EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
テクノロジーセクター
公認会計士 木本 勝己/鈴木 将也/渡邉 薫子
知的財産基本法第2条第1項及び第2項では、知的財産と知的財産権について、以下のように定義されています。
| 知的財産 | 発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。 |
| 知的財産権 | 特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。 |
インターネット関連ビジネスにおいては、ビジネス上、クラウドサービスの基盤となるOSやアプリケーションなどのプログラムに関する著作権、分散処理や暗号化などのクラウド特有の技術に関する特許権、サービス名称やロゴ、ブランドに関する商標権などの知的財産が創出されます。そのため、知的財産に関する会計処理については、いくつかの検討事項があります。
知的財産権を他者から取得した場合には、購入代価と取得に要した付随費用を無形固定資産に計上します。なお、正当な理由がある場合には、付随費用の一部又は全部を、取得時に費用処理することができます。
知的財産権を有する企業を取得した場合には、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」に従って、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債について、識別可能なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の時価を基礎として算定する必要があります。
詳細については「第4回 M&Aの留意点」をご参照ください。
「1. はじめに」で述べたとおり、インターネット関連ビジネスにおいては、プログラムに関する著作権や、クラウド特有の技術に関する特許権が創出されます。自社においてシステムを開発している場合には、研究開発費又はソフトウェアが計上されることになります。
研究開発費については、発生時に全額を費用として処理しなければなりません。
一方で、研究開発に該当しないソフトウェアの制作費については、資産計上の要件を満たす場合には、市場販売目的か自社利用かの区分に従って、無形固定資産に計上する必要があります。
クラウド・コンピューティングの形態でサービスを提供する取引のうち、ネットワークを介してソフトウェアの機能を提供するSaaS取引については、現行の「研究開発費等に係る会計基準」移管指針第8号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」の設定時に想定されていない新たな取引になります。
そこで、日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、2022年6月30日付で、会計制度委員会研究資料第7号「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料~ DX環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~」(以下、研究資料)を公表し、研究資料では、SaaSベンダーの会計処理が検討されました。
研究資料に記載のとおり、ソフトウェアとしての資産計上の要否や、ソフトウェアの分類(市場販売目的又は自社利用)、資産計上の開始時点、資産計上したソフトウェアの償却方法や償却期間について、どのように整理するかが重要になります。
なお、上記で記載のとおり、現行の会計基準においては、SaaS取引について、必ずしも明確な処理が定められていません。研究資料Ⅱ.2.(3)では、現行の実務の状況が記載されていますが、例えば、以下のように整理し、会計処理を検討することが考えられます。
a. 市場販売目的のソフトウェア
ソフトウェアの機能自体を顧客に提供し、その対価として収益を獲得する点で、複写して販売するソフトウェアやライセンス販売するソフトウェアに類似すると考えられます。
b. 自社利用のソフトウェア
複写したソフトウェアを販売するものではなく、当該ソフトウェアが他者に移転するわけではないので、自社で有するソフトウェアの機能を提供して収益を得ていると考えられます。
c. ソフトウェアを計上しない
将来の収益獲得が確実とは言えない場合、資産計上をしないことが考えられます。
現行の日本基準においては、制作目的別に会計処理が定められています。詳細については、「ソフトウェア業 第2回:ソフトウェアに関する会計ルールとソフトウェアの分類」「ソフトウェア業 第3回:市場販売目的のソフトウェア(制作費の処理、減価償却)」「ソフトウェア業 第4回:自社利用ソフトウェア(制作取得費の会計処理、減価償却、減損)」をご確認ください。
知的財産をソフトウェアに計上する際には、知的財産創出にかかったコストを適切に管理する必要があります。主なコストとしては人件費が考えられますが、原価計算が行われない場合には、知的財産に対するコストが適切に集計されず、知的財産の価値が適切に算定できなくなります。そのため、工数管理の体制を整備することが重要です。
また、知的財産については、技術の陳腐化や市場変化により、価値が減少する可能性があります。そのため、保有する知的財産の評価に係る業務フローを整備することが重要です。
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