銀行業 第4回:銀行業の貸出金と関連する会計論点

EY新日本有限責任監査法人 銀行・証券セクター
公認会計士 武田 直大

第4回においては、銀行業の貸出金について取り上げます。銀行は、与信行為(融資)を通じて様々なビジネスを行っており、ここでは特に融資に関連した勘定科目、貸出金の消滅の認識とその例外となるローン・パーティシペーション、コミットメントライン、信用保証協会保証付き融資に伴う偶発損失引当金について解説します。


1. 融資に関連した勘定科目

貸出業務は銀行の固有業務であり、銀行が取引先に対して融資した貸出は、貸出金として銀行の貸借対照表の大部分を構成します。貸出金に含まれる勘定科目としては、貸出形態に応じて主に以下の勘定科目があります。

勘定科目

内容

割引手形

一般の商取引により振り出された期日未到来の約束手形を割り引く場合に、銀行がその約束手形を買い取る形で実施する貸出形態が含まれます

手形貸付

貸出先から約束手形の差し入れを受けて融資を行う貸出形態が含まれます

証書貸付

貸出先から借用証書の差し入れを受けて融資を行う貸出形態が含まれます

当座貸越

当座貸越契約を締結して事前に借入限度額を定め、その限度額の範囲内で、預金残高を超えた資金の払出に関して、貸出を行う貸出形態が含まれます

上記4つの勘定科目に関しては、貸出金の内訳科目として貸借対照表上で独立掲記することが銀行法施行規則別紙様式第3号の2等においても示されています。

これら4つの勘定科目のうち、ここでは、一般の事業会社との取扱いが異なる代表的なものとして、割引手形についてみていきます。

一般の事業会社においては、手形を割り引いた際には、手形の消滅を認識します(移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下、「金融商品実務指針」といいます)第34項)。

一方、銀行業においては、業種別委員会実務指針第24号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」4.において特有の会計処理が定められており、銀行業の取引慣行において、手形割引を割引依頼人に対する与信行為として認識している業種特有の取引実態を重視し、金融取引として処理することとされています。具体的には、手形割引により取得する債権の取得価額は手形額面とし、手形割引料は貸出金利息として認識することとなり、割引料のうち翌期以降の帰属する部分は前受収益として処理します。

上記を踏まえて、手形割引時における主なフローと、会計処理の例を図示したものが以下となります。


2. 貸出金の消滅の認識

貸出金は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下、「金融商品会計基準」といいます)に基づき会計処理が行われ、貸出金を含む金融資産は、以下の場合に金融資産の消滅を認識します(金融商品会計基準第8項)。

金融資産の消滅を認識する場合

貸出金に関連した具体例

(1) 金融資産の契約上の権利を行使したとき

貸出金を回収したとき

(2) 金融資産の契約上の権利を喪失したとき

債務者が貸し倒れて、貸出金を回収することができなくなったとき

(3) 金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転したとき

貸出金を譲渡したとき

このうち、(3)の金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは、次の要件が全て充たされた場合とされています(金融商品会計基準第9項)。

譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること

譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること

譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと

3. ローン・パーティシペーション

2で記載のとおり、貸出金の譲渡時にその消滅を認識するためには、契約上の権利に対する支配が他に移転していることが必要ですが、金融機関のオフバランス手法の一つであるローン・パーティシペーションは、その例外として特別な取扱いが定められています。

ローン・パーティシペーションとは、金融機関等からの貸出債権に係る権利義務関係を移転させずに、原貸出債権に係る経済的利益とリスクを原貸出債権の原債権者から参加者に移転させる契約で、その取引の概要は以下のとおりとなります。

ローン・パーティシペーションは、貸出債権に係る権利義務関係を移転するものではないため、原債権者と原債務者の権利義務関係は全く変化せず、それゆえ、参加者から原債務者に対して直接の権利行使は行われず、金融資産の消滅の認識要件の一つである契約上の権利に対する支配の移転は満たしていないと言えます。一方で、ローン・パーティシペーションが流動化の手法として広く利用されている実務を考慮し、基準上でも特別な手当てがなされており、リスクと経済的利益のほとんど全てが譲渡人から譲受人に移転している場合等一定の要件を充たす場合には、貸出金の消滅を認識することを認めるとされています。

具体的には、以下の要件を全て満たす場合には、債権譲渡として取り扱うものとし、参加利益の対価の受取時に、原債権者が有する原貸出債権のうち参加割合に相当する部分を参加者に売却したものとして会計処理が行われます(移管指針第1号「ローン・パーティシペーションの会計処理及び表示」第4項)。

(1) 貸出参加の対象となる原債権がローン・パーティシペーション契約上個別に特定されており、参加割合について、原債権の貸出条件(返済期日、利率等)と同一の条件が原債権者と参加者との間にも適用されること

(2) 原債権者が、参加利益の売却により、原貸出債権に包含されている将来の経済的利益を実質的に全て享受することができる権利を放棄しており、かつ、原債権者は参加利益の対象である原貸出債権から生じるいかなる理由による損失についてもリスクを負わないこと

(3) ローン・パーティシペーション契約において、原債権者は、参加者に対する参加利益の買戻しの義務を負っておらず、かつ、原債権者に対し、当該参加利益を再購入する選択権が付与されていないこと

なお、売却処理した貸出債権に重要性がある場合には、原債権者は、その旨、売却処理した貸出債権の元本の期末残高の総額を注記することが必要となります。
 

4. コミットメントライン契約等

コミットメントライン契約とは、金融機関と資金の借手との間で予め与信枠や契約期間等を定めたもので、与信枠の範囲内であれば借手側の請求によりいつでも資金調達が可能なものとなります。同種の契約としては、1で取り上げた当座貸越契約もあります。

これらの契約は、あくまで枠の設定に過ぎないため、借手側の請求がない限り貸出が実行されず、貸借対照表にも計上されません。一方、貸出未実行の状態でも財務諸表への注記が求められており、具体的には以下の内容を記載する必要があります。

金融商品実務指針 第139項 (一部抜粋)

当座貸越契約(これに準ずる契約を含む。)及び貸出コミットメントについて、貸手である金融機関等は、その旨及び極度額又は貸出コミットメントの額から借手の実行残高を差し引いた額を注記する。

なお、これらコミットメントライン契約等について、一般的には枠の一部しか借手が実行せず、全てについて貸手に支払義務が生じるものではないことから、財務諸表の読者の誤解を招かないようにするため、その旨の補足説明を付すことが可能であり(金融商品実務指針第311-2項)、未実行額の注記と合わせて、定性情報について記載することが一般的です。
 

5. 信用保証協会保証付き融資に伴う偶発損失引当金

信用保証協会の保証が付された融資に関して、責任共有制度の対象となる場合に、偶発損失引当金の計上が必要となる場合があります。責任共有制度とは、中小企業・小規模事業者に対する適切な支援を行うことを目的に、信用保証協会と金融機関とで適切な責任共有を図るもので、その方式として、「部分保証方式」と「負担金方式」の2つがあり、各金融機関が選択することとなっています

  • 部分保証方式・・・80%を信用保証協会、残りの20%は金融機関の負担
  • 負担金方式・・・保証時点では信用保証協会による100%保証で、代位弁済状況に応じて20%を金融機関が信用保証協会に対して支払い

債務者が返済できず、その債務を肩代わりする場合(代位弁済)における、それぞれの方式の概略を示したものが以下の図となります。

このとき、「負担金方式」を選択した場合の引当金の処理について、全銀協通達において、以下の2つの方法が示されています。

(1) 対象債権を一般債権から区分せず代位弁済の実績を一般貸倒引当金の貸倒実績率又は倒産確率・倒産時ロス率に含め、一般貸倒引当金を計上

(2) 対象債権を区分管理し100%保証債権の偶発損失に対する引当として引当金を計上

なお、「部分保証金方式」を選択した場合の非保証部分の引当金の処理については、債務者区分に基づき引当が行われることとなります(貸倒引当金については、第5回を参照)。

企業会計ナビ

会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。

EY Japan Assurance Hub

EY新日本有限責任監査法人が経営・経理・財務に携わる方に向けて企業会計・サステナビリティ開示情報の解説や経営インサイトをお届けします。