EYメガトレンド

なぜ人間とAIの知的協働が、人材を再定義しつつあるのか


企業は、人間とAIの共進化が学習を通じて促進される、新たなケイパビリティのエコシステムを受け入れる必要があります。


要点

  • 人材とは、人間と機械が知的パートナーとして協働し、相互適応と学習の共有を通じてケイパビリティを進化させていく協働関係そのものとして再定義されつつある。
  • 不足しているのは人材ではなく、ケイパビリティである。これからの時代には、人員数ではなくケイパビリティを競争力の真の評価基準と捉える企業が成功を手にする。
  • CHRO(最高人事責任者)、CLO(最高学習責任者)、CFO、CEOは、学習を資本と捉え、社内外に存在するケイパビリティを動的なポートフォリオとして位置付ける必要がある。


EY Japanの視点

AIと人間が本格協働する近未来 ―「人材負債」の概念から読み解く人材ポートフォリオ変革

AIと人間が本格協働する中、AIを自分の部下や労働提供力の必須要素と捉える考え方や、量から質へ重心を移した人材ポートフォリオ変革といったメガトレンドは、未来の日本社会や企業経営においても大いに当てはまります。特に人材負債(Talent Debt)という新しい概念は、財務会計の観点から、従業員は企業経営のP/L項目(ゆえにHuman Resourcesという資源であり、コストである)という従来の発想に対し、人材はHuman CapitalというB/S項目であり、配置のミスマッチ解消やリスキリング次第で資産にも負債にも成り得ると捉える点において、大変興味深い指摘です。経済産業省が発表した「2040年の就業構造推計(改訂版)」(2026年3月)では、2040年には日本の労働力全体が供給不足になるにもかかわらず、事務職では437万人もの余剰予測がなされています。日本も、業界間移動や、ホワイトカラーから技能職やエッセンシャルワーカーへの職種転換を含めた、大規模な人材ポートフォリオ変革の必要性を理解し、今から対応策をとることが求められます。 

EY Japanの窓口

本記事は、「EYメガトレンド」シリーズの最新版「New frontiers: The resources of tomorrow」でご紹介しているインサイトの一部です。

長年、企業は人材を希少で固定された資源であるかのように捉え、獲得競争を繰り広げてきました。しかし、その前提はもはや通用しません。今や従業員は、学習し、タスクを遂行し、進化する人工知能(AI)システムと密接に結びついており、両者の間には知的な協働関係が形成されつつあります。人材は、もはや社内の人員という枠組みに限定されるものではなく、従業員、外部委託先、パートナー、マネージドサービス、インテリジェントマシン(AIを含む知的機械)から成るエコシステム全体に分散しています。

ダーウィンの進化論的視点は、人間とAIのケイパビリティがどのように互いに発展していくのかを理解する上で、示唆に富んだアナロジーを与えてくれます。生物界で2つの種が互いに影響を及ぼし合いながら進化していくように、人間とAIシステムもまた、あらゆる対話、プロンプト、データセットを通じて相互に磨かれていきます。この過程は非線形で予測困難です。その一方で、こうした「共進化」のプロセスは、人間ならではの価値を高める大きな可能性を秘めています。その結果、人は単なる実行者にとどまらず、より高次の役割――何を実現すべきかを定義しAIに委ねる「委託者」、成果を選別・洗練する「キュレーター」、複数の能力を組み合わせて全体を設計・統合する「オーケストレーター」、さらには能力の在り方を監督する「倫理的な管理者」、に注力できるようになります。

こうした中、構造的な課題が顕在化しており、企業は従来の慣行を見直さざるを得なくなっています。とりわけ深刻なのが、スキルを巡る問題です。特定の業務を遂行するために必要な「スキル」は、既存の学習システムが更新できる速度をはるかに上回る速さで陳腐化しています。例えば、18カ月周期で更新される学習システムでは、18週間単位で変化するスキル要件に対応できません。その結果、私たちが「人材負債(Talent Debt)」と呼ぶ状態が拡大していきます。これは、人間と機械のケイパビリティが共に進化できなかったことで生じる、本来発揮されるはずの潜在能力が生かされずに蓄積していることを指します。米国だけを見ても、こうした人材負債の価値は、1兆米ドルを超える可能性があると推計されます。1

人間とAIの相互学習において先進的な企業は、互いに補強し合う3つの要素を構築することで、こうした課題に対応しています。

  • マインドセット:好奇心と信頼を土台に実験を重ねる姿勢
  • スキルセット:判断力、直感、想像力といった人間ならではの強みを基盤とする能力
  • ツールセット:継続的な相互学習を支えるAIシステム、学習プラットフォーム、分析機能

実効性のあるケイパビリティは、これら3つの要素が互いに補強し合うことではじめて形成されます。

目的は、単に人材をより早く育成することではありません。人間の知的能力と機械(AI)の知的能力が共に進化し、互いの強みを高め合うことで、企業のケイパビリティを継続的に引き上げていく環境を構築することにあります。次の時代に成功する企業は、単なる人員数ではなく、変化に適応し続ける能力こそを競争力の真の指標と捉えます。適応能力を競争力の中核に据えた企業こそが、次の成功の波をつかむことになります。

A ten-year-old Asian girl observes a mantis perched on a taro turtle. Cultivating children to observe small insects can train children's observation and acuity. Nature is also the best gift to children.
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第1章

知的協働の時代:人材は、人間とAIの共進化が前提に

人材は、人間と機械が相互に影響し合いながら共に進化し、社内の枠を越えて、エコシステム全体にまたがって協働するものへと変化しています。

人材の再定義

1世紀前、労働力と資本の境界線は明確でした。労働者は工場の門をくぐって出勤し、資本は工場のフロアに並ぶ機械設備という形で存在していたからです。しかし今日では、その境界線はほとんど消え去っています。1つのワークフローの中に、ロンドンの従業員、北米の外部委託先、クラウド上で稼働するモデル、そして一晩で学習を終えるAIエージェントが同時に組み込まれることも珍しくありません。こうした状況を背景に、企業は今、「人材」の在り方を根本的に見直す必要に迫られています。人間のケイパビリティは機械の知的能力によって拡張されるだけでなく、外部委託先、エコシステムパートナー、マネージドサービスプロバイダーといった分散したネットワーク全体に及びます。こうした人材観のもとで企業に求められるのは、ケイパビリティを自社の中に「抱え込む」ことではなく、それらを横断的に「オーケストレーション(編成・統合)する」という発想への転換です。価値は、ケイパビリティが社内外のどこにあるかではなく、それらをいかに効果的に組み合わせ、連携させられるかによって生まれます。

今や真の競争優位性は、企業がケイパビリティのエコシステムをいかに知的に設計・管理し、社内外の枠組みを越えて学習を結びつけられるかにあります。知的能力が潤沢に存在する時代において、競争優位性の源泉となるのは目的の明確さです。すなわち、どの領域で価値を付加するのか、何を自ら担うべきか、そしてどの領域でパートナーと協働すべきかを見極めることが問われます。

人間とAIの協働が切り拓く新たな可能性

AI人材という新たな形のリソースを全社的に組み込むことで、人間のケイパビリティはこれまで想定されていなかった次元へと拡張される可能性があります。こうした変化から最大のリターンを得るのは、業務を単に自動化する企業ではなく、業務の在り方を、人間の強みを軸に再設計する企業です。

私たちの思考は、育ってきた環境や人間関係、感情といった人間ならではの経験に根差し、発想を広げながら新たなアイデアを生み出します。こうした思考の在り方は、今後も人間固有の領域であり続けるでしょう

エージェンティックAIは、推論し、自ら主体的に判断し、自律的に協働するシステムとして、AI進化の現在の到達点を体現しています。しかし「共進化」という観点に立てば、AIの進化はそこにとどまるものではありません。人間と機械の相互作用が深化するにつれ、AIは論理や最適化に基づく従来の枠組みを超え、人の感情を認識し、解釈し、さらにはそれに応答する、いわば感情的次元を備えた知能(感情認識AI)へと歩みを進めつつあります。これは、チャールズ・ダーウィンが論じた種間の共生関係とも興味深い類似性を見せています。蜜を蓄えるために深い花筒へと進化したランと、その蜜に到達するため長い口吻を発達させた蛾の関係は、その典型例といえるでしょう。

こうした新たなAIシステムは、人間が何を感じ、どのように考えるかを理解することを目的として設計されています。これは、AIが人間のさまざまな文脈の中で、より意味のある形で人と協働していくための重要な一歩となります。

業務の在り方を変えつつある新たなAIシステム

  • ニューロシンボリックAI:ニューラルネットワークによる学習とシンボリック推論を組み合わせ、データからパターンを識別すると同時に構造化された論理を適用できるシステムを実現するアプローチ。より高い信頼性と解釈可能性が期待されている。
  • オートテリックAI:人間が設定した境界条件のもとで、内発的動機に基づく自己主導性を発揮するシステム。
  • 協調型AI:人間のパートナーと協働しながら、トレードオフを調整し、その判断の根拠を透明性を持って提示する。
  • リフレクティブAI:自らのパフォーマンスをメタ認知的に評価し、状況に応じて目標設定を動的に更新できるAI。これは、人間の意識そのものとは明確に区別される。
  • 感情認識AI(エモーションAIとも呼ばれる):人の感情的・社会的ダイナミクスを認識し、それに配慮した共感的な応答を行う。適切に管理されれば、デジタルな職場環境において信頼や心理的安全性の構築に寄与する可能性がある。
  • フィジカルAI:ロボティクス、材料科学、生物学的デザインを融合した、新たに認知されつつある分野。
  • 身体化・バイオハイブリッド知能:適応型ロボティクスや神経信号から直接学習するAIを介して、物理的・生物学的システムと統合される知能の形態。

これら一つ一つの進展が、AIと人間が相互に影響し合いながら高め合う、「共進化のサイクル」を着実に加速させています。AIが人間のニーズをより深く、より精緻に理解するようになるのに伴い、人間側もまた、これらのシステムと効果的に関わり、協働していくための能力を一層洗練させていく必要があります。

 

注目すべき点として、こうした変化によって、人間に生来備わる特性や、人間の思考に固有の発想の広がりの重要性が、これまで以上に強く認識されるようになっています。HFS社のExecutive researcherであるDana Daher氏は、次のように述べています。「私たちの思考は、育ってきた環境や人間関係、感情といった人間ならではの経験に根差し、発想を広げながら新たなアイデアを生み出します。こうした思考の在り方は、今後も人間固有のものであり続けるでしょう」

 

自然界と同様に、共進化を正確に予測することは不可能です。しかし、想定される将来像(ホライズン)を探ることで、人間とAIのケイパビリティが、異なるフェーズにおいてどのように相互に強化し合っていくのかを具体的に描くことができます。EYが提唱する「スーパーフルイド・エンタープライズ」では、未来を見通す枠組みとして、「基盤構築」「自律的協調」「スーパーフルイディティ(人とAIが一体となって機能する段階)」の3つのホライズンを提示しています。


Cute little pre-school age girl playing a wooden baby grand piano in a sunny domestic environment. Top down image focusing on her little hands on the piano keys. Space for copy.
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第2章

人間とAIの潜在能力を「バランスシート上の資産」として管理する

財務の原則を人材に当てはめることで、本来発揮されるべき潜在能力の価値を評価することができます。その結果、学習を通じて人材投資のリターンを最大化すると同時に、「人材負債(Talent Debt)」というコストを回避することが可能になります。

なぜ人材モデルは変わる必要があるのか

労働市場における構造的な変化によって、従来型の人材アプローチはすでに限界を迎えています。人のケイパビリティの供給は減少する一方で、既存のスキルが通用しなくなるスピードは加速しています。2050年までに、60歳以上の人口は20億人を超えると見込まれており、労働力の供給は一段と縮小する見通しです。その一方で、若い世代では、製造業などの特定の分野で働くことを敬遠する傾向が強まっています。すでに労働者の4人に1人がスキルのミスマッチに直面しており、今後5年以内に仕事に求められる中核的なスキルの約40%が入れ替わると予測されています。こうした状況に加え、64%が業務負荷の増大を感じていると回答しています。5

スキル要件は今、かつてないほどのスピードで変化しています。例えば「プロンプトエンジニア」という職種は、一時的に注目を集めたものの、ユーザーがより高度なプロンプト作成スキルを身に付け、ツール自体も自律的にプロンプトを生成できるようになると、急速に衰退しました。この事例は、スキルを取り巻く環境がいかに短期間で大きく変化し得るかを示しています。12~18カ月のサイクルを前提として設計された学習システムでは、12~18週間ごとに進化するスキルの変化に対応することはできません。

こうした状況は、企業に2つの深刻な課題を同時に突き付けています。企業は、急速に変化するスキル需要に即応するため、人材の再配置やチームの再教育、AIシステムの迅速な更新を進めなければならない一方で、長期的な競争力を支える、より本質的なケイパビリティやマインドセット、インフラを同時並行で構築していく必要があります。そして、ここで求められるのが俊敏性です。スキルの配置および育成は、運用面・戦略面のいずれにおいても遅れなく進めることが求められます。

プロンプトエンジニアの例が示すように、企業は、単に人員を増やすのではなく、自社に必要なケイパビリティをどのように構築するかに焦点を当て、社内外の多様な人材を活用することで、不要となり得る役割への投資を回避できた可能性があります。

成功の鍵は、短期的なスキルの機動性と、長期的なケイパビリティのレジリエンスを同時に実現できるかどうかにあります。この2つを成し遂げた企業は、ディスラプションを持続的優位性の原動力へと変えることができるでしょう。

パイプライン型からポートフォリオ型へ

従来の人材パイプラインは、採用し、育成し、定着させ、昇進させるという考え方に基づくもので、スキルの変化が緩やかで、業務の内容もおおむね予測可能な時代を前提に設計されていました。しかし、そのような仕事の世界は、すでに過去のものとなっています。

AIの急速な普及は、働き方を巡る変化が規模・スピードの両面で大きく進んでいることを示しています。EYの調査レポート「Work Reimagined 2025」によれば、従業員の88%が業務でAIを活用しており、2023年の22%から大幅に増加しています。従業員は次第に、AIを単なるツールではなく、日常業務に組み込まれた協働者、すなわち「同僚」として捉えるようになっています。しかも、この勢いは鈍化する兆しがありません。より高度なAIアプリケーションが業務に導入されるにつれ、AIの活用は今後さらに加速するでしょう。こうした状況について、EY Global Learning and Development LeaderのSimon Brownは次のようにコメントしています。「今まさに、大きな転換点に差しかかっています。AIを起点とする変化は今後さらに加速し、既存の枠組みを大きく揺るがしていくでしょう」

このような環境下において、企業はもはや直線的な人材パイプラインに依拠することはできません。今後は、人が有する専門知、AIモデル、コラボレーションツールを組み合わせた、ケイパビリティ資産のポートフォリオを戦略的に管理していく必要があります。こうした資産はそれぞれ、パフォーマンス特性、価値の減衰曲線、再投資までの期間が異なります。したがって、ケイパビリティの管理は一度きりの施策ではなく、何が有効に機能しているのか、どこに停滞や劣化が生じているのか、次にどこへ投資すべきかを継続的に評価していくプロセスとなります。持続的なパフォーマンスを左右するのは、変化のスピードに対して、企業がこれらをどれだけ速く学び、進化し続けられるかです。

人材マネジメントにおいて、パイプライン型からポートフォリオ型へと発想を転換する動きは、金融における分散投資の考え方に通じるものがあります。この考え方を踏まえ、タレント領域を担うリーダーには、今後次のような要素をより一層バランスよく両立させることが求められます。

  • 長期的なスキル投資と、短期的な学習サイクル
  • 人間の持続的な能力と、機械知能
  • 構造化されたプログラムと、個人主導の能力開発

人間とAIの潜在能力を「バランスシート上の資産」として管理する

人材をポートフォリオとして管理することにより、企業は変化のスピードに応じて、ケイパビリティを迅速に再配分できるようになります。その結果、定期的な人材の入れ替えに依存することなく、継続的に刷新される人材基盤の構築が可能となります。

Ernst & Young LLP のPartner(People Consulting)のMatthew Kearneyは、次のようにコメントしています。「ケイパビリティこそが資本です」

AIへの投資と人的ケイパビリティへの投資では、それぞれリスク・リターンの特性や投資の時間軸が異なります。高いリターンが期待される「成長型」資産には、AIによる自動化や新たに台頭するデジタルスキルがある一方で、「安定型」の価値ある資産には、リーダーシップ、創造性、共感力といった、人間ならではの持続的な強みが含まれます。そのいずれも、欠かすことはできません。市場、技術、そして優先事項が変化していく中で適応力を保つためには、これらを戦略的にバランスさせることが不可欠です。

こうしたアプローチは、人材基盤マネジメントを単なる「労働力の配置」ではなく、「インテリジェンス資本の配分」として捉え直すものです。そのため、CHROやCTO(Chief Talent Officer)には、企業の俊敏性と戦略的先見性を維持するために、ポートフォリオ・マネジャーの発想や手法を取り入れることが求められます。この考え方に立てば、学習は複利的に価値を高めていく資産です。学習こそが、企業の適応力を根底から支え、長期的な価値創出を下支えする基盤となります。

ケイパビリティこそが資本です

しかし、こうしたポートフォリオ型のアプローチは、同時に本質的なリスクをはらんでいます。それは、最も長期的な価値を持つ人的ケイパビリティ、とりわけリーダーシップを、社内でどのように育成していくのかという課題です。自動化やAIによってキャリアパスの在り方が変わりつつある企業において、この問題は一層重要性を増しています。従来、エントリーレベルの職務は、将来のリーダーを育てるための実践の場として機能してきました。キャリア初期の従業員は、そこで判断力やステークホルダーへの理解、さらには複雑な業務を調整しながら進めていく力を培ってきたのです。しかし、こうした業務の多くが自動化されるにつれ、リスクは明白になります。業務の在り方を見直さなければ、AIが前提となる世界でリーダーに必要な能力を身に付けることのできる人材は、限られてしまいます。

こうした課題の深刻さは、最近の研究でも示されています。キングス・カレッジ・ロンドンの調査によると、AIの影響を強く受ける企業ほど、2021年から2025年にかけて若手層の人員削減を進めていました。これに対し、調査チームは、次のように警告しています。

「キャリア初期の職務で雇用喪失が集中すると、現場での実務を通じて段階的に高度な業務を習得していくという、従来のスキル育成の道筋が阻害されます。育成の場として機能してきたジュニア職が失われれば、企業は社内で上位職を担う人材を育成することが難しくなる可能性があります」

リスクはそれだけにとどまりません。仮にエントリーレベルの職務が引き続き存在していたとしても、従業員がAIに過度に依存するようになれば、複雑な思考を自ら行うことなく、システムに委ねてしまいかねません。その結果、批判的思考、情報の統合・意味付け、ナラティブの構築、背景を踏まえた判断といった基礎的なスキルの育成が、気づかぬうちに損なわれていく恐れがあります。

先見性のある企業は、将来のリーダー層の育成が、成り行きに任せられるほど軽い問題ではないことを認識しています。そうした企業は意図的に行動し、キャリア初期の従業員の仕事の在り方を再設計することで、人の能力開発を維持するだけでなく、むしろ加速させようとしています。そのために、例えば次のような取り組みを進めています。

  • AIリテラシーをリーダーシップに不可欠なケイパビリティに組み込み、技術的スキルの習得にとどまらず、システム思考、戦略的コミュニケーション、意思決定といった中核能力と組み合わせた実践を通じて、総合的な能力の育成を推進している。
  • キャリア初期の従業員が、自ら考えずに無意識にAIモデルに依存する行動を助長しないよう、スピードや自動化のみを評価するKPIを避けた従業員評価設計を行っている。
  • より深い思考への関与を促すべく、構造化されたレビューや内省の時間、「なぜそう考えたのか」を説明させる仕組みを通じて、批判的思考をあえて立ち止まって行うための「スローレーン」を意図的に設けている。
  • フィードバックループの構築、エラーログの蓄積、プロンプトライブラリの整備といった取り組みを通じてキャリア初期の従業員をAIシステム改善の共同責任主体と位置付けることで、単なる利用者にとどまらない、ツールの高度化を担う当事者としての意識醸成を図っている。

従来のエントリーレベル業務が消滅することは必然ではありません。しかし、AIを前提とする世界に向けてキャリア初期の経験を意図的に再設計しなければ、将来のリーダーを育成するパイプラインは弱体化していくでしょう。

このような変化を背景に、CHROやCTO(Chief Talent Officer)の役割は、既存の人材を管理する立場から、将来に向けたケイパビリティの形成を主導する立場へと高度化しています。長期的な価値の創出は、人間と機械のケイパビリティが相互に成長していく道筋を構想し、それを設計・実装できるリーダーの存在にかかっています。


人材流動性:俊敏性を示す新たな指標

今日の企業において、俊敏性とは単に「速く動けるかどうか」ではありません。能力を再構成し、学び直し、環境変化にリアルタイムで対応できるかどうかが、俊敏性の本質です。その俊敏性を支える重要な要素の1つが、人材流動性です。人材流動性とは、優先順位の変化に応じて、ケイパビリティをどれだけ迅速に再配置し、従業員を再訓練し、AIシステムを再学習させることができるかを示す概念です。人材流動性が高まることで、企業は人材の再配置やアップスキリングに要する実務上の時間的ロス、すなわちオペレーショナル・レイテンシー(業務上の遅延)を縮小できます。同時に、ストラテジック・レイテンシー(戦略上の遅延)、つまり企業としての学習、リーダーシップの進化、インフラの刷新において生じる、より深い遅れを抑えることにもつながります。

こうした人材流動性を巡る動きは、世代間の違いによってさらに加速しています。その背景には、デジタルネイティブ世代が、AIツールへの高い親和性と継続的な学習を当たり前のものとしながら、リーダーの役割を担い始めているという現状があります。EYの「Work Reimagined 2025」調査によると、日々の業務でAIを活用している従業員の83%が、「現在の自身のスキルは3年後も通用する」と自信を持っているのに対し、AIの利用が限定的な従業員では、その割合は67%にとどまっています。また、年間81時間以上のAI研修を受けている従業員は、業務時間を週当たり14時間削減できている一方で、研修時間が4時間未満の場合、業務時間の削減は週3時間にとどまっています。注目すべきことに、Z世代はベビーブーマー世代に比べて、年間81時間以上のAI研修を受けている割合が2倍に上っています。


こうした変化は、先進的な企業が、学習を業務の流れそのものに組み込む方向へと進みつつあることを示しています。人材変革における次の大きな転換点は、学習が日々のワークフローに完全に組み込まれたときに訪れます。その段階に至ると、働くことと学ぶことの境界は意味を失い、企業は環境に応じて自ら学び、変化し続ける「生きたシステム」へと進化していきます。

「人材負債」──十分に生かされていない潜在価値

人材育成や学習への取り組みは進展しているものの、多くの個人や企業、さらには社会全体において、本来発揮されるべき人材の価値は十分に引き出されていません。依然として、大きな潜在能力が生かされずに残っています。

企業、あるいは経済システム全体が現在有しているケイパビリティと、競争力を効果的に維持・強化するために本来必要とされるケイパビリティとの間にはギャップが存在します。このギャップは「人材負債(Talent Debt)」として捉えることができます。人材負債は、企業や経済全体において、人材やシステムが本来持つ潜在能力が十分に発揮されていない状態、つまり十分な速さで学習できていないことで生じる機会損失を捉えた概念です。財務上の負債と同様に、学習や再投資が技術革新や市場の変化に追いつかなければ、この人材負債は時間とともに拡大していきます。したがって、人材は放置すれば価値が目減りしていく「減価する資産」であり、継続的な投資と育成によって、常に手をかけ続ける必要があるのです。

この人材負債の実態は、「EY Work Reimagined Survey」のデータからも読み取れます。同調査によれば、自身のスキルの将来性に自信を持てず、かつ学習や能力開発を通じてそれを改善する機会も得られていない従業員が、世界全体の13%を占めています。これは、将来の成長を大きく制約するだけでなく、企業のレジリエンスを損なう深刻なリスクとなります。

人材負債:世界全体
13%
今後3年間に求められるスキル水準に自らが達していないと感じている従業員の割合

「EY Work Reimagined」の調査によると、米国の労働者の11%は、自身のスキルに自信を持てず、それらを伸ばす機会も十分に提供されていないと感じています。この割合を米国経済全体に当てはめ、現在の賃金水準をもとに試算すると、いわゆる「人材負債」が示す経済価値は1兆米ドル超に達します。これは、本来発揮されるはずの労働者の潜在能力が活用されていないことによって失われている価値であり、生産性やイノベーションに対する重大な“見えない足かせ”となっています。特に、スキルの半減期がわずか2〜5年にまで短縮している現在、この課題は一層深刻です。人間と機械の学習への継続的な投資を怠れば、企業のケイパビリティは減価し、競争優位性が損なわれていきます。その影響は、未払いの利息が膨らむ負債のように、時間とともに複利的に拡大していきます。


Two hands of different people reach out to each other through the laser beams on a purple background.  The concept of helping hand with copy space.
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第3章

人間とAIが共に学び合う企業

相互学習は、次世代の企業の中核を成すものとなります。そうした企業では、人間と機械が常に学び合い、互いの能力を高めていくエコシステムが形成されていきます。

人間とAIの協働関係を使いこなせる企業は、変化を上回るスピードで学び、人材の未来を描き出していきます。

このように人間とAIが共に進化する環境を整えることは、組織設計において非常に効果的なアプローチです。その根底にある4つの原則と、そこから導かれる実践的な行動は以下の通りです。

1. 相互に影響し合うことが進化を前進させる

ある種に起きた変化が、別の種の行く末を左右することがあります。同様に、従業員の学習に関する意思決定とAIの開発・導入に関する意思決定は、互いに直接的な影響を及ぼします。AIの進歩が人間の可能性を損なうのではなく、むしろ高めるものとなるよう、人材戦略とテクノロジー戦略は一体として設計されなければなりません。

2. 相互作用の頻度が、適応の在り方を決定付ける

相互作用の頻度が高い種ほど、環境への適応はより速く進みます。これを企業に置き換えて考えると、学習は業務の流れの中に組み込まれるべきだ、ということが見えてきます。すなわち、定期的な研修のみに頼るのではなく、人間と知的システムの間に、継続的かつリアルタイムのフィードバックループを構築することが重要です。

3. 進化は一様ではない

自然の生態系では、急速な変化が集中するホットスポットと、変化が停滞しているコールドスポットが存在します。企業も同様の原理で考える必要があります。学習がどこで定着しつつあるのかを継続的に評価し、うまく進んでいない領域を特定した上で、新たな価値が生まれつつある分野に投資を集中させることが求められます。

4. 前提条件の見極めが極めて重要である

進化は、その置かれた環境によって左右されます。同様に、人間とAIの学習設計も、企業の構造やオペレーティングモデルによって決まります。人間がエージェントに指示を与えるのか、両者が協働するのか、あるいはAI主導のオーケストレーションによって人間が支援されるのかによって、設計の前提は大きく変わります。これらのシナリオに応じて、求められるスキルやガバナンスも異なります。

これらの原則に基づいて行動することで、企業は直線的な育成モデルから脱却し、継続的に感度を高く維持し、適応し、自らを更新し続ける「生きた学習システム」へと移行していくことができます。こうした相互学習型の企業においては、あらゆるプロジェクト、ワークフロー、プラットフォームが、人間と知的システムの双方にとって、学習を進め、相互に改善を図る機会となります。

人間とAIの相互学習を支える「マインドセット」、「スキルセット」、「ツールセット」の構築

テクノロジーの役割が受動的なものから能動的なものへと変化する中で、従来のスキルモデルの枠を超え、「マインドセット」、「スキルセット」、「ツールセット」を統合した、より広範で適応力の高い枠組みへ転換することが不可欠になっています。AIを基盤とする企業におけるケイパビリティは、もはや「人が何を知っているか」だけで決まるものではありません。知的なシステムとどのように協働するか、そしてAIによって生まれた時間を、人間ならではの価値を最大化するためにどう使うかによって形成されます。こうした考え方は、すでに戦略上の必須要件となりつつあります。EYのグローバル調査レポート「CHRO 2030 Markets Insights」によれば、雇用主の85%が、戦略的な人事機能を企業の成功に不可欠なものと捉えています。さらに、強力な人事リーダーシップを有する企業は、継続的に同業他社を上回る成果を上げていることが示されています。

マインドセット:継続的な相互学習が根づく環境を創る

人間とAIが共に学び合う企業の出発点は、マインドセットです。リーダーには、人間とAIがリアルタイムで互いに学び合える環境を整えることが求められます。その実現には、次の行動が不可欠です。

  • 好奇心と実験マインド:従業員がAIシステムに対して問いを立て、試行し、改善を重ねていくことを奨励する。
  • 心理的安全性:チーム内で、AIのアウトプットに疑問を投げかけ、改善を図ることをためらわずに行える環境を醸成する。
  • オーナーシップ:個人が、自身の成長と、自らが活用する知的システムのパフォーマンスの双方に責任を持つように導く。

テクノロジーは、従業員の学習に対する期待の在り方も変えつつあります。この点について、Siemens社のGlobal Head of Learning and GrowthであるJenny Lin氏は、次のように述べています。「テクノロジーの進化によって、学習は必要になったそのタイミングで行われることが求められるようになっています。しかも、状況に応じて柔軟に提供され、すぐ手元で利用でき、直感的に理解できる形式が不可欠です」

これらの視点を総合すると、新たなマインドセットの本質が浮かび上がります。すなわち、学習は必要な時に即座に行え、業務や活動の中に組み込まれ、人間と知的システムが相互に、かつ継続的に適応し合うことを前提として設計される必要があるということです。

スキルセット:AIとの協働を支える人間ならではのスキルを高める

AIが分析やオペレーションの多くを担うようになる中で、競争力の鍵となるのは、人間ならではの強みです。それゆえに、ラーニング分野のリーダーには、次に挙げるようなケイパビリティを全社的に高めていくことが求められます。

  • 判断力、倫理的思考、システム思考:自律性の高いAIシステムを適切に導き、統制するためのスキル
  • 創造性、ストーリーテリング、文脈を踏まえたフレーミング力:インサイトを、人やビジネスの目的に響く行動へと転換するスキル
  • 協働力、コミュニケーション力、共感力:人間とAIが、ワークフローやチームを越えて効果的に協働するためのスキル

これらのスキルセットがあってこそ、人間はAIと共存するだけでなく、その価値をより大きく引き出すことができます。文化人類学者のJitske Kramer氏も次のように指摘しています。「AIは、私たちの人間性を一段引き上げる機会を与えてくれる可能性を秘めています。時間に余裕が生まれることで、創造性やマインドフルネス、道徳性、そして人と人との関わり方を、これまで以上に大切にできるようになります」

しかし、こうした成果が常に保証されているわけではありません。AIを批判的思考やストーリーテリング、深い思考への関与の「代替」として用いると、「認知的オフロード(思考の外部化)」が起こり、人間の能力そのものが損なわれる恐れがあります。批判的に考えることは容易ではなく、多くの人が無意識のうちにそれを避けようとします。だからこそ企業は、この現実を踏まえ、批判的思考という重要なケイパビリティを育むための余白と、それを後押しするインセンティブを意図的に設計する必要があります。AIによって実行スピードが加速する時代において、企業が頼るべきなのは「より良い思考」です。そのためには、分析を促し、結論を問い直すために立ち止まるポイントを意図的に設け、AIを活用した業務においても批判的思考を着実に強化していくことが不可欠となります。

 

この課題は、人がAIをパートナーではなく競争相手と捉え始めたとき、さらに深刻さを増します。機械と張り合おうとすることで、人は無意識のうちに、自らの貢献の幅を狭めてしまいます。Kramer氏が警告するように、「私たちは、より優れた機械になろうとするのをやめるべきです」

これらの視点はすべて、ある重要な点を改めて浮き彫りにしています。すなわち、AIシステムの設計と導入は、人間のケイパビリティを損なうものではなく、むしろそれを高めるものでなければならないということです。そして、その基盤となるのが「信頼」です。Kramer氏はこう述べています。「人間とAIの協働は、信頼を前提としています」。だからこそ、AIシステムを設計・構築する側には、明確な意図と、誰がその恩恵を受けるのかという認識を伴って取り組む、より一層大きな責任が課されるのです。

したがって、人間のスキルセットを強化するということは、従業員一人一人の能力を高めることだけにとどまりません。AIが人間の判断力や創造力、自信に取って代わったり、弱めたりするのではなく、それらを補強する形で導入され、適切に統制されることを確実にするという意味でもあるのです。

ツールセット:業務の流れの中で学習を可能にする仕組みを設計する

ツールセットは、学習を全社的に展開していくための基盤となります。これには、継続的な学習を可能にするシステム、プラットフォーム、物理的な環境が含まれます。

  • 適応型学習プラットフォーム:従業員一人一人に合わせて最適化されたオンデマンド型のコンテンツを提供する。
  • リアルタイムのフィードバックループ:人間のパフォーマンスとAIシステムの振る舞いを連動させる。
  • 統合型ガバナンスフレームワーク:倫理的で責任ある、透明性の高い相互学習を促進する。
  • 流動的なリスキリングの仕組み:従業員とAIシステムを迅速にアップデート・再配置できるようにする。
  • 物理的環境:実験や学習、協働に安心して取り組める自信と主体性、心理的安全性を育む空間を従業員に提供し、人間と機械の潜在能力を大きく引き出す。

職場は今や、単なる業務の場ではなく、ツールセットの延長として機能しています。そこでは、探索や実験、そして人間とAIの協働を支えるエコシステムが形成されます。これについて、Ernst & Young LLPのPartner(Technology Consulting)であるHarvey Lewisは、次のように述べています。「重要なのは、あらかじめ定められたカリキュラムから、学びを促す仕組みへと発想を転換することです。特定のスキルや役割に人を当てはめるための研修ではなく、新しい環境を成り立たせている原理や原則を理解するためのツールを与えることが重要です」

ラーニングリーダーに求められる新たな役割

マインドセット、スキルセット、ツールセットがそろってはじめて、人間とAIが共に学び続ける相互学習型企業の土台が整います。そして、人間がAIから学び、AIもまた人間から学ぶという相互の学習が進むにつれ、企業は自己改善を内在化したシステムへと進化していきます。

こうした変化はまた、CLOの役割そのものを根本から塗り替えつつあります。Siemens社のLin氏は、その転換を次のように端的に表現しています。「CLOは、もはや事業の要請に応じて受け身で学習を提供する存在ではありません。CLOには、CSO(最高戦略責任者)と同じ視座で考えることが求められます。企業として何を最上位で実現したいのかを起点に、あらゆる要素がどのようにつながっているのかを理解する必要があります。戦略的思考、システム思考、そしてビジネス感覚は今や、CLOに不可欠な要件です」

こうした新たなモデルの下では、CLOはケイパビリティを構想・設計する戦略的設計者となります。学習への投資資本を戦略的に配分し、企業としてのインテリジェンスを形成するとともに、人間とAIが継続的に共進化していくための環境を整える役割を担います。

人間とAIによる知的協働の時代においては、もはや人材獲得を巡る競争そのものが意味を失いつつあります。いま企業に突き付けられている新たな命題は、「いかに学習を設計するか」です。

C-suite(経営層)に求められる検討事項、問い、行動


リーダーの検討事項

CEO:人間とAIが共に進化する企業を創る

  • 策定した戦略に対して、スキルやオペレーティングモデルの実装が遅れていないか。その遅れを縮小するために、十分なスピードで動けているか。
  • 自動化、アウトソーシング、ケイパビリティセンターに関する意思決定は、企業の長期的なパーパスや価値創造の方向性と一致しているか。
  • AIが中核的な協働者となる中で、信頼を維持するための文化的・倫理的な原則は何か。

CFO:人材マネジメントに財務規律の視点を組み込む

  • 自社で現在抱えている人材負債はどの程度あり、どれほどの速さで膨らんでいるか。
  • 自動化による、コストや時間の削減効果のうち、どの程度を従業員のケイパビリティの強化やAIとの相互学習に再投資しているか。
  • 自社の財務指標は、スキル開発、適応力、部門横断の連携を通じて創出される価値を反映しているか。

CHRO:未来の人材基盤を設計する

  • キャリアの道筋が再定義される中で、次世代のリーダーに求められるケイパビリティをどのように構築しているか。
  • 人間と機械の協働を前提とした、柔軟で変化に対応できる人材システムを実現するために必要となる、設計、リーダーシップ、マネジメントの原則とは何か。
  • 従業員の主体性を引き出し、テクノロジーを活用して人のケイパビリティを最大限に引き出すために、オフィス空間をどのように見直すべきか。

CLO:人間とAIが共に学ぶ企業を創る

  • 学習コンテンツは、18週間ごとに進化し得るスキル要件にも対応できるスピードで提供されているか。
  • ワークフローの中で、人間とAIが共に学ぶ最大の機会はどこにあるか。
  • 学習がパフォーマンス、イノベーション、レジリエンスに与える実務上の影響を、どのように把握・追跡しているか。

執筆者について

サマリー

人材は、人間とAIが対等なパートナーとしてケイパビリティを共創し、相互適応と学習の共有を通じて共進化していくものへと変容しつつあります。これを踏まえ、企業が持続的なレジリエンス、社会的関連性、競争力を維持・確保するためには、人間とAIが共に学び続ける「相互学習」を企業戦略の中核に据えることが極めて重要となります。一方で、スキル、システム、マインドセットが変化のスピードに追いつかないことで、本来発揮されるはずの潜在能力が生かされない状態、いわゆる「人材負債」が蓄積するリスクも存在します。こうしたリスクを抑制するために、CHRO、CLO、CFO、そしてCEOは、学習を資本として捉え、ケイパビリティを進化し続けるエコシステムとして位置付け、人間とAIが共有する知的能力を、協働と継続的改善を通じて常に高め合い、共進化していく資産として扱う必要があります。

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