ROIC経営時代のITマネジメントとは~IT・デジタル投資のダイナミックな点検の実現が資本効率を守る~ #6

ROIC経営時代のITマネジメントとは~IT・デジタル投資のダイナミックな点検の実現が資本効率を守る~ #6


積極的なIT・デジタル投資と適切な投資ガバナンスの両立は多くの企業が避けて通れない課題です。投資額だけでは見えないIT・デジタル投資の読み方について解説します。



要点

  • テクノロジーの変化に対応するための投資確保は非常に重要である反面、投資規律との両立は企業にとって悩みの種である。
  • 現在の新規投資が将来の維持管理投資として蓄積するという特性を理解して、IT・デジタル資産の代謝による投資バランスの継続的改善を実現することが重要である。


積極的な投資は進めたいが原資は限られている

これまでの連載でご紹介した通り、AI等をはじめとした先進性の高いデジタル投資や顧客接点改善などの投資に対する積極性が高い企業は、PBRが高い傾向を見せるなどの相関を示しています。IT・デジタル投資と経営の意志をリンクさせることで、資本効率と事業価値の両立をいかに実現するかは、ROIC時代のITマネジメントにとって重要なテーマです。また、IT部門自体がプロフィットセンターとしての高いコミットメントを持つこともまた推進に寄与することや、それを具体的に見える化する手段としてのIT投資ポートフォリオ管理の進化の重要性についてもご紹介してきました。しかし一方で、投資上限がある事業環境下でのやりくりは、現場部門にとっての大きな悩みでもあると同時に、マネジメントからはブラックボックスのように扱われながらも大きな投資ととらえられることが多く、IT/デジタル部門にとっても解決策を見いだすのが難しい問題でもあります。今回は、IT投資ポートフォリオ改善に向けた資産構成の組み換えの重要性について解説します。


IT・デジタル資産は放置すると増加し続けるためコストも増加し続ける

1951年に世界初の商用コンピュータが登場して以来、世界中の企業は70年以上にわたりIT・デジタル投資を継続してきました。その内容と目的は多岐にわたりますが、本連載第5回でも取り上げたGartner社の定義では、投資目的は3種類(TGR)に分類されます。

  1. Transform(変革投資)
  2. Grow(成長投資)
  3. Run(維持管理投資)

第5回でのトピックでも、バランスの取れた投資配分の重要性について説明しましたが、実態として多くの企業は“Run(維持管理投資)”が重しになって、積極的投資枠の確保に苦慮していることが伺えます。2025年の同社調査によると、グローバル企業におけるIT総投資の平均は総収益の3.2%ですが、うち70%以上という高い割合を“Run”が占めています。なぜこの状況が発生するのでしょうか? 実はこの答えは明快です。変革や成長のための過去のIT・デジタル投資は、システムが運用フェーズに入った後は、維持管理投資を生み出すことにつながります。つまり、維持管理投資は、蓄積的に増加しやすいという特徴があるのです。

実践アプローチ:IT・デジタル投資ポートフォリオ管理

投資圧縮はこれまでも試みられてきたが“退役”の決断は困難

多くのIT部門は過去からこの問題を認識していました。これまでは、対症療法的ではあるものの、

  • ベンダーへの運用保守コストの値下げ交渉による圧縮
  • BPOの活用による単価水準の低い運用へのシフト
  • 近年ではクラウドシフトによるコスト最適化・拡張性向上

などを実現する形で対応を進めてきました。しかし、特に利用年数が長い基幹系システムにおいては、上記のコスト削減対応を永久に続けることは限界があります。さらに、前述した通り、過去のTransform(T)やGrow(G)のための投資は将来のRun(R)コストとして堆積するため、結果としてRun目的の投資は増え続けることになりやすいです。この連鎖を断ち切り、コスト圧縮のための最も即効性のある対応は、“不要なIT資産を退役させることで母数を減らす”です。しかし、これはIT部門にとっては難易度の高い選択肢です。なぜでしょうか?


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IT投資対象となっているアプリケーション機能が“退役可能かどうか”を判断するには、複数の視点からの多角的評価が必要です。評価の軸として、例えば、コスト、ビジネス貢献度、技術先進性、を設定するとわかりやすいです。

技術先進性・ビジネス貢献度・コストでの分類イメージ

シンプルに整理をすれば、退役させることによって最も効果が大きいアプリケーションは、“ビジネス貢献が限定的で、現在投下しているコストが大きいもの”です。しかし、IT部門とビジネス部門の連携が十分でない状態では、“ビジネス貢献度”をIT部門が単独で判断することが困難です。例えば、“ごく限定的なビジネスユーザーが頻繁に利用している機能だが代替手段が準備されている”ケースは、システムアクセス数だけから重要度や退役可否を判断することはミスリードを招きます。実際に具体的な退役対象の判定手法にはさまざまなものがあります。また、退役対象以外のシステム資産に対しても異なるアプローチの最適化が必要です。ビジネス貢献度の双方の観点をより積極的にIT投資ポートフォリオ評価に活用することで、継続的に投資の新陳代謝を含めた最適化を実現することは、ともすれば肥大化やブラックボックス化すると見なされがちなIT投資に対する、新たな説明責任の実現の方法としてとても重要な取り組みです。




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サマリー

独自調査からは、IT・デジタル投資におけるビジネスとIT・デジタルの協業とPBRの相関が見られます。

IT・デジタルとビジネスが協業する鍵となるように、IT・デジタル投資を個々に評価するのではなく、ポートフォリオとして評価すべきです。


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