EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EUはEU域内の競争力の観点で厳格な規制が障壁になっていると分析し、規制の簡素化を図っています。なお、規制簡素化はいくつかの分野に跨って行われており、“第1弾”オムニバス簡素化パッケージというタイトルの通り、簡素化対応の1つ目の提案が2025年2月26日になされました。
当該提案はCSRDの簡素化提案を含んでいます。
欧州委員会が提示した第1弾オムニバス簡素化パッケージには以下の提案が含まれています。
上記のうちStop-the-clock指令とコンテンツ指令のステータスは次の通りとなります。(以下は11月14日現在、不定期Update予定)
Stop-the-clock 指令 |
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コンテンツ指令 |
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なお、コンテンツ指令の中で言及されているESRSの改訂については、EFRAGから欧州委員会からEFRAGに対して、11月末を期限としてテクニカルアドバイスの提示が予定されています。
2025年3月27日、欧州委員会からオムニバス法案の一環として、基準設定団体であるEFRAGに対して、現在のESRSを簡素化するための改定に関するテクニカルアドバイスの提示を求めるレターを送付しました。EFRAGから欧州委員会に対するESRSの改定に関するテクニカルアドバイスの提出期限は、1-1で述べた通り、2025年11月末までとされています。
2025年4月25日に開催されたEFRAGの意思決定機関(SRB)の会議にて、ESRSの改定に関する作業計画とタイムラインが承認されました。
現時点でEFRAGの想定しているESRSの改定のための作業計画とスケジュールは下記です。(以下は11月14日現在の情報です。不定期ですが適時なUpdateを予定しています)
タイミング | 改定のための作業 |
2025年4月~5月中旬 |
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2025年5月中旬~7月 |
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2025年8月~9月 |
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2025年11月 |
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なお、改訂版ESRSは委任規則として採択後に採用可能となります。このため、2025年11月から改定版ESRSが使用可能となるわけではない点にご留意ください。
委任規則の採択は「CSRDのコアコンテンツに係る指令」の成立後6ヶ月以内になされるという表現が背景文書において使用されています。
参考:EFRAG delivers Work Plan to the European Commission in response to ESRS Simplification Mandate | EFRAG
VSMEとは、非上場の中小企業向けに策定された任意のサステナビリティ報告基準です。2025年7月30日に、欧州委員会は、現在のVSMEに対する勧告を採択しました。加えて、欧州委員会は、オムニバス法案でCSRD開示義務対象から除外される従業員1000人以下の適用対象外企業について、VSMEを基にした任意報告基準の委任規則を将来的に採択する予定です。欧州委員会のプレスリリースによると、現時点で公開されているVSMEが委任規則として採択される過程で、最終的な合意内容やESRS(欧州サステナビリティ報告基準)の改訂状況に応じて変更が加えられる可能性があります。
参考:Questions and answers: Recommendation on a voluntary sustainability reporting standard for small and medium-sized undertakings (VSME) | European Commission
VSMEに関する情報につきましては「VSMEの概要と“ポストオムニバス”におけるEU子会社のCSRD対応オプション」をご参照ください。
オムニバス簡素化パッケージの中で以下のような変更が提案されています。なお、コンテンツ指令に含まれる内容は今後の立法過程で変更が加わる可能性が高いため、当該不確実性も加味した対応計画の策定が必要となります。
日系企業のEU子会社が含まれるいわゆるWave2(従業員500人未満のEU上場企業を含む大企業)のカテゴリーの適用対象と適用時期の現行と改訂提案に係る比較表は以下の通りとなります。
適用対象:コンテンツ指令(11月14日現在、指令未成立)
| 現行 | 改定案(欧州委員会) | 改定案(EU理事会) | 改訂提案(欧州議会) | |
EU域内企業 | 連結 |
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単体 |
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EU域外企業 | 連結 |
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適用時期:Stop-the-clock指令(指令成立済)
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| 現行 | 改定後 |
EU域内企業 | 連結 | 2025年1月1日以降に開始する事業年度 | 2027年1月1日以降に開始する事業年度 |
単体 | 2025年1月1日以降に開始する事業年度 | 2027年1月1日以降に開始する事業年度 | |
EU域外企業 | 連結 | 2028年1月1日以降に開始する事業年度 | 2028年1月1日以降に開始する事業年度 |
*Stop-the-clock指令は官報掲載され、その効力が発生していますが、現行CSRD指令の国内法化が完了しているEU加盟国は改訂提案が国内法へ移管するまでは、上記の“現行”の期日が適用されることとなります。
CSDDDの適用対象と適用時期に係る現行と改訂提案の比較表は以下の通りとなります。なお、適用対象については改訂提案の中で変更の提案がなされませんでした。
適用対象:コンテンツ指令(11月14日現在、指令未成立)
| 現行 | 改訂提案(欧州委員会) | 改訂提案(EU理事会) | 改訂提案(欧州議会) | ||
EU域内企業 | 連結 |
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単体 |
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EU域外企業 | 連結 |
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適用時期:Stop-the-clock指令(指令成立済)
対象企業のサイズによる分類分け | 現行 | 改訂後 | |
EU域内企業 | EU域外企業 | ||
平均従業員5,000人超 、かつ | EU 域内純売上高1,500M EUR超 | 2027年7月26日から | 2028年7月26日から |
従業員数平均3,000人超、かつ、 | EU 域内純売上高900M EUR超 | 2028年7月26日から | |
従業員数平均1,000人超、かつ、 | EU 域内純売上高 450M EUR超 | 2029年7月26日から | 2029年7月26日から |
*Stop-the-clock指令は官報掲載され、その効力が発生していますが、当該延期を含むCSDDDを国内法へ移管して始めてEU加盟内で効力を発揮することになります。
以下のサイトをご参照ください。
CSRD | ESRS/EUタクソノミーの解説(オムニバス提案適用前の解説) | |
ESRSの改訂 | 改訂版ESRSの最新情報 | |
| EUオムニバス簡素化パッケージ案 セミナー 第2弾 最新の動向及び簡素化ESRSの公開草案の解説 | EY Japan | ||
N-ESRS(EU域外企業向けESRS) | CSRD域外適用が日本企業に与える影響とは? ~経済産業省が「令和6年度産業経済研究委託事業(ESRSの現状や第三国基準ドラフトに関する調査およびワーキング・グループの開催)」に関する調査報告書を公開~ | EY Japan | |
VSME(中小企業向けの任意の報告基準) | VSMEの概要と“ポストオムニバス”におけるEU子会社のCSRD対応オプション | |
CSDDD | オムニバス提案適用前の解説 | 欧州サステナビリティ・デューデリジェンス指令の発効 本指令のポイントと日本企業への留意点 |
CBAM | オムニバス提案適用前の解説 | |
EUDR(欧州森林破壊防止規則) | EUDR(欧州森林破壊防止規則)で日本企業に求められる対応と基盤づくりのステップ | |
EUバッテリー規則およびELV(廃車)規則 | サーキュラーエコノミーのリスクと機会 ~ELV規則とEUバッテリー規則を中心に~ 参照先URLのうち[(1) 欧州政策・法規制」参照 | |
ESPR規則(持続可能な製品のためのエコデザイン規則) | デジタル製品パスポート:最新ワーキングプラン解説と課題 | |
EUの包装および包装廃棄物規則(PPWR) | 包装および包装廃棄物規則(PPWR)の解説と企業の対応ポイント | EY Japan | |
山中 紗織
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部 米国公認会計士 マネージャー
大宮 萌
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部
鈴木 慧
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部
馬場 翔太
EY Belgium JBS(Japan Business Services) 公認会計士 CFA 日本アクチュアリー会 準会員