その重点テーマとは、第一にチャレンジを実現する自律型人材を創出することであり、キャリアモデル(目標)の設定やサポート、ラーニングハブ(学びや)の導入などが含まれます。第二はグローバルトップレベルのプロフェッショナル人材を育てること。専門委員会のもと、機能別に必要となるスキルの設定や、その開発支援、高度専門人材の認定などを行います。第三として、ヤンマーグループ全体としての教育研修体系の再構築。従来は企業ごとにまちまちだった仕組みを一元化し、海外を含めてどこでも同じ教育が受けられるよう改善中です。
人材ポートフォリオをスキルベースで可視化する方法
こうした方針により、特にプロフェッショナル人材育成のために同社グループが注力しているのが、スキルベース人材マネジメントの確立です。経営戦略や事業戦略、ビジネスの動向や労働市場の動きなども織り込んだ上で、将来に向けて求められる人員計画を質と量の両面から策定。そこから導かれたあるべき人材ポートフォリオに対し、現状の人員体制には何が足りていないのか。そのギャップを分析し、採用・配置・評価・報酬・育成へとつなげていくスキームです。
「それら全てをスキルベースで管理することが、私たちの仕組みの眼目です。例えば、ファイナンス部門の財務グループで資金管理を担当する専門職の望ましい人員が、人材ポートフォリオ分析の結果3人であるべきところ、現状では1人で回していることがわかったとします。不足する2人をどう充当するか。その職務に必要なスキルを確認した上で、内部で育成するか、他部門から配置するか、新たに採用するかといった選択を迅速に検討することが可能になります。要は、事業や機能ごとに、人員の過不足状況をスキルベースで可視化するわけですが、これにはそれぞれの職種に求められる専門スキルと、その習熟度についての定義を明確にしておかなければなりません」(司尾氏)
司尾氏はまた、この仕組みを従業員の側から見た場合、個々人の成長をスキルベースで支える仕掛けとして機能するのが利点だといいます。入社当初、従業員はまず現状の自分のスキルを把握すると同時に、会社からは将来の役割や必要スキルを示したキャリアモデルを提示します。そこで自分の目指す目標を定めたら、現状とのギャップを埋めるための教育研修を自ら選択し、ステップとなる職種への異動を希望するといった、それぞれの「夢・目標」へと向かう自律的な歩みが可能となるからです。
社員の自律的学習と成長を促す人材育成フロー
次に司尾氏は、スキルベース人材マネジメントの骨格をなす要素として①スキル評価②教育マップ③高スキル人材認定―の3つを提示。教育マップとは、「財務分析力」「情報リテラシー」といったスキルごとに定義とレベルを定め、個々のレベルに到達するのに必要な研修コンテンツを明示したもので、従業員はこれを見て育成計画を立て、必要な研修を自分で選ぶことができます。同社グループでは、これらの要素をCDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)として統合。以下の5段階によるサイクルを回すことをもって、従業員の成長を支えるフローを形成しています。
ステップ1:機能・職種・専門スキルの定義
ステップ2:個人別スキルレベル評価、目標設定
ステップ3:育成計画と実行
ステップ4:CDP委員会で審議(高ランクスキル)
ステップ5:専門職の認定(高ランクスキル)
なお、同社グループでは技術系については30年以上前からスキルベースの考え方を導入。常にアップデートを継続し、現在は4機能・31職種・65スキルを設定しているのに加え、未整備だった管理系・営業サービス系にも2024年に着手、これまでに16機能・79職種・約400スキルの設定を終えているといいます。
「これらのスキルは陳腐化しないよう、常に見直すことが鉄則。また、グローバルで通用するよう世界共通スキルの視点を持たせているのが特徴です」(司尾氏)
おろそかにできない社内コンセンサスと企業カルチャー
セミナーはこの後、モデレーターにUdemy Inc.の大塚涼右氏を迎えての対話セッションへと移行。Udemyは世界的に展開するオンライン学習プラットフォーマーであり、日本ではベネッセコーポレーションとの業務提携によりサービスを提供。ヤンマーグループにおいても、CDPに基づく研修コンテンツの一部に採用しています。
大塚氏は、スキルベース人材マネジメントの構築過程における管理職の関与や、従業員の自律的な学びを定着させる上での社内カルチャーの醸成について重要性を指摘。これに対して司尾氏からは、今回の変革において現場リーダーの理解と協力は不可欠であり、時間を掛け、対話を重ねながらコンセンサスを得てきたこと、自律学習の気風を培うため、HANASAKA UNIVERSITYにひもづくイントラ教育サイトの構築や、年間100人規模の従業員インタビューを進めていることなどの紹介がありました。