2023年3月期 有報開示事例分析 第11回:未適用の会計基準等に関する注記

Question

2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の未適用の会計基準等に関する注記の開示の状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2023年8月
  • 調査対象期間:2023年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する201社
    ①2023年4月1日現在、JPX400に採用されている
    ②3月31日決算である
    ③2023年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ④日本基準を適用している

【調査結果】

未適用の会計基準等に関する注記において、既に公表されている会計基準等のうち、適用していないものがある場合には、次の事項を注記しなければならないとされている(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第12項、連結財規第14条の4、財規第8条の3の3)。

  • 会計基準等の名称及びその概要
  • 会計基準等の適用予定日(会計基準等の適用を開始すべき日前に適用する場合には、当該適用予定日)
  • 会計基準等が財務諸表に与える影響に関する事項

ただし、重要性の乏しいものについては注記を省略することができる(財規第8条の3の3第1項柱書きただし書き)。

2023年3月期決算の有報において未適用の会計基準等に関する注記対象と考えられる主な会計基準等は<図表1>のとおりである。

<図表1> 2023年3月期の未適用の会計基準等の主な記載対象

区分

会計基準等

適用時期

電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い

  • 実務対応報告第43号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第43号」という。)

2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。ただし、公表日(2022年8月26日)以後終了する事業年度から適用することができる。

 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準等

  • 改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「改正法人税等会計基準」という。)
  • 改正企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」
  • 改正企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」

2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することができる。

調査対象会社(201社)を対象に調査した結果、未適用の会計基準等に関する注記を行っている事例は127社であった。記載されている会計基準等の内訳は<図表2>のとおりである。

改正法人税等会計基準等について注記を記載している事例は123社(61.2%)であった。当該会計基準等はその他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益等を計上している場合に財務諸表に与える影響があることから、記載を行っている会社が多かったと考えられる。

また、実務対応報告第43号について記載している事例は20社(10.0%)のみであり、いわゆる投資性ICOを発行する会社が少なく、多くの会社にとって影響が少ないためと考えられる。

<図表2> 未適用の会計基準等に関する注記の開示状況

記載項目

会社数

比率

法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準等

123社

61.2%

実務対応報告第43号

20社

10.0%

在外子会社の会計基準(IFRS等)

5社

 

2.5%

記載なし

53社

26.4%

合計

201社

100.0%

(注)上記以外に決算日を2月末から3月末に変更したことにより2024年3月期の期首より改正企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」を適用予定の会社が1社あった。

(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」分析」を一部修正)

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