質が「アクセス権」か「使用権」かによって収益認識のタイミングが異なります。そのため、この判定は収益認識に大きな影響を与えるため重要な論点となっています。

収益認識会計基準は、履行義務の充足が「一時点」か「一定の期間」かに応じて収益認識時期を定めています。この枠組みの下で、収益認識適用指針はライセンス供与に関する判断基準を具体化しており(収益認識適用指針第61項~第68項、及び第143項~第152項)、ライセンスの性質の判定は次の二分類に基づきます。

① ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利
アクセス権と判断されるためには、以下の3要件すべてを満たす必要があります(収益認識適用指針第63項)。

  1. ライセンスにより顧客が権利を有する知的財産に重要な影響を与える活動を行うことが契約上要求されている又は顧客により合理的に期待されていること
  2. 顧客が前述の企業の活動によって直接影響を受けること
  3. 当該活動は顧客に財又はサービスを移転するものではないこと

これらを満たす場合、履行義務は一定の期間にわたり充足し、収益は契約期間に応じて認識します。アクセス権に該当する典型例として、クラウド型の会計システムなどのSaaSやオンラインストレージサービスが挙げられます。

② ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利
アクセス権の3要件のいずれかを満たさない場合、一時点で充足される履行義務として処理し、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できるようになった時点で収益を認識します。使用権に該当する典型例として、オンプレミス型の更新義務のないソフトウェアやバージョン固定のソフトウェア提供などが挙げられます。

(3) 新規ビジネス立ち上げの留意点

① 会計処理での留意点
インターネット関連ビジネスを営む企業では、Web3やAIなどの技術進化や未充足ニーズへの対応を背景に、新しいスキームを取り入れたサービスを展開する企業が増えています。こうしたサービスは、インターネットの特性を活かし、形態やビジネスモデルも多様化しています。

上記で紹介した収益認識会計基準及び収益認識基準適用指針は、原則主義によっており、個別のスキーム毎の細則を定めたものではありません。そのため、基準に沿って適切な会計処理を選択するためには、各スキームを正確に理解し、サービスの経済的実態を的確に把握する必要があります。

② 内部統制での留意点
新たなサービスの開始時点では、安定的な運用を優先し、業務系システムの構築に注力する傾向があります。そのため、会計処理に関わる業務フローのシステム化は後回しになりやすく、多様なデータをスプレッドシートで加工するケースが多く見られます。一方、インターネット関連ビジネスでは、取引規模が急速に拡大することで業務が複雑化し、会計処理の誤りを招くこともあることから、適切なタイミングでのシステム化が望まれます。

また、業務系システムの構築時においても、会計処理に必要なデータが保持され、利用可能でなければ、会計処理はできません。そのため、サービスの企画やシステム構築の段階から、経理部門を参画させることが推奨されます。さらに、サービス内容の一部変更においても、その内容によっては会計処理自体の変更や追加データが必要になる可能性があるため、同様に注意が必要です。


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