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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大山 文隆
2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の収益認識に関する注記(収益の分解情報)に関する注記の開示の状況を知りたい。
金融庁から2023年3月24日に公表された「令和5年度の有価証券報告書レビューの審査結果及びそれを踏まえた留意すべき事項」(以下「有報レビュー」という。)の結果のうち、収益の分解情報の注記においては、複数の区分で分解した情報は一般的に財務諸表利用者にとって有用と考えられることから好開示例として記載されている。そこで 収益の分解情報の注記における区分の数を調査した。調査結果は<図表1>のとおりである。
区分の数 |
会社数 |
調査対象会社に占める割合 |
---|---|---|
1個(注1) |
136社 |
67.7% |
2個(注1) |
24社 |
11.9% |
3個(注1) |
4社 |
2.0% |
小計 |
164社 |
81.6% |
分解情報なし(注2) |
26社 |
12.9% |
収益の分解情報注記なし(注3) |
11社 |
5.5% |
合計 |
201社 |
100.0% |
(注1)セグメントは集計対象に含めていない。
(注2)セグメント情報のみを記載又は参照し、財又はサービス、国・地域、時期等の分解情報がない会社を集計している。
(注3)収益認識に関する注記がない、もしくは重要性から記載を省略している会社を集計している。主に銀行業、保険業の会社である。
分解情報は1個で開示している会社が最も多く136社であった。このうち、セグメントに関連付けて開示している会社が118社(調査対象会社全体の58.7%)であった。
また、分解情報を記載している164社を対象として分解情報の区分の種類を調査した。結果は<図表2>のとおりである。
区分の種類 |
個数 |
---|---|
財又はサービス |
87 |
国・地域 |
57 |
時期 |
21 |
事業 |
13 |
その他 |
18 |
さらに、収益の分解情報の注記における主な形式の変化を調査した。調査結果は<図表3>のとおりである。
主な形式の変化 |
件数 |
---|---|
報告セグメントの変更による変化(項目数、集計方法) |
27 |
区分の見直しによる組替え |
5 |
区分の追加 |
1 |
区分の変更 |
1 |
その他 |
3 |
合計 |
37 |
報告セグメントの変更により、収益の分解情報の注記に関して項目数や集計方法を変更している開示例が最も多く27件であった。
区分の見直しによる組替えは、区分自体に変更はないが区分間の集計方法を変更した開示例である。管理区分や製品分類の見直し、組織変更等が主な変更理由として記載されていた。
区分の追加は1件のみであり、1つから2つに区分を増やしていた。区分の変更も1件のみであり、財又はサービスから国・地域の区分に変更していた。
有報レビューにおいて「不動産賃貸収入などのリース収益を顧客との契約から生じる収益に含めて開示している」ことが留意事項として記載されている。そこで、最後に収益の分解情報の注記における顧客との契約から生じる収益以外の収益(以下「その他の収益」という。)の記載内容の変化を調査した。調査の結果、その他の収益がリース取引に関する会計基準に基づく収益である旨を新たに追記している会社が1社、その他の収益については重要性が乏しいため区分していない旨を新たに追記している会社が2社該当した。
(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」分析」を一部修正)
2023年3月期 有報開示事例分析