気候×自然 新たな移行計画の時代へ-TNFDとGFANZが相次ぎガイダンス案を公表

りそなが目指す、マテリアリティの見直しを起点とした価値創造経営とは


りそなホールディングスは、新たな中期経営計画(2026~2028年度)の策定に合わせてマテリアリティを見直しました。同社にてCSO、CSuO、CHROおよびコーポレートガバナンス事務局担当役員を務める岩舘 伸樹 氏に、見直しの背景や経営への実装、従業員への浸透について伺います。


要点

  • 中期経営計画とマテリアリティを一体で検討し、計画の遂行がマテリアリティの実現につながる関係を明確化。
  • 新たなマテリアリティを、社会課題の整理にとどまらず、経営資源の配分や従業員の判断を支える「意思決定の軸」とし、人事評価や研修などを通じて行動変容を後押し。
  • マテリアリティと連動するKPIを設定し、社会課題の解決と事業機会の拡大を持続的な企業価値向上につなげる。

岩舘 伸樹氏

株式会社りそなホールディングス
取締役兼代表執行役副社長兼グループCSO兼グループCSuO兼グループCHRO
岩舘 伸樹 氏 

松本 真

EY新日本有限責任監査法人
金融事業部 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダー、パートナー
松本 真



社会環境の変化を踏まえ、パーパス・マテリアリティ・経営戦略をつなぎ直す

(松本)今回、りそなグループは新たな中期経営計画の策定に合わせて、マテリアリティの見直しを行われました。まず、その背景についてお聞かせください。

(岩舘 氏)人口減少や高齢化、気候変動、価値観の多様化など、世の中の環境は目まぐるしく変化しています。それに伴って、お客さまが抱える課題や行動も大きく変わっています。これまでと同じやり方を続けるだけでは、お客さまや社会からの期待に応えられないという危機感がありました。

今回、新たな中期経営計画を策定するタイミングで、「社会に本当に必要なことは何か」「りそなはどの領域に経営資源を配分すべきか」を改めて問い直しました。その上で、経営戦略だけでなく、従業員の行動の軸としても明確に落とし込む必要があると考え、マテリアリティの見直しを行いました。

りそなグループのパーパスは「金融+で、未来をプラスに。」です。今回の見直しでは、このパーパス自体を変えるのではなく、パーパス、マテリアリティ、中期経営計画を一体的な枠組みとしてつなぎ直すことを重視しました。「中期経営計画を遂行することが、マテリアリティの実現につながる」という関係を、これまで以上に明確にしています。

(松本)従来のマテリアリティでは、どのような点を十分に捉え切れていないと感じていたのでしょうか。

(岩舘 氏)従来のマテリアリティは、「地域」「少子高齢化」「環境」「人権」といった社会課題を簡潔に示したもので、分かりやすさという点では意義がありました。一方で、足元では外部環境がどのように変化し、その変化に対してりそなが何を行い、どのような価値を生み出そうとしているのかまでは、十分に伝え切れていなかった面があります。

そこで今回は、社会課題を並べるだけではなく、パーパスの実現に向けてどのような未来社会を目指すのか、そのために私たちが何をするのかを、より具体的に表現しました。従業員が自らの仕事とのつながりを理解できることに加え、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまにも共感していただける内容にすることを意識しています。

(松本)マテリアリティの表現については、シンプルかつ抽象的なものから、具体的なものまで各社各様だと思いますが、従業員やステークホルダーからの共感を得ることを目指した場合、今回のような見直しは有効だと感じます。改めて、今回刷新されたマテリアリティの構成をご紹介いただけますか。

(岩舘 氏)価値創造に向けた領域として、①地域と産業の未来を支えること、②次世代の金融の形を創ること、③お客さまの生活に安心と豊かさを届けること、④将来世代に豊かな未来社会を引き継ぐことを掲げています。

そして、これらを実現する基盤として、⑤私たち自身が成長すること、⑥より信頼される経営を目指すことを位置付けています。

マテリアリティ

図1
出所:りそなグループ「統合報告書2026」P.8”マテリアリティ” www.resona-gr.co.jp/holdings/investors/ir/disclosure/pdf/26/t_rev.pdf(2026年10月6日アクセス)

マテリアリティを一人一人の「自分事」にする

(松本)狙い通り、従来のマテリアリティ以上に、御社が何をするのか、それがパーパスや中期経営計画とどのように接続しているのかが分かりやすく表現されている印象を受けます。それでは、これらのマテリアリティの実現に向けて、最も重要なポイントは何だと考えていますか。

(岩舘 氏)りそなグループには約3万人の従業員がいます。その一人一人が、マテリアリティを自らの行動にどう結び付けるかが重要です。

マテリアリティを単なる「会社の重点課題」として伝えるだけでは、経営への実装は進みません。従業員一人一人が「自分の仕事の意味を考えるための共通言語」として、行動変容や挑戦を後押しできるかどうかがポイントになります。

全員が同じ答えを持つ必要はありません。お客さまのこまりごとや社会課題との接点は、それぞれの業務や立場によって異なります。自分の業務が6つのマテリアリティのどこにつながり、その先でどのような価値が生まれるのかを、一人一人が主体的に考えることが大切です。

身の回りのこまりごとを一つ見つけ、自分にできることを一つ考え、行動に移す。その積み重ねが「変革」であり「挑戦」であると考えています。

(松本)非常に大事なポイントだと感じます。御社のような多くの従業員を抱える企業ですと、従業員一人一人に対してマテリアリティに対する意識を根付かせるためには、継続的な働き掛けが重要になると思います。従業員の行動変容や挑戦を後押しするために、具体的に取り組まれている事例があればご紹介いただけますか。

(岩舘 氏)中期経営計画で掲げた「挑戦」を、従業員個々人の業績目標や評価にも取り入れています。結果だけでなく、どのような挑戦を行ったのか、そのプロセスから何を学んだのかも重視する考え方です。

挑戦には失敗が伴うことがあります。目標を達成できなかったことだけを理由に責めるのではなく、挑戦の過程や、そこから得られた学びに価値を認めることが重要です。失敗を恐れずに挑戦できる環境をつくることが、新しいアイデアや行動につながると考えています。

また、経営陣によるタウンミーティングに加えて、半期ごとの所属長による職場内研修などもマテリアリティの浸透に向けた機会として活用しています。経営から直接メッセージを発信することと、所属長が日々のマネジメントの中で対話することの双方が必要です。

さらに、会社としては、中期経営計画策定以降、さまざまな企業さまとの提携を公表し、新たな事業に挑戦しています。社内施策としては、従業員のアイデアを新しい事業につなげるための社内ベンチャー制度の導入なども進めています。従業員には、こうした「変革」を肌身に感じてもらい、「挑戦すること」を組織文化として根付かせていきたいと考えています。

(松本)制度を整えるだけでなく、失敗を許容し、挑戦のプロセスを評価するというメッセージを、マネジメント層が継続的に伝えることが重要ですね。マテリアリティの取組みが日々の業務や人事制度につながることで、従業員にとっても、より身近な概念として感じられるものと思います。

戦略、サステナビリティ、人財、ガバナンスを一体で推進

(松本)先ほどのお話の通り、マテリアリティの取組みを進めるためには、岩舘さんを含めたマネジメントのリーダーシップが重要になると思います。岩舘さんは、りそなグループにてCSO、CSuO、CHRO、さらにコーポレートガバナンスの領域まで横断的に担当されています。このような体制は、マテリアリティの実践にどのような効果をもたらしていますか。また、その中で岩舘さんの果たす役割は何だとお考えでしょうか。

(岩舘 氏)マテリアリティを成長戦略として経営の仕組みに組み込み、実装することが、私の役割だと考えています。

社会課題を起点に新しい価値を生み出そうとしても、それを実現する人財が育っていなければ継続できません。また、挑戦を支えるガバナンスがなければ、組織として十分に機能しません。中期経営計画の策定の議論を進める中でも、当社の社外取締役から同様の意見をいただいており、現在の兼職体制も、そうした考え方を反映したものです。

兼職体制によって、価値創造に向けた戦略の策定から、人財への浸透、進捗管理、ガバナンスまでを一気通貫で議論できることは、大きな強みだと考えており、これによって中期経営計画の遂行、ひいてはマテリアリティの実現に貢献できるものと考えています。また、私が兼職するだけでなく、各部門間での人事異動も実施しており、従業員にも縦割りではなく、これらの領域を一体として取り組む視点を持ってもらいたいと考えています。

KPIを通じて社会課題の解決と企業価値向上をつなぐ

(松本)昨今サステナビリティは一つのトレンドではなく、より本質的な取組み意義について問われることが多くなっていると感じます。改めて、御社の新たなマテリアリティへの取組みは、どのように企業価値の向上につながっていくのでしょうか。

(岩舘 氏)中堅・中小企業の成長支援や、個人のお客さまへの資産形成・承継支援などを通じて事業機会を広げ、社会課題の解決と結び付けながら、持続的な企業価値向上を目指していく方針です。新たな中期経営計画では、各マテリアリティと連動するKPIを設定しており、これらのモニタリングを通じて、マテリアリティへの取組みの進捗を確認しています。従来から「サステナビリティ長期目標」として設定しているカーボンニュートラル目標やリテールトランジション・ファイナンス目標に加え、法人向けの預金・貸金の残高やグループアプリのダウンロード数など、より事業との関係性を意識しやすいKPIも含めてマテリアリティとの対応関係を整理しています。

(松本)事業との関係性を意識しやすいKPIをマテリアリティとひも付けられたことは、冒頭にお話があった通り、従業員やステークホルダーからの共感にもつながりやすい取組みであると感じています。御社の統合報告書を拝見すると、各マテリアリティと連動するKPIに加え、マテリアリティを横断するKPIとして「価値創造力指数」を設定されていますが、これはどのような指標でしょうか。

(岩舘 氏)価値創造力指数は、お客さまにどれだけ価値を提供できているかを捉えるための指標です。現場や各商品所管部がお客さまのニーズを捉え、さまざまな商品・サービスを提供しています。そうした取組みの成果を全社横断的に捉えるため、価値創造力指数を算定し、モニタリングしています。

また、価値創造力指数の対となる指標としてWell-being指数があります。価値創造の源泉は「人」であると考えています。人財力が高まれば、ソリューションの提案力向上につながり、その結果として、お客さまや社会への価値創造が広がっていきます。この一連の関係を捉え、価値創造力指数とWell-being指数をともに高めていくことが重要です。

一つの指標だけで企業価値へのつながりをすべて説明することは容易ではありません。だからこそ、人的資本に関する指標や、お客さまへの価値提供に関する指標など、複数の要素を組み合わせながら、マテリアリティへの取組みの進捗を確認していく必要があります。

図2
※1 公共法人等含む 
※2 リテール・トランジション・ファイナンス 
※3 カーボンニュートラル 
※4 従業員アンケートによる主体性・当事者意識・挑戦志向に関する設問のポジティブ回答率平均値

出所:りそなグループ「統合報告書2026」P.18”マテリアリティとKPI” www.resona-gr.co.jp/holdings/investors/ir/disclosure/pdf/26/t_rev.pdf(2026年10月6日アクセス)

(松本)社会課題の解決、従業員の成長、お客さまへの価値提供、そして企業価値向上の関係を、一つのストーリーとして示していくことが重要だと感じます。KPIについても、数値を管理するだけではなく、その背景にある価値創造のメカニズムを社内外に伝えることで、マテリアリティが経営の中で果たす役割がより明確になると考えます。

また、マテリアリティを経営戦略、人的資本、ガバナンスと一体化し、従業員一人一人の行動にまでつなげようとする点は、サステナビリティを経営に実装する上で非常に重要な取組みだと感じました。

EYとしても、マテリアリティと企業価値のつながりの可視化や、サステナビリティ情報開示の高度化などを通じて、りそなグループの価値創造に向けた取組みに寄り添っていきたいと考えています。

本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

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【共同執筆者】

小金井 佑紀
EY新日本有限責任監査法人 金融事業部 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS) マネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです。



サマリー 

りそなホールディングスは、新たな中期経営計画の策定に合わせてマテリアリティを見直し、パーパス、経営戦略、人的資本、ガバナンスを一体的につなぐ枠組みとして再整理しました。

従業員の行動変容を促しながら、社会課題の解決と企業価値向上の両立を目指しています。


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