CSRD等の最新情報:第1弾オムニバス簡素化パッケージの最新の状況

1-1. 第1弾オムニバス簡素化パッケージとその進捗

EUはEU域内の競争力の観点で厳格な規制が障壁になっていると分析し、規制の簡素化を図っています。なお、規制簡素化はいくつかの分野に跨って行われており、“第1弾”オムニバス簡素化パッケージというタイトルの通り、簡素化対応の1つ目の提案が2025年2月26日になされました。

当該提案はCSRDの簡素化提案を含んでいます。

欧州委員会が提示した第1弾オムニバス簡素化パッケージには以下の提案が含まれています。

  • CSRDとCSDDDの適用日付の延期に関する指令の提案(”Stop-the-clock”指令)
  • CSRDとCSDDDの要件等の変更に関する指令の提案(”コンテンツ”指令)
  • EUタクソノミーに係る開示委任規則の簡素化のための変更提案
  • CBAM規則の簡素化のための変更提案

上記のうちStop-the-clock指令とコンテンツ指令のステータスは次の通りとなります。(以下は4月18日現在、不定期Update予定)

 Stop-the-clock 指令 

  コンテンツ指令 

 採択の時期に関して公式なソースから公表されている情報はありません。


1-2. EFRAGによるESRS改定に向けた作業計画とタイムラインの承認

2025年3月27日、欧州委員会からオムニバス法案の一環として、基準設定団体であるEFRAGに対して、現在のESRSを簡素化するための改定に関するテクニカルアドバイスの提示を求めるレターを送付しました。EFRAGから欧州委員会に対するESRSの改定に関するテクニカルアドバイスの提出期限は、2025年10月末までとされています。

2025年4月25日に開催されたEFRAGの意思決定機関(SRB)の会議にて、ESRSの改定に関する作業計画とタイムラインが承認されました。

現時点でEFRAGの想定しているESRSの改定のための作業計画とスケジュールは下記です。(以下は4月25日現在の情報です。不定期ですが適時なUpdateを予定しています)

タイミング

改定のための作業

 2025年4月~5月中旬

  • 大幅な簡素化のための実効的な手段に関するVISIONの確立
  • ステークホルダーからの意見収集
  • CSRDに沿った形での開示やその他情報の分析

 2025年5月中旬~7月

  • 改訂版ESRSの公開草案のドラフト作成とEFRAG内での承認

 2025年8月~9月

  • 公開草案の公開とステークホルダーからのフィードバックの受領と分析

 2025年10月

  • 欧州委員会への簡素化ESRSに関するテクニカルアドバイスの最終化と提出

なお、改訂版ESRSは委任規則として採択後に採用可能となります。このため、2025年10月から改定版ESRSが使用可能となるわけではない点にご留意ください。

委任規則の採択は「CSRDのコアコンテンツに係る指令」の成立後6ヶ月以内になされるという表現が背景文書において使用されています。

参考URL:EFRAG delivers Work Plan to the European Commission in response to ESRS Simplification Mandate | EFRAG

 

2.CSRD/CSDDD適用対象企業と適用対象時期に関するまとめ

オムニバス簡素化パッケージの中で以下のような変更が提案されています。なお、コンテンツ指令に含まれる内容は今後の立法過程で変更が加わる可能性が高いため、当該不確実性も加味した対応計画の策定が必要となります。

① CSRD

日系企業のEU子会社が含まれるいわゆるWave2(従業員500人未満のEU上場企業を含む大企業)のカテゴリーの適用対象と適用時期の現行と改訂提案に係る比較表は以下の通りとなります。

適用対象:コンテンツ指令(4月18日現在、指令未成立)

 

現行

改訂提案

 EU域内企業

 連結

  • 大規模グループ(売上高50M EUR、総資産25M EUR、従業員数250人の3つのうち2つを超える)
  • 平均従業員1,000人超
    かつ
  • 売上高50M EUR超 または 総資産25M EUR超

 単体

  • 大会社(売上高50M EUR、総資産25M EUR、従業員数250人の3つのうち2つを超える)
  • 平均従業員1,000人超
    かつ
  • 売上高50M EUR超 または 総資産25M EUR超

 EU域外企業

 連結

  • EU域内 売上高 150M EUR超
    かつ
  • EU域内に大会社であるEU子会社あり(売上高50MEUR、総資産25MEUR、従業員数250人の3つのうち2つを超える) または域内にEU支店あり(売上高40MEUR超え)
  • EU域内 売上高 450M EUR超
    かつ
  • EU域内に大会社であるEU子会社あり(売上高50MEUR、総資産25MEUR、従業員数250人の3つのうち2つを超える) または域内にEU支店あり(売上高50MEUR超え)

適用時期:Stop-the-clock指令(指令成立済)

 

 

現行

改定提案

 EU域内企業

 連結

 2025年1月1日以降に開始する事業年度
(例:26年3月期)

 2027年1月1日以降に開始する事業年度
(例:28年3月期)

 単体

 2025年1月1日以降に開始する事業年度
(例:26年3月期)

 2027年1月1日以降に開始する事業年度
(例:28年3月期)

 EU域外企業

 連結

 2028年1月1日以降に開始する事業年度
(例:29年3月期)

 2028年1月1日以降に開始する事業年度
(例:29年3月期)

*Stop-the-clock指令は官報掲載され、その効力が発生していますが、現行CSRD指令の国内法化が完了しているEU加盟国は改訂提案が国内法へ移管するまでは、上記の“現行”の期日が適用されることとなります。
 

② CSDDD

CSDDDの適用対象と適用時期に係る現行と改訂提案の比較表は以下の通りとなります。なお、適用対象については改訂提案の中で変更の提案がなされませんでした。

適用対象:コンテンツ指令(4月18日現在、指令未成立)

 

 

現行

改訂提案

 EU域内企業

 連結

  • 平均従業員1,000人超 、かつ
  • グローバルでの売上高450M EUR超
    但し、最終親会社がEU域外に存在する日系企業においては原則、該当しなし

 単体

  • 平均従業員1,000人超 、かつ
  • グローバルでの売上高450M EUR超

 EU域外企業

 連結

  • EU域内 売上高 450M EUR超
    なお、単体で満たさない場合には、親会社連結ベースで判定

上記以外に、EU域内のフランチャイズまたはライセンス契約を締結している企業またはグループの最終親会社で、EU域内でのロイヤリティが、年間22.5MEUR超、かつ、当該企業またはグループの直近事業年度におけるグローバルでの年間純売上高8,000万ユーロ超の場合のEU企業および第三国企業にも適用されます。

適用時期:Stop-the-clock指令(指令成立済)

対象企業のサイズによる分類分け

現行

改訂提案

EU域内企業

EU域外企業

 平均従業員5,000人超 、かつ
 グローバル純売上高 1,500M EUR超

 EU 域内純売上高1,500M EUR超

 2027年7月26日から

 2028年7月26日から

 従業員数平均3,000人超、かつ、
 グローバル純売上高900M EUR超

 EU 域内純売上高900M EUR超

 2028年7月26日から

 従業員数平均1,000人超、かつ、
 グローバル純売上高 450M EUR超

 EU 域内純売上高 450M EUR超

 2029年7月26日から

 2029年7月26日から

*Stop-the-clock指令は官報掲載され、その効力が発生していますが、当該延期を含むCSDDDを国内法へ移管して始めてEU加盟内で効力を発揮することになります。

 

3.その他の第1弾オムニバス簡素化パッケージの変更提案の概要

以下のサイトをご参照ください。


4.CSRD等のサステナビリティ関連EU法令の解説情報

 CSRD

 ESRS/EUタクソノミーの解説(オムニバス提案適用前の解説)

 CSRD適用対象日系企業のためのESRS適用実務ガイダンス(JETROウェブサイト:2024年5月発行)

 N-ESRS(EU域外企業向けESRS)

 今後掲載予定

 VSME(中小企業向けの任意の報告基準)

 今後掲載予定

 CSDDD

 オムニバス提案適用前の解説

 欧州サステナビリティ・デューデリジェンス指令の発効 本指令のポイントと日本企業への留意点

 CBAM

 オムニバス提案適用前の解説

 炭素国境調整メカニズム(CBAM)に係るアドバイザリーおよびコンプライアンス支援サービス

 EUDR(欧州森林破壊防止規則)

 EUDR(欧州森林破壊防止規則)で日本企業に求められる対応と基盤づくりのステップ

 EUバッテリー規則およびELV(廃車)規則

 サーキュラーエコノミーのリスクと機会 ~ELV規則とEUバッテリー規則を中心に~
 参照先URLのうち[(1) 欧州政策・法規制」参照
 サーキュラーエコノミー:グローバル最新動向



チーム

馬場 翔太
EYベルギー Japanese Business Service