EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
一方で、データベースとなるスキル設計に時間をかけたにもかかわらず、運用の中で十分に活用されず、意思決定に結び付いていないケースも少なくありません。本稿では、最適なスキル設計の構築方法とそれにかかるAI活用方法、また構築後の検証を通じてスキルの妥当性を検証し、継続的に向上するための運用アプローチを整理します。
要点
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人的資本経営の重要性が高まる中、スキルを軸に人材を捉え直す「スキルベースの人材マネジメント」は、多くの企業で中核的なテーマになりつつあります。
スキルベースとは、ジョブやポジションで求められる要素をスキルとして定義し、スキルをカギに人材を評価・配置・育成するアプローチ手法です。「スキルベースの人材マネジメント」の意義は、ベースとなるスキルを定義し、人材ごとにどのスキルを保有しているか把握した上で、各人材の持つスキルを活かしながらタスクやプロジェクトに最適な人材配置をすることで、人材の価値を最大化しながら、効率的な業務遂行が可能になる点にあります。
一方で、スキルベース組織運用のベースとなるスキルの定義や体系づくりなど、スキル設計に時間をかけたにもかかわらず、スキルベースの人材マネジメントによる実際の意思決定では十分に活用されていないという課題も少なくありません。
この背景には、「まずベースのスキル設計を完成させてから運用する」という進め方によって、設計とその後の活用が分断されてしまい、「設計が目的化」してしまう構造があります。スキルデータを最初から完成形として設計し切ろうとするほど、「どの意思決定のタイミングでどのように活用するのか」という本来の議論が後回しになりがちです。スキルは最終的に「採用」「人材配置」「育成」などの場面で判断に活用されるべきですが、スキルデータを使った意思決定の場では、スキル情報に加えて経験、評価、指向性などが加味されます。スキルデータもこうした運用の中で最適化する必要があるため、設計の段階で完璧な状態を目指すことは現実的ではありません。本稿では、こうした課題を踏まえ、AIを活用しながら仮説を立ててスキル設計し、運用しながら向上していくための考え方を整理します。あわせて、このようなスキル設計が、その後の業務や組織運営の意思決定にどのようにつながるのかを見据えた視点にも触れていきます。
スキルベース組織の考え方について、詳しくはこちら
スキルベース組織とは――『スキルベース組織の教科書』監修者が語る新たな人材マネジメント手法
Section 2
「スキルベースの人材マネジメント」の取り組みがうまく機能しない背景には、「入念にスキル設計をすれば、人材配置や育成の正解が見えるようになる」という誤解があります。しかし実際の配置や育成の判断は、スキルのデータ情報だけでなく、これまでの経験、評価や志向性などを含めた総合的な判断で行われます。
よって、意思決定に必要となるスキル設計の粒度や範囲は、設計段階で完全に決め切れるものではなく、実際に使うことで初めて妥当性が見えてきます。だからこそ、100点のスキル設計を目指す必要はありません。60点でもよいのでまず走らせ、運用の中で検証しながら改善していくことが、「スキル設計止まり」を防ぐ現実的なアプローチになります。
Section 3
もっとも、どのようなスキルをデータベース化するかなど、初期のスキル設計は負荷が重くなりがちです。外部タクソノミーの導入や職務記述書との手作業でのひもづけは、時間と労力を要し、スキルベースの人材マネジメントを「検証・運用する」段階に進めないまま検討が止まることもあります。
この課題に対しEYでは、初期のスキル設計をAIで補完して試行できる状態をつくり、まず運用してみることを重視しています。ここでのAIとは、配置や育成を判断する「答え」を出す存在ではなく、スキルを仮置きし、検証するサイクルを回すための補助役として位置づけています。
図)AIを活用したスキル設計・検証アプローチ
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こうした考え方を具体化するために、EYではEY Workforce Platform(EYWP)を活用した支援を行っています。EYWPは、職務起点でデータベースとなる暫定的なスキルを作成し、意思決定の中でスキル設計を検証するプロセスを支援する、AIを活用したプラットフォームです。
EYWPでは、職務内容を入力・アップロードすることで、AIが外部ベンチマークを参照し、関連スキルとその優先度を自動で提示します。単なる関連スキルの列挙ではなく、職務との関連性を踏まえた議論のたたき台を短期間で作成でき、職務・スキルデータはそのまま構造化されます。
ここで作成するスキル設計は完成形ではなく、外部基準に裏付けられた最低限のスキルを早期に設計し、使いながら検証することを前提としています。
暫定的なスキルは、人材ポートフォリオ設計や採用・配置、育成検討の中で検証します。EYWPでは、職務に対するスキル充足度を可視化し、チーム・個人ごとのギャップを把握する機能や、スキルと学習コンテンツを結び付けた育成支援機能を通じて、「意思決定時に使う」「育成につなげてみる」という試行を可能にします。
図)スキル傾向の部門間比較
図)ギャップ分析に基づく、強化が必要なスキルの特定
図)企業の学習コースと強化されるスキルのひもづけ
図)学習コースの構成考案
こうした試行を通じて、スキルの充分性を検証し、改善する支援をしています。
Section 5
暫定的なスキル設計を、運用の中でどのように見直し、更新し続けていくのか。運用のPDCAを回すための実践的なポイントを整理します。
スキル設計を一過性の取り組みに終わらせないためには、スキルの活用シーンを起点に、見直しの観点を前もって整理しておくことが重要です。スキルの項目は、定義した時点では正しさを100%判断できるわけではありません。実際の配置や育成といった意思決定に使われた結果を通じて初めて、妥当性や過不足が見えてきます。そのため、適宜見直すことが必要です。見直しの観点は次の二つの軸で整理しておくと有効です。
この二つの視点で振り返ることで、設計したスキルが「定義として正しいか」だけでなく、「意思決定するための判断材料として機能しているか」を具体的に見極めることができます。
スキル設計の見直しを継続的に回すためには、スキル設計の検証を行うための体制や役割分担を最初から決めておくことが欠かせません。体制が曖昧なままだと、現場で違和感に気づいても見直されず、実務で使われないスキルが定義として残り続けてしまいます。
そのため、例えば、
といった役割分担が考えられます。
「誰が違和感を拾い、誰が見直し案を整理し、どこで最終判断するのか」を明確にしておくことで、スキル設計のデータは固定化されることなく、運用を通じて継続的にアップデートされ、より良いものになっていきます。
スキル設計を業務と組織の意思決定に活用するには、スキル設計の最適化と運用継続が重要
「スキルベースの人材マネジメント」の目的は、完成度の高いスキル設計の体系を作ることではありません。実際の意思決定や業務の中で使いながら検証し、見直し、更新しながら最適な人材活用を行うことにあります。特にAIを活用することで、判断を自動化するためだけではなく、初期設計の負荷を下げ、検証のサイクルを回し続けるための補助役として価値を発揮するでしょう。
こうして仮説として設計されたスキルは、配置や育成といった個別の人材判断にとどまらず、業務の担い方や組織全体の在り方を見直す際の重要な視点にもつながっていきます。スキル設計を起点としながら、運用の中でどう活かし、組織としての最適化に結び付けていくか――そこに次の論点が広がります。
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ニュースリリース
EY Japan、日本市場で初めてスキルを起点にした新たな人材マネジメント手法を包括的に解説する『スキルベース組織の教科書』を出版
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EY Japan、『スキルベース組織の教科書』が「HRアワード2025」書籍部門に入賞
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 近藤 聡)は、日本能率協会マネジメントセンターより出版した書籍『スキルベース組織の教科書』が日本の人事部「HRアワード2025」(主催:「HRアワード」運営委員会、後援:厚生労働省)の書籍部門に入賞しましたのでお知らせいたします。
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スキル可視化はスキルベース実現の鍵となる要素です。スキル単位で人材管理・ジョブマッチングを行うことで、個人の能力最大化と企業競争力向上につながります。
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スキルベース組織の教科書 ジョブ型人材マネジメントのその先へ
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